クロスオーバー世界の破壊者 NEO-DECADE   作:サルミアッキ

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 時間をかけずに投稿です。小説版に近い感じですがあれもまたディケイドだと思います(小並感)。


レンズの中の記憶・後篇

 割れた窓。雨晒しになって黒いシミのできた壁。ひっくり返った撮影器具。かび臭い空気と置き去りにされた道具たちが醸し出す圧迫感の中、二人の男女は椅子に座って向き合っていた。

 

「記憶喪失…ですか?」

「そーだ。まぁ気付いたのは今なんだがな」

 

 ダークブラウンの髪をわしゃわしゃ掻き、困ったもんだと溜息を一つ。

 

「“角谷ツカサ”。自分の名前以外がさっぱり分からん。今は何時でどこなのか、この道具は何でどうすれば使えるのか、とかな」

 

 あっけらかんと言いきる『ツカサ』という人物。混沌とした部屋の中で、一台のカメラだけがまっすぐな脚を伸ばして立っている。ツカサはそのカメラを優しく撫でた。

 

「………」

「ところで、呆然としてる所悪いな。女…と呼ぶのは失礼か。こっちも教えたんだ、名前くらい言ってくれないか?」

 

 はっと正気に戻るセーラー服の少女。記憶がないというのに、自然体である彼の独特な雰囲気にのまれていた。

 

「あ……うん。私はナツミ。ナツミといいます」

「ナツミ。何でもいい。倒れてた時、何か身元が分かる様なモノが傍にでもなかったか?」

 

 彼の形の良い目が細められた。首にかけられたマゼンタ色のカメラを好奇心から弄び、レンズの中の四角い世界を見つめている。

 

「………、ちょっと待っててください」

 

 ファインダー内の歪んだ世界で、セーラー服の少女が立ちあがる。元気な足音が去って行き、再びパタパタと近づいてきた。片手に目に眩しい物を携えて。

 

「――傍にあったのはこれです」

「…これは、一体何だ?」

「分からないです、けどコレを大事そうに抱えてて………」

 

 机の上に置かれたのはマゼンタ色の変わった機材。中心に配置された大きなレンズは、廃墟内に転がる古いカメラに通じる部分がある。二人の視線が次に向かうのは、レンズを取り囲む18の紋章。一つ一つが重々しい歴史を持っている様で、それら全てを融合させ、全てを繋いだコレは………。

 

「………、“仮面ライダー”」

「?」

 

 ポロリと零れたその言葉。この場で世に出るのが必然の運命だとでも言うように、響きは波及し、ツカサとナツミの心に刻まれた。

 

「あ、ごめんなさい。口から……勝手に……?」

「………」

 

 その謝罪の言葉は、ツカサの耳には届かなかった。デバイスに吸い寄せられるように手が伸びていき、つるりとした外装に触れる。

 

「………」

「……あの?ツカサさん?」

 

 ―――――――流れてくる。流れ込んでくる。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『  通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ  』

 

 マゼンタ色の英雄が通りすぎていく。

 

『我らの世界に変革を…………神々の地に制裁を』

 

 軍服の姫君が天から地を睥睨する。

 

『9つの世界に、9つの仮面ライダーが生まれました……。それは独立した別々の世界……』

 

 一瞬兎と戦車の複眼がオーロラに映り煌めいた。カーキ色のトレンチコートの女性が笑う。赤と青のオッドアイを細めながら。

 金色の蝙蝠が闇夜に舞った。人間離れした美貌の青年が指し示す。その手でヴァイオリンを奏でながら。

 数々の世界の数多の歴史が、全てを超えて全てを繋ぐ。本来重なり合うことのない人と物が再現させていく。誰もが羨む英雄たちが。

 

 

 

『テメェは……力があるから、仕方なく人を守ってんのかよ?そうじゃねぇだろ?守りたいモノがあるから力を手に入れたんだろうが!』

 

