Re:Spirit-encore-   作:藺草影志(OVERBLOOD)

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再編シリーズ第5弾、前々作と前作のエピソードからセレクトした6話収録。


Offside 4.「[Restructuring] under film "Young"」

I.

 

――ラビットハウス ココアの部屋――

 

 

ここあ「このこーひー(ミルクココア)あまくておいしい」ゴクゴク

 

 

チノ「というわけなんです」

 

 

シャロ「あれ……ココアよね?」

 

 

千夜「まぁ、可愛いわね♪」

 

 

リゼ「チノ……これはいったいどういうことなんだ?」

 

 

チノ「すいません、わたしにもさっぱり……」

 

 

ここあ「ちのちゃん、このおねえさんたちだーれ?」

 

 

チノ「リゼさん、千夜さん、シャロさんです」

 

 

ここあ「りぜちゃんと、ちやちゃんと、しゃろちゃん?」

 

 

チノ「いえ、こちらがリゼさんでこちらが千夜さんです」

 

 

ここあ「こっちがしゃろちゃんで、こっちがちやちゃんとりぜちゃん……おぼえたよ!」

 

 

千夜「ココアちゃんはおりこうさんね」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ」ニヘラ

 

 

シャロ(可愛い……)

 

 

リゼ「ココアのやつ、もしかして記憶をなくしてるのか?」

 

 

チノ「はい、どうやらそうみたいです」

 

 

シャロ「とりあえず、どういった経緯でこうなったのか教えてもらってもいい?」

 

 

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

リゼ「朝起きてココアの部屋に入って布団をめくったら、この小さいココアが寝ていた、か」

 

 

シャロ「困ったわ、何も手がかりが無い……」

 

 

千夜「まるでアニメや漫画みたいね」

 

 

リゼ「タカヒロさんやモカさんにもどう説明すればいいか」

 

 

チノ「幸い、今はまだ夏休みですので学校の方は大丈夫ですが……」

 

 

シャロ「遅くても夏休みが終わるまでには何とかしないと」

 

 

千夜「そうね、このココアちゃんも可愛いけど、やっぱり元のココアちゃんに戻ってほしいわ」

 

 

リゼ「ずっとこのままだった場合、元のココアはどうなるんだろう……」ナデナデ

 

 

ここあ「?」

 

 

チノ「ココアさん……」

 

 

 

チノ(その後話し合いは続きましたが、結局誰も良い案は一つも浮かばず、おのずとその場は解散する形となりました)

 

 

チノ(また、父にココアさんのことを打ち明けると、おじいちゃんとティッピーの一件があったからか、早々に理解して貰うことができました)

 

 

チノ(いつもお姉ちゃんぶっていたココアさんの面影はなく、幼いココアさんはわたしの後ろを雛鳥のように付いてきます)

 

 

 

ここあ「わぁ、せんたくものがいっぱい」

 

 

チノ「ココアさん、洗濯籠に入らないでください」アセアセ

 

 

ここあ「もふもふしちゃダメ?」

 

 

チノ「汚いのでダメです」

 

 

ここあ「…………」シュン

 

 

チノ「あっ……」

 

 

チノ(こういった場合、どうすれば……)

 

 

チノ「え、えっと……これが終われば、ご飯にしましょうか」

 

 

ここあ「ごはん!」パァ

 

 

チノ「」ホッ

 

 

チノ「何が食べたいですか?」

 

 

ここあ「えっとね、パンとハンバーグとオムライスと、あと――」

 

 

チノ「そんなに食べられませんよ、どれか一つにしましょう」

 

 

ここあ「じゃあオムライス!」

 

 

チノ「分かりました、今日の晩御飯はオムライスにしましょう」

 

 

ここあ「わぁい!ちのちゃんだいすき!」ギュッ

 

 

チノ(可愛いです……//)

 

 

 

――キッチン――

 

 

ここあ「ちのちゃん、わたしもおてつだいする」ピョンピョン

 

 

チノ「お手伝いですか?別に手伝ってもらうようなことは……」

 

 

ここあ「ないの……?」

 

 

チノ「うっ……で、では、この卵をといてください」

 

 

ここあ「まかせて」フンス

 

 

チノ「泡立てないように、ゆっくり混ぜてくださいね」

 

 

ここあ「はーい」カチャカチャ

 

 

チノ「あれ……そういえば、ココアさんはトマトが嫌いなはず……」

 

 

チノ「ココアさん、ケチャップは大丈夫なんですか?」

 

 

ここあ「ケチャップはあまいからすきだよ♪」

 

 

チノ「」

 

 

 

チノ「完成です」

 

 

ここあ「わぁ……!」キラキラ

 

 

チノ「あとは上からケチャップを」

 

 

ここあ「ちのちゃん、わたしにやらせて」

 

 

チノ「?」

 

 

ここあ「♪~♪♪……できた!」

 

 

ここあ「ちのちゃんのもかいてあげる」

 

 

チノ「あの、これは?」

 

 

ここあ「ちのちゃんとわたし、なかよしだからてをつないでるの」ニコッ

 

 

チノ「……!」

 

 

ここあ「これがわたしで、こっちのおおきなこがちのちゃん」

 

 

チノ「そうですか……ありがとうございます、ココアさん」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ~」ニヘラ

 

 

ここあ「いただきまーす」

 

 

ここあ「んっ……おいしい!」

 

 

チノ「ココアさん、晩御飯を食べ終わったらお風呂に入りましょう」

 

 

ここあ「うん!ちのちゃんといっしょにはいる!」

 

 

チノ「いっしょに……ですか?」

 

 

ここあ「ふたりであらいっこするの」

 

 

チノ(なんだか元のココアさんとあまり変わってないような気がします)

 

 

 

――夜――

 

 

ここあ「このふくブカブカだね~」

 

 

チノ「やはりサイズが合いませんか」

 

 

チノ(明日にでも子供用の服を買いに行かないと)

 

 

ここあ「でもおばけみたいでおもしろいかも」

 

 

チノ「ココアさん、そろそろ寝ましょう」

 

 

ここあ「はーい!ティッピーおいで」ギュッ

 

 

ここあ「うーん、もふもふでいいにおい」スリスリ

 

 

チノ「…………」ナデナデ

 

 

チノ(妹がいたら、こんな感じなのかな)

 

 

チノ(これが、お姉ちゃんの立場……確かに悪くはないですが……)

 

 

チノ(でも……やっぱりわたしは――)

 

 

 

ココア『チノちゃん、もう一回お姉ちゃんって呼んで?』

 

 

ココア『眠れないの?それじゃあ一緒に寝よっか』

 

 

ココア『お姉ちゃんに、任せなさい!』

 

 

 

チノ「……………………」

 

 

チノ「……ココアさん」

 

 

ここあ「ちのちゃん……?」

 

 

チノ「えっ……――あ」

 

 

――ポロ

 

 

チノ「ご、ごめんなさい……なんでもないですから」グスッ

 

 

ここあ「どこかいたい?おいしゃさんよぶ?」

 

 

チノ「平気ですよ、心配しなくて大丈夫です」

 

 

ここあ「むりしちゃだめ……ちのちゃん、つらそうだもん」

 

 

チノ「っ……」

 

 

ここあ「ちのちゃん?」

 

 

チノ「――ココアさんっ!」ギュッ

 

 

ここあ「!!」

 

 

チノ「いなくならないでください……元に戻ってください……!」

 

 

チノ「ココアさんがいなくなるなんて嫌です……妹じゃなく、ずっとわたしのお姉ちゃんでいてほしいんです」

 

 

チノ「ココアさんとの思い出が無くなるなんて嫌なんです……!」ポロポロ

 

 

チノ「ココアさん……ココアさん……っ!」

 

 

ここあ「ちのちゃん…………」

 

 

――ポンッ ナデナデ

 

 

チノ「!………ココアさん?」

 

 

ここあ「よしよし」ナデナデ

 

 

ここあ「ちのちゃん、おててかして?」

 

 

チノ「えっ……」

 

 

――ギュッ

 

 

ここあ「はやくちのちゃんのおねがいがかないますように。はやく、ココアおねえちゃんがかえってきますように」

 

 

ここあ「おまじないだよ」ニコッ

 

 

チノ「…………!」

 

 

ここあ「わたしね、おおきくなったらまほうつかいになるの。まほうでみんなのおねがいをかなえてあげるんだ」

 

 

ここあ「ちのちゃんのおねがいも、かなえてあげる」

 

 

チノ「……」グスッ

 

 

チノ「ありがとうございます……ココアさんは優しいですね……」ギュッ

 

 

ここあ「ちのちゃん、なかないで」

 

 

チノ「はい……もう泣きませんよ」

 

 

チノ「だってココアさんは、絶対わたしに嘘なんてつきませんから」ニコッ

 

 

ここあ「ちのちゃんがわらった!わーい!」

 

 

チノ「ココアさん……おやすみなさい」ナデナデ

 

 

ここあ「んっ……おやすみなさい♪」

 

 

チノ(小さくても、やっぱりココアさんはココアさんです)

 

 

チノ(わたしの、大切な……――)

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ここチノ「………………」Zzz

 

 

ティッピー(チノ、心配せんでもいい)

 

 

ティッピー(ココアのおまじないは効く……必ずな)

 

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

――翌日――

 

 

チノ「今日はココアさんの服を買いに行く予定ですが……」

 

 

リゼ「わたしも付いていこう、一人じゃかさばるだろうし」

 

 

チノ「ありがとうございます、助かります」

 

 

リゼ「で、ココアはどうする?」

 

 

ここあ「りぜちゃんとちのちゃん、おかいもの?」

 

 

リゼ「ああ、隣町のデパートまでな」

 

 

ここあ「わたしもいきたい!」

 

 

チノ「しかし、迷子にならないでしょうか?」

 

 

リゼ「そうだな、夏休みだから電車の中も混んでるだろうし……」

 

 

ここあ「あぶないからおるすばん?わかった!」

 

 

チノ「でも、父は仮眠中ですし、ココアさんを一人でおいていくわけには……」

 

 

ここあ「ちやちゃん!」

 

 

チノリゼ「!」

 

 

ここあ「ちやちゃんとしゃろちゃんといっしょにあそびたい!」

 

 

リゼ「そうか、あいつらがいたな」

 

 

チノ「わかりました、連絡してみます」

 

 

リゼ(今日は甘兎庵は定休日だし、恐らく大丈夫だろう)

 

 

リゼ「いいかココア、千夜やシャロにわがまま言っちゃダメだぞ?」

 

 

ここあ「はーい!」

 

 

リゼ「よし、いい返事だ。いい子にしてたらお菓子買ってきてあげるからな」ナデナデ

 

 

ここあ「ほんと!りぜちゃんありがとう」ギュッ

 

 

リゼ「おっと……ふふっ」

 

 

 

II.

 

――シャロの家――

 

 

シャロ「ふぅ~お掃除完了っと」

 

 

シャロ(キッチンよし、床よし、窓ふきよし、あとはゴミ袋を捨てるだけね)

 

 

シャロ(ずっと気になっていたけど、やっと掃除できる日が来たわ)

 

 

シャロ(せっかくの休日……これが終わったら千夜でも誘ってラビットハウスに行こうかしら)

 

 

シャロ「見かけはボロ屋でも、せめて中身くらいは綺麗にしなくちゃ!」

 

 

シャロ「って、言ってるそばからあんなところにゴミが」

 

 

シャロ(おかしいわね、ちゃんと掃除機で吸ったはず……)

 

 

シャロ「――あれ、なにこれ、スーパーボール……?」

 

 

シュウウウ!

 

 

シャロ「け、煙!?」

 

 

シャロ「あわわわ!窓、窓を開けないと!」ガチャガチャッ

 

 

??「突入!突入!」

 

 

シャロ「!?」

 

 

千夜「せいっ!」マド ヒョイ

 

 

 

シャロ「千夜っ!?」

 

 

ここあ「とりゃあ!」ドア バタン!

 

 

シャロ「ココア!?」

 

 

千夜「ココアちゃん、まずはクラッカーで牽制よ」

 

 

ここあ「らじゃあー!」パン!

 

 

シャロ「ひゃあああぁ!!」

 

 

千夜「敵がひるんだわ、一斉攻撃!」

 

 

ここあ「いくよー!」

 

 

千夜「隠し玉、紙吹雪!」パラパラ

 

 

シャロ「ちょっと!?」

 

 

ここあ「ちやちゃんすごーい!」キラキラ

 

 

千夜「必殺、模擬刀一閃!」ポコッ

 

 

ここあ「もぎとーいっせん!」パコッ

 

 

シャロ「いったい何がどうなってるのよぉ!!?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

シャロ「………………」ボロボロ

 

 

千夜「ふぅ~やったわねココアちゃん、悪党キリマンシャロを倒したわ」

 

 

ここあ「わーい!」ピョンピョン

 

 

ヘヤ グチャグチャ

 

 

シャロ「」

 

 

千夜「シャロちゃん、驚かせてごめんなさい」

 

 

シャロ「……これは、どういうこと?」

 

 

千夜「今日一日ココアちゃんを預かることになったから、一緒にRPGごっこをしていたの」

 

 

千夜「シャロちゃんとも一緒に遊びたいっていうから、サプライズを兼ねて誘いに来たのよ」

 

 

ここあ「しゃろちゃん、いっしょにあーそぼ」ニコッ

 

 

千夜「ということでシャロちゃん、わたしたちと遊びましょ♪」

 

 

シャロ「……なるほどね」

 

 

シャロ「ココアは小さいから仕方ないとして……」スタスタ

 

 

千夜「しゃ、シャロちゃんどうしたの?なんだか怖いけど……」

 

 

シャロ「ふふふ…………ちーやーーー!!」ゴゴゴ

 

 

千夜「ひっ!?」ビクッ

 

 

シャロ「また一からやり直しじゃないのぉ!!この和菓子バカァ!!!!」ギュー

 

 

千夜「いたい!ほっぺたのびちゃう~ごめんなさい!」

 

 

ここあ「しゃろちゃんつよい!さすがはボスだね!」

 

 

 

千夜「しくしく……おばあちゃんにもぶたれたことないのに」グスッ

 

 

シャロ「嘘つくんじゃないわよ」

 

 

千夜「てへっ」

 

 

シャロ「はぁ…………ココア、悪いのは千夜だから甘兎庵に戻ってていいわよ?」

 

 

ここあ「ううん、わたしもちらかしたもん。それに、はやくおわらせてしゃろちゃんといっしょにあそぶの」

 

 

シャロ「ココア……」

 

 

ここあ「みんなでやればはやくおわるよ、がんばろー」

 

 

シャロ(ダメ……こんなに純粋で可愛いココアを千夜なんかのそばにいさせちゃ絶対に!)

