街かど宿屋のドラゴンさん   作:抹茶さめ

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4泊目

「......すまない、思考が追いつかん。『純魔結晶』というのはあの純魔結晶だな?」

「ええ、多分ですけどカルロスさんの想像通りかと」

「はぁ......」

「あの、団長? なんで溜息を吐いてるんです?」

「お前はしらんのか!?」

「知らないも何も純魔結晶なんて初めて聞きましたよ。しかも五百年に一度しか取れない物なら高価なんだろうなという推測しか出来ませんが」

 

 ケインズが頭を掻きながら言う、確かに純魔結晶は市場には絶対に出回らない。

 

「知らないのも無理はありません。市場には絶対に出ませんから」

「何故ですか?」

「純魔結晶は自然界のマナが時間をかけて結晶化した物です。ですから拳ほどのサイズで......確か今の相場だとミスリル白金貨二千枚くらいでしたっけ?」

「確かそのぐらいだ、最近はどこの国も『都市大結界』の張り直しをしているからな」

「ミスリル白金貨二千枚ってエスルーアン聖王国の国家予算並じゃないですか!!」

 

 ケインズが少し腰を浮かせて言ってきた。

 

「そりゃそうだろう、国を外から来る魔物や外部からの攻撃を防ぐ『都市大結界』。それを維持するための莫大なマナをどうやって供給していると思う?」

「......なるほど、純魔結晶がその供給源で何百年に一度の張り替えで国家予算が吹き飛ぶと」

「そういうことだ」

 

 『都市大結界』は千年ほど前から使われている大魔術でどこの国でも使っている、だがそれを維持するためには純魔結晶が必須になる。そのため各国は自分の領土内のダンジョンに定期的に騎士団を派遣し、運良く発見できればそれを使うが大抵は入手出来ない、国々は純魔結晶の独占を禁止する条約を交わしており、国家間で売買されるのが常識なのだが。

 

「......だが、我が国は五年ほど前に都市大結界を張り替えたばかりだぞ」

「確かにそうですね、あの時は一般騎士でしたが城壁の警備に駆り出された記憶があります」

 

 俺とケインズは顔を見合わせた。

 

「都市大結界に使われるのは普通は百年物と言われる拳ほどのサイズです。ですが今回の依頼で要求されているのは五百年物、大きさは人の頭ほどのサイズですね」

 

  店主スミカがティーカップを受け皿に置きながら発した言葉に俺達は目を剥いた。

 

「「はい?!」」

「もう値段すらつかないレベルの代物ですね」

 

  俺は開いた口が塞がらなかった。しかし何故エスルーアン聖王はその様な物を採ってこいと依頼を出したのだ? 都市大結界はすでに張り直されている。今になって純魔結晶を得る理由がない。

 

「何故だ......何故王はその様な物を欲しがっているのだ?」

「他国と圧倒的な差を見せつけたい......とは違いますね。今のエスルーアン聖王はそんなお人ではないですし」

 

  腕を組んで悩んでいる俺達に店主スミカが微笑んでいた。

 

「ふふ、ではもう少し視野を広げてみてはいかがです?」

「視野を広げる、だと?」

「はい、まずエスルーアン聖王国は遥か昔から勇者を召喚している国です」

「そうだ、唯一勇者を召喚できる魔方陣を備えていて門外不出の召喚呪文を有している国だ。それらを守るために私達騎士団が存在している」

「そうです、そして魔王が封印されて五百年経っています」

「それと何が関係して――――」

「あぁああああああ!」

 

  ケインズが大声を出しながら立ち上がった。俺はそれに少しびっくりして一瞬思考が停止した。

 

「な、なんだ? 急に立ち上がって」

「団長! 勇者召喚ですよ! 勇者召喚! 封印された魔王が目覚めるのが約五百年、そしてその少し前に我が国、エスルーアン聖王国で勇者召喚が行われるんです」

「確かに伝統ではそう......だ。まさか!」

「そうですよ団長! 多分ですが今回の依頼は勇者召喚で使うための純魔結晶を手に入れてこいと言う事ではないでしょうか」

「はは......」

 

  乾いた笑いが口から漏れだし、俺は背もたれに背中を預けた。なんと言うことだ、そんな重大な任務だとは思わなかったし事前に言って欲しいものだ。

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