街かど宿屋のドラゴンさん   作:抹茶さめ

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19泊目

 

 

「クソ、結構暑いな」

「血の臭いには慣れてきましたけど、この蒸し暑さは堪えますね」

「そうだな、それにしても入り口は暗かったが奥に進むほど明るくなるのは助かる」

「......それでも薄暗い」

 

『死者の祭壇』内部に入ってから一時間が経過した。入り口は洞窟のようだったが奥に進むにつれて道が整備され、壁が整えられており今では四角い平らな石を敷き詰められた道と、石壁になった。

 

 道幅は大人がすれ違いできる程度だろう、天井は結構高い、そして足元を照らしている拳程の大きさの結晶、壁にも同じような物が埋め込まれていた。

 

「『照石』が埋め込まれてますから松明や光魔法の『ライト』を使う必要がないんですよ」

「しょうせき? あのマナに反応して光る石か? たまげたな......これだけ大きいと金貨数枚はするぞ」

「......高いの?」

「高価なのは違いない、大体だが俺の給金二ヶ月分になるぞ」

「光るだけの石がですか?!」

 

 光るだけの石といっても需要はある店の照明だとか王宮の装飾、裕福な貴族や民家なら家の照明に使っている。まぁ、他にも使い方があるらしいが。

 

 だが永遠に光続ける訳ではない、平均して五年もてばいい方だ。しかもそれほど明るくはない、油や火を使っていないから安全ではあるが。

 

「贅沢品の部類ですね、火の扱いだけ気をつけていればランプとかで十分ですし」

「そういえばスミカ殿の店の灯りはどうしているのだ? 火を使っている様子は無かったが」

「ウチは光魔法を使っています。小粒の純魔結晶を使いますけどね、でも夜だけ使っている限りは数十年は平気ですね」

「ほぉ、小粒とは言え値が張るだろう?」

「小指ほどの大きさは金貨五枚ですね、市場には出回らないのでギルドから買い付けていますけど。油を買ったり色々お金を払うのと、年十年に一回だけ大金を払うなら後者でしょうね」

「確かにな」

「......面倒くさいだけ」

「うっ......」

 

 先頭を歩いていたスミカ殿が胸を押さえてよろめいた、どうやら図星のようだな。

 

「そ、そろそろ『大広間』に出ますので少しこのダンジョンの内部を説明します」

「それは有難いが、スミカ殿はここに来たことがあるのか?」

「はい、二度程ですが」

 

 スミカ殿が腰につけたバッグから折り畳まれた紙を広げ地面に置いて片膝を付いた。どうやら地図らしい、俺とケインズ、サーシャは地図を囲むように腰を下ろした。

 

 トンっとスミカ殿が地図に右手の人差し指を置いた。

 

「現在地がここです、あと数メートル行くと『大広間』と呼ばれるかなり開けた場所に出ます。その先はここと同じくらいの通路になっていますが罠がありますのでサーシャが先行します。良いサーシャ?」

「......」

 

 コクリとサーシャが頷いた。

 

「サーシャ殿は罠の判別が得意なのか?」

「......見つけるだけならお師匠より得意」

「頼もしいですね」

「......ふふん」

 

 嬉しかったのか少し顔が赤かったサーシャだが一度鼻をスンと鳴らすと難しい顔になった。

 

「......でも鼻が効かない、毒物系の罠は難しいかも」

「じゃーそっちは私が何とかするからそれ以外をお願いできる?」

「......ん、わかった」

「では続けますね、今言った罠エリアを抜けた奥には『大広間』と同じくらいの空間があります。そこにダンジョンマスターが居ます。そして依頼物でもある『純魔結晶』がそのさらに奥にあると思います」

 

 スミカ殿が指を地図の上で道をたどるように滑らせて最深部を二回ほど叩いた。

 

「ふむ......本当に最深部だな」

「あの、一ついいですか?」

 

 ケインズがゆっくり手を上げた。

 

「何でしょうか?」

「このダンジョンは難易度ランクはどのくらいなんですか? 地図を見る限り入り組んでいるわけでも距離があるわけでも無いですからBランクですかね?」

 

 そうか、ダンジョンランクを聞いていなかったな。ダンジョンは難易度別にC~Sでランク付けされていてそのランクと冒険者ランクが合わなければ入ることは出来ない。いや、厳密に言えば入ることは出来るが出てくる魔物に歯が立たないのでそれ相応の実力、冒険者ランクが必要なのだ。

 

「お二人は冒険者登録をされていますか?」

「いや、私は騎士団に直接入ったのでな、だが年に一回の模擬戦でAランクと言われた」

「私も同じような物です。BランクのAに届くぐらいと言われました」

「......意外と強い」

「以外とは失礼な、これでも団長だぞ私は」

「まぁ、団長は普段は穏やかな人ですからね」

 

 そう言われてケインズの肩を小突いた。スミカ殿はどこか悩んでいるようだ、どうしたのだ?

 

「あの、大変申し上げにくいのですが......」 

「どうかしたのか?」

「? 何でしょうか」

「......お師匠?」

 

 頬を掻きながら言うスミカ殿に俺達は首をかしげた。

 

「このダンジョン、Sランクなんです......」

「「え!?」」

「......おー」

 

 驚く俺とケインズ、何故かサーシャは目を輝かせていた。

 

 

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