 

 

千夜「シャロちゃんも小さい頃は純粋だったのに、今ではその面影も無いわ……悲しい」

 

 

シャロ「心を読むなぁ!だいたいこんな性格になったのはあんたのせいよ!」

 

 

千夜(自分がひねてるって自覚はあるのね)

 

 

ここあ「しゃろちゃん、ちやちゃんをいじめたらやだよ」クイッ

 

 

千夜「ココアちゃん……!」

 

 

シャロ「ココア、覚えておいて。あのお姉さんのいうことは全部デタラメだから信じちゃダメよ」

 

 

千夜「シャロちゃん、さすがのわたしでも今のは傷ついたわ」

 

 

ここあ「でたらめ?」キョトン

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

ここあ「このようかんおいしい」モグモグ

 

 

シャロ「おかげですぐに片付いたわ、ありがとうねココア」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ~」ニヘラ

 

 

シャロ「千夜も、その……一応手伝ってくれてありがとう」ゴニョゴニョ

 

 

千夜「ふふっ、シャロちゃんのそういう律儀なところ好きよ」

 

 

シャロ「いちいちからかうな!//」

 

 

千夜「わたしが散らかしたんだもの、後始末は当然だからお礼を言われることじゃないわ」

 

 

シャロ「ん……わかってるけど」

 

 

千夜「お掃除くらい、頼まれればシャロちゃんがバイトしてる間に終わらせておくのに」

 

 

シャロ「それはダメ、千夜だって甘兎庵で忙しいし。それに、幼馴染をそんな風に使いたくないし」

 

 

千夜「もう、シャロちゃんたらほんとにいい子ね」ギュッ

 

 

シャロ「にゅ~抱き付くなぁ!//」

 

 

ここあ「わたしももふもふしたい!」

 

 

千夜「いいわよ、ココアちゃんも一緒にレッツモフモフ!」

 

 

ここあ「しゃろちゃんもふもふ~」ギュッ

 

 

シャロ「誰か助けてぇ!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

ここあ「あんこはもふもふよりもふわふわだね」スリスリ

 

 

あんこ「……………………」

 

 

千夜「ここあちゃん、そろそろお風呂に入りましょうか」

 

 

ここあ「わーい!ちやちゃんとしゃろちゃんといっしょにおふろ~」

 

 

シャロ「えっ、わたしも?」

 

 

千夜「当然じゃない、昔みたいに体の隅まで洗いっこしましょう」

 

 

シャロ「ちょ……ココアがいる前でなにいってるのよ!//」

 

 

ここあ「?」

 

 

千夜「あら、ならココアちゃんがいなかったらさせてくれるのかしら?」

 

 

シャロ「させないわよ!しないわよ!もういい着替え持ってくる!」プンスカ

 

 

千夜(一緒には入ってくれるのね、さすがはシャロちゃん)

 

 

ここあ「しゃろちゃんなんでおこってたの?あらいっこたのしいのに」

 

 

千夜「たぶん照れ屋さんなのね、昔はそうでもなかったんだけど」

 

 

ここあ「きっとおとなになったんだね」

 

 

千夜「そうね、ココアちゃんはいつまでもそのままでいてね」

 

 

ここあ「うん♪」

 

 

千夜(なんだか昔のシャロちゃんとお話してるみたい)クスッ

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

――浴室――

 

 

千夜「さすがに3人だと少し窮屈ね」

 

 

シャロ「だからわたしは後でもいいって言ったのに」

 

 

ここあ「おふろはみんなではいったほうがたのしいよ」

 

 

ここ千夜「ね~」

 

 

シャロ「……まぁ、そりゃわたしだって楽しいけど」

 

 

ここあ「しゃろちゃんも、きょうはわたしたちといっしょのおふとんでねよっ♪」

 

 

シャロ「えっ!?」

 

 

千夜「いいわね、みんなで寝ましょうか」

 

 

シャロ「ちょ、ちょっと、勝手に決めないでよ」アセアセ

 

 

ここあ「だめなの……?」

 

 

シャロ「うっ……」

 

 

千夜「ひどいわシャロちゃん、幼馴染とこんな小さな子が一緒に頼んでるのに……それを無下に断るだなんて」

 

 

シャロ「ああもう!わかったわよ!」

 

 

ここあ「やったぁ!しゃろちゃんもいっしょ」ギュッ

 

 

シャロ「きゃ……まったくココアは、しょうがないわね」クスッ

 

 

ここあ「しゃろちゃんのかみ、ふわふわしていいにおい」

 

 

シャロ「…………」ナデナデ

 

 

シャロ「可愛いわね……元のココアとこのココア、二人にならないかしら?」

 

 

千夜「わたしも考えてたわ、でもそうはいかない……神様って残酷ね」

 

 

シャロ「……ココア」

 

 

ここあ「ちーやちゃん」ギュッ

 

 

千夜「ココアちゃん……ふふっ」ギュッ

 

 

ここあ「……あれ?」

 

 

千夜「んっ、どうしたのココアちゃん?」

 

 

ここあ「しゃろちゃんはつるつるだったけど、ちやちゃんはふわふわしてきもちいいね」

 

 

シャロ「」

 

 

千夜「…………」

 

 

ここあ「あっ、わかった、ちやちゃんはおっきいからだね」

 

 

千夜「ココアちゃん、しー、ダメよそれ以上は」

 

 

シャロ「……………………」

 

 

千夜「あ、あの……シャロちゃん、大丈夫よ、きっとシャロちゃんは大器晩成型で――」

 

 

シャロ「~っ!もう出る!」ザバッ

 

 

千夜「ああ、待ってシャロちゃん!」

 

 

ここあ「ふぉぇ?」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

――千夜の部屋――

 

 

千夜「シャロちゃん、ご機嫌なおして?」

 

 

シャロ「……別に怒ってないし」

 

 

シャロ「はぁ……やっぱり貧困のせいかしら」

 

 

千夜(原因と思ってることが生々しい)

 

 

ここあ「しゃろちゃんごめんね、わたしのせい?」

 

 

シャロ「ココアのせいじゃないわ、悪いのは全部千夜だから」

 

 

千夜「発育までわたしのせいなの!?」

 

 

シャロ「……ココアも、今はこんなだけど大きくなったらあれくらいになるのよね」

 

 

シャロ「はぁ……羨ましい」

 

 

ここあ「?」

 

 

千夜「元気出して、こんなものただの飾りよ」

 

 

シャロ「あんたに言われると皮肉にしか聞こえないんだけど!?」

 

 

千夜「そんなにひねくれちゃって……悲しいわ」

 

 

シャロ「重ね重ねだけどあんたのせいだからね!?」

 

 

千夜「ココアちゃん、ひねくれシャロちゃんなんて放っておいて一緒に寝ましょう」

 

 

ここあ「みんなでおふとん!」タタタ

 

 

シャロ「仲間外れにするなぁ~わたしも寝る」

 

 

千夜(なんだか妹が二人できたみたいで楽しいわ)ニコニコ

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

ここあ「すぅ……すぅ…………」Zzz

 

 

シャロ「もう寝ちゃったわ……余程疲れてたのね」

 

 

千夜「今日はいっぱい遊んだものね」

 

 

シャロ「悪役がわたしばっかりだったのが全然納得できて無いけど」

 

 

千夜「あとは、ココアちゃんが眠るまでシャロちゃんがずっとさすってあげてたおかげかしら」

 

 

シャロ「ぅ……なんで気づいてんのよ、ばか//」

 

 

千夜「シャロちゃんって意外と子供好きなのね、ちょっと驚きだわ」

 

 

シャロ「……好きとか嫌いとかじゃなくて」

 

 

千夜「?」

 

 

シャロ「ほら、チノちゃんの話によると、この子はその……ココアなんでしょ?」

 

 

シャロ「元のココアに戻ってきてほしいのはもちろんだけど、そうなるとたぶん、千夜の言う通りこの子はいなくなっちゃうと思う」

 

 

シャロ「だからその……いなくなってから後悔しないように、ちゃんと可愛がってあげたい。この子にもせめてお別れの時までは笑顔でいてほしいから」

 

 

千夜「シャロちゃん……」

 

 

シャロ「あ、あとほら!小さくなってもココアはココア、大切な友達だし」

 

 

千夜「…………」クスッ

 

 

千夜「ごめんなさい、前言撤回。シャロちゃんはひねくれてなんて無かったわ」

 

 

千夜「シャロちゃんはずっと優しいまま……あの頃と一緒」ニコッ

 

 

シャロ「……千夜もね」プイッ

 

 

千夜「まぁ……!ココアちゃん、シャロちゃんが褒めてくれたわ。明日は大雪かしら」

 

 

ここあ「んぅ………」Zzz

 

 

シャロ「起こすなぁ……!早く寝てよ」

 

 

千夜「おやすみなさい、シャロちゃん」

 

 

シャロ「ん……おやすみなさい」

 

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

――翌日 ラビットハウス――

 

 

千夜「こんにちは♪」ガチャッ

 

 

シャロ「おじゃまします」

 

 

チノ「千夜さんシャロさんこんにちは、昨日はありがとうございました」

 

 

ここあ「ちのちゃん!ただいま~!」タタタ ギュッ

 

 

チノ「ココアさん、おかえりなさい。いい子にしてましたか?」ナデナデ

 

 

ここあ「あ……え、えっと」

 

 

シャロ「いい子だったわ、悪いことなんてひとつもしてない。ねぇ千夜?」

 

 

千夜「ええ、小さくてもココアちゃんはココアちゃんね」

 

 

チノ「そうですか、安心しました」

 

 

リゼ「おっココア、帰ってきてたのか」

 

 

ここあ「あっ、りぜちゃんだ!りぜちゃ~ん」タタタ

 

 

リゼ「よっと」ヒョイ

 

 

ここあ「わぁ♪」

 

 

リゼ「どうだ、楽しかったか?」

 

 

ここあ「うん!あのね、ちやちゃんとしゃろちゃんとあそんで、くりようかんたべて――」

 

 

リゼ「そうかそうか。でも二人に迷惑かけなかったか?」

 

 

ここあ「……ちやちゃん?」

 

 

千夜「迷惑だなんて全く、すごく楽しかったわ」ニコッ

 

 

ここあ「……しゃろちゃん?」

 

 

シャロ「またいつでも来なさい、バイトが無い日なら遊べるから」ニコッ

 

 

ここあ「ふぁ……」パァ

 

 

リゼ「…………」クスッ

 

 

リゼ「ココア。迷惑かけなかったか?」

 

 

ここあ「うん!いいこにしてたよ!」ニコッ

 

 

リゼ「えらいぞ~!ほら、わたしから約束のご褒美だ」

 

 

ここあ「ありがとうりぜちゃん!でもこれなーに?」

 

 

リゼ「これはな、こうしてこのキャンディーを粉に付けて――」

 

 

ここあ「わぁ~」キラキラ

 

 

ホラ、アーンハ アーン ドウダ ……オイシイ!

 

 

 

チノ「リゼさん、ハマりすぎです」

 

 

シャロ「先輩って可愛いものとか好きだから……」

 

 

千夜(ほほえま~)

 

 

チノ「これで、今日のお泊り場所は決まりですね」

 

 

リゼ「ココア、あとで試着室に行こう。昨日買ってきた服やパジャマの――」

 

 

ここあ「あたらしいパジャマ?じゃあね、きょうはりぜちゃんのところがいい!」

 

 

リゼ「えっ?」

 

 

ここあ「りぜちゃん、おとまりしてもいい?」

 

 

リゼ「ココアが、わたしの家にか?」

 

 

ここあ「うん、りぜちゃんのおうち!」

 

 

リゼ「……ああ、もちろんいいぞ」ナデナデ

 

 

ここあ「やったぁ♪」

 

 

リゼ「その代わり今日は午前までだから、お昼までちゃんといい子にできたらな」

 

 

ここあ「わかった、いいこにしてる!」

 

 

リゼ「よしよし、おりこうだな」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ~」ニヘラ

 

 

チノ&千夜シャロ(扱い方がプロ……)

 

 

 

III.

 

リゼ(幼くなってしまったココアがわたしの家に泊まりに来ることとなった)

 

 

リゼ(ラビットハウスでのバイトは午前中で切り上げ、今日はお昼頃にココアと一緒に帰宅だ)

 

 

リゼ「着いたぞココア」

 

 

ここあ「………!」

 

 

リゼ「んっ、どうしたんだ?」

 

 

ここあ「すごーい!おしろみたいないえ!」キラキラ

 

 

リゼ「そうか?」

 

 

ここあ「りぜちゃんってこのまちのおひめさまだったんだね!」

 

 

リゼ「いや違うぞ。ただの高校生だ、すくなくともわたしは」

 

 

ここあ「あっ、くろいふくのおじさんがたってる。あのひと、りぜちゃんのおとうさん?」

 

 

リゼ「!」ハッ

 

 

リゼ(しまった!そうか、あいつらがいたんだ!)

