クロスオーバー世界の破壊者 NEO-DECADE   作:サルミアッキ

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 IS学園に潜入した二人。しかしこの学校、なかなか癖の強い人たちばっかりで……?そしてやっぱりあの人が変身?


第2話 日・常・茶・飯

「今日は転校生がいる。……入れ」

 

 ここはIS学園の教室。織斑一夏の姉でこの学園の教師……『織斑千冬』が扉から入ってきた少女に目配せをした。そこに立っていたのは黒髪ロングでスタイルの良い少女。

 

「皆さん初めまして、私はナツミと言います。急遽転校してきたので何かと至らない点があると思いますが、えっと……どうぞよろしくお願い致します!」

「こんな時期の編入ですが、皆さん仲良くしてくださいね!えぇと席は……………、あっ」

「…山田先生、何か問題が?」

「えぇと何でもないです、はい!卯月君の、隣です…」

「……(転校初日にして癖の強いのに当たったな…。まぁ良い奴ではあるが……)」

 

 人柄がよく優しい性格をしてるのだろう。小柄で(……否、一部は大きい)下手をすれば生徒らと同年齢にも見れる山田真耶が彼女の席を指し示した、が……。

 

「俺の名前は卯月ゲンタロウ!この学園の生徒全員と友達になる男だ!」

「ど、ども……」

 

 ナツミは思わず顔が引きつってしまう。自分の隣には明らかに浮いた格好をした男。昭和かと突っ込みたくなる風体の生徒だったのだから。視線は学ランから頭へ移動し、ワックスでかっちり固められた髪形へ……。

 

(……スタープラチナでも出せるんですかね?)

「誰の髪形がサザエさん…――、ってか?お前はジョジョが好きなのか!奇遇だな、俺もよく読むぜ!燃えるよな!」

「あれ、声に出てました?」

「ダチをつくるのに大切なのは人間観察だ!あと顔に出てて分かりやすかったしな!」

「……そう、ですか……(絶句に近い)」

 

 IS学園でまことしやかに囁かれる七不思議。その中の一つに『織斑千冬は心の中が読める』と言う噂があるのだが…どうやら彼も読心術が使えた様だ。IS学園の人間ってのは化け物か(シャア感)。

 

「それとタメ口で良いんだぜ?」

「あソレは駄目です。アイデンティティなんです(断言)」

「お?おう……そうか、分かった。よろしくなナツミ。お前は俺のダチだ!」

 

 転校生がやってきて教室内の雰囲気も騒がしいものになってきた。ここで教師の一喝が投じられる。

 

「騒がしいぞ!…それと卯月、今はホームルーム中だ。友好を温めるのは良いが後にしろ」

「えー、堅いこと言うなよ~チッピー先生~」

「おまっ…ゲンタロウ!すみません千冬姉!」

 

 刹那。――――スパパァァンッッ!

 

「「イッタァァァァァッッ‼」」

「……、織斑“先生”だ馬鹿共」

 

 縮地でも使ったのだろうか。最前列の一夏と最後列のゲンタロウの頭が同時に叩かれ、野太い叫びが教室中に響き渡った。あまりの出来事に呆気にとられたナツミはたった一言。

 

「……うわ、痛そうです」

「気にしない方が良いですわよ?コレが何時もの調子ですので…」

 

 前の席の巻き金髪から、ありがたーい先達の言葉をいただいたのだった。

 

「……はぁ、休み時間にでも校舎を案内してやるんだな。では授業を始める」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「どうでしたかナツミさん。IS学園の授業は」

「あ、はは……何とかついていけました……」

「はは、ついていけるだけ上等だな。俺なんて間違えて教科書捨てちゃって……」

「え、何故です…?」

「……、弁解できない、いやホント……。強いて言えば、そういうシナリオだったとか?」

「……おい一夏?」

「わーなんか虚ろな目になってる!一夏?ボク達の事分かる!?」

「ほうほう……今の嫁は、電波を受信している状態というヤツか(クラリッサ大百科参考)」

 

 ナツミ&ゲンタロウ+専用機持ちのクラスメイトが人気のない廊下を歩いている。四限の授業を早くきりあげてくれた為、ナツミの為ゲンタロウが一肌脱いでいる様な状況だ。ついでに言えば、ゲンタロウについてきたイツメンたちも甲斐甲斐しくナツミと会話を楽しんでいた。ナツミは『あぁ、ここの居心地も悪くないな……』と思ってしまう。俺様で彼に振り回されてばかりの旅だったばかりに、こういう年相応の人たちとの会話をとても楽しく感じていた。……あれ、もしかしてツカサって…コミュ障?

