俺の名前は、
今年度、神世紀296年神樹館に通う小学5年生だ。まずは、何故俺がこの春から神樹館へと転校する事になったのかについて話そう。
あれは、去年の12月24日の出来事だった。
「母ちゃんー!今日俺の誕生日だったよね?カレンダーに書いてあるけどケーキの予約って何時に行けばいいの?」
「今回はちょっと、お高いケーキにしたから私が取りに行くから大丈夫よ。それよりも、友太は冬休みの宿題終わってるの?」
「げげっ!忘れてたー!」
「私が帰ってくる迄に今日の分やって起きなさいよー?」
そう言って母ちゃんが家を出ると同時に部屋へと戻り、残りの宿題の量を把握する。量的には、半分以上終わっているのでこのペースで行けば充分残りの日数で間に合う予定だ。と言っても、毎日の課題として宿題を片付けておかないと気が済まない為、早速勉強を始める。
~1時間後~
「まぁ、このくらいでいいだろう。っと時間は…おっ!良い感じに1時間で済んだか…ん?」
勉強も終わり机に散らばった消しカスやノートを片付け始めていた所、急に家のインターホンが鳴り響いた。
「何だこのオッサン…服の上から分かるくらい筋肉がムキムキなんだが…取り敢えずここから話してみるか。…どちら様でしょうか?」
「私は、大赦から来た使者の鬼島と申します。こちらは冴嶋友太君のお宅でお間違いないでしょうか?」
ごつい見た目の割に丁寧な言葉遣いをする鬼島さんなら別に会っても悪いことはしないだろうと思い、返答をすることにした。
「はい、冴嶋友太。本人です、今外に出ますね」
返事をして1度インターホンを切る。玄関に向かって扉を開けるとカメラで見るのとはまた違った迫力感と存在感が増している。
「今母が外出中なのですが、もう少しで帰宅すると思うので良ければ居間にお通しします。」
「お言葉に甘えて、少しお邪魔させていただきます。親御さんと一緒に話を聞かれた方が良いかと思われますので」
鬼島さんを居間に案内してお茶を出す準備をする。お茶と言っても市販のペットボトルに入ってるものだが。
「粗茶ですが、どうぞ」
「おおっ!ありがとう。丁度喉が渇いていてね」
あっと言う間にお茶を飲み干した頃、玄関から物音がした。
「ただいまー。あれ?そちらの方は?」
「おかえりー、母ちゃん。こちらは、大赦から来られた鬼島さんだよ。どうやら、俺と母ちゃんに話があるみたいで。母ちゃんが帰ってくるの待ってたんだよ」
「あらま、そうなの!ちょっと待っててください、すぐ戻りますので」
そう言って、すぐ様冷蔵庫に行き買い物袋から物を取り出し収納していく。
「お待たせしました、話を聞きましょうか」
「では、まず…」
木島さんが話を始めた。
「私達大赦は、長年神樹様との密接なやり取りを通じて巫女から伝えられる神託によって、勇者の素質のある人間を選抜しておりました。数年前までは、素質のある人間を集めて、神樹様と巫女を通じてやり取りをしていましたが、年々そのお力は弱まっていく一方。よって、神樹様から一方的に伝えられる勇者の神託は基本的に無垢な少女でないとその力を受け付けないらしいのですが、今回冴嶋友太くんは、男の勇者の素質を持っているらしいのです。次の世代の勇者は未だ見つかっておらず、それまでの期間だけでもどうか、お役目を引き受けていただきたいのです」
俺自身、勇者がどうとかお役目がどうとかは分からないけど、もし俺に何か出来ることがあるならとこの話を受けたかったのだが隣にいた母ちゃんが話に突っ込んできた。
「その私は、あまり神樹様の事や大赦の事はあまり詳しく知らないのですが…お役目と言うのは具体的には一体何をするのでしょうか?」
「我々が住んでいるこのエリアのバリアを張っている神樹様に攻撃してくる外敵、通称バーテックスと呼ばれるものを追い出す若しくは駆除することです」
「つまり、侵入してくるそのバーテックス?と戦うということでしょうか?」
「平たくいえばそう言う事ですね」
溜息を吐きながら母ちゃんがこっちを見てくる。
「この子が直接関わりますから、私はこの子の意見に従います。友太、あんたはどうしたいの?」
「俺に出来ることがあるなら、俺しか出来ないことなら俺はやりたいかなって思うよ」
こういう時、俺に選択肢を与えてくる所ホント母ちゃんらしいなって思う。小さい頃から俺自信に関わる事は全て俺に答えを委ねていた。少し前に何で俺に決めさせるのか聞いたら「その方が後悔しないで済むでしょ?それに、あんたの成長のためでもあるしね」と言われた。多分母親の愛情というやつだろう。
「と言うことなので、お話の続きをお願いします」
「はい、ではまずこれから勇者として活動して頂くために────」
鬼島さんと母ちゃんによる手続きの話が始まった。学校がどうだとか言っていたけど難しい話はよく分からないかった。
~次の日~
「んー!昨日はケーキ美味しかったなぁ!」
朝一番で、思い出したのは昨晩のケーキの味だった。
「母ちゃん朝ごはん何ー?」
