クロスオーバー世界の破壊者 NEO-DECADE   作:サルミアッキ

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 ダスタードと仮面ライダーシノビの忍者軍団が全く同じだったのでこんな感じに…。タイトルの違和感半端ない。


第8話 誰・俺・忍・者

 蟹座の巨大怪人が跳ね回り、ドラグレッダーと激突し合う京都の河原。身を屈めてその光景を見ているのはナツミである。毎度毎度世界を渡る度命の危機に瀕しているが、今回の世界でもろくでもない目に現在進行形で逢っている。思わず涙目になるナツミ。哀れ。

 丁度その時だ。

 

「はいは~い、大変ねぇ?」

「ちょ……今までどこ行ってたの!」

 

 真っ白な身体に小さな翼をパタパタさせてやって来た奇妙な魔物、キバーラ。ナツミが世界を渡る時はいつもそばにいて、知り合い以上パートナー未満な付き合いのキバット族だった。

 

「はいはい落ち着いてナツミちゃん。あと心配かけたお詫びに、ちょっと助けてあげましょうか?」

「どうする…つもりなんです?」

「こうするのよ、チュッとね」

 

 キバーラが放ったハート状のキスの波動で空間が歪む。それはあらゆる次元を繋げ分断するオーロラカーテン。次元戦士が持ちうる移動手段の一つだった。

 驚くIS学園の面々の間を通り抜け、仮面ライダーたちの傍でそのオーロラが開放される。

 

 

 

「うぉっと!?……何だこれ!?」

『…――――?』

 

 

 一夏たちが疑問の声を上げる中……カーテンの向こうから、一人のビジネススーツの男が現れた。清潔感のある茶髪に黒ぶち眼鏡の、特別には見えない青年だった。

 

「これは……皆さん初めまして」

「おいおい、アンタいつ現れた……?とにかく、おっと!……見ての通りここは危険だ、どっか行ってくれ!」

 

 一夏がスコーピオン・ゾディアーツのISを使用した高熱鞭の猛攻を避けながら眼鏡をかけた男に叫ぶ。

 

「危険?……おや、なるほど」

 

 川べりではIS、ドラグレッダー連合とキャンサー・ノヴァが怪獣大戦争を引き起こし、リブラ・ゾディアーツとメテオが中華格闘対戦を繰り広げ、上空ではフォーゼとゴールデン・ドーンを纏ったスコーピオン・ゾディアーツが激しい軌道を描き激突している。

 そんな戦いを眺めながら男は黒ぶち眼鏡をポケットへとしまった。仕事に向かうサラリーマンのように身なりをただし、近くで戦っていたリブラ・ゾディアーツに声をかける。

 

「一つ確認したいのですが、皆様はシンフォギア装者(・・・・・・・・)、と言う訳ではありませんよね?」

『……は?シンフォギア?なんだそりゃ…ぐっ!』

『余所見とは不注意ね。…ホォォォッ、ワタァァァァァァァァァッッ‼』

 

 リブラ・ゾディアーツがメテオにぶっ飛ばされるのを見て状況を把握したらしい優男。

 

「その反応から…――――ギャラルホルンが関連した事件ではないと、ふむ……」

 

 思案顔で顎を摘まみ考えるその男。すると、空中で勢いを回転する事で殺し綺麗な着地をしたゾディアーツが杖を向けてきた。

 

『とっとと失せろ。IS使いでも、ライダーでもねぇ奴がしゃしゃり出るんじゃねぇよ!』

「ライダー、ですか?…おっと?」

 

 その言葉に顔を上げた男だったが、その時地面が爆発し、紫電が空へと駆け上った。こんな事ができるのはこの場でただ一人しかいない。

 

「な!あ、あぁ……!」

「リブラ・ゾディアーツ……!貴様!」

 

 杖を前方に突き出した形で悠然としていたリブラに、IS学園の面々は怒りを向ける。民間人をムシケラのように殺す彼女らのやり方は絶対に認められるものではない。友情を掲げるフォーゼと紡いできた絆を否定されるような、人の自由を奪うようなことは彼女らにとって決して認められないのだ。

 

 