 

「よし付いたぞ、ここが食堂だ!」

 

 ふと思い至った旅のパートナーのアレな部分を振り払い、気持ちを切り替える為前を見た。

 

「……ん?」

 

 そうしたらば。

 

「何だ、このやる気のないメニューは!」

「で、ですが……。こちらの調理方法の方が時間的に……」

「言い訳をするな!お前達は分かっているだろうが、この学校はただの高等教育機関じゃない。世界中から次世代の国家代表が来ているんだぞ。言わば重大性は閣僚会議の場に匹敵する……そんな将来を背負う子らに出す料理が用意の効率の良いものでいいと、まさか本気で思っているのか!」

「……ッ!」

 

 どうにも聞き覚えのある俺様系ライダー様の声。

 

「おぉ、アツい人。料理に燃えてるんだな」

「新しい調理師か何かか……?ん?」

「え、ちょ……え?」

 

 ジャージ姿から着替え、真っ白な服とコック帽を纏った男がそこにいた。

 

「作り直す、大至急だ」

「そんな!ですがもう間に合いませんよ!?」

「殻を剥いた食材は俺の方に回せ。……四条と花菱は俺の手伝いだ」

 

 サラッと苦情を流し、包丁を持ったコック長。苦々し気に見ていた部下たちだったが、その顔が驚きに染まるのは一瞬だった。

 

 まな板の上の人参、ジャガイモetc…→鍋を火にかける→スープになる。

 

「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!」

「『わたしはコック長の前で食材を見ていたと思ったらいつのまにかスープが煮立っていた』」

「な…何を言っているのかわからねーと思うがわたしも何を受けたのかわからなかった…」

「いやふざけている場合か?……だが、少し肩が解れた。この状況にとっちゃ感謝だな」

「あ、すみません!我々も準備しますコック長!」

「返事はハイまたはYesだ。そして俺の事はチーフと呼べ!」

「「「ハイ、チーフ(ズ)‼」」」

 

 ……ナツミにとって見知った顔が、食堂を取り仕切っていた。

 

「……何してんですツカサさん」

「……ん?ナツミカンか。まだ昼食時間には数分あるはずだが……」

「運よく授業時間が短くて、転校初日ということで案内してもらってた所なんですよ。それがどうしてこんな事に……」

「おかしい事じゃない。俺はこの世界ではIS学園の用務員。つまり学生をサポートする役目だってこった」

「……いや、その理屈はおかしいです」

「まぁそれは置いておいて、……――――四の五の言わずに食え。今日はAとかBとかのメニューは無し、消化吸収も良く栄養バランスを考えた三ッ星Sランチのみだ、感謝しろよ」

「こんな傲岸不遜なコック始めて見ました……」

 

 そんなこんなでSランチを貰って、距離を物理的に取らせてもらったナツミなのだった。

 

「おぉうまっそー!俺等の為にありがとな、ダチ公!」

「…別にお前等の為にってわけじゃない。俺は俺のすべきことをやってるだけだ……と言うか何だ、ダチ公って」

 

 後ろでは何やら男たちの不毛な言い争いが。

 

「ナツミのダチは俺のダチだ!これからよろしく頼むぜ」

「友達?冗談じゃない。そう言うのは俺が一番嫌いな言葉だ」

 

 ………、どうにもコミュ障と言うより皮肉屋な人嫌いだったらしい。これはナツミもフォローができないわ。

 

「とんでもない屁理屈だな。そんなんだったら、お前は世界中の人間と繋がっている事になるぞ」

「理屈が通ってなかろうが、筋は通ってると思うぜ?」

「何?」

 

――――彼は一泊おいてこう言った。

 

「俺は将来世界中…いや、宇宙中の連中と友達になる男だからな!」

 

 ばっちり言い切ったゲンタロウ。その最後の一言は不思議なくらい綺麗な音色で耳の奥底へと沈んでいった――――。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「ナツミ。あの人は知り合いか何かなの?」

「……シャルロットさん(……だっけ)?あの人の事はスルーでお願いします」

「……ふっふーん?そっかー恋ってやつかなー」

「いやどうしてそうなるんです……あ、おいし」

 

 からかわれてそっぽを向くナツミ。確かに彼は分かりづらいが気立ても良く、顔もとんでもなく美形である……とは思うが、所々で醸し出る残念さで台無しなんだよなぁ…と心の中で呟いておく。うん、知らない。知ったこっちゃない。自分しか知らないツカサの一面だなんて知らない。意識してもいない。

 ……ついでに言えば、目の前でSランチを食べてうまいぞーーー!とか豚の餌ァァァァァァァァァ‼でキャラ崩壊になっちゃってる専用機持ちのクラスメイト達なんてのも知らない、てか知りたくなかった。

 

「……うっわ何コレ、ホントに三ッ星とかとれるんじゃないの?」

 

 彼女は以前…デュノア社で男装訓練を受けていた時、彼女は高級料理を食べさせてもらう機会があった(『社の御曹司は舌が肥えていないと怪しまれる』とか言う理由だったのには鼻で笑った覚えがある……それはさておき)。『ビストロ・テンドゥ』なる名前の店だったが、荒んだ当時の心の中に潤いすら与える料理だったのを今も覚えている。だがこのランチも、その料理と比べても遜色ない奥深い味をしている。

 