 

 

 

リゼ「………………」

 

 

ここあ「りぜちゃん?」

 

 

リゼ(くっ……お泊りする以上、あいつらやメイドたちに見つからずに過ごすのは不可能に近い)

 

 

リゼ(親父に見つかったらややこしくなりそうだし、ここはあいつらにだけ話して口止めしておくか)

 

 

リゼ「あれは父親じゃないぞ、この家のアルバイトさんだ」

 

 

ここあ「アルバイトさん?パンとかつくるの?」

 

 

リゼ「そうだな。ご飯を作ってくれたり、危ない目に遭わないか守ってくれているといった感じだ」

 

 

ここあ「わかった!ゆうしゃだね!」

 

 

リゼ「まぁ、それでもいいか」

 

 

黒服「!」

 

 

リゼ(あっ、気づいたらしい)

 

 

リゼ「……ただいま」

 

 

黒服「お、お嬢、その子は……!?」

 

 

リゼ「違うぞ!この子はただ友達の家の子で――」

 

 

ここあ「ゆうしゃさんこんにちは♪」

 

 

黒服「こ、こんにちは……――ゆうしゃ?」

 

 

リゼ「おっ、ちゃんと挨拶できたな。偉いぞココア」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ~」ニコッ

 

 

黒服「お嬢……つかぬことお聞きしますが、その……」

 

 

リゼ「違うと言ってるだろ!この子はだな――」

 

 

 

黒服「なるほど……そういうことですか」

 

 

リゼ「とにかくだ、親父に勘違いされると面倒だからこのことは黙っててくれ」

 

 

黒服「っ……しかし、いくらお嬢の頼みとはいえ、俺たちもプロ。雇い主を裏切るわけには……」

 

 

リゼ「親父が人の話を聞かないのは知ってるだろ?お泊りくらい大目に見てくれよ」

 

 

黒服(他の誰でもないお嬢の頼み……聞いてあげたいのは山々だが、ここは心を鬼にして――)

 

 

黒服「お嬢、申し訳ありませんが――」

 

 

こころ「ゆうしゃさん、りぜちゃんのおねがいきいてあげて?」クイッ

 

 

黒服「……!」

 

 

リゼ「ココア……」

 

 

こころ「きょうここにおとまり、させてください」テ ギュッ

 

 

黒服「うっ……」

 

 

リゼ「いいぞココア、そのままゆうしゃさんとお約束しようか」

 

 

黒服「約束……?」

 

 

ここあ「ゆーびきりげーんまん、ゆびきった♪」

 

 

黒服「ぐぼぇあ!!」ブシャ

 

 

リゼ「ふっふっふ、これでもまだわたしを裏切れるか、ゆうしゃさん」

 

 

黒服「くっ……お嬢」ギリッ

 

 

リゼ「いいのか?これ以上食い下がったら……」

 

 

黒服「え……あっ」

 

 

ここあ「……」シュン

 

 

黒服「ぅ…………わ、分かりやしたよ。このことは秘密にしておきます」

 

 

リゼ「ありがとう、助かるよ」

 

 

ここあ「ふぁ……」パアァ

 

 

黒服「他の者たちにも伝えておきますのでご心配なさらず、では……」

 

 

ここあ「まって」ギュッ

 

 

黒服「!?」

 

 

ここあ「ゆうしゃさんありがとう。これ、おれいのプレゼント」

 

 

黒服「あ……いえ、どうも」

 

 

リゼ「優しいなココアは。さぁいこっか」

 

 

ここあ「さようなら~!」フリフリ

 

 

黒服「………………」アメダマ

 

 

黒服(約束、守らないと)グッ

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

――リゼの部屋――

 

 

リゼ「よかった、サイズピッタリだな」

 

 

ここあ「もうおばけじゃなくなったね」

 

 

リゼ「チノの服でもダボダボだったからな。どうだ、動きやすくなっただろう」

 

 

ここあ「うん!――えいっ」ダキッ

 

 

リゼ「おっと……ふふっ」

 

 

ここあ「りぜちゃん、あーそぼ♪」ニコッ

 

 

リゼ「いいぞ、なにしてあそぼうか?」

 

 

ここあ「えっとね、ゲームとえほんとぬいぐるみと――」

 

 

グー

 

 

ここあ「あっ……」

 

 

リゼ「まずはご飯からだな」ナデナデ

 

 

ここあ「おなかすいたね」

 

 

リゼ「そうだな、ココアは何が食べたい?」

 

 

ここあ「えっとえっと……ハンバーグ!」

 

 

リゼ「ハンバーグか。よし、ちょっと待ってろ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

リゼ「ココア、大丈夫か?」

 

 

ここあ「うぅ~むずかしいよ」

 

 

リゼ(ナイフとフォークはさすがに早すぎたか)

 

 

リゼ「確かこの辺に……ほら、割り箸だ」

 

 

ここあ「おはし!」

 

 

リゼ「こんなの使ったら余計食べにくいよな」

 

 

ここあ「りぜちゃんも?」

 

 

リゼ「ああ、正直言ってわたしもこういうかたっくるしいのは苦手でな」

 

 

ここあ「えへへ、おそろいだね」

 

 

リゼ「ほら、早く食べないと冷めるぞ」

 

 

ここあ「いただきまーす」

 

 

ここあ「んっ……おいしい!」

 

 

リゼ「ソースが口に付いてるぞ、もっと小さく切って食べないと」

 

 

ここあ「ふぉぇ?どこ?」

 

 

リゼ「ああこら、手で触ったら汚れちゃうだろ。いま拭いてやるから」フキフキ

 

 

ここあ「んっ……ありがとうりぜちゃん」ニコッ

 

 

リゼ「ふふっ、ゆっくり噛んで食べるんだぞ」

 

 

ここあ「はむっ……うん♪」

 

 

 

ここあ「――!」

 

 

リゼ「んっ、どうしたんだ?」

 

 

ここあ「これ、にんじん……」

 

 

リゼ(そういえばココアってにんじん苦手だったっけ)

 

 

ここあ「りぜちゃん……かわりにたべて?」

 

 

リゼ「ダメだ、ちゃんと自分で食べなさい」

 

 

ここあ「でも、にんじんきらい……のこしちゃだめ?」

 

 

リゼ「ダメだ」

 

 

ここあ「にんじんいやぁ……!」フルフル

 

 

リゼ「ココアっ!」

 

 

ここあ「!」ビクッ

 

 

リゼ「…………」

 

 

ここあ「ひっく……ぐすっ……」ウルウル

 

 

リゼ「…………」

 

 

ここあ「ぇぅ……」モグモグ

 

 

ここあ「ん……」ゴクン

 

 

リゼ「……えらいぞ、ココア」ギュッ

 

 

ここあ「りぜちゃん……わたし、にんじんたべられたよ?」

 

 

リゼ「ああ、よく頑張ったな」ナデナデ

 

 

ここあ「だからわたしのこときらいになっちゃやだ……」ジワッ

 

 

リゼ「なるわけないだろ。ココアのことが嫌いだから怒ったわけじゃないぞ?」

 

 

ここあ「ほんと……?」

 

 

リゼ「そうだ、ご褒美になにか買ってやろう。何がほしい?」

 

 

ここあ「ほしいもの……?それじゃあ、えほん!」

 

 

リゼ「絵本?」

 

 

ここあ「りぜちゃんといっしょによむの」ニコッ

 

 

リゼ「そうか、ならお皿を片付けたら本屋に行こう」

 

 

ここあ「わーい、ふたりでおでかけ~♪」ピョンピョン

 

 

リゼ(かわいい……)

 

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

――リゼの部屋――

 

 

リゼ「大きな猫は3匹のネズミがくれた桃を抱え、何もせずそのまま去っていきましたとさ」

 

 

ここあ「ふぉぇー……」

 

 

リゼ「……おしまい♪」

 

 

ここあ「おしまい?」

 

 

リゼ「これでめでたしめでたしだ」

 

 

ここあ「そっかぁ。ねこさん、ねずみさんたちのことたべなかったね」

 

 

リゼ「どうしてだと思う?」

 

 

ここあ「きっとねずみさんたちがやさしかったからだよ」

 

 

ここあ「きもちがねこさんにも伝わったんだね」

 

 

リゼ「ふふっ、そうだな、きっとココアの言う通りだ」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ」ニコッ

 

 

リゼ(おっと、もうこんな時間か)チラッ

 

 

ここあ「りぜちゃん、つぎはこれよんで?」

 

 

リゼ「ココア、先にお風呂に入ろうか。お風呂が終わって、晩御飯を食べて歯磨きして、それからにしよう」

 

 

ここあ「おふろ?りぜちゃんといっしょに?」

 

 

リゼ「ああ、そのあと一緒にご飯を食べて、一緒に歯磨きしよう」

 

 

ここあ「……!」パアァ

 

 

ここあ「うん!りぜちゃんとおふろはいる!」ダキッ

 

 

リゼ「よーし、いくか」ヒョイ

 

 

ここあ「♪」キャッキャッ

 

 

リゼ(なるほど、モカさんの気持ちも分からんでもない)

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

――夜――

 

 

リゼ「よし、いいぞ」

 

 

ここあ「わぁ、このパジャマもふもふしてる」

 

 

リゼ「電気消すぞ~早くベッドに入れよココア」

 

 

ここあ「まって~けしちゃだめぇ」

 

 

リゼ「ははっ、冗談だ。ほらおいで」

 

 

ここあ「♪~このベッドふかふか」スリスリ

 

 

リゼ「ちゃんと入ったな。よし、消灯だ」カチッ

 

 

ここあ「……まっくら」

 

 

リゼ「んっ、怖いなら豆球付けるか?」

 

 

ここあ「ううん、りぜちゃんがいるからへいきだよ」

 

 

ここあ「あっ、でも……て、にぎっててほしいな」

 

 

リゼ「お安い御用だ」ギュッ

 

 

ここあ「ぁ……――えいっ♪」ダキッ

 

 

リゼ「おいおい、抱き付いたら暑いぞ?」

 

 

ここあ「おへやがすずしいからだいじょーぶ」ニコッ

 

 

リゼ「まったく、しょうがないやつめ」ナデナデ

 

 

ここあ「んっ…………」

 

 

リゼ「早く寝ないと明日は早いぞ」

 

 

ここあ「朝起きたらラビットハウスにいくの?」

 

 

リゼ「その時一緒にお前を送り届けるよ」

 

 

ここあ「………………」

 

 

リゼ「どうした?」

 

 

ここあ「……もう、りぜちゃんとあそべない?」

 

 

リゼ「そんなことないぞ、またいつでも来い」

 

 

ここあ「……うん♪」

 

 

ここあ「おやすみなさい、りぜちゃん」

 

 

リゼ「ああ、おやすみ、ココア」

 

 

 

ここあ「……すぅ……すぅ…………」Zzz

 

 

リゼ(だれかと一緒に寝るなんて、何年ぶりだろう……)

 

 

リゼ「…………」

 

 

ここあ「ん……」Zzz

 

 

リゼ(明日からはまた、一人きりか……)

 

 

リゼ「………………」

 

 

リゼ「……ココア」

 

 

 

――翌日――

 

 

リゼ「おはよう」

 

 

チノ「おはようございます」

 

 

ここあ「ちのちゃんただいま~!」

 

 

チノ「ココアさん、おかえりなさい」

 

 

チノ「楽しかったですか?」

 

 

ここあ「うん!りぜちゃんとたくさんあそんだよ」

 

 

チノ「そうですか。リゼさん、ありがとうございました」

 

 

リゼ「いや、わたしも楽しかったし。ココアはちゃんとおりこうさんだったし、なっ?」ナデナデ

 

 

ここあ「ん……♪」

 

 

リゼ「……………………」

 

 

ここあ「……りぜちゃん?」

 

 

リゼ「えっ……あ、すまない、はは……」

 

 

ここあ「………………」

 

 

リゼ「わたしとチノは今から仕事だ、ココアは2階にいるか?」

 

 

ここあ「ううん、りぜちゃんといっしょにいる」ニコッ

 

 

リゼ「そうか。なら、いつも以上に頑張らないとな」

 

 

 

――厨房――

 

 

リゼ(とはいっても、わたしはほとんど厨房にいるわけだが)

 

 

リゼ「……………………」

 

 

――クイックイッ

 

 

リゼ「んっ……ココア?」

 

 

ここあ「…………」

 

 

リゼ「どうしたんだ、おトイレか?」

 

 

ここあ「ううん……」

 

 

リゼ「…………?」

 

 

ここあ「…………」モジモジ

 

 

リゼ「……言いにくいのか?」

 

 

ここあ「…………」コクッ

 

 

リゼ「……そうか」

 

 

――ポスッ ナデナデ

 

 

ここあ「!」

 

 

リゼ「大丈夫だ、怒らないから言ってみろ」

 

 

ここあ「……あのね」

 

 

リゼ「……?」

 

 

ここあ「わたしもね……りぜちゃんと――」

 

 

チノ「リゼさん、チーズサンド2人前お願いします」ガチャッ

 

 

リゼ「!ああ、了解だ」

 

 

ここあ「あ…………」

 

 

リゼ「すまないココア、後でもいいか?」

 

 

ここあ「う、うん!ごめんね」

 

 

ここあ「………………」シュン

 

 

リゼ(ココア……?)

 

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

リゼ「ふぅ~今日は結構忙しかったな」

 

 

チノ「わたしとリゼさんの二人だけですから」

 

 

リゼ「いつもはココアが接客だもんな」

 

 

リゼ「……さて、そろそろ帰るか」

 

 

チノ「今日もお疲れさまでした」

 

 

リゼ「お疲れさん、チノもゆっくり休めよ」

 

 

ここあ「りぜちゃん、これ……」

 

 

リゼ「んっ、ココア……持ってきてくれたのか、ありがとう」

 

 

ここあ「かえっちゃうの?」

 

 

リゼ「ああ……また明日な」

 

 

ここあ「でも、あしたはおやすみだってちのちゃんがいってたよ」

 

 

リゼ「……そういえばそうだったな」

 

 

リゼ「じゃあ、ココアに会いに来る」

 

 

ここあ「ほんと……?」

 

 

リゼ「明日もまた一緒に遊ぼう、なっ?」

 

 

ここあ「!……うん」

 

 

リゼ「それじゃあ、な」

 

 

ここあ「りぜちゃん、おやすみなさい」

 

 

リゼ「…………」ガチャッ

 

 

ここあ「…………」

 

 

リゼ「…………」チラッ

 

 

ここあ「…………」

 

 

リゼ「っ……――――こ、ココア!」

 

 

ここあ「……?」

 

 

リゼ「良かったら、今日も一緒に、わたしの家に帰らないか!?」

 

 

ここあ「――!」

 

 

ここあ「♪」ニコッ

 

 

リゼ「おいで、ココア」

 

 

――ギュッ

 

 

 

IV.