『ハ、ハハハッ!……、ぁん!?』

 

 

「…――――成程。皆さま、助太刀よろしいでしょうか」

「「「「!?」」」」

 

 だが。そんな心配も杞憂だった様だ。濛々と巻き上がる土煙の中からバク転をして上空へ姿を現したスーツの男。彼はシュピンデル倒立を行った後、衝撃をいなしながら転がり再びすっくと立ちあがる。

 

「……いやいやいや。いやいやいやいや」

「嘘でしょう、今の攻撃を避けたって言うのですか?」

「しかもあの身のこなし……教官にも引けをとらんぞ?一体何者だ……?」

 

 その疑問に答える様に名刺が手裏剣ばりの速度で地面に接触する。

 

「私はアーティスト、風鳴翼(・・・)のマネージャーをしております、小滝興産株式会社の緒川慎次(・・・・)と申します。以後お見知りおきを」

「え…あ、はいこれはどうもご丁寧に?」

「まず石に名刺が突き刺さってることに突っ込もうぜ」

「そして。またの名を……」

「あ無視?」

 

 銀色の瓢箪から紫色の液体が流れ出ると、それが腰にまとわりつきバックルが大きいベルトになる。そして空中で回転する、“手裏剣が組み合わさった紫色のアイテム”を手に取る緒川という青年。脚を高く上げ、続いて腰を低く落とし“忍者の着地”の様なポーズをとると、胸の前で印を結び、こう言った。

 

「変身」

 

 ミライドライバーにメンキョカイデンプレートをセットすれば鼓を鳴らす音がする。その瞬間、巨大なカエル型ロボットが彼…――――『緒川慎次』の背後に現れた。

 

「い、一夏一夏!あれカエルだよね⁉やっぱり日本のNINJAは口寄せを使うんだね⁉」

「何でテンション上がってるんだシャル⁉」

「知らんのか一夏。NARUTOはフランスでも有名なMANGAなんだぞ」

「誤った日本文化がクールジャパンで浸透しつつある⁉間違っても忍者は現代にいねぇよ!」

「「「「そうなの(か)!!?」」」ですか!?」

「オイ待て、ゲンタロウまで言った今⁉ピュアかな!?現代日本じゃそういうことは警察とかの仕事になったんだってば!」

「「………――――」」←(目を逸らす暗部(忍び)な家系の更識姉妹)

 

 そんなIS学園の面々をさておいて、D龍騎はドラグレッダーの頭の上からソレを面白そうに眺めていた。

 

「なるほどな。この世界の西暦と合致したから呼ばれたか……

 

…――――シノビ(・・・)

 

 

【誰じゃ?俺じゃ?忍者!】

 

 

【シノービーィ!】

 

 

【見】

【参】

【!】

 

 

 紫煙がたなびき、巻物がマフラーとして装着される。彼こそは別の2022年を守る仮面ライダー。

 

 

「忍と書いて、刃の心…――――仮面ライダー、シノビ」

「「「「「!!?」」」」」

 

 

 仮面ライダーシノビが、立っていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

『また別のライダーか……』

『ディケイドと言いメテオと言い、ホイホイ出てくりゃいいとか思ってんのか?…―――そろそろ飽きてきた、もうお呼びじゃねぇんだよ!とっとと殺す!』

 

 新たなライダーの登場に怒りの声を漏らすリブラ。レオ・ゾディアーツの変身したキャンサー・ノヴァに至っては呆れている。

 

「ケリをつける、という意見には賛成です」

 

【メガトン忍法!】

 

 シノビは複雑な印を結び、駆け寄ってくるリブラに向かって指を向けた。

 

『おっらぁッ‼』

「皆さん、巻き込まれないようご注意を」

 

 その途端、ISが舞っている上空に異変が起きる。木の葉が巻き上がり、暗雲が夕暮れを覆い隠す。明らかな異常気象であり、東の空から轟々という風の音が聞こえてきた…。

 

「え……おいおいおい!箒、皆‼とにかく逃げろォ⁉」

『っちぃ…』

『うお、おぉぉぉぉっっ⁉おわぁーッッッ!?』

 

