街かど宿屋のドラゴンさん   作:抹茶さめ

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22泊目

 

「ふぅ、有限沸きで良かったです」

「......お疲れ様、お師匠」

 

 一汗もかいていないスミカ殿が汗をぬぐうように額をぬぐった。するとサーシャが剣を携えながらスミカ殿に歩み寄った

 

「ありがとう、サーシャもお疲れ。様上手く動けてたと思うよ」

「......んふふ」

 

 その言葉が嬉しかったのか尻尾がゆらゆらと揺れていた。その様子を見ているとケインズが兜を抱えて走ってきた。

 

「姉さん! 魔石を集め来ましたぜ! 小粒ですが凄い量が集まりました!」

「......キラキラしてる」

「ほぉ、結構な金額になるぞこれは」

 

 ケインズが抱えている兜を見ると色々な色の魔石が七色に輝いていた。しかも量が多い、これだけギブリンが居たのか。

 

「ありがとうございます。この袋に入れてください」

 

 スミカ殿が腰袋から黒い革袋を取り出して口を広げるとケインズがそこに魔石を流し込んだ。だが袋は一切膨らむ様子がない。

 

「収納魔法の魔道具か」

「そうです、便利ですよこれ」

「確かに便利だが、マナを消費するし収納量はさほど多くないと聞いているぞ? 私は魔法が使えないから良く分からんのだが」

「そうですねー......粗悪品と言うか今市場に出回ってる様な量産品はマナを馬鹿食いするし、要領もほとんどありませんね」

 

 キュッと袋の口を閉じて腰袋にしまったスミカ殿が言う。粗悪品と言うが結構な値がするはずだぞ? 確かエスルーアン金貨で二十枚以上する高級品だ。

 

「確かエスルーアン金貨で二十枚以上しますぜ姉さん」

「え?」

「ケインズ? の言うとおりだ、我々騎士団でも採用はしているが評判が悪くてな、最近の遠征では使っていない」

「団長? 何で俺の名前で首をかしげたんですか?」

「ちなみにオーダーメイド品って売ってますか?」

「あるにはあるが、普通に売っている物の倍の値がする。それに作ってくれるかどうかも怪しい」

「二人して無視ですか!?」

 

 何か言っているケインズは置いておいて、オーダーメイド品などは優秀な魔工師に直接依頼する事が出来ればの話だ。収納魔法の魔道具を作れる魔工師の数はそれほど多くは無い、エスルーアンでも三~四人程度しか居ないはずだ。

 

 それに受けている発注の殆どが公爵などと言った格が上の貴族共が殆どで冒険者はAランクで話を聞いてもらえる、Bランク以下は門前払いと知人の冒険者が言っていた。Sランク級になれば話は違うだろうが。

 

「そうなんですね......作れる人が減ってるって事か」

 

 スミカ殿がぽつりと呟いて次の場所に向かう通路の扉に視線を合わせた。

 

「取り合えず先に進みましょうか、この先は罠が多いですから戦闘前に言った順番で行きます」

「......ん」

 

 サーシャがコクリと頷いて戦闘を歩き出し俺とケインズが続く、最後尾はスミカ殿だ。扉の前に到着するとサーシャが鉄製の扉を二、三回軽く剣先で叩く。軽い金属音がした。

 

「......ちゃんと鉄製」

「見た感じ鉄に見えんぞ? サーシャ殿よぉ」

「......魔物の中には扉に擬態する奴も居る」

「へぇー、おっかねぇな」

 

 ケインズが顎をさすりながら感心しているとサーシャが扉を開く。

 

「......う」

「こいつぁ臭うな......」

「やはり最深部から臭っているのかこの血の匂いは」

「そうらしいですね、急ぎましょう」

 

 サーシャが扉を潜りケインズが続く、そして俺も歩みを進めふと後ろを振り向くとスミカ殿が入り口をジッと見つめていた。

 

「ん? どうしたのだスミカ殿?」

「え? あー何でも無いですよ少し気になることがあっただけなので」

「気になること?」

「大したことじゃ無いですよ。さ、行きましょう」

「あ、ああ?」

 

 スミカ殿に背中を押されて俺も扉を潜った。その時チラッとスミカ殿の顔が見えたがやはり後ろを気にしていた。

 

 

 

 

 

 

――――――その頃、竜風亭

 

「ふぁああああ......相変わらず暇じゃのう、夜だけ賑わって宿泊客は居ないというのはちと不味いのではないかのう?」

 

 受付ようのカウンターに腰掛けて妾は大きなあくびをした。暇じゃ、退屈じゃ、自分の金色の髪を右手の指に絡めているとふと、カウンターから見える窓の外に見知った男女二人が見えた。そのまま二人は店の扉を開いた。

 

「―――って、言うんだよあのクソ親父。もうちょっと安くしても良いじゃねぇか?」

「それってージングがー材料けちったからー悪いんじゃ無いのー?」

「うっ......何も言い返せねぇ。でもよいくら何でもアインス金貨五十枚はねぇーだろって、あれ? サテラさんじゃん」

「なんじゃ? 妾だと嫌なのかえ? んん? 腕もいでやろうか?」

「そうは言ってねぇよ!?、ただ珍しいなと思っただけだよ!」

「ッチ、そうか。面白くないのう」

「なんで舌打ち!?」

「でもー本当に珍しいねーサテラさんがー受付でーこんな昼間にさー」

 

 確かにそうじゃな、妾は大体この時間帯、と言うか。昼間は部屋で寝ておるのが常じゃしな。

 

「しかないであろう? スミカもサーシャも仕事に行ったんじゃから」

「何? 早くないか?」

「明日のーはずじゃーなかったのー?」

「ちと状況が変わったんじゃ、はぁ」

 

 頬杖をついて溜息を漏らす妾にカーラとジングは首をかしげていた。

 

「寝不足ー?」

「それもあるのう」

「昼夜が逆転してる種族だからしかたねぇーんじゃねぇーの?」

「そーだよねー『吸血鬼』だもんねー日光は平気なんだよねー? たしかー」

「ふぁああ......そうじゃな、妾は少し特殊じゃからな」

 

 普通の同族には日光は天敵、少しでも当たれば致命的なダメージをおうが妾には関係ない。

 

「それで? 何の用じゃ? 今日はスミカはおらんぞ、明日の朝ぐらいには帰ってくると思うが」

「何の用って部屋を貸して欲しいんだが? また長期で借りるぜ」

「同じくー」

「なんじゃ、そんな事か。ほれいつも使ってる部屋の鍵じゃ、代金はスミカに払うがいい」

 

 妾は背面にある部屋の鍵が掛かった壁から二つの鍵を取って二人に渡してやった。

 

「サンキュー」

「ありがとー」

 

 二人は礼を言いながら受け取り二階に上がっていった。

 

「ふぁああああ......ふむ、暇じゃ」

 

 何回目かのあくびをして妾はまた外を眺める作業に戻った。

 

 

 


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