 

――リゼの部屋――

 

 

ここあ「すぅ……すぅ……」Zzz

 

 

ここあ「………ん」

 

 

ここあ「ふぁ~……」

 

 

ここあ「あれ……りぜちゃんは?」

 

 

リゼ「ココア、起きたのか」

 

 

ここあ「おはようりぜちゃん、ふぁぁ……」プワプワ

 

 

リゼ「ははっ、眠たそうだな。洗面所で顔洗って歯磨きしてこい」

 

 

ここあ「はーい……」

 

 

 

ここあ「……あれ?せんめんじょどこだっけ?」

 

 

リゼ「すぐそこだ、お風呂場の隣――って、髪もボサボサじゃないか」

 

 

ここあ「うぅ~りぜちゃん、なおして?」

 

 

リゼ「しょうがない、一緒に行ってブローしてやるよ」

 

 

ここあ「くしとドライヤー?やったぁ」

 

 

リゼ「ほら、洗面所にいくぞ」

 

 

ここあ「うん♪」ギュッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

リゼ(朝ご飯までまだ少し時間があるな)チラッ

 

 

ここあ「りぜちゃん、はやおきしてなにしてたの?」

 

 

リゼ「んっ、これか?学校の宿題だ」

 

 

ここあ「しゅくだい?」

 

 

リゼ「勉強だよ。早めに終わらせておかないとな」

 

 

ここあ「おわるまであそべない?」

 

 

リゼ「そうだな、数学はあと一枚だけだしもう少し待っててくれるか?」

 

 

ここあ「うん、おわったらたくさんあそぼうね」

 

 

リゼ「ああ、いい子にしててくれよ」

 

 

 

リゼ「………………」カキカキ

 

 

リゼ「………………」

 

 

リゼ「………………」

 

 

 

シーン

 

 

リゼ(みょうに静かだな……ココアのやつ、待ちくたびれて二度寝したのかな?)

 

 

リゼ「………………」チラッ

 

 

ここあ「…………」ギュッ

 

 

リゼ(ワイルドギースを抱っこしながらベッドに座ってるだけだ……)

 

 

リゼ(そうか……喋ったらわたしに迷惑がかかると思って……)

 

 

リゼ「…………」カキカキ

 

 

リゼ(いい子だな、ほんとに)

 

 

リゼ(……早く終わらせないと)

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

リゼ「……よし」ガタッ

 

 

ここあ「おしまい?」

 

 

リゼ「今日の分はな」

 

 

ここあ「わーい!」

 

 

リゼ「ふふっ……――よっと」ダキッ

 

 

ここあ「えへへ♪」

 

 

リゼ「ココアのおかげで早く終わったよ、静かにしてくれてありがとうな」

 

 

ここあ「おべんきょうしてるときはね、いいこにしてたらはやくおわるの」

 

 

リゼ「そうか、ココアはおりこうさんだな」ナデナデ

 

 

ここあ「りぜちゃん、あーそぼっ」

 

 

リゼ「そうだな、朝ご飯食べたら今日はどこかに出掛けるか」

 

 

ここあ「おでかけ!いきたい!」

 

 

リゼ「お昼は向こうで済ますとして、散歩ついでにデパートまであるこう」

 

 

ここあ「りぜちゃんとおさんぽ♪りぜちゃんとおかいもの♪」

 

 

リゼ「そうと決まればほら、まずは朝ご飯を食べないとな」

 

 

ここあ「うん!りぜちゃんはやく~」

 

 

リゼ「降ろしていいのか?」

 

 

ここあ「ううん、このままがいい」

 

 

リゼ「この甘えん坊め」ワシャワシャ

 

 

ここあ「♪」キャッキャッ

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

 

ここあ「わーくわくてくてくどこへゆーくの♪」

 

 

ここあ「なぁんとかなるさとうえむいーて♪」

 

 

リゼ「おっ、あれシャロじゃないか?」

 

 

ここあ「シャロちゃん!どこ?」

 

 

リゼ「あのクレープ屋だ、おーいシャロ」

 

 

シャロ「あっ、リゼ先輩、ココア」

 

 

ここあ「シャロちゃーん!」トテトテ

 

 

リゼ「ココア、そんなに走ったら危な――」

 

 

ここあ「きゃっ!」ドテッ

 

 

リゼシャロ「!?」

 

 

ここあ「うぅ……」グスッ

 

 

シャロ「ココア、大丈夫?」アセアセ

 

 

リゼ「どこか怪我したのか?」

 

 

ここあ「ひざすりむいちゃった……」

 

 

リゼ「擦り傷か、血は出てるが軽傷だな」

 

 

シャロ「絆創膏でしたら持ってますけど……」ガサゴソ

 

 

リゼ「その前にまずは水で洗い流そう、ほらつかまれ」ダキッ

 

 

ここあ「うん……」

 

 

 

リゼ「これでよし、と」ペタッ

 

 

リゼ「もう痛くないか?」

 

 

ここあ「うん、ありがとうりぜちゃん」

 

 

リゼ「まったく、勝手に走っていったらダメだろう?」

 

 

ここあ「ごめんなさい……」シュン

 

 

リゼ「もし頭なんて打ったりしたら病院に行かなきゃいけなくなるぞ」

 

 

ここあ「びょういん……もしかして、ちゅうしゃ?」ブルブル

 

 

リゼ「ああ、そうなったらココアも嫌だろう?わたしやチノたちだって心配する」

 

 

ここあ「ちゅうしゃいやぁ……もうかってにはしらない、りぜちゃんとゆびきりする」

 

 

リゼ「約束だぞ」

 

 

ここあ「」コクリ

 

 

リゼ「よし……ほらココア、クレープだ」

 

 

ここあ「わぁ……!」キラキラ

 

 

リゼ「イチゴとチョコ、どっちがいい?」

 

 

ここあ「イチゴ!」ピョンピョン

 

 

リゼ「こぼさないようにゆっくり食べるんだぞ」

 

 

ここあ「いただきまーす」パクッ

 

 

ここあ「んっ……おいしい♪」ニコッ

 

 

リゼ「よかったな」ナデナデ

 

 

 

リゼ「すまないシャロ、これ代わりに食べてもらえるか?」コソッ

 

 

シャロ「えっ?そ、そんな、いただけません!」

 

 

リゼ「さっき朝食食べたばかりだからあんまりお腹も減ってないし、それにその……」

 

 

シャロ「?」

 

 

リゼ「これ以上食べると、怖くてしばらくの間体重計が遠のきそうでな……」

 

 

シャロ「な、なるほど……」

 

 

リゼ「というわけで頼む!このクレープ貰ってくれ」

 

 

シャロ(どうしよう……わたしも最近体重が増えてきて不安なのに……でも他ならぬリゼ先輩の頼みだし、滅多に食べられないクレープだし……)

 

 

シャロ「っ……わかりました、それじゃあいただきま――」

 

 

あんこ「」ドスン ベシャ

 

 

リゼ「うわぁ!?」

 

 

シャロ「」

 

 

千夜「あんこやーい、だいじょうぶ?」

 

 

千夜「ってあら、シャロちゃんとリゼちゃん?」

 

 

リゼ「千夜、なんでこいつが空から?」アンコ

 

 

千夜「なんだか懐かしいわね、このくだり」

 

 

リゼ「えっ?」

 

 

シャロ「ち~や~!」ゴゴゴ

 

 

千夜「ごめんなさいシャロちゃん、これで3回目ね」

 

 

シャロ「どこまでわたしにクレープ食べさせない気なのよ……はぁ」グスッ

 

 

千夜「お詫びにたくさん買っていくわ、食べきれない分はシャロちゃん家の冷蔵庫にしまっておくわね」

 

 

シャロ「!……千夜」

 

 

リゼ「いや……さすがに何本も食べると……」

 

 

千夜シャロ「あっ」

 

 

 

ここあ「♪~♪♪」モグモグ

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

――デパート――

 

 

ここあ「りぜちゃん、これなーに?」ヌイグルミ

 

 

リゼ「これはマンボウだな」

 

 

ここあ「もふもふしててかわいいね」

 

 

リゼ「ぬいぐるみだからな」

 

 

ここあ「あっ、ティッピーだ」

 

 

リゼ「あれは羊だと思うぞ」

 

 

ここあ「ひつじさんもかわいい」スリスリ

 

 

リゼ「なにか欲しいものがあったら言えよ、あんまり高いものは買えないけど」

 

 

ここあ「うん!あ、あれうさぎさんだ~」タタタ

 

 

ここあ「あっ」

 

 

ここあ「はしっちゃだめ、はしっちゃだめ」テクテク

 

 

リゼ「えらいぞ」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ、りぜちゃんとゆびきりしたもん」

 

 

ここあ「このうさぎのぬいぐるみ、ワイルドギースにそっくりだね」

 

 

リゼ「気に入ったか?これでよかったら買ってやるぞ」

 

 

ここあ「ううん、いい」

 

 

リゼ「いいのか?」

 

 

ここあ「りぜちゃん、そのキリンさんとってー」

 

 

リゼ「これだな、よいしょっと……」

 

 

ここあ「ここのおみせ、モフモフだらけ♪」スリスリ

 

 

リゼ(そんなこんなで時間はあっという間に過ぎていった)

 

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

――夕方――

 

 

ここあ「たのしかったね」

 

 

リゼ「結局なにも買わなかったが、ほんとによかったのか?」

 

 

ここあ「もふもふできたからいいの」

 

 

リゼ「あのうさぎのぬいぐるみくらい買ってやるのに」

 

 

ここあ「ううん、あのこよりもりぜちゃんのおうちにいるワイルドギースのほうがすきだから」ニコッ

 

 

リゼ「……そうか」

 

 

ここあ「あ、でもひとりでさみしそうだからおともだちをかってあげたほうがよかったかな?」

 

 

リゼ「ふふっ、そうだな」ヒョイ

 

 

ここあ「りぜちゃん?」

 

 

リゼ「ココアは優しいな」ギュッ

 

 

ここあ「りぜちゃんもやさしいよ?」

 

 

リゼ「それに、あったかい」

 

 

ここあ「りぜちゃんもぽかぽかだよ~♪」スリスリ

 

 

リゼ「よし、明日はワイルドギースの友達を作ってやるか」

 

 

ここあ「おともだち……りぜちゃんつくれるの!?」

 

 

リゼ「ああ、ココアもいっしょに手伝ってくれるか?」

 

 

ここあ「てつだう!りぜちゃんといっしょにつくる!」キラキラ

 

 

リゼ「そうと決まれば、明日に備えて今日は早めに寝るか」

 

 

ここあ「お風呂に入って、歯磨きして、ええと、それからそれから――」

 

 

リゼ「まずは家に帰らないとな」

 

 

ここあ「うん!」

 

 

リゼ「それじゃあ、帰るとするか」

 

 

ここあ「りぜちゃんのおうちに」

 

 

リゼ「いや、違うぞ」

 

 

ここあ「ふぉぇ?」

 

 

リゼ「わたしたちの家にだ」

 

 

ここあ「ふぁ……!」

 

 

リゼ「ここあ……帰るか」ニコッ

 

 

ここあ「うん!」ニコッ

 

 

 

ここあ「でーきるよきっとねきみとなーら♪」

 

 

リゼ「できる♪」

 

 

ここあ「できない♪」

 

 

リゼ「できる♪」

 

 

ここリゼ「やっちゃおう♪」

 

 

 

――深夜――

 

 

チノ「すいませんリゼさん、こんな夜分遅くに」

 

 

リゼ「それは構わないが、用があるならこっちから出向いたのに」

 

 

チノ「いえ……それだと、その……」チラッ

 

 

ここあ「すぅ……すぅ……」Zzz

 

 

リゼ「……なるほどな」

 

 

チノ「場所を変えますか?」

 

 

リゼ「いや、大丈夫だ。今日は疲れてぐっすり寝てるよ」

 

 

チノ「そうですか……では」

 

 

リゼ「………………」

 

 

チノ「………………」

 

 

リゼ「……ココアを元に戻す方法が分かったのか?」

 

 

チノ「っ……はい」

 

 

リゼ「そうか……なら良かったじゃないか」

 

 

チノ「リゼさん……」

 

 

リゼ「わたしもココアの子守が疲れてきたところだったんだ、ちょうどいい」

 

 

チノ「…………っ」キュッ

 

 

リゼ「で、どうすればいいんだ?」

 

 

チノ「何もしなくても大丈夫です。ただ、恐らく明後日には……7日目には、ココアさんの魔法が効いてくるとおじいちゃんが――こほん、元に戻ってしまうような、そんな気がします」

 

 

リゼ「一緒にいられるのは、明日までか」

 

 

チノ「はい……」

 

 

リゼ「………………」

 

 

チノ「リゼさん……?」

 

 

リゼ「……わかった」

 

 

チノ「………………」ウツムキ

 

 

リゼ「どうしたんだチノ?元通りになるのに一体何がそんなに引っかかってるんだ?」

 

 

チノ「……リゼさんは、悲しくないんですか?」

 

 

リゼ「そりゃ悲しいさ、でも、いつかは別れが来ると覚悟していたからな。それが偶然明後日になっただけだ」

 

 

チノ「………………」

 

 

リゼ「わざわざすまないな、もう遅いから泊まっていくか?」

 

 

チノ「いえ、着替えもありませんので……今日のところはおいとまします」

 

 

リゼ「そうか……危ないから送っていくよ」スクッ

 

 

チノ「でも、ココアさんは――」

 

 

リゼ「ココア、ちょっと行ってくるな」ナデナデ

 

 

リゼ「ワイルドギース、ココアのこと頼んだぞ」ポスッ

 

 

チノ「…………」

 

 

 

リゼ「………………」テクテク

 

 

チノ「………………」テクテク

 

 

チノ「……あの、リゼさん?」

 

 

チノ「明日はココアさんのためにラビットハウスでパーティーを開こうと思うんですけど、どうでしょうか?」

 

 

リゼ「みんなでお別れ会か?」

 

 

チノ「はい、せめて最後だけでも良い思い出をと……」

 