 慌てて退避したIS学園生徒達とスコール。だがオータムは逃げ遅れ、紫色の台風の渦の中に飲み込まれていった。

 

「では、こちらは私が受け持ちましょう」

 

 そして、紅葉をまき散らす風の中へとシノビは身を躍らせた。呆気にとられるフォーゼや女子高生たちをその場に残して……。

 

 

「はっはは!まさかあんな大技があったとはな。流石OTONAのNINJAだ」

『……ちっ(キャンサー・ノヴァの状態ではデカい的か……)、ならば』

「…、うぉ!?」

 

 キャンサー・ノヴァはその外殻を脱ぎ捨てると同時に、ドラグレッダーをキャストオフの要領で吹き飛ばしディケイドを地面に撃墜させる。地面を転がり衝撃をいなすツカサが顔を上げれば、悪魔にも思える姿となったマドカがギター型武器の『ウルク』を乱暴に引っ掻き回す。

 

『ろけんろー…――――いぇい(棒読み)』

「ぐっ…、超新星をやめてくれたか?“あざまーす”、なんつってな……おっと!」

 

 そんなディケイドの生意気をカプリコーン・ゾディアーツは聞く耳をもたない。音譜の様な金色のエネルギーラインが周囲を駆け巡り、ディケイドは爆発と煙に包まれる。……――――だが、しかし。

 

「変身」

 

【KAMEN RIDE……――――KIVA】

 

 赤黒い蝙蝠の群れが爆風を薙ぎ払った。再びディケイドはその姿を変える。音楽と人の愛を守る吸血鬼の王の鎧を纏う。仮面ライダーキバの双眸が、カプリコーン・ゾディアーツを鋭く睨む。

 

「酷い音楽だ。お前に命を燃やす歌を教えてやる」

『フン、下らない…』

 

 その言葉がDキバの耳に届いた瞬間、もう眼前に迫っていたウルク。ギターを投げるなとお小言の一つでも言ってやろうと思ったツカサだったが、既に戦闘の第二幕は開始されていた。

 Dキバの超感覚に察知されたマドカの正拳突き。ツカサはそれを危なげなく受け止め、三度変わったゾディアーツの姿を観察する。

 

「成程、次は双魚宮か…面白い。水辺なら……、こいつだ」

 

【FORM RIDE KIVA BASHAA FORM】

 

 マドカの腕を締め上げながらディケイドは一枚のカードをドライバーのスロットへと装填した。電子音と共にDキバに変化が生じる。一瞬半魚人の顔の幻影がDキバにまとわりつき、拘束具のカテナを弾き飛ばして緑色のキバ……――――『バッシャーフォーム』へと変身した。

 

「……」

『…』

 

 二人は睨み合いながら一定の距離をとり、河原から鴨川まで駆けだした。互いに無言のまま金剛杵とバッシャーマグナムを構え、切迫感を高まらせる。そして同時に跳躍し……水上戦闘を繰り広げ出した。

 ピスケス・ゾディアーツは地上、水中、宇宙空間を問わない高速遊泳が可能な上、高圧水流による斬撃やヴァジュラ型武器から放つコズミックエナジーは強力無比であるなど、キャンサー・ゾディアーツ並みの戦闘能力を有している。フォーゼと戦う事になれば、スイッチャーの技量も加味され勝てるかどうかすらも分からない程なのである。……――――だが、水上に立ったバッシャーフォームはキバフォームよりも発達した五感を用いてピスケスの飛び跳ねる個所を的確に打ち抜き、マドカのペースを乱していく。

 

『中々やるな……』

「ふ、因縁の狼少女(エルザ)じゃなくて残念だったでありますなぁ、切ちゃん」

『何デスと?……ンンッ、じゃなくて…――――一体何を言っている(特に私)?』

「さぁな。大方あのNINJAが来たことで時空が浸食されだしたんじゃないか?」

『おのれ、ディケイド…』

 

 このセリフは何故か言っておかねばならない気がした。それは兎も角、このままではジリ貧な事を察知したマドカは更に使用するスイッチを切り替えた。

 

『ハァ‼』

「うぉっと!?」

 