『人の思いを弄ぶお前には屈しない!お前が何を壊そうと…俺がこの手でビルドする!』

 

『  まずはそのチンケな幻想を…、この右手でぶち壊す‼  』

 

『平和を叫びながら、その手に銃を取る。それもまた、悪しき選択なのかもしれません。でもどうか今、この果てのない争いの連鎖を断ち切る力を』

 

『人を助けるのに理由がいるのか?』

 

『  患者の運命は…俺が変える‼  』

 

『人が一人で死ぬ、なんてことはありえない。人が死ぬときは、ほかの誰かの中にいるそいつも同時に死ぬんだ』

 

『俺は世界で一番のドクターだ。……目の前で失われようとしている命を見捨てる事など、できない‼』

 

『  ボク…………頑張って生きた。……ここで、生きたよ  』

 

『お前が信じる俺でもない、俺が信じるお前でもない。お前が信じるお前を信じろ』

 

『  宇宙キターーーーーーーッ!  』

 

『俺は全く強くない。もし俺が強いって言うなら、それは………強くなりたいから強いのさ。強くなったら、やってみたい事があるんだよ。誰かを守ってみたい。自分の全てを使って、ただ誰かの為に戦ってみたい………』

 

『  迷っている内に人が死ぬなら―――俺はもう迷わない。戦うことが罪なら…俺が背負ってやる‼  』

 

『光に向かって、一歩でも進もうとしている限り…、人間の魂が、真に敗北する事など……、断じてない‼』

 

『大丈夫、きっと大丈夫。信じようよ。だって魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから』

 

『俺は希望の魔法使いだ。俺の希望があふれる世界で、俺が負ける訳ないんだよ!』

 

『  わけがわからないよ  』

 

『希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます』

 

『立って歩け。前へ進め。あんたには立派な足がついてるじゃないか』

 

『きっと行くよ。お前がいる何時かの明日に。だから待っててくれ、未来で………!』

 

『目先の怒りに自分を見失わずに、目先の欲に生きる!大事な友を取り戻し、大事な友を守るという目先の欲になぁ!』

 

『失っても失っても生きていくしかないです。どんなに打ちのめされようと』

 

『俺ァ安い国なんぞのために戦ったことは一度たりともねェ…。国が滅ぼうが侍が滅ぼうがどうでもいいんだよ、俺ァ昔っから。今も昔も、俺の護るもんは何一つ…変わっちゃいねェェ‼』

 

『犠牲なんかじゃない!俺は俺のために戦う!俺が信じた希望のために!俺が望んだ結末のために‼』

 

『死ねない!死ぬわけにはいかない‼俺にはまだ俺の帰りを待っている人がいるんだ‼生きる意志は何よりも…………何よりも強い‼』

 

『俺は生き返って…………おにぎりが食べたいな』

 

『  別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう  』

 

『僕は、英雄に……なりたい!』

 

『未来はどうなるか決まっていない。思いが未来を作る!人の可能性は無限大なんだ!』

 

『  ――――――いや、まったく。……不自然なほど短く、不思議なほど、面白いな。人の、人生というヤツは―――  』

 

『死んだ人間は生き返らねぇ。命は………一度きりだ』

 

『一つだけ変わった……重さが、消えていったライダー達の重さが2倍になった!これ以上は増やさない!人を守る為にライダーになったんだから、ライダーを守ったっていい‼』

 

『確かに…人の死は数多く経験してきた……だが、大切な仲間がいなくなった!こんな苦しみ慣れる訳ないだろうが!』

 

『何かを変えることができる人間がいるとすれば、その人はきっと……大事なものを捨てることができる人だ』

 

『  俺は運命と戦う。そして勝ってみせる  』

 

『そいつらがお前を否定するってんなら…、それを超えるくらい、俺がお前を肯定する!』

 

『人の運命がお前の手の中にあるなら…………俺が奪い返す!』

 

『神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ』

 