 

リゼ「そうだな……できれば、遠慮してもらいたい」

 

 

チノ「えっ……?」

 

 

リゼ「明日はココアと一緒にぬいぐるみを作る約束をしてあるんだ」

 

 

リゼ「たぶん一日仕事になる。約束くらい守れないと、一生悔いが残りそうでな」

 

 

チノ「そうですか……わかりました」

 

 

リゼ「すまないな、チノたちもお別れを言いたいはずなのに」

 

 

チノ「いえ、気にしないでください」

 

 

チノ「きっとココアさんも、一秒でも長くリゼさんと一緒にいたいはずです」

 

 

チノ「わたしたちは、大丈夫ですから」

 

 

リゼ「……ありがとう」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

チノ「送ってくださってありがとうございました」

 

 

リゼ「いや、こちらこそありがとう」

 

 

リゼ「また明後日にな、おやすみ……」

 

 

チノ「リゼさん、待ってください」

 

 

リゼ「?」

 

 

チノ「これを」スッ

 

 

リゼ「写真……?」

 

 

リゼ「これ、今朝の公園でクレープを食べたときの……」

 

 

チノ「シャロさんが撮ったみたいで、千夜さんがプリントアウトしたそうです」

 

 

チノ「リゼさんに渡してほしいとお昼にあずかったので」

 

 

リゼ「ふふっ、上手くツーショットになってるな」

 

 

チノ「リゼさん、ココアさんのことよろしくお願いします」ペコリ

 

 

リゼ「ああ、任せておけ」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

リゼ「……………………」

 

 

リゼ「……明日まで、か」

 

 

リゼ「いちおう、覚悟はしてたんだけどなぁ……」

 

 

リゼ(たったの3日間一緒にいるだけで、別れってこんなに寂しいものなのか……)

 

 

リゼ「…………」スッ シャシン

 

 

リゼ「ははっ……こうやってみると姉妹みたいだな」

 

 

リゼ「はは……は…………」

 

 

リゼ「……明日は、一緒にぬいぐるみを作ろうな」

 

 

リゼ「お前の好きなものを食べさせてあげるからな」

 

 

リゼ「野菜を残しても怒らないからな……」ポタッ

 

 

リゼ「一緒にお風呂に入って、一緒に寝ような……」ポタッ

 

 

リゼ「明日はずっと……ずっと一緒にいるからな、ココア」ポタポタ……

 

 

 

V.

 

――リゼの部屋――

 

 

ここあ「りぜちゃん、おきて~」ユサユサ

 

 

リゼ「……ん?」

 

 

ここあ「おはようりぜちゃん、きょうはねぼすけさんだね」

 

 

リゼ「もうあさか……」

 

 

ここあ「わたしひとりでりぜちゃんよりもはやおきできたよ、えらい?」

 

 

リゼ「ああ、おりこうさんだ」

 

 

ここあ「えへへ」ニコッ

 

 

 

リゼ「顔洗ってくるから降りてくれるか?馬乗りになられてると起き上がれない」

 

 

ここあ「ううん、もう少しこのままがいい」ギュッ

 

 

リゼ「!」

 

 

ここあ「今日もたくさん遊ぼうね」

 

 

リゼ「ココア……」

 

 

ここあ「りぜちゃんといっしょ♪リゼちゃんといっしょ♪」

 

 

リゼ「……っ」

 

 

ここあ「あれ……?りぜちゃんのめ、まっかっかだよ?どうしたの?」

 

 

リゼ「これは……なんでもないよ、気にするな」ナデナデ

 

 

ここあ「?」

 

 

リゼ「よっと」ヒョイ

 

 

ここあ「ふぉぇ?」

 

 

リゼ「洗面所に行くのが怖いから付いてきてくれるか?」

 

 

ここあ「りぜちゃんこわがりさん?おねえちゃんなのに?」

 

 

リゼ「そうだな……ひとりになるのが怖い臆病者なんだ」

 

 

リゼ「ココアよりも、ずっとこわがりだ……」

 

 

ここあ「そっかぁ、じゃあいっしょにいく!」

 

 

リゼ「ありがとう、ココアは優しいな」

 

 

ここあ「わたしにまかせなさーい♪」

 

 

リゼ「…………」ギュッ

 

 

ここあ「わわっ……りぜちゃん?」

 

 

リゼ「ごめんな……やっぱり怖い……」

 

 

ここあ「ふたりだからだいじょうぶ――そうだ!」

 

 

ここあ「わたしがりぜちゃんにおまじないしてあげる」

 

 

リゼ「おまじない?」

 

 

ここあ「てをにぎって……」ギュッ

 

 

ここあ「りぜちゃんのこわがりさんがなおりますよーに」

 

 

リゼ「――――!」

 

 

ここあ「これでもうだいじょうぶだよ」

 

 

リゼ「………………」

 

 

ここあ「りぜちゃん、おかおあらいにいこ?」

 

 

リゼ「!」ハッ

 

 

リゼ「そ、そうだな……」

 

 

リゼ「ココア、ありがとう」ナデナデ

 

 

ここあ「うん♪」

 

 

リゼ(……………………)

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

リゼ「次はここを縫うんだ」チクチク

 

 

ここあ「ここだね」チクチク

 

 

リゼ「指を刺さないように気を付けろ」

 

 

ここあ「だいじょーぶ!」

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

リゼ「最後は背中を縫って……よし、完成だ」

 

 

ここあ「ワイルドギースのおともだちできたー♪」ピョンピョン

 

 

リゼ「横に並べてみるか」

 

 

ここあ「わぁ……!」

 

 

リゼ「ふふっ、サイズもちょうどいいな」

 

 

ここあ「ワイルドギースよろこんでる?」

 

 

リゼ「ああ、ココアのおかげだ」

 

 

ここあ「りぜちゃんとふたりでつくったから、なまえはココリゼだね」

 

 

リゼ「そのままだな……」

 

 

ここあ「ココリゼ、ワイルドギースとなかよくするんだよ~」

 

 

リゼ(どうしよう、一日かかると思ってたけど意外とはやくおわってしまった)

 

 

リゼ(チノの言ってたパーティー、断らないほうが良かったかもしれないな……)

 

 

リゼ「ココア、まだお昼だけどどうする?どこか行きたいところがあれば連れて行ってやるぞ?」

 

 

ここあ「ラビットハウスにいきたい!」

 

 

リゼ「ラビットハウス?」

 

 

ここあ「うん、そのあと『あまうさあん』で、そのあとはしゃろちゃんのおうち!」

 

 

リゼ「みんなのところにか?別に構わないが……」

 

 

ここあ「りぜちゃんとふたりでおさんぽしながら、みんなにあいにいくの」

 

 

リゼ「そうか……わかった」

 

 

リゼ「転ばないように、手を繋いでいこうか」

 

 

ここあ「うん!」ギュッ

 

 

リゼ「…………っ」ギュッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――ラビットハウス――

 

 

リゼ「おじゃまします」

 

 

ここあ「ちのちゃーん!」

 

 

チノ「ココアさん……!」

 

 

リゼ「すまない、思っていたよりも早く終わってな」

 

 

チノ「そうですか、でしたらいまからでも……」

 

 

リゼ「気持ちはうれしいが……遠慮しておくよ」

 

 

リゼ(これ以上仲良くなると、別れがもっと辛くなる……)

 

 

チノ「リゼさん……」

 

 

ここあ「ちのちゃんもりぜちゃんもどうしたの?」

 

 

チノ「なんでもないですよ。ココアさん、リゼさんのおうちで何かしてたんですか?」

 

 

ここあ「うん!あのね、りぜちゃんといっしょにワイルドギースのおともだちをつくったの。ココリゼっていうんだ」

 

 

チノ「そうですか、最後までちゃんと作れたんですね。偉いです」ナデナデ

 

 

ここあ「こんどはちのちゃんとふねをつくりたいな」

 

 

チノ「ボトルシップですか、まだココアさんには難しいですよ」

 

 

ここあ「じゃあ、もっとおおきくなったらいっしょにつくろうね」

 

 

チノ「……はい、そうですね」

 

 

チノ「っ……」ギュッ

 

 

ここあ「ふぉぇ?」

 

 

チノ「ココアさんが大きくなってわたしよりもお姉ちゃんになったら、一緒に作りましょう」

 

 

ここあ「えへへ、ゆびきりげんまん」

 

 

チノ「はい……」

 

 

チノ「ゆーびきりげんまん――」

 

 

ここあ「――ゆびきった♪」

 

 

チノ「…………」グスッ

 

 

チノ「任せてください……ちゃんと約束、守りますから……」ギュッ

 

 

ここあ「ちのちゃんあまえんぼうさん?もふもふ~」ギュッ

 

 

チノ「ココアさん……」ジワッ

 

 

リゼ「っ…………」

 

 

チノ「リゼさん……ココアさんのこと、よろしくお願いします」

 

 

リゼ「ああ……まかせておけ」

 

 

リゼ「ココア、そろそろいこうか」

 

 

チノ「ココアさん……さようなら」

 

 

ここあ「チノちゃんばいばい!」

 

 

ここあ「オムライス、おいしかったよ。ちのちゃんだいすき……」チュッ

 

 

チノ「!」

 

 

ここあ「またね」ニコッ

 

 

チノ「え……」

 

 

リゼ「チノ、また明日な」

 

 

ガチャッ バタン

 

 

 

チノ「ココア……さん……?」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――甘兎庵――

 

 

リゼ「いきなりですまないな」

 

 

千夜「ううん、来てくれて嬉しいわ。もう会えないと思ってたから……」

 

 

ここあ「あんこ、はいあーん」

 

 

あんこ「…………」モグモグ

 

 

千夜「チノちゃんはどう?」

 

 

リゼ「辛そうだったよ……だから、ここに逃げてきた」

 

 

千夜「そう……でも、後悔するよりきっといいと思うわ」

 

 

千夜「リゼちゃんは?大丈夫なの?」

 

 

リゼ「そうだな、覚悟はしていたんだけど……」

 

 

千夜「両目とも真っ赤っかね……ごめんなさい、当然よね」

 

 

リゼ「……千夜のほうは?」

 

 

千夜「わたし?ふふっ、どうかしら?」

 

 

リゼ「……ごめん、聞かなくても良かったな」

 

 

千夜「永遠の別れってわたし、まだ一度も経験したことないの」

 

 

千夜「だからかしら、もう会えないって言われてもあまり実感が湧かないわ……」

 

 

千夜「でも不思議ね……人間、自分の気持ちなんて分からなくても、いざ現実を突き付けられると自然と涙が出てくるものなんだから……」ジワッ

 

 

リゼ「千夜……」

 

 

千夜「ごめんなさい……リゼちゃんも辛いのに、わたし……」グスッ

 

 

リゼ「いいんだよ……お前が我慢する必要なんてない」

 

 

リゼ「悲しいなら好きなだけ泣けばいいんだ……」ギュッ

 

 

千夜「っ……リゼちゃん……!」ポロポロ

 

 

ここあ「ちやちゃんだいじょーぶ?」

 

 

千夜「ひっく……ここあちゃん……」

 

 

ここあ「げんきだして、ちやちゃん。よしよし」ナデナデ

 

 

千夜「ココアちゃん……ありがとう、嬉しいわ」ダキッ

 

 

ここあ「もうかなしくない?」

 

 

千夜「ええ……ココアちゃんを抱っこしてたら悲しみなんて消えちゃった」

 

 

ここあ「わーい!」キャッキャッ

 

 

千夜「ふふっ、ココアちゃん……また羊羹、食べに来てね」

 

 

ここあ「うん!またたべにくる~♪」

 

 

リゼ「千夜……」

 

 

千夜「リゼちゃんありがとう、もう大丈夫よ」グスッ

 

 

リゼ「そうか……」

 

 

リゼ「ココア、そろそろいこうか」

 

 

ここあ「はーい」

 

 

ここあ「ちやちゃん、ばいばい!」

 

 

千夜「ココアちゃん……さようなら」

 

 

ここあ「たくさんあそんでくれてありがとう。ちやちゃんだいすき……」チュッ

 

 

千夜「!」

 

 

ここあ「♪」タタタ

 

 

ガチャッ バタン

 

 

 

千夜「どうして…………」

 

 

千夜「……うそ………ココアちゃん……」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――シャロの家――

 

 

ここあ「ワイルドギース、おいで~」

 

 

ワイルドギース「」フンッ

 

 

シャロ「うぅ……ぐすっ……」ウルウル

 

 

リゼ「すまないシャロ、来ないほうが良かったか?」

 

 

シャロ「いえ、ただもう会えないと思ってたから……」グシグシ

 

 

リゼ「突然ココアがみんなの家に行きたいって言いだしてな」

 

 

シャロ「でも、どっちにしろこれが最後のお別れなんですよね……うぅっうぇえぇ……」ポロポロ

 

 

リゼ「シャロ……っ……」

 

 

ここあ「シャロちゃんもなきむしさん?」ヒョコ

 

 

リゼ「!」

 

 

シャロ「ココア……」ポロポロ

 

 

ここあ「ないたらしあわせがにげていくんだよ?だからなきやもう?」ナデナデ

 

 

ここあ「みんながいるよ、だからだいじょーぶ!」ギュッ

 

 

シャロ「でも……ココアは……!」ギュッ

 

 

シャロ(あんたがいなくなったら、『みんな』じゃない……)ポロポロ

 

 

リゼ「…………っ」グッ

 

 

ここあ「シャロちゃん、よしよし」

 

 

シャロ「ここあぁ……なんで……どうして……」ポロポロ

 

 

リゼ(……どうすることもできない苦しみを前に、自分一人の力でいったい何をすればいいんだろう)

 

 

リゼ(嫌なことがあったとき、今まで何度もそんなことを考えてきたけど……いまだに答えなんて出ない)

 

 

リゼ(――どうしようも、ないのだから)

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

リゼ「シャロ、落ち着いたか?」

 

 

シャロ「はい、取り乱してすいません……」

 

 

リゼ「気持ちはわかるさ、気にするな」

 

 

リゼ「ココア……もうすぐ夕飯だ、そろそろ帰ろうか」

 

 