 水中から突如として迫り出したレオ・ゾディアーツの斬撃。そして火花を散らして吹き飛ばされるDキバ・バッシャーフォーム。感覚が過敏になっている故に数百倍になった痛みがツカサを襲うが、持ち前の強靭(狂人)過ぎる精神で悲鳴一つすら上げなかった。川から上がり歩いてくるレオを見ても、終始余裕そうな態度は崩れなかった。

 

『……――――』

「そう来るなら、こっちの方が良いな。忠犬獅子公ちゃん?」

 

【FORM RIDE KIVA DOGGA FORM】

 

 不敵な口調で軽口を叩くとカテナが両腕と胸を覆い、力強い重厚な紫色の装甲を備えた形態へ変身が完了する。フランケン族の力を引き出したDキバはその手に拳骨型のメイス『ドッガハンマー』を持って大きく振りかぶり、レオを打ち据えた。

 

「ふん……――――がぁッ!」

『ガァッ、ルァァァッ‼』

 

 ドッガハンマーとレオ・ゾディアーツの鉤爪がぶつかり合い、打ち合った衝撃が地表を抉る。ディケイドとレオ・ゾディアーツの戦いも佳境となり始めていた……――――。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 こちらは京都市街地の上空。戦線に復帰したブルー・ティアーズのレーザー光とシュヴァルツェア・レーゲンのキャノン砲がゾディアーツの乗ったISに殺到する。だが、スコールはソレを軽々と避けながら仮面ライダーの猛追を足蹴にしていた。まるで遊んでいるようだった。

 

「この蠍野郎……滅茶苦茶強ぇ!」

『いくら貴女がISやフォーゼで戦おうと無駄なこと。二つの力が合わさったこの“ゴールデン・ドーン・スコーピオン”には、傷一つ付ける事はできないわ』

 

 その時、ゲンタロウの脳裏に灯りが灯る。

 

「そうか!傷がつかないんなら…こいつでどうだ!」

 

【FIRE】

 

 赤い20番のスイッチを取り出すと、フォーゼドライバーへとセットする。その途端ロケットモジュールが消失するが、空中戦を行うために仲間が彼を手助けする。

 

「ゲンタロウさんおつかまり下さい!どうぞブルー・ティアーズの上に!」

「サンキューセシリア!んじゃ熱いのと冷たいの、どっと来るぜ!」

 

【FIRE ON】

 

 不動明王の様な荒々しい姿となったフォーゼ。手に持った消火器型の『ヒーハックガン』からコズミックエナジー由来の消火剤を噴き出し、ゴールデン・ドーン・スコーピオンの火球攻撃を防いでいる。その効果はすさまじく、二次被害で燃え移った遠方の橋や古民家さえも消火する程だった。

 

『へぇ……――――ふんっ!』

 

 それを見て不利を悟ったスコール。鋏部分から黄金のエネルギーワイヤーを生成したスコーピオンは直接的な物理攻撃でフォーゼを痛めつけようとした。…――――しかし。

 

『ッ、私のISの攻撃を吸収している……?』

 

 呆気にとられるスコーピオンを他所に、フォーゼは身体に貯めた炎熱エネルギーをヒーハックガンから射出する。

 

「ライダー爆熱シュゥゥゥゥゥゥゥッッッッッット!」

『ぬぅ……――――(だが、このままISのシールドエネルギーを防御に回せばゾディアーツの身体には傷一つ突かない!甘かったわね…)……ッッぐゥゥっ⁉』

 

 

 彼女が防御姿勢をとった瞬間のことだった。どこからか放たれた水色のエネルギービームがISの装甲部分に突き刺さり、態勢を崩されたスコーピオン。無防備な彼女が目の前に迫ってくるコズミックエナジーの火炎放射を耐えきれるか否かは、火を見るよりも明らかだった……――――。

 

 

 

 

「おねーさんを忘れて貰っちゃ、困るのよね?……――――さてどうだったかしら簪ちゃん!私すごいでしょ!」

「あ、お姉ちゃん終わった?なら撤収。ほら早く。一般人に見られたらメンドクサイ…」

「……そんなー…」

 