1階に下りると既に母ちゃんが、目玉焼きや味噌汁と言った朝の定番料理を並べていた。
「これよ、これ。あとこれ食べたらこの服に着替えなさい」
「これって神樹館の制服だよね?何故俺に?」
「昨日話してたでしょ、今日からあんた神樹館に転校するのよ。担任の先生は、昨日来た鬼島さんが担当してくれるみたいよ」
呆れた様子で答えられたが、担任の先生が鬼島さんなのは驚きだ。何か知らないけど神樹館は、大赦が多額の援助をしているらしく、その辺は上手くやっているようだ。
「ま、とにかくいただきますー!」
勢い良く朝食に貪り着いたあと、制服に着替える。時間もいい頃合になり母ちゃんから貰ったスマホ(大赦支給)の地図を見ながら目的地につく。
「ここが、そうなのか。とりあえず職員室に行けって母ちゃん言ってたな」
校内を歩き回ること数分、職員室を見つけ中に入ると鬼島さんがいた。
「おっ!やっと来たか!もうすぐ、朝のホームルームを始めるからその時クラスメイトに紹介する形にするな」
そう言うと、鬼島さんが教室に向かって歩き始めたので慌ててついて行く。
「────今日の休みは無しだな、それじゃあ皆に転校生を紹介するぞ。入ってくれ」
朝の連絡事項を終え、俺に教室に入ってくるように指示を出してくる。俺は教室のドアを開けて入ると、皆が注目してきたが無視して鬼島さんの横に立つ。
「はじめましてー!他の小学校から転校してきました。冴嶋友太です。縁あって一緒に皆さんと勉強させていただきます。宜しくお願いします!!」
軽く自己紹介を済ませると、クラスメイトから歓迎の拍手を貰った。因みに席は左端の一番後ろだった。休み時間には、転校生である俺は、毎回お馴染みの質問攻めにあったが特に問題なく過ぎていき放課後になった。
「よし、今日はこれで終わりだ。お前ら気をつけて帰れよー?あと、冴嶋友太は残っておくように」
日直の号令とともに徐々に帰っていく生徒達。恐らくこの後の展開は、十中八九勇者の事だろうと考えていると鬼島さんが近づいてきた。
「やっと放課後だな、今日はこれから戦うバーテックスに備えて訓練の計画を立てる。今日立てた計画を今後の訓練として続けて行き、戦いで効果が見られ次第新しい訓練なんかも取り入れていく予定だ。訓練と聞いて嫌がるかもしれんが、そこはすまない我慢して欲しい。俺としても子どもに、戦いを強要する様なやり方は良くないと考えてはいるのだが俺達大人は戦う力もない。少しでも君が生き残れるならば俺は、効果の出そうな訓練方法を試すつもりだ。よろしく頼む」
深々と俺に頭を下げてくる鬼島さん。
「こちらこそ、よろしくお願いします。武道経験は無いので少しでも戦いのいろはを学べたら今よりはマシな自分になると思います!ご指導の方改めてよろしくお願いします」
誠実な姿勢には、誠実な姿勢を。これは、父ちゃんに言われた事だ。社会には、礼儀知らずの奴もいれば良い奴もいる。前者に関しては、今の状況に不満を感じて人に当たる輩や親切にしてくれたことに関して素直に礼を言えない様な人に該当するらしい。父ちゃん、曰く「目には目を歯には歯を」精神が大事だとか。
「そう言ってくれると助かる。さて、訓練メニューに関してだが────」
結局訓練は、平日は学校終わりの1時間を使用して行う事にして、色々な武器を使う練習をするみたいだ。何でも俺の端末は特殊なので武器自体が俺のさじ加減で、形を変化させて戦うことが可能になるらしい。ただ、形状変化をさせる条件として、武器の明確な取り扱いが出来ていなかったりすると出来ないみたいだ。よって平日は武器の練習。休日は3時間ずつ身体技術向上のために、筋トレやマンツーマンで組み手をしたりするみたいだ。
「今日の所は、計画も練れたしこのくらいにして明日に備えてしっかり寝ておくようにな。」
「分かりました、では明日からですね!」
先生と別れたあと、1人これからのことについて考えていた。外敵バーテックス…そいつがどういう奴でどういう攻撃をしてくるとか情報がまったく無い為、戦うという実感は今ひとつ持てない。だが、やる事は決まっているので、今更不安に思っても仕方ない。それよりも今はこれから自分が死なない為に、どう努力していくかを考える事の方が最重要事項ってやつだからな。
「何にしても、これから頑張るか!」
気合いを言葉に込めながら走って家に帰った。
~次の日の放課後~
「はぁ!」
木刀を型とか関係なく取り敢えず、鬼島さんに向かって斬り掛かる。当然全ての攻撃は、無力化され追撃も何度も喰らう。
「ぐっ!」
「踏み込みがまだまだ甘い!腕の力だけでなく違う部位も上手に使って、自分の体重を武器に乗せるようにして振るんだ!次行くぞ」
「はいっ!」
その日は、剣の稽古をみっちり行われた。1時間とは思えないほどの濃い内容で大変ではあったけれど気合いで乗り切った。
「思ったよりも…しんど…いな…」
特訓が終わり家に帰ると、すぐに寝てしまっていた。
~次の日~
「嘘だろ…もう朝かよ!くっそ!」
文句を呟きながら、今日も学校へ行く。