ここあ「うん。しゃろちゃん、バイバイ」

 

 

シャロ「ココア……またね」

 

 

ここあ「しゃろちゃんだいすきだよ、いっぱいめいわくかけてごめんね」チュッ

 

 

シャロ「……!」

 

 

ここあ「♪」フリフリ

 

 

ガチャッ バタン

 

 

 

シャロ「……まさか、ココア…………」

 

 

――ジワッ

 

 

シャロ「ぅっぐ……あんた、どうして……」グスッ

 

 

シャロ「ココアぁ……ココア……!」ポロポロ

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――深夜 リゼの部屋――

 

 

ここあ「こころぴょんぴょんまち、かんがえるふりしてもうちょっと――♪」

 

 

リゼ(もう残された時間も少ない……これが終わったら、あとは寝るだけか)

 

 

ここあ「♪~♪♪」

 

 

リゼ(目が覚めれば、この幼いココアはいなくなる……それで、全て元通りになる)

 

 

リゼ(――はずなのに)

 

 

リゼ(……本当に、これでいいのか)

 

 

リゼ(このままで……ココアに何も告げないまま、お別れしていいのか)

 

 

リゼ「……………………」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――IN ベッド――

 

 

リゼ「電気、消すぞ」

 

 

ここあ「うん」

 

 

リゼ「…………」カチッ

 

 

リゼ「ここあ……おいで」

 

 

ここあ「うん♪」ギュッ

 

 

リゼ「……………………」

 

 

ここあ「きょうはみんななきむしさんだったね」

 

 

リゼ「……そうだな」

 

 

ここあ「りぜちゃんは?」

 

 

リゼ「……さぁな」

 

 

ここあ「……そっか……そうだよね」

 

 

ここあ「だって……りぜちゃんは――」

 

 

リゼ「――なぁ、ココア?」

 

 

ここあ「?」

 

 

リゼ「今からお前に大事な話がある」

 

 

リゼ「……聞いてくれるか?」

 

 

ここあ「……うん」

 

 

リゼ「……ありがとう」

 

 

リゼ「……ココア」

 

 

ここあ「りぜちゃん、どうしたの?」

 

 

リゼ「…………っ」

 

 

ここあ「りぜちゃんのからだ、ふるえてる……こわいの?」

 

 

リゼ「ああ、怖い……怖くて怖くて、どうかなりそうだ」

 

 

ここあ「だいじょーぶ、わたしがついてるよ」

 

 

リゼ「……でも……もう会えない」

 

 

ここあ「え?」

 

 

リゼ「今日が終われば、もうお前とは会えないんだ!」

 

 

ここあ「!」

 

 

リゼ「――っ」ギュッ

 

 

ここあ「リゼちゃん……?」

 

 

リゼ「……っ」ギュッ

 

 

ここあ「いたいよ……りぜちゃん……」

 

 

リゼ「ココア……ココア……!」ジワッ

 

 

リゼ「お前はほんとは、ここにいる人間じゃないんだ……」

 

 

リゼ「この場所にいたのは、お前よりもずっと年上のココアで……」

 

 

リゼ「その子がいなくなった日に、お前が現れた……」

 

 

リゼ「でも、お前自身が願ってくれた……その願い通り、きっとココアは帰ってくる」

 

 

リゼ「お前がいなくなる代わりに……」ポロポロ

 

 

ここあ「………………」

 

 

リゼ「お前がどうなるか、わたしにも分からない……」

 

 

リゼ「消えるのか、どこかに行ってしまうのか、わたしたちの記憶の中からさえも消え去ってしまうのか……」

 

 

リゼ「お前のことを忘れたくないのに、もしかしたら忘れてしまうのかもしれない……」

 

 

ここあ「りぜちゃんが……わたしを……」

 

 

リゼ「すまない……ずっと黙っていた」

 

 

リゼ「お前の方がわたしよりもずっと怖いはずなのに……わたしは、お前の泣き顔を見るのが怖くて……」

 

 

リゼ「お前の言う通り、わたしは臆病者だ……最低だ……」

 

 

リゼ「ごめんな……ごめんなココア……」

 

 

リゼ「もう、一緒には居られないんだ……」ポロポロ

 

 

ここあ「……………………」

 

 

リゼ「怖いよな……なのに、わたしはお前を抱きしめることしかできない……」

 

 

リゼ「なにもしてあげられない……」ポロポロ

 

 

ここあ「……ううん、そんなことない」

 

 

ここあ「りぜちゃん、かおあげて?」

 

 

リゼ「……?」

 

 

ここあ「わたしね、りぜちゃんたちとであってから、まいにちたのしかったよ」

 

 

ここあ「りぜちゃんからも、ちのちゃんからも、ちやちゃんからも、しゃろちゃんからも、おもいでややさしさ、いっぱいうけとったよ」

 

 

ここあ「たくさん、たくさん、しあわせだったよ」

 

 

ここあ「みんなのこと、ぜったいにわすれない」

 

 

ここあ「きえても、いなくなっても、ぜったいに」

 

 

ここあ「だから、だいじょーぶ」ニコッ

 

 

リゼ「……!」

 

 

ここあ「みんなのとのおもいでがあれば、わたし、こわくないよ」

 

 

リゼ「ココ…ア……」ポロポロ

 

 

リゼ「お前は……なんで、どうして……」

 

 

ここあ「でもね、まだすこしこわいな」

 

 

ここあ「さいごにひとつだけ、りぜちゃんにちゃんときいておきたいの」

 

 

リゼ「わたしに……?」」

 

 

ここあ「あのね……」

 

 

 

ここあ「りぜちゃんは……わたしのこと、すき?」

 

 

 

リゼ「――!」

 

 

ここあ「わたしがいなくなったら、かなしんでくれる……?」

 

 

リゼ「……そんなこと」

 

 

ここあ「きのうちのちゃんがきたとき、りぜちゃんわたしのことめいわくだっていってたから……」

 

 

リゼ「!」

 

 

ここあ「あんまりかなしくないって……はやくもとにもどってほしいって……」

 

 

リゼ「ココア……お前、今日が最後だって知ってて……だからみんなのところに……!」

 

 

ここあ「ごめんなさい……」

 

 

ここあ「でもね、きえちゃうってわかったときも、あんまりこわくなかった」

 

 

ここあ「ううん、りぜちゃんにきらわれてるかもしれないってわかったときのほうが、ずっとこわかった……」

 

 

リゼ「……ココア」

 

 

ここあ「りぜちゃん、さいごにきかせて……うそついちゃ、だめ……」

 

 

リゼ「…………」

 

 

ここあ「りぜちゃんは……わたしといっしょにいるの、いやだった?」

 

 

ここあ「はやくわたしとおわかれしたかった……?」グスッ

 

 

ここあ「わたしのこと、めいわくだった……?」ジワッ

 

 

ここあ「わたしのこと、きらいだった……?」ポロポロ

 

 

リゼ「………………」

 

 

ここあ「ひっく……ぅえぇ……」ポロポロ

 

 

 

リゼ「――――きだ」

 

 

ここあ「え……」

 

 

リゼ「好きだよ……大好きだ」

 

 

ここあ「……ほんと?」

 

 

リゼ「わたしがお前との約束で、嘘ついたことがあったか?」

 

 

ここあ「……ううん」

 

 

リゼ「この期に及んで、もう嘘なんてつけないよ」

 

 

リゼ「あの時はチノを不安がらせまいと強がりを言ったが……もうわたしも堪えきれそうにない」

 

 

ここあ「りぜちゃん……」

 

 

リゼ「好き……ココアのことが、好きだ」

 

 

リゼ「誰よりも一番、世界で一番、お前のことが好きだ」

 

 

リゼ「誰が忘れても、わたしはお前を忘れない」

 

 

リゼ「お前との思い出も、お前の笑顔も、お前の言葉も声も、全部……」

 

 

リゼ「全部……ずっとずっと、覚えてる……」

 

 

ここあ「…………!」

 

 

リゼ「たとえ1秒でも長くお前のそばにいたい。ココア……一緒にいてくれるか?」

 

 

ここあ「うん……」

 

 

ここあ「わたしも、りぜちゃんといっしょにいたい」

 

 

ここあ「りぜちゃん、すき……だいすき」

 

 

ここあ「いちばんりぜちゃんのことが、だいすきだよ……♪」チュッ

 

 

リゼ「ココア……これはな、頬にするもんなんかじゃないぞ」

 

 

リゼ「ほんとは、こうするんだ……」

 

 

――チュッ

 

 

ここあ「んっ……」

 

 

リゼ「他になにかしてほしいこと、あるか?」

 

 

ここあ「ううん……なにもない」

 

 

ここあ「もうこわくないよ……だって、こんなにしあわせだもん」

 

 

ここあ「りぜちゃんとふたりなら、もうなにも……」

 

 

リゼ「……そうか」

 

 

ここリゼ「…………」ギュッ

 

 

ここあ「ねぇリゼちゃん……ねても、いい?」

 

 

リゼ「……ずっと、そばにいるよ」

 

 

ここあ「えへへ……ありがとう……」

 

 

リゼ「………………」

 

 

ここあ「りぜちゃん……」

 

 

リゼ「……ああ」

 

 

ここあ「りぜ……ちゃん……」

 

 

リゼ「……大丈夫、ちゃんといるぞ」

 

 

ここあ「さいごに……おねがい、わすれてた……」

 

 

リゼ「……?」

 

 

ここあ「またいつか、りぜちゃんとあえますように……」ギュッ

 

 

リゼ「……ココア」

 

 

ここあ「おやすみなさい、りぜちゃん……」

 

 

リゼ「……ああ」

 

 

 

リゼ「――おやすみ、ココア」

 

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

………………。

 

――あれ……。

 

あの感じ……どこかで――

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

――公園――

 

 

ワイワイ キャーキャー

 

 

りぜ(……いいなぁ)

 

 

りぜ(どうしてわたしにはともだちができないんだろう……)

 

 

りぜ「……ふつうのいえにうまれなかったから……」ブランコ

 

 

りぜ「……はぁ」

 

 

りぜ「たくさんともだち、ほしいな……」

 

 

ここあ「ブランコ!わたしもまぜて~!」

 

 

りぜ「うぇえ!?」ビクッ

 

 

ここあ「おしてあげるね!えいっ!」

 

 

りぜ「ちょっとまってくれ!べつにブランコしたいわけじゃあ……!」

 

 

ここあ「そーれ!いち、にっ!」キャッキャッ

 

 

りぜ「やめろ~!やめて~!」

 

 

 

りぜ「ひどいめにあった……」

 

 

ここあ「ごめんね、ブランコに乗ってたからつい」

 

 

りぜ「ひとりきりでブランコなんてするはずないだろう……――!」ハッ!

 

 

ここあ「おねえちゃん、ひとりぼっちなの?」

 

 

りぜ「っ~!……そうだよ、わるいか」

 

 

ここあ「おともだちさがしてる?」

 

 

りぜ「……うん」コクリ

 

 

ここあ「それじゃあおともだちになろう!」

 

 

りぜ「えっ!?」

 

 

ここあ「わたしとおねえちゃんはいまからおともだち♪」

 

 

りぜ「……おまえ」

 

 

もか「ここあ~どこ~?」

 

 

ここあ「あっ、でももういかなきゃ……そうだ!」

 

 

――ギュッ

 

 

りぜ「!」

 

 

ここあ「いつかたくさん、おともだちができますように」

 

 

ここあ「おねえちゃんにおまじない♪」

 

 

りぜ「……おまじない」

 

 

ここあ「それと――」

 

 

ここあ「またいつか、おねえちゃんにあえますように」

 

 

りぜ「…………」

 

 

もか「ここあ~おいていっちゃうよ~!」

 

 

ここあ「じゃあね、ばいばい」フリフリ

 

 

ここあ「おねえちゃん、まって~!」タタタ

 

 

りぜ「」ポカーン

 

 

りぜ「………………」

 

 

りぜ「はじめてのともだち……なまえ、きいてなかった……」

 

 

りぜ「………………」スッ

 

 

りぜ「……ともだち、できるかな」

 

 

 

――そうだ。

 

あの時、わたしにまほうをかけてくれたのは――

 

わたしと、初めてともだちになってくれたのは――

 

……………………

 

………………

 

…………

 

……

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

――早朝――

 

 

ココア「ふぉぇ……もう朝?」

 

 

リゼ「……おはよう、ココア」

 

 

ココア「んっ……リゼちゃん?どうしてリゼちゃんがここに……」プワプワ

 

 

リゼ「ここはわたしの家だ……まぁ話せば長くなる」

 

 

ココア「昨日の夜チノちゃんと遊んで、その後自分の部屋で寝たはず……」

 

 

リゼ「……この1週間、何も覚えてないか?」

 

 

ココア「1週間……?」キョトン

 

 

リゼ「……そうか」

 

 

リゼ「気にするな……よく帰ってきてくれたな」ナデナデ

 

 

ココア「リゼちゃん……?」

 

 

リゼ「おかえり、ココア……」ギュッ

 

 

ココア「えへへ……リゼちゃんもふもふ♪」

 

 

リゼ「……よかったよ、ほんとに」

 

 

――ポタッ

 

 

リゼ「お前が帰ってきてくれて、良かった……」ポロポロ

 

 

ココア「リゼちゃん、怖い夢でも見たの?よしよし」ナデナデ

 

 

リゼ「ふふっ……ココア……」

 

 

リゼ「おかえり……」グスッ

 

 

リゼ「ははっ……あはは…………」

 

 

リゼ「よかった……よかったなぁ……」ポロポロ

 

 

 

VI.