 ……――――ビルの屋上でISを展開していた姉妹がそんな会話をしていたとか、していなかったとか。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 ブルース・リーの様な怪鳥音を口から漏らし、星屑忍者たちの百人組手を淡々と終わらせていく仮面ライダー。流れ作業ともいえる圧倒的な戦闘技術でリブラ・ゾディアーツの尖兵が人の形から星の粒子に還る。余所見をしながらもダスタードたちの急所を無慈悲に突き、吹き飛ばし消滅させていく。

 

『フォーゼもディケイドも問題なさそうね……リブラはあの訳分からん奴に任せましょうか、じゃあ……』

 

【SYSTEM ALL GREEN!】

 

 右手に着いた指紋認証ブレス『メテオギャラクシー』を起動させると、彼女は土星のマークが描かれたレバーを奥へと押し込む。

 

【SATURN!READY!】

 

 ゆっくりと足を動かしながら指をセンサ部分に触れさせるメテオ。承認音声が鳴る前に脚の回転を加速させ、中国拳法の型をキレ良く構える。

 

【OK!SATURN!】

 

『ホォォォ…――――ワタァァァァァァッッッッッッ‼』

 

 土星の輪の様なエネルギーが右手に集束すると、腕を大きく振りかぶり『サターンソーサリー』を放つメテオ。紫の軌跡がダスタードの群れを通り抜けると、連鎖する様に爆発が熾り古都の闇夜を眩く照らした。

 

『一丁あがり。さて……バレないうちに変える(帰る)としますか』

 

 

 

(イメージBGM:IZANAGI)

 

【サンシャイン忍法!】

 

 既に日が落ちた京都の町に眩い灯の玉が点く。シノビが印を結び、目を突きさすような閃光を生み出したのだ。急激な環境の変化に一夏らIS専用機持ちたちが目を伏せる。だが、ホロスコープスには目くらましにもならなかったようだ。だが、それで良い。必要なのは光によってできる影だったのだから。

 

「はっ!」

『なッ……――――ぉあ!?』

 

 後方宙返りをしながら手裏剣を乱れ撃つシノビ。全ての刃が吸い込まれるようにオータムの背後の影へと到達する。

 

     

   乱 

   れ 

   影 

   縫 

   い 

 

 

 達筆な技名がカットインしたがソレは兎も角。リブラ・ゾディアーツの身体は磔にでもあったように、指一本動かすことができなくなってしまった。

 

『う、ぎぃぃ……!?コイツ……!マジで忍術を使いやがるッ‼』

 

「ただの影縫いですよ」

 

「ただの…?いやどういうことなの?」

「言ってること、全然わかりません!?」

 

 一夏と箒のツッコミを無視し、シノビは瞬間移動にも等しい常人離れした動きで攻撃を加えていく。

 

「はッ!やッ!ぜぃッ‼」

『ヌゥゥゥゥ……!』

 

 数十人に分身したシノビがリブラ・ゾディアーツをリンチしていく様子は、敵とはいえ少し哀れにさえ思える絵面だった。……――――篠ノ之箒は後にそう語る。

 

 

 

「はぁぁ!」

「おっりゃぁぁぁっ‼」

「フッ…!」

 

『『『がぅあァァァッッ!?』』』

 

 三人のライダーの攻撃によって、奇しくもゾディアーツたちが同時に地面へと倒れ込む。ゴールデン・ドーンの外装はIS専用機持ち達の戦いによって装着解除に追い込まれ、この場の全員の消耗は推し量れない程だった。

 

 

「もう終わりにしようぜ。公務員の残業は世間的に厳しいんだ」

 

【FINAL ATTACK RIDE D-D-D-DECADE!】

 

 ディケイドはライドブッカーから一枚の黄金のデータカードを取り出し、バーコードをネオディケイドライバーに読み取らせる。

 

 

「ぃよっし!ならこいつだ」

 

【DRILL ON】

 

【LIMIT BREAK…!】

 

 フォーゼ・ファイヤーステイツはソケットに入ったナンバー3のボタンを押し、左脚に巨大なドリルのモジュールを物質化させた。

 

 

 

「三重奏ですか……――――、翼さんたちのようですね」

 

【フィニッシュ忍Pow!】

 

