ある日突然盲目のチート美女になった話   作:アサルトゲーマー

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これ絶対五話で終わんないって気がついたので連載です(ガバ計画)


雨の日の過ごし方

 

 雨の日は憂鬱になりやすいものだ。洗濯物は乾かないし外に行くにしても傘を使うのが面倒くさくて出不精になる。

 

「ぐっ…!ぐぬおおおおぉぉっ……!」

 

 そんな出かけるには向かない日、皆さんは何をするだろうか。ネットサーフィン?それともテレビ鑑賞?

 少なくとも今ここで何かしら唸っている不良は読書をしようとしていた。

 

「ツルツルしてるから読めねぇっ……!」

 

 エロ本の。

 それを見ていた猫は何をやっているんだろうと毛繕いをしながら見ていた。

 

 

 

第三話 雨の日の過ごし方

 

 

 

 リョウは優れた触覚を持っている。コミックを読むときはページを撫でればインクのデコボコを認識することで隅から隅まで把握できるし、二回三回と触る必要がない。

 これだけであれば本を読むのに苦労しないんじゃないかと思うだろうが、全てがそうではない。フィルムで覆われている物やラミネートされた物はまったく読めないし、さらにいえばカラー印刷をされたツルツルのカラーページはインクの境界線が曖昧で全体像がぼやけてしまうのだ。

 つまり、彼女にとってツルツルは何よりも手強い敵なのである。 

 

「じゃあな」

 

 そんな訳でリョウはとある神社の裏にあるダンボールの中にエロ本を突っ込んだ。

 子供はエロ本を拾うものだ。では誰が捨てるのか。それは当然、リョウを含めた大人である。幼少期に出会った穴場に大人になってから次の世代のためにブツを置く…。こうしてエロの伝統は守られていくのだ。

 少しだけ良いことをした気分になった彼女が神社の裏から出ると誰かが居るのに気がついた。雨の音のせいで輪郭がひどくぼやけているが、おそらく男だろう。まさかコイツも穴場を知ってる同類なのだろうかとリョウが声をかけようとした矢先に、男の方が驚いた声をあげた。

 

「えっ!?貴女は!」

 

 声を聞いた際に彼女も驚いた。なんとその声は古書店の男の声だったのだ。

 ……だが彼女らはお互いの名前を知らない。「えーと」とお互いが顔を合わせて一拍開いた。

 

「あの、この間は助けていただいてありがとうございました。申し遅れましたが僕は古書ツノルといいます」

「割斧リョウだ。リョウでいい」

「あ、はい。リョウさん」

 

 そして再び間が開く。なんとも言えない空気の中、話を切り出したのはツノルだった。

 

「あの、この間の去り際に教えてくれた場所を探してみたんです。そうしたら中からこんなものが出てきまして」

 

 彼の手にはお守りが握られていた。リョウは雨音のせいでよく分からなかったが、それには神社の名前が刺繍されている。

 

「それで神社の場所を調べてここに来てみたんです」

「へぇ。すげぇ偶然」

「リョウさんはどうしてここに?」

「俺はエロ本を捨てに来たんだ」

「エッ……!?」

 

 リョウのカミングアウトにツノルの思考が止まった。

 

「読まなくなったエロ本ってあるだろ?家に置いてても邪魔だしよ、だったらガキンチョにでも拾ってもらおうと思ってな」

「……っ!………っ!」

「どうした?」

 

 彼の顔をのぞき込むように屈むリョウ。一方でツノルはパニック寸前だ。

 ただでさえ初心なのに一目惚れした相手からエッチな話を振られ、そのうえ前屈みになったことでリョウの胸の谷間がよく見えてしまった。

 固まってしまったツノルを見てリョウは少し考えた後、ポンと手を打つ。

 

「エロ本欲しいのか?」

「いりませんよおおおおっ!」

 

 とうとうパニックを起こして走り去るツノル。リョウは古本屋だし商品にでもしたいんじゃなかったのかなとトンチンカンな事を考えていた。

 しかし困った、とリョウは頭を悩ます。いままで考えないようにしていたが、エロ本はだいたいツルツルなのでこれからは何を使おうかという問題である。それは端からみればアホな悩み事であったが、彼女にとってはこれからの人生を左右するかもしれない重要な難問であったのだった。

 

 

 

■■■

 

 

 

「で、俺に合ったエロ本探してんだけど」

「ええっ!?それオレッチに聞いちゃうんスか!?」

 

 リョウは考えることが苦手である。なので彼女は他人を頼るのに戸惑わない。たとえそれが他人にとってはとても聞きづらい事であってもだ。

 

 ここはリョウのアパートから歩いて二分程度の場所にあるコンビニエンスストアだ。晴れの日も雨の日も、労基の許す限りバイトをしている彼『物部 ヤスシ(ものべ やすし)』、通称モブヤスは大変驚いていた。

 突然アポも無しにやってくるのは良い。だってコンビニだもの。しかし学校時代での女の先輩(しかもエロ本から飛び出してきたようなビジュアル)がエロ本について聞いてきたら誰だって困惑するはずだ。

 しかし彼の根はかなり真面目なのでリョウの話をしっかりと聞きはじめた。

 

「ってことなんだわ」

「へぇ~、お気に入りの本が使えなくなったと。……ン?でもそれって変じゃないッスか?センパイの言い方だと最近まで使えてたように聞こえるんスけど」

「うーん、そこなんだよなぁ。モブヤスは俺がいつ目が見えなくなったか知ってるか?」

「え、生まれつきじゃないんスか」

「やっぱこうなってんのか…」

「んえぇ?センパイ大丈夫っすか?」

 

 オーイと手を振るモブヤスにデコピンを食らわせたリョウは自身が男であった事を説明できるかを少し考える。

 そして結局何も思いつかなかったので言いたいことをそのままぶちまけた。

 

「実は最近まで俺男だったんだわ」

「ねーッスよそれ」

 

 モブヤスは手を大きく振りながら真顔で返した。

 

 

 

 

 

「まあ、センパイが読めそうなエロ本っていったらこれくらいスね」

「なるほど、エロマンガか」

「こーゆーのならフィルムもありませんし、いけるんじゃないッスか?」

「よし、モノは試しだな。さっそく使ってみるか」

「ちょちょ!女のコがそんな事言っちゃだめッスよ!」

 

 

 

■■■

 

 

 

「あ。そういや今無いんだった」

 

 自身のボロアパートに帰ってきたリョウが気がついたのは股間のブツが無くなっていることについてだ。

 ブツが無くてはそもそもエロ本は使えない。そもそもリョウは女の部分の使い方を知らないし、思い返してみればムラムラした瞬間もなかったのである。

 一瞬にして不良債権と化したエロマンガを布団にポイと放り投げた。投げ捨てられた哀れな新入りに猫は興味津々だ。

 

「なんつーか、無駄な時間を過ごしちまったな…」

 

 ごろんと躰を横たえて独りごちる。思い返してみれば本を捨てただけの今日はまったく実りのない悲しい一日だった。

 神社で古本屋にバッタリ出会ったというイベントもあったが、リョウにとってはどうでも良い事だった。

 エロマンガを踏んでいる猫をなんとなく持ち上げる。見た目以上に長い猫はにょいーんと伸びた。

 

「エロマンガ買っただけの一日ってどう思う?」

 

 猫は興味無さそうに鼻をスピスピ鳴らした。

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