『自分の生きる道の決められないヤツになんの人助けができる?』

 

『 私は歌でッ、打ン殴るッッッ‼ 』

 

『自分を信じないヤツなんかに努力する価値はない!!!』

 

『  鍛えてますから!  』

 

『  生きるのを諦めるなァッッ!!!  』

 

『人間と妖怪と、どちらか1つでいいなんてことは絶対にない…!僕は、自分と異なる物を認められない奴が……大嫌いだ‼』

 

『僕は、生きてみたいんだ。人間とかファンガイアとかじゃなくて……僕は、僕として』

 

『あなたが美味しいと感じる心に…………種族はありますか?』

 

『  蝙蝠モドキ!もう一度力を貸せぇぇぇぇッッッ!!!  』

 

『俺には木場のような剣術も、朱乃さんのような魔力の才能も、小猫ちゃんのような馬鹿力も、アーシアのような治癒の力もない………けど!俺は最強の“兵士”になります!そして俺の力で、貴女を守ってみせます!!!』

 

『  おばあちゃんが言っていた。  正義とは俺自身。俺が正義だ  』

 

『済まんな。ゴキブリに俺を殺してでも勝ち取りたいものがある様に……俺もこれ以上失う訳にはいかない。…だから、恨みっこ無しだぜ』

 

『俺の弟を笑ったのはお前か。俺も笑ってもらおう』

 

『悲しい時に泣き、怒った時に吼え、それが済んだら冗談でも笑っていろ。でなければ、人間の戦いではなくなる』

 

『犯人を推理で追いつめて、みすみす自殺させちまうような探偵は、 殺人者と変わんねーよ』

 

『  さぁ、お前の罪を…………数えろ  』

 

『ふざけたこと言うと、風穴開けるわよ‼』

 

『ホントの自分を始めるために、今までの自分を、終わらせよう』

 

『  オレは最初から最後までクライマックスだぜ‼  』

 

『たったひとつの単純な答えだ………「てめーはおれを怒らせた」』

 

『  君は、ヒーローになれる  』

 

『確かにお前の言うとおりかもな。人間に悪人がいねえなら、そもそも警察官なんて必要ない。右も左もズルい奴でうんざりすることばっかりだ!だが………………。だからこそ、まっすぐ生きてる人が光って見える。正義じゃない、俺は市民を守るんだ!』

 

『孤独こそ、王者の友だ』

 

『  私は生まれながらの王である  』

 

『おまえには負けない。誰かに負けるのはいい。けど、自分には負けられない―――!』

 

『俺は魔王になる。最高最善の魔王になって、世界を救ってみせる………‼』

 

『こんな寄り道はさせたくなかった…。君には冒険だけをしていて欲しかった』

 

『  見ててください!俺の…………!変身‼  』

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「どう、したの…?」

「…大体分かった。全てに繋がる世界の事が、な」

 

 無限の情報がツカサの脳裏を焼いていった。だがしかし、彼はその熱量を容易く受け止め、相応しい力の資格を得た様だ。はたまた、それは逆なのか………。ただ一つ言えるのは、その真実が解き明かされるのはまだ先だという事だ。

 

「コレが運命だ」

 

 ツカサには自分が記憶を失っているという現実よりも、流れてったあらゆる世界の記憶の方が、よっぽど現実感があった。まるで、その為だけに今さっき生まれた存在である様に。

 

「記憶も覚悟も無く、背負うべき過去も無く。それでも俺は、何かにならねばならない…らしいな」

 

 途端に風景が変わり出す。

 

 シャッターを切る様な手軽さで風景が別に切り取られていく。ボロボロの写真館が『喫茶店』に、『庭園のある民家』に、『紅茶屋』に、『クリーニング店』に、『ログハウス』に、『和菓子屋』に、『豪邸』に、『天文喫茶』に、『ヴァイオリン工場』に。『探偵事務所』に、『民族料理店』に、『月面基地』に、『宝石及び骨董品店』に、『フルーツパーラー』に、『警察の地下施設』に、『異世界に繋がる寺社』に、『医療救命センター室』に、『マズいコーヒーショップ』に、『何でもできる店主の時計屋』に。