 それぞれの仮面ライダーが身体からエネルギーを迸らせ、助走をつけて前方へと駆け出した。

 

「でやぁっっ‼」

「ライダーファイヤードリルキィィィィッッッック‼」

「忍法……幻影縛りの術!」

 

    

    

鋭     如

    

    

 

 

『『ッッッ‼』』

『ヌゥ……――――ッッ‼』

 

 

 ホロスコープスたちが身構える時間もなく、異なる世界の戦士たちのライダーキックが放たれる。

 ディケイドの放った黄金の次元の壁を突き破りながら放つ『ディメンションキック』はレオ・ゾディアーツに。どこぞの滅亡迅雷なライダーの様な感じな漢字が浮き上がるシノビの蹴りはリブラ・ゾディアーツに。そして轟炎を纏ったロケットライダーの必殺技はスコーピオン・ゾディアーツに向かって、一直線に飛んでいく。京都市街地上空を超え山の中腹を抉りながら、ゾディアーツたちを吹き飛ばし続けていく……――――。

 

 

 

 そして…………――――。爆音が古都の山に轟いた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 大文字焼きもかくやという業火が竹林を燃やす。重要文化財で無かったことが不幸中の幸いか……、そんな事を思いながらディケイドは手についた土埃を払いのける。

 

「ま、こんなもんか」

「ウォッッッシャー!勝ったぞーッッ!」

「……肩を組むな」

「いーじゃねーかセンパイ、な!」

 

 うっとおしい!とフォーゼに膝蹴りを入れるディケイドを他所に、一人その場に残心し周囲の様子を油断なく伺くシノビ。

 

「斬り捨て御免。忍なれどもパーリナィ……、といったところでしょうか」

「その台詞、一体何のつもりの当てこすりですか」

「全然忍んでなかったですわよね!」

 

 西の空から箒とセシリアを先頭に、IS学園の面々が追い付いてきた。一番扱いが悪かったのが彼女たちだろう……忍法に巻き込まれかけるわ、後で織斑先生のおっそろしい反省文書きが待ってるわ、戦闘描写がハブられ気味だったわと、文句の一つでも言いたくなるだろう。

 

「おっと、ついクリスさんの口調に影響されてしまいました……すみません、マリアさん」

「……いや、マリアって誰だ」

「さて、皆さん。油断なされないように。マリアさん、戦闘準備ができる様にしてください」

「いやだからマリアって誰」

 

 ツッコミながら事態を察知したマリア()。おい待てよ、地の文までマリアになってんぞ。シンフォギア世界に浸食されすぎだろ(byディケイド)。……それは一先ず置いといて。

 一夏やフォーゼらIS学園生徒たちがその声に身構え、シノビとディケイドが土埃と煙が立ち上る地点に無機質な視線を向けていた。

 

『ぐっ…――――仮面、ライダー……侮り難し…――――』

 

 その場にいた亡国機業のゾディアーツはボロボロな状態だった。しかし、あれだけの必殺の一撃を受けて怪人の姿を解除されていないのは不自然だ。つまり、戦いなれた者達が外部からの防御手段が介入したと思うのは当然の帰結である。

 

『だが、甘かったな。私達の勝ちだ』

 

 煙の中から出てきたのは最後の幹部、『ヴァルゴ・ゾディアーツ』。空中に浮かぶのはマゼンタ色の星雲。その中央部に発生しているブラックホールに三人の攻撃のエネルギーが吸い取られていた。

 

『リブラ、やれ』

『へいへい。仰せのままに…っと!』

 

 その瞬間、鴨川の方面から凄まじい量のコズミックエナジーの奔流が噴き出し、闇夜の中を銀河の如く照らし出した。

 

「「「「‼」」」」

 

 ディケイドは仮面の下で溜息をつく。最後の結界が崩された……。これから厄介なことになりそうだ、と。

 

『はっはは!さっきディケを石柱に投げ刺しておいたのさ!』

『これで京都のザ・ホールは閉じられた。計画は間もなく完遂される』

 

 背後にブラックホール型のワームホールを生成したヴァルゴ。スコーピオンやレオを顎でしゃくるとリブラ・ゾディアーツと共にその中へ送り込む。

 

