街かど宿屋のドラゴンさん   作:抹茶さめ

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12泊目

 

「なんじゃなんじゃ? 飯が口に合わなかった......訳じゃなさそうじゃな」

 

 皿から顔を上げて見ると魔族の少女が俺達の顔と空になった皿を交互に見ながら言ってきた。

 

「あ、いや、何でも無いのだ」

「ふん、どうせカーラの奴に脅されたんじゃろう? ククク、確かにスミカはお人好しで優しくてそしてとてつもなく強い奴よ。そんな奴に迷惑を掛けていると思っているのだったら大間違いじゃ。SSランクだの階級なんぞ飾り、スミカがやると言ったら何も考えず、言わずについて行けばいいのだ」

「それで良いのか?」

「良い! 大体百歳近いダークエルフの言葉なんぞお主ら人間には無意味じゃ、生きている時間が違えば価値観が違うのだからな」

「百歳!? あの姿で?!」

 

 ケインズが椅子から腰を浮かせて皿を返却するところでスミカ殿と話しているカーラ殿を指差しながら言う。まぁ、普通は驚くがダークエルフで百歳と言えば人間で言う二十歳くらいでそこから容姿の変化が止まって三百歳でゆっくりと老化するらしいが同族ならまだしも俺達人間から見たらわからないほどの老化らしい。

 

「ダークエルフじゃしな、ハイエルフと比べれば短命じゃが」

「ハイエルフなんて会ったことが無いぞ」

「森の奥に引きこもっておるからのう、確か......今の長老が千二百歳じゃったかな」

「......もうついて行けませんね」

「長生きはするもんじゃないからのう」

 

 何故か目を細めた魔族の少女が金色の髪を弄っていた。そんな少女をケインズはエールの入ったジョッキに口を付けながら見て、言った。

 

「貴方は......魔族の中でも長命な種族なのですか?」

「妾か? そうじゃな、かれこれ千五百年くらいじゃな」

「ぶっ!! ゴホッゴホッ!」

 

 ケインズがエール吹き出しむせていた。俺も目玉が飛び出しそうなほど目を見開いた。千五百歳だと? この容姿でそこまで長命な種族が存在するのか?! いや、待て。確か魔族の中でも悪魔、デーモンと呼ばれる種族がいる、その中の上級悪魔と言われている奴等がそれくらいの年齢だと王と雑談したときに聞いたぞ。

 

 だが彼女を見ればわかるが人間で例えると十歳から十五歳くらいにしか見えない、それにデーモンは羽を生やしては居るが肌の色が褐色で羊のような角が生えているはずだが彼女にはそれが内。

 

「何じゃ? ジロジロ見よって」

「すまない、貴方の種族が気になってな。だがそれはマナーに反する事だったな」

「お主......人間のくせに物知りじゃな? 今朝方のポーションの件といい肉の味や魔族は種族を聞かれる事を毛嫌いしていることものう」

「私の父がとても書物が好きで、家の一角に専用の部屋まで作ってあるほどでな。幼い頃からその部屋の本を読んでいたら無駄な知識が付いてしまった」

 

 俺は肩をすぼめた、まぁそのおかげで騎士団に入っても知識で苦労はしなかったし、遠征で食糧が尽きたときは食べられる物を探したり魔物を狩ったり出来たのだから感謝している。

 

「なるほどのう......ん? お主の父とやらまさかエドモンドとか言わぬか?」

「知っているのですか!?」

「おーおー! あのエドモンドの息子か! 確かに彼奴は本や古い書物が好きな奴だったわ! して、エドモンドは元気か?」

 

 満面の笑みの少女に俺は言葉につまった。

 

「団長......」

「いいんだケインズ、すまぬ。父は......先月天に旅立ったのだ」

 

 満面の笑みが花が枯れるように散っていき最後は寂しそうな表情になっていた。

 

「そうか、逝ったか。長生きはするもんじゃないのう......」

「父も歳だったからな、老衰でしたな」

 

 少し葬式みたいな空気になったとき酒場の扉が勢いよく開かれた。何事だと見れば物々しい白と赤を基調にしたフルプレートメイルの重装歩兵が十数人、次々と金属音を鳴らしながら入ってきた。騒いでいた客達は一瞬で黙りその集団を見ると席を離れ出来るだけ遠くに行くように移動していた。

 

「あれは......」

「団長、あれってアインス王国軍の重装歩兵じゃないですか? しかも近衛兵仕様ですよ」

「ッチ、物騒なことじゃな。何のようじゃ?」

「......何ごと?」

 

 魔族の少女が舌打ちするといつの間にかサーシャが隣に立っていた。すると重装歩兵の集団が左右に分かれその中心に男性が立っていた。歳は二十歳くらいだろうか、赤いマントを着け金髪で青い瞳の男性、美男子と言う奴か。だがどこかで見たことがある。

 

「叔母上-! 説明をお願いしたぁああああああああ!?」

 

 金髪のイケメンが一瞬にして現れたスミカ殿に顔面を手で捕まれていた。

 

「酒場に重装歩兵なんて連れて入ってくるなぁあああああああ! こんの馬鹿王子がぁああああ!」

「「「王子ぃいいいい!!」」」

 

 重装歩兵達が悲鳴を上げていた。あー思い出したぞ、あの金髪はたしか。

 

「なんじゃ、ゲンの奴か」

「......腰抜け王子」

 

 そうだ、アインス王国第一王子のゲンシュ・ヴィッシュ・アインスヴェルク王子だ。

 

 

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