 

 その光景を見たナツミは今まで知るはずもなかった確信する。彼こそが望んでいなかった/待ち望んでいた、見知った/知らない人間なのだと。誰にも聞かせるつもりは無い、ぽそりとその場で呟いた。

 

「……待ってた甲斐がありました。ツカサさんが『旅人』なんですね」

『きゃははっ、…おーめでとっ』

 

 紛れもなく運命が始まった。だからだろうか。天からナツミの傍にやってくるのは一匹の生物。こじんまりとした躯体の赤い目、白い体の蝙蝠である。

 

「……はじめまして。ですね?“キバーラ”」

「えぇ“私の最初の久しぶり”、そして“限りの無いはじめまして”……ナツミちゃん」

 

 周囲はすでに写真館ではなく、どこかの荒野。命が感じられない広陵の大地にツカサとナツミは立っていた。彼はついさっき使い方を覚えたカメラで雲の流れる青空を撮った。……だが、レンズの中の風景はまるで違う。赤く変色した空と真っ黒な雲。何かが語り掛けてくる。

 

――――ここはお前の世界ではない。

 

――――お前は世界の破壊者だ。

 

 同時にそれは現れた。端的に言えば怪物だ。

 

「うわぁ!?ちょ……ツカサさん!」

「ナツミちゃんこっちに!……ほら何してるの、見てないで変身しなさいよ!」

 

 怪人が口から火炎を吐き出す。地面からは何十もの火柱が上がる中、ナツミとおかしな喋る蝙蝠がツカサに非難の声を上げてくる。

 

「ディケイド!」

 

 それがなにを意味するのか、ツカサには分からなかった。しかしその言葉を認識すると……彼は初めてこの物語の主人公となる。

 

「……変身!」

 

【KAMEN RIDE DECADE!】

 

 電子音が鳴り響き、ツカサに二十の幻影が重なり合う。それぞれ、英雄(ライダー)の姿が十年の節目を繋ぎ、そして次の十年へと送り出した破壊の権化。エネルギー状のカードが頭部に突き刺さると、その姿がマゼンタに染まっていき、この終わりの世界にも空想上の英雄が現れる。マゼンタのボディ、『十』や『X』の意匠を持つエキセントリックなデザインの姿。人々の記憶に、良くも悪くも残っているその姿。世界の軛すら超えた超次元的な存在の仮面ライダー。その彼の名こそ……。

 

「……世界の破壊者(ディケイド)

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 目の前に怪人はすでにいない。ツカサがディケイドに変身し、圧倒的な強さで敵を倒したからだ。

 

「……で、そこの雌蝙蝠はキバーラか」

「あら?あなたに名前を言ったかしら?」

「お前が俺を知っていたように、俺もお前を知っていただけだ。……で、ナツミカン」

 

 自分のピンチを救ってくれた記憶喪失の青年が、微妙な愛称をつけてきた。さっきの爆裂で焦げた制服を撫でながら、なに?と小首を傾げている。

 

「……どうせ、俺についてくるつもりだろ?…お前という者はそういう因果らしいな」

「そう……なんですよね。困ったことに?」

 

 たはは、と持ち前の人の良さそうな笑みで頷いたナツミ。そう……こうなることは彼等にとって必然だった。明確な敵も、仲間も見えないまま旅をする。それがこの人間の存在意義なのだから。故に、ディケイドの物語は此処から始まる。

 

―――――――ディケイドに、物語などないのだから。

 




 書いていて、「うーん、それっぽい事書こうとしたら矛盾してる単語並べてる感じになってる」と思った私です。でもディケイドってそんな感じ…あったり……。矛盾すらぶっ壊してる感じだと思います。
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