 

――ラビットハウス――

 

 

リゼ「……………………」

 

 

 

ここあ『りぜちゃん、あーそぼっ♪』

 

 

ここあ『いっしょにおでかけ!』ピョンピョン

 

 

ここあ『ふたりでいっしょならだいじょーぶ!』

 

 

ここあ『りぜちゃん、だいすき♪』

 

 

 

りぜ「……………………」

 

 

 

リゼ「…………ここあ」

 

 

チノ「リゼさん」

 

 

リゼ「ん……チノか。すまない、少しボーっとしてた」

 

 

チノ「お客さんも来ないので、イスにでも座ってゆっくりしててください」

 

 

リゼ「いや、テーブルでも拭いておくよ。その方が気がまぎれるしな」

 

 

チノ「……リゼさん、すいませんでした」ペコリ

 

 

リゼ「?」

 

 

チノ「わたしのせいです……わたしがここあさんのこと、リゼさんに押し付けたから……」

 

 

リゼ「なに言ってるんだ、わたしが勝手に連れて行っただけだろ」

 

 

チノ「こうしてリゼさんが一番辛くなることも分かっていたのに、わたし……」

 

 

リゼ「……チノ」

 

 

チノ「最後の最後まで、全てリゼさんに押し付けてしまって……ごめんなさい」

 

 

リゼ「…………」

 

 

――ポンッ ナデナデ

 

 

チノ「……?」

 

 

リゼ「お前のせいなんかじゃないさ、むしろ、ありがとうだ」

 

 

リゼ「チノだけじゃなく、千夜とシャロにも……ここあと最後に二人きりにしてくれたみんなにな」

 

 

リゼ「おかげさまで、不思議と後悔はしてないんだ」

 

 

リゼ「最後までいっしょにいられて、良かったって思ってる」

 

 

リゼ「悲しいけど、これでよかったんだ」ニコッ

 

 

チノ「リゼさん……」

 

 

リゼ「だから、な?」ナデナデ

 

 

チノ「んっ……」

 

 

リゼ「お前に感謝こそすれど、恨むつもりなんてさらさら無い」

 

 

リゼ「後ろめたさなんて感じなくていいんだぞ」

 

 

チノ「……はい」

 

 

リゼ「よし……さぁチノ、今日からまたラビットハウス再開だ。気合入れていくぞ」

 

 

チノ「はい♪」

 

 

チノ「でも、リゼさん」

 

 

リゼ「んっ?」

 

 

チノ「後悔していないのでしたら、さっきはいったい何を考えていたんですか?」

 

 

リゼ「……そうだな」

 

 

リゼ「後悔は無いんだが、ひとつだけ心残りがな……」

 

 

チノ「……?」

 

 

ガチャッ

 

 

リゼ「おっと、お客さんだ。チノ、コーヒーのほう任せたぞ」

 

 

チノ「あ、はい」

 

 

チノ(……リゼさん)

 

 

リゼ「いらっしゃいませ、こちらメニューです」

 

 

リゼ(小さい頃、わたしに魔法をかけてくれたあの子はお前だったのか――聞きそびれたな)

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

リゼ「ふぅ…………」

 

 

チノ「お疲れ様です」

 

 

リゼ「お昼時はさすがに忙しいな」

 

 

チノ「わたしとリゼさんだけですから」

 

 

リゼ「ココアはまだ起きてこないのか?」

 

 

チノ「いえ、ココアさんは今週はオフです」

 

 

リゼ「あいつが休むなんて珍しいな」

 

 

チノ「1週間の間の記憶が一切無いことが思っていたよりもショックだったようで」

 

 

チノ「今日は気分転換を兼ねて、甘兎庵に行くと言ってました」

 

 

リゼ「千夜のところか」

 

 

チノ「はい、さきほど写メが送られてきました」スッ

 

 

『千夜月5本食い達成だよ!』

 

 

リゼ「ははっ、この調子ならもう大丈夫そうだな」

 

 

チノ「まったくです、心配して損しました」クスッ

 

 

リゼ「こりゃ後からダイエットに付きあわされそうだな」

 

 

チノ「その時は3人で頑張りましょう」

 

 

リゼ「いや、チノはそれ以上痩せなくていいと思うぞ」

 

 

チノ「仲間はずれは嫌です……」

 

 

リゼ「そうか、わかったよ」ナデナデ

 

 

チノ「♪」パァァ

 

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

――リゼの部屋――

 

 

リゼ(……そっか)

 

 

リゼ(千夜のやつ、もう約束を果たしたんだな)

 

 

リゼ「とすれば、明日あたりにチノとボトルシップつくり、明後日あたりにシャロとデートか」

 

 

リゼ(シャロのやつ、ここあのことを思い出して泣かなければいいが)

 

 

リゼ「……さてと」ベッド ポスッ

 

 

リゼ(……わたしの約束は、いつになるのかな)

 

 

リゼ(明日か、1年後か、はたまた10年先か……)

 

 

リゼ(………………)

 

 

リゼ「まぁ、ゆっくり待つとするか」

 

 

リゼ「いつかは必ず会える。なぁ、ワイルドギース。それと――」

 

 

リゼ「なぁ、ココリゼ。……うーん、やっぱりしっくり来ないな」

 

 

リゼ「……よし、お前の名前は変更だ」

 

 

リゼ「――なぁ、ここあ♪」ギュッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――6日後 リゼの部屋――

 

 

ココア「リゼちゃんの部屋、模様替えした?」キョロキョロ

 

 

リゼ「いや、物が増えただけだと思う」

 

 

ココア「そっかぁ、そういえば本棚がこの前より溢れてるね」

 

 

ココア「あれ……これ全部絵本?」

 

 

リゼ「ああ、この前急に読みたくなってな」

 

 

ココア「懐かしいなぁ、わたしも小さいころ読んだよ~」

 

 

リゼ「ココアは小さい頃から読書好きだったんだな」

 

 

ココア「うん!でもさすがに文字が読めなかった頃は読み聞かせだったけどね」

 

 

ココア「お姉ちゃんのお膝の上に乗っていっしょに読んだんだ」

 

 

リゼ「……そうか」

 

 

ココア「あっ、写真立てだ!」スッ

 

 

リゼ「!」

 

 

ココア「この子だれかな?リゼちゃんの親戚?」

 

 

リゼ「いや違うぞ。――友達だ、大切な」

 

 

ココア「へぇ~、二人とも仲良しなんだね」

 

 

リゼ「そうか?」

 

 

ココア「うん!だってこの子すごく幸せそうだよ、ほら」

 

 

リゼ「……そうだな、そうだといいが」クスッ

 

 

リゼ「なにせ、わたしの初めての友人だからな」

 

 

ココア「ふぉぇ?どういうこと?」

 

 

リゼ「なんでもないよ、そろそろ寝ようか」

 

 

ココア「リゼちゃんといっしょに寝るの、久しぶりだね」

 

 

リゼ「6日前にいっしょに寝ただろう?」

 

 

ココア「記憶が無いから覚えてないよ~」

 

 

リゼ「いいから早く布団に入れ」ポンポン

 

 

ココア「はーい、だいぶ!」ポスッ

 

 

リゼ「電気消すぞ」カチッ

 

 

 

ココア「……………………」

 

 

リゼ「……………………」

 

 

ココア「リゼちゃん、まだ起きてる?」

 

 

リゼ「ああ」

 

 

ココア「良かったら、少しお話し聞いてもらってもいい?」

 

 

リゼ「ん、いいぞ」

 

 

ココア「……あのね、いまこうやってリゼちゃんと二人で寝てたら、ふと思い出したんだ」

 

 

ココア「――わたし、むかし公園のブランコでリゼちゃんにそっくりな子に会ったことがあるの」

 

 

リゼ「――!」

 

 

ココア「一人で寂しそうにブランコで遊んでて……お友達がほしいって言ってた」

 

 

リゼ「………………」

 

 

ココア「わたし小さい頃は魔法使いになりたかったから、その子に魔法をかけてあげたんだ」

 

 

ココア「たくさんお友達ができますようにって♪」

 

 

ココア「これだけのことなんだけど、なんとなくリゼちゃんに話したくて。ごめんね急に」

 

 

リゼ「いや、面白い話だったよ」

 

 

ココア「あの子、今頃どうしてるかなぁ」

 

 

リゼ「たぶん、幸せになってると思うぞ」

 

 

リゼ「お前の魔法のおかげでな」

 

 

ココア「そうかなぁ、そうだといいな」

 

 

リゼ「良い友達に囲まれて、毎日を楽しく過ごしてるさ。きっとな」ナデナデ

 

 

ココア「んっ…………♪」

 

 

リゼ「………………」クスッ

 

 

リゼ「ココア、ありがとう」

 

 

ココア「ふぇ……?」ウトウト

 

 

リゼ「お前は、本当の魔法使いだよ」

 

 

ココア「すぅ……すぅ……」Zzz

 

 

 

リゼ「さて……これで、心残りも消えたな」

 

 

リゼ「あとは……」チラッ

 

 

ココア「ん……えへへ……」Zzz

 

 

 

ここあ『またいつか、りぜちゃんとあえますように……』

 

 

 

リゼ「もう一回、約束を果たすだけだ」

 

 

リゼ「……ふふっ♪」

 

 

リゼ「またいつか、会えるよな」

 

 

リゼ「――ここあ」

 

 

 

−−−−Bonus−−−−

 

VII.

 

………………。

 

…………。

 

……。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

翌朝。

 

別れは、来なかった。

 

幸か不幸かは分からない。

 

親友だったココアは、戻ってこないのだから。

 

 

でも。

 

 

お前を失わずに、済んだ。その事実は、わたしにただ『喜び』と『安心』という人にとって幸福の象徴である二つを与えてくれた。

 

その僥倖の前には、頭の中で散々引っ掻き回した理屈や精神論は何の意味もなさなかった。

 

 

 

あの後、どれほどの時間お前を抱きしめていただろうか。

 

嗚咽を響かせながら、お前の存在を確かめ、温もりを貪り、身体を蹂躙するかのように重ね。

 

ひたすら目の前の現実が、幻や偽りでないことを五感で感じて。

 

 

 

落ち着きを取り戻した後、お互いの涙や鼻水でくしゃくしゃになった顔を見合わせて。

 

喜悦の涙を滲ませ抱き付いてきたお前を受け止めた時。

 

 

わたしは、思った。

 

 

例えこの世が、全ての常識がお前の存在を否定しようとも。

 

 

例え誰を、世界中を敵に回したとしても。

 

 

一生、永遠にずっと。

 

お前と、一緒にいたい。

 

 

 

ここあ。

 

 

 

わたしの家族になってくれて、ありがとう。

 

 

 

 

――

 

――――

 

――――――

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

わたしが無意識に口ずさんでいた歌が気になったらしい。

 

教えてほしいと言うので、CDを聞かせてあげた。

 

 

曲に合わせて膝の上で楽しそうに歌う姿が微笑ましい。

 

「上手に歌えたな」と褒めてあげると、今度は「一緒に歌おう」とデュエットのお誘い。

 

 

ずっと頭を撫でていたせいか、しばらくすると可愛い寝息を立てて眠ってしまった。

 

きっと遊ぶ時も歌う時も、いつも一生懸命なのだろう。

 

柔らかい頬をこっそりプニプニしたことは、眠っていたので無罪だ。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

ヘアピンをプレゼントしてくれた。

 

ガーリーなデザインだが、いわくわたしに似合うらしい。

 

お前は嘘なんて言わない、きっと本心からだろう。

 

 

わざわざ早起きしてラビットハウスや甘兎庵、シャロの家を回って自分で働いたお金で買ってくれたそうだ。

 

みんなにメールでお礼を送っておいた。一日中振り回された使用人に申し訳なかったが、あいつも内緒でなにかプレゼントをもらったらしい。

 

 

問い詰めても口を割らないので諦めたが、わたしにだけじゃなかったのがちょっぴり悔しいな。

 

 

ともあれ。お前が、わたしのために頑張ってくれた。

 

その事実だけで、このプレゼントは世界で一番価値のあるものに違いない。

 

 

ここあ、ありがとう。

 

大切にする、わたしの一生の宝物だ。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

学校から帰ってみたらここあがいなくなっていた。

 

千夜が午前授業だったらしく、甘兎庵に遊びに行ったらしい、

 

 

ラビットハウスがオフなので思う存分遊ぼうと思っていた矢先、とんだ誤算だ。

 

とりあえず課題を終わらせて帰りを待つことに。

 

 

しかし、6時を過ぎても一向に帰ってくる気配が無いので千夜に連絡してみる。

 

なんでも、アルバイトからシャロが帰るのを待っているらしい。

 

 

既に夕飯もおよばれしたらしく、「このままウチにお泊りさせましょうか?」などととんでもない提案をしてきたので断固として拒否。すぐに甘兎庵までここあを迎えに行った。

 

 

ちょうどタイミングよく帰ってきたシャロと挨拶を交わし、ここあと二人で真っ暗な家路を辿る。

 

 

シャロと遊べなかったのが残念だったのか、少し寂しそうだったのでコンビニに寄ってここあの好きなデザートを買ってあげた。

 

 

これを書き終えたら、今日もここあと一緒に同じベッドで就寝だ。

 

すまないな千夜。ここあと寝るのはわたしの役目だ。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

ここあがおもらししてしまった。

 

お手洗いに行くよう起こしてあげなかったわたしの判断ミスだ。

 

 

使用人たちが洗濯してくれている間も、罪悪感からかずっと涙目だった。

 

千夜いわく、一番の理由はわたしに嫌われるかもしれないと不安だったのではないかとのこと。

 

 

もちろんそんな心配は杞憂を通り越している。

 

わたしがここあを嫌いになるなんてこと、天地がひっくり返ってもありえない。

 

可能性という問題において、これほど絶無という言葉がぴったりなものは他にない。

 

 

しかしお昼を過ぎても一向に元気が無く、ずっとションボリしていたが。

 

千夜やみんなのおかげで、ここあの笑顔は夕方になる頃には戻っていた。

 

 

千夜のアイデアで、ここあを一人でおつかいに行かせることになったのだ。

 

千夜と二人でこっそりストーキングはしていたけど、ここあにとっては買い物かごひとつでの初めてのお買い物だ。

 

 

わたしに喜んでほしい、そんな理由のために頑張って。

 

転んでも怪我しても泣かずに、立ち上がって。

 

 

お前の強さ、優しさ。わたしはちゃんと見ていたぞ。

 

 

ありがとうここあ、お前は本当に健気で強い子だ。

 

さすがはわたしの家族だな。

 

 

サプライズパーティ、はしゃぎすぎて疲れたのかな?