『へっ…あばよっと』

『撤退よ、エム。この場はヴァルゴに任せましょう……』

 

 レオは忌々し気な剣呑な雰囲気でディケイド……そして織斑一夏を睨むと、そのまま言葉を発することなく大股で立ち去った。

 ヴァルゴもくるりと背後を向き、流し目気味にIS学園生徒たちに忠告をする。

 

『これ以上邪魔をするならば、貴様らの命の保証はしない。よくよく考えておくことだ』

 

 ワームホールを閉じると、ヴァルゴ・ゾディアーツは白い翼を羽ばたかせISと互角以上のスピードで京都上空を飛び去って行った。

 

「あ、待て……!」

「待てと言われて待つやつなんぞいないだろ。もう敵はいないみたいだし、そう警戒する必要はねぇよ」

 

 

 ようやく、長い一日が終わった。やらやれと頭を振りながらベルトのバックルを左右にスライドさせ、変身を解除するツカサはくたびれた専業主婦のような溜息をつく。

 

「ったく。面倒なことはするもんじゃないな」

 

 彼に子供の世話や学生の引率などは根本の性格から合ってはいないようだ。ホテルに帰ってビールでも飲もう、そんな悲しいサラリーマンの思考回路に陥っている。

 

 一方の仮面ライダーシノビはIS学園生徒から距離を置かれてしまっていた。

 

「お役に立てましたか?」

「それは感謝してますよ。ですけどあなたは、……どうやってこの世界に?」

「そう警戒しないでください。ただ呼ばれただけですから、厄介ごとに巻き込むつもりはありませんよ。寧ろ、巻き込むようなら私一人で処理させていただきますが」

 

 IS学園の面々を見るシノビは、メンキョカイデンプレートを取り外し緒川慎次の姿へと戻る。そして彼女らを庇うように立つ一夏に目を向けた彼は、爆弾発言を一言……――――。

 

「……愛されていますね皆さん?」

「何故そこで愛っ⁉」

 

 顔を真っ赤にした箒がすぐさま突っ込む。その他一夏ラバーズの面々はわーわー騒いだり彼の耳を塞いだり首を絞めたりetc.…とにかく一瞬で現場がカオスになってしまった。

 

「………――――ぁ!ぃた…いました織斑先生!ツカサさんはこっちです!」

「お前たち!ここにいたか!」

「ただいまー…って何コレ、一体ドユこと?」

 

 その時、三人の女の声がした。その場にいた全員が振り返ってみれば、鈴とナツミ……そして(弟が帰ってこないことを心配した)千冬が山道を汗だくで駆け上って来る。生傷だらけ、若しくは疲労困憊な自分の生徒たちを見て、そして近くにいた見知らぬ人物を見て、スッと視線を鋭くするこの世界のOTONAの千冬。

 

「………――――失礼。私はIS学園の教師の織斑千冬だ。貴方は?」

「わ、わー待った待った!千冬先生ッ、この人は俺達を助けてくれたんだ!なッ一夏!?」

「え、あ…、そうだよ千冬姉!」

「織斑先生だ。そしてお前達には聞いていない」

 

 剣呑で静かな鋭さがある視線に思わず閉口してしまう生徒二人。だがそんな恐ろしい雰囲気を緒川さんは持ち前の朗らかな顔で乗り越える。

 

「………――――説明をしたいところですが、もう時間のようですね」

 

 ほら、と自分の目の前の空間を指さした。それにIS学園の関係者は驚きで目を丸くする。オーロラが緒川といった青年とIS世界の住人の間を隔て、この世界の整合性を保つため異物である彼を異世界へと還す自浄作用が起こっていたのだから。

 

「安心してください。貴女の生徒たちを害する事は考えていませんよ」

「……――――」

 

 その人の良さそうな笑みがオーロラと重なり合い、シノビの影を隣に映す。その光景をツカサは一枚、パシャリと自分のカメラに収めた。

 

「……取り敢えず助けてくれてありがとうな緒川さん!ダチとして礼を言うぜーっ!」

「……ッふふ、面白い人ですね。まるで“響さん”の様に天真爛漫な…」

 