「あー、何故か料理上手なんですよね。本人はカップ麺とかで済ませるクセに」

「…………やっぱり付き合ってますの?」

「なんでそうなりますか」

「ふむ、ならば同棲でもしていたか?」

「……………………(メソラシ)」

「なっ……?ふ、ふしだらな!」

 

 それを一学期一夏と同部屋だった箒がいってもなぁ…、と思う一同だった。

 

―ねぇねぇ知ってる?最近IS学園に出る怪物の話……―

 

「……?」

 

 突然、そんな話題が人混みから零れてきた。ナツミは思わず耳をそばだてる。

 

「あぁ知ってるわよ、生徒が星雲に取り込まれてバケモノになるってアレでしょ。信じてなかったけど、ついこの間見ちゃったのよねぇ…」

「そうそう、それで聞いた話なんだけど。怪物の内の一匹、なんと正体がこの学校の先生みたいなのよね……」

「ちょっと、それマズいんじゃないの?」

「まぁ『先生』って呼ばれてただけで、眉唾ものかもしれないしねぇ。あ、あとそれを解決している生徒もいるっていう噂もあって」

「それこそまさかでしょ、はは」

 

 身を乗り出しさらに詳しい情報を聞こうとするナツミ。厨房にいる記憶喪失の青年も調理をしつつその様子を伺っている。間違いない、何かがある…………―――――。

 

「――――根も葉もないウワサを吹聴するのは感心しないな」

「「ッ…お、織斑先生!」」

 

 だが、その会話はすぐ途切れた。鋭い視線とクールな表情の女教師がお盆を持ってそこに立っていたからだ。『くれぐれも浮つかないように』、と注意を受ける上級生たち。……これでは会話の続きを聞くのは無理だろう。ナツミは渋々視線を料理に戻し、クラスメイトと談笑することに戻ったのだが……。

 

「転校して早々にお節介かもしれんが……お前も気をつけろよ。妙な事に巻き込まれないようにな」

「あ……はい?」

 

 何故か傍を通る時、千冬はそう声をかけてきた。

 

「へー、チッピー先生が忠告なんて珍しいな。なぁ一夏?」

「ゲンタロウ……知り合いだからっつってその呼称はマズいって…」

 

 しかし、誰も気が付かなかった。スイッチを手に持った教師がナツミを値踏みするかのように、じっとりとした目で見ていた事を……―――――。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 ――――災難は予兆なく突然にやってくる。それに初めに気が付いたのは誰だったのか。虚空に赤黒い崩壊惑星(ザ・ホール)が開き、窓が衝撃波でぶち破られた。食堂にいた生徒が呆気にとられる中で、変化が生じる。『ネビュラホール』のおどろおどろしさと対照的な薄桃色の羽が吹きすさぶ中、怪物が穴を潜ってIS学園に踏み入った。

 

「なっ……一体なんだってんだ!」

「……、まずい。幹部級ゾディアーツだと?」

 

 悲鳴を上げながら食堂から逃げ出していく生徒達。その人混みの中、歩みを進める怪物の胸に光る星座は天蠍宮。即ち黄道巡る12使徒が一人……『スコーピオンゾディアーツ』。

 

『……ソイツが聞く所による“世界の破壊者”の連れか』

 

 深い低音でナツミの事を問いかけた怪物は、ゆっくりと卓を囲むゲンタロウたちに近づいてくる。クロークを羽織った姿も相まって、さながら死刑執行人の様である。

 

『ホロスコープスの悲願の為、我等と共に来てもらおう』

 

 だが、しかし。誰もが本能で知っている。本来在り得ない敵が現れる世界には、本来在り得ない正義の味方もまた存在するのだと。

 

「……ッ、ゲンタロウ!」

「任せろ!うりゃ‼」

 

 彼はいつの間にか持っていたジャンクフードを模した機械たちを解き放ち、目くらまし代わりにたたらを踏ませる。

 

『ぬぅ…』

「久しぶりだな蠍野郎!俺のダチには、一本も手を出させねぇ!」

 

 手にはスイッチだらけの青白い色のバックルが収まっている。勢いよく腰に押し付けると、そのままテンポよくスイッチを倒しセーフティを解除していった。

 

【3】

 

「え?……何?何なんです!?」

「安心してくださいな。ゲンタロウさんは、とてもお強いのです」

 

【2】

 

「……そういうことか。大体分かった」

 

【1】

 

「変身!」

 

 

 食堂に眩い光、走る。濛々と白煙が満ちると、あっという間に割れた窓から吹き抜けていく。その場に残ったのは……宇宙服の様な装備の仮面ライダー。

 

 

「宇宙ゥゥッッ、来たーーーーーッッ‼」

 

 Xの形を身体で表現し、スコーピオンゾディアーツにロケット頭の双眸を向けた。

 

『ふん、フォーゼめ……』

「“仮面ライダーフォーゼ”!タイマン張らせてもらうぜ‼」




 ディケイドに変身してないツカサ。おいあくしろよ……。タイトル詐欺だよ……。

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