 

綺麗になったベッドでぐっすり眠ってる。

 

そろそろわたしも寝るか、いつも通り、お前の隣で。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

 

今日は久々の雨、結局夕方まで降り止まなかった。

 

 

インドアにはもってこいの天気なので、ここあと二人でゲームに興じているとあっと言う間にお昼過ぎになった。誰かと一緒にやるとゲームもこんなに楽しいのか。その相手がここあなら尚更だ。

 

 

お昼ご飯を終えて何となくぼんやりしていると、ここあが窓から興味深そうに外の景色を眺めていたので、一緒に連れて雨の街を散歩することに。

 

 

しばらくは目新しいことに落ち着きなくはしゃいでいたが、橋に差し掛かる頃にはゆっくりと隣を歩いて、雨の世界を不思議そうに見回していた。

 

 

雨によって容易に塗り替えられた普段と一線を画す世界は、静寂とも喧噪ともいえる無機質な音だけを響かせ、まるで世界に二人だけのような、そんな錯覚さえも思わせる。

 

 

「リゼちゃんとわたし、二人だけの世界みたいだね」

 

 

お前がいきなり、突拍子もなくそんなことを言うものだから。

 

 

心が、見透かされたみたいで。

 

 

お互いの心が、通じ合ったようで。

 

 

ほんの一瞬だけでも、世界でお前と二人だけになりたくて。

 

 

雨ざらしのなか傘をたたみ、慌てて駆け寄ってきてくれたお前を抱きしめて。

 

 

小さな傘の下に創られた、雨の降っていない小さな世界に、二人で身を寄せて。

 

 

お前は、わたしに何も聞いてこなかったな。

 

 

ただ少し照れた様子で笑顔を浮かべて、身体を預けてきて。

 

あんなに長い間お互い言葉を失くしたのは、今日が初めてだったかもしれない。

 

 

家に帰るまでの間、あの小さな空間、ほんのわずか存在した二人だけの世界は。

 

きっと神様すらも、見落としていたに違いない。

 

 

少しおかしいことを書きすぎたな。

 

頭もボーっとするし、そろそろ休もう。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

早朝、身体が気だるくてベッドから起き上がれなかった。

 

どうやら風邪を引いてしまったらしい。

 

 

この前の散歩の時からおかしな感じはしていたが、まさかここあと水族館に行く予定だった今日に発症するとは。

 

 

解熱剤を飲んで無理にでも行くつもりだったが、ここあと使用人二人に自重を促されたので渋々断念。

 

本日は大人しく自宅療養だ。

 

 

風邪がうつらないようここあは別室に向かわせた。

 

 

約束を守れなかった挙句ここあに気遣われてしまった自分が情けない。

 

久々の長い一人ぼっちの時間が寂しい。

 

 

おかしいな、ずっと当たり前だったはずなのに。

 

人間、一度でも生活基準を高めてしまうとそこから下げることはできない。どうやらあれは本当のようだ。

 

 

お昼過ぎ、暇を持て余しているとここあが部屋に昼食を持ってきてくれた。

 

小さい体に不釣り合いな大きいマスクを付けているのがかわいらしい。

 

 

使用人と一緒に作ってくれたおかゆをフーして食べさせてくれる。

 

鼻が詰まってろくに味もしないはずなのに、不思議だ。

 

お前が作ってくれたというだけで、どんな料理よりおいしい。

 

 

お昼からはずっと側にいてくれた。

 

マスクを付けているから大丈夫、か。

 

 

使用人もわたしも、嘘つきだ。

 

ここあ、マスクはあくまで予防だけで近くにいたら風邪はうつるんだぞ。

 

同じベッドで横になったりなんてしたら、確実に。

 

 

なのに。

 

それでもわたしは、お前に側にいてほしい。

 

純粋なお前を騙して、自分勝手な気持ちを優先したことを許してくれ。

 

咳をするたび、心配そうに背中を撫でてくれるここあが愛おしい。

 

 

今夜は甘兎庵に泊まりに行ってしまうのか、まぁ仕方ない。

 

お前や千夜が看病してくれている間に寝るとしよう。

 

 

風邪が治ったら水族館に行こうな、お前が見たがっていた大きなエイを一緒に見よう。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

今日は通常通り、ラビットハウスでアルバイトの日。

 

チノが承諾してくれたので、一旦学校から帰宅してここあをラビットハウスへ連れていくことに。

 

 

迷惑をかけてしまわないか心配だったが、一生懸命お手伝いをしている姿を見てわたしもチノも思わず顔がほころぶ。

 

笑顔でおもてなしする様もお客さんに好評だ。

 

 

チノも普段以上に表情が豊かだったし、わたしも否が応でもモチベーションが上がる。

 

ここあも、「一人でお留守番よりずっと楽しい」そうだ。

 

今後はここあが行きたいと言ったらできる限り連れて行ってあげよう、もちろんチノも二つ返事で快諾してくれた。

 

 

しかし。

 

やはり疲れたのか、まだ9時半なのにベッドでぐっすりだ。

 

いつもなら一緒に絵本を読んだりしている頃なのに。

 

寝る前にここあと話したり遊んだりできないのが寂しい。

 

 

あちらを立てたらこちらが立たず、たったの24時間なんて一日は短すぎる。

 

365日、ここあやみんなと過ごせる時間は1日たりとて無駄にできないのに。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

 

ここあのことがとうとう親父にバレてしまった。

 

しばらく外国に行っていたとはいえ、今までバレずに隠し通せていたのが奇跡か。

 

ここあと仲良しの使用人が、親父にかいつまんでここあを預かることになった経緯を説明してくれたらしい。

 

にわかに信じがたいことだが、親父は納得してくれたのだろうか。

 

 

ついカッとなってゴム弾を撃ち込んでしまったが、嫌な顔一つせずむしろ歓迎してここあを迎え入れてくれた親父には感謝だ。

 

今日一日ずっと遊んでくれたみたいだし。遊び方や素行に少々問題はあったものの。

 

 

ここあも親父を「おとうさん」と呼び慕ってくれている。

 

きっと新しい家族として上手くやっていけるだろう。

 

 

ありがとう親父。

 

今度お礼に、バイト代でワインオープナーでも贈るよ。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

日曜日。

 

唐突な親父の提案で、車でショッピングモールまで遊びに行くことに。

 

ここあがみんなで行きたいと言うので、チノや千夜、シャロも誘って大勢でお出かけだ。

 

 

初めて来る場所に嬉々としてはしゃぐココアが可愛い。チノも平静を装っているものの遠出はやはり新鮮なんだろうな、いつもよりも幼く見える。

 

親父がはしゃいでいたのはいい歳して恥ずかしい以外の何物でもないが。

 

千夜も親父のテンションに合わせなくていいんだ、シャロが付いていけず困っていたぞ。

 

 

ゲームセンターに雑貨店巡りを終え、フードコートで昼食。

 

親父の奢りだから好きなものを食べればいいのに、なぜか満場一致でジャンクフードを食べることに。

 

 

ここあの口に付いたケチャップを拭いてあげるチノを見てると本当の姉妹という気がするな。

 

姉と妹の立場は以前とは逆だが。

 

 

隅から隅まで散々遊び終えた頃には既に6時を回っていた。

 

 

騒がしかった行きとは違い、帰りの車内は水をうったように静かだった。

 

さすがに遊び疲れたのだろう、起きていたのは運転席の親父とわたしと千夜だけだ。

 

 

シャロとチノ、二人から肩に頭を預けられている千夜を見ていると正にみんなの保護者といった感じがする。一切動けなくて辛いだろうに優しいな千夜は。

 

 

わたしの膝の上で眠るここあ、眠たくなったらわざわざわたしの元にやってくるのが愛おしくてたまらない。

 

 

信号に引っかかった時、ミラー越しに後ろを見て微笑んだだろう親父、一瞬でも見逃さなかったぞ。

 

言葉はほとんど無かったけど、帰り道すらも充実に満ち足りたかけがえのない時間だった。

 

 

時々思う。

 

こんなに幸せで、本当にいいんだろうか。

 

 

幸福は味わいすぎるとやがては退屈になる、と聞いたことがあるが。

 

それでもなお、この時間を永遠に失いたくないと思うのは。

 

わたしの見識が、浅はかなのかな。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

 

この前のツケが回ってきたのか。

 

ここあと、初めて喧嘩してしまった。

 

 

武器庫に鍵をかけ忘れていたわたしの責任なのに、銃を持ったここあを見たら冷静な判断ができなくなった。

 

ほんとに何もなくて良かった。お前が怪我したら、動けなくなったりしたら、わたしは、もう。

 

 

ここあと仲良しの使用人と千夜のおかげで、仲直り自体はすぐにすることが出来た。

 

やっぱり千夜はすごい、わたしなんかよりずっと大人だ。

 

 

銃を磨いて真黒になったここあのハンカチは、この前のヘアピンと一緒に宝物として閉まっておいた。

 

わたしが喜ぶと思って、一生懸命磨いてくれたんだよな。

 

このハンカチの汚れは、全部お前の優しさだ。

 

ありがとうここあ、でもこれからは危ないことはやめてくれ。

 

わたしは、お前が元気でいてくれればそれで十分幸せなんだ、他に何もいらない。

 

新しく買ったハンカチ、気に入ってくれて良かったよ。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

 

リゼ「………………」

 

 

リゼ(さて……今日は――)

 

 

千夜「甘兎庵でこっそり餡蜜を食べました、とか?」ヒョコ

 

 

リゼ「わぁあ!?」ビクッ

 

 

千夜「ふふっ♪」

 

 

リゼ「ち、千夜、いつの間に……!」

 

 

千夜「さっきからずっと。リゼちゃん真剣に読んでたから」

 

 

リゼ「ぅぁ…っ……み、見たのか……?//」

 

 

千夜「ごめんなさい、嬉しいことがたくさん書いてあったからつい」

 

 

リゼ「!……~~~っ//」プシュー

 

 

千夜「ここあちゃんと一緒に過ごすようになってからの、日記?」

 

 

リゼ「……ああ、あったこと、忘れたくないから書き留めておきたくて//」

 

 

千夜「そう、リゼちゃんらしいわ」クスッ

 

 

リゼ「……っ//」

 

 

千夜「……リゼちゃん?」

 

 

リゼ「?」

 

 

千夜「わたしも、リゼちゃんが友達で幸せよ」

 

 

リゼ「!」

 

 

千夜「わたしだけじゃない、チノちゃんも、シャロちゃんも、ここあちゃんも」

 

 

千夜「みーんな、リゼちゃんのこと大好き」

 

 

リゼ「……千夜」

 

 

千夜「だから、これからも良い思い出たくさん作りましょう」

 

 

千夜「その日記帳が、1か月で全部埋まっちゃうくらい」ニコッ

 

 

リゼ「……!」

 

 

リゼ「……ああ、そうだな」

 

 

リゼ「みんなとなら、それも簡単に達成できそうだ」パタン

 

 

千夜「あら、書かないの?」

 

 

リゼ「帰ってから書くよ。……千夜?」

 

 

千夜「?」

 

 

――ポンッ

 

 

千夜「!」

 

 

リゼ「いつも、ありがとう」ナデナデ

 

 

千夜「……リゼちゃん、今日もここあちゃんとハグした?」

 

 

リゼ「んっ?ああ、出かける時に。毎日20回以上はしてるからな」

 

 

千夜「ここあちゃんの匂いがする」スンスン

 

 

リゼ「そうか?」

 

 

千夜「最近はずっと。もうこれが『リゼちゃんの匂い』になっちゃってるみたい」スンスン

 

 

千夜「あっ、でも良い匂いだから気にしないで?」

 

 

リゼ「……自分だとよく分からない」スンスン

 

 

千夜「ここあちゃんもね、いつもリゼちゃんの匂いがするの」

 

 

千夜「ここあちゃんもリゼちゃんも、二人とも同じ匂い……」

 

 

リゼ「……そうか」

 

 

千夜「それだけ。ごめんなさい引き留めて。また来てね」フリフリ

 

 

リゼ「ああ……ごちそうさま」

 

 

 

――ガチャッ バタン

 

 

 

千夜「……リゼちゃん」

 

 

千夜「ここあちゃんと出会えて……」

 

 

千夜「新しい家族ができて、良かったわね」

 

 

千夜「……♪」ニコッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

リゼ(ここあの匂い、か)

 

 

リゼ「――ただいま」ガチャッ

 

 

ここあ「りぜちゃん!」

 

 

リゼ「!……ここあ」

 

 

ここあ「おかえりなさい!」

 

 

リゼ「くすっ、わざわざ待っててくれたのか?」

 

 

ここあ「早く帰ってきてほしくて」

 

 

リゼ「そうか……ありがとう」ナデナデ

 

 

ここあ「えへへ」ギュッ

 

 

リゼ「よっと」ヒョイ

 

 

リゼ「……」スンスン

 

 

ここあ「ふぉぇ?」

 

 

リゼ「安心するな……お前の匂いは」

 

 

ここあ「りぜちゃん?」

 

 

リゼ「なんでもないよ」

 

 

ここあ「?」

 

 

リゼ「まずはお風呂に入ろうか、その後一緒にご飯だ」

 

 

ここあ「ぁ…うん!」

 

 

リゼ「ここあ……」ギュッ

 

 

ここあ「んっ……♪」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

〇月〇日

 

 

 

イギリスの陸軍で作家であったジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンは。

 

かの有名な『ホビットの冒険』という小説で、こんな言葉を残している。

 

 

『もしわたしたちがみんな。貯めこまれた黄金以上に。食べ物と喜びの声と、楽しい歌を歌えていたら。なんとこの世は楽しかったのだろう』

 

 

彼がいかなる邂逅を得てこのような真理に辿り着いたのかは分からない。

 

 

ただ、わたしに言えるのは。

 

 

トールキンが求めた幸福は、少なくとも間違いではなかったということだ。

 

 

 

胸を張って言える。

 

 

『今』が、幸せだって。

 

 

 

幸福なんてものは。

 

 

欲しがるものじゃなくて。

 

後から気が付いたり、自分で気づくものなんだよな。




−−−−−−−−−−−−−−−
next.

あとがき
次回で完結します。
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