 次第に声も薄れていく中で、緒川慎次は卯月ゲンタロウに向かって手を振った。明るく元気な自分の仲間の少女を重ね合わせて、そして根拠もなくこう思った。この世界にどんな悲劇が起ころうとも、彼らがきっと守り抜くのだろう。彼らがこの世界の正義を守っていくのだろう、と。

 

「(では私はこれにて)」

 

 後から来た教師が何か言っているが、もうすでに何も聞こえない。生徒たちを巻き込んだと誤解されたのなら申し訳ない………――――そう思いながら帰路につく。緒川慎次は不思議な蝙蝠に導かれながら考えていた。

 

(結局、虹の蛇の忍者とは違いましたね……?彼らは一体何だったんでしょう?)

 

 そんなことを考えながら、緒川慎次は元の世界へと帰って行く。再び力なき者を守るため、その身を剣とし(さきも)らんとする歌い手の影となるために、刃の下に心を置いて日々の戦いを乗り越えていく……――――。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 古都を訪れた学生たちの喧騒は既に無い。今は深夜、大人たちが日々の疲れを癒すために憩いの場へと足を向かわせる時間帯。

 

『もう、時間がない……この体はもたない、限界だ』

 

 ダンディな声を上げ、癒えぬ身体を引きずりながら京都の町を眺める一匹の異形。冠を掲げた頭部をもたげ、弓と一体化した腕を前へと伸ばす。そして震える指で“ホロスコープスの王”のスイッチを押し、怪人としての姿を脱ぎ捨てた。

 

「だがそんな些事を除けば……フォーゼシステムの進捗状況も何もかも、全ては私の計画通りになっている……。あの学園に、行かなければ…」

 

 指の端から零れ落ちる星屑。ソレも仕方のない事だ。ホロスコープススイッチを利用し続けた代償に、肉体組織は既にコズミックエナジーに還元されていた。もう一度人間の姿に戻れるのかも分からない。

 それでもその怪人は明日を願い歩き出す。全ては“プレゼンターと会う”ために…――――。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 以下清水寺に来なかった生徒たちの罰。

 

「ごはぁ!?」

「ぎゃっ!」

「あいた!」

「ひぃん‼」

「あっだァ‼」

「痛い‼」

「教官申し訳…ごぉ!?」

「…ッ!?」

「何でお姉さんまで!?」

「ポッチャマ!?」

「何でダイヤモンドパールだナツミ………――――で、角谷はどこに行った?…ん?」

 

 千冬は激怒した。かの傲岸不遜な俺様ライダーを罰せねばならぬと決意した。

 

「あ………――――それがですね、私のポケットからこんなメモが…」

 

【努力はした。ダメだった。正直スマンかった】

 

 殺意が湧いたby千冬。

 




緒川慎次
 シンフォギア世界のNINJA。仮面ライダーシノビに変身する。2022年が劇中舞台として共通している“IS世界”と“仮面ライダーシノビ世界”からキバーラが次元を繋げて呼び出した。
 飛騨忍者の末裔にして、“チューリップハットの男”からシノビドライバーを与えられたOTONA。ノイズが跳梁跋扈する世界で人知れず影となって戦う仮面ライダー。錬金術師集団GARAの他、西洋化生を率いた『新タウロス双生児』、闇の隠密集『虹の蛇』、日本妖怪連合『怪童子と妖姫』などと戦っているとかいないとか。氷川誠のオマージュとの噂に違わずお人よしの熱血漢である(因みに弦十郎氏はネタ元が五代さんとの噂……そりゃ強いわ)。

>「あざまーす」、「残念であります」、「ふんがぁ!」
 Dキバ、一人ノーブルレッド状態。シンフォギアに出られなかった半魚人枠はやっぱり不遇。CSMキバットベルト販売おめでとうございます。

>『何デスと?』「何故そこで愛ッ!?」
 フィーネ組(M、箒)のシンフォギアネタ。キバー裸(フィーネ)が出てきたらさらにカオスになってました。……よくよく考えればNINJAを呼んだ原因なんだよなぁキバー裸。その他諸々なシンフォギアネタ、多数。

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