わたしのかんがえたさいきょうのせっちゃん 作:ワイマール拳法
夜の帳も下りた麻帆良学園理事長室には三人の姿があった。近衛近右衛門とエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、侍女の絡繰茶々丸である。近右衛門は呻きながら、立派な顎髭を指先で抓むように撫ぜていた。囲碁である。エヴァの優勢であった。
近右衛門が微笑んだ。
「待ったはなしかの?」
「なしだ」
「ケチ」
「やかましい」
老獪な笑顔と対峙したエヴァはよほど厭だったのか、西洋人形がごとき艶美な眦を不機嫌とばかりに歪ませた。
しばし近右衛門は唸っていたが、やがて頭を下げた。
「参りました」
「それでいい」
ご満悦とばかりにエヴァは嗤った。
「京都か……」外を仰ぎながら、エヴァが呟いた。「貴様の孫、平気なのか。西には、東と対立する賊がまだ残っているという話らしいが」
近衛木乃香を心配するエヴァに、近右衛門は怪訝とばかりに
邪険にするほどでもないと、近右衛門は好々爺然として笑っていた。
「それなら問題ない。強硬派はほとんど残っておらん。西の長が尽力してくれたおかげじゃ。それに刹那君も護衛に就いておる」
近右衛門は茶々丸が淹れた茶を頂戴して綻んでいたが、またも怪訝とばかりに眦を歪ませた。エヴァがくつくつと冷笑していたからである。絹のように繊細な金髪が、春の野原のように
主の豹変に困惑したような従者をも尻目に、エヴァはより退廃的に嗤っていた。
「桜咲か。なら問題はないよなあ」
冷笑するエヴァの言葉は、実に白々しいの一言に尽きた。エヴァの真意が分からない近右衛門は、やはり眉間を顰ます他なかった。日頃は眼前の老獪な狸に翻弄される身のエヴァとしては当然ながら痛快であった。
エヴァは呵々大笑としていた。
「貴様も詠春も、よもや桜咲の本性を知らんはずもあるまい」
「刹那君は……、ちと問題がある」近右衛門は嘆息した。「じゃが、このかを害することはあるまい。それはおぬしも知っておろう」
刹那は木乃香に心酔している。
だがそれは根拠にもならないと、エヴァは嗤った。
「どうだかなあ」
「酔っておるのか?」
「酔っとらんわ」エヴァはお猪口を呷った。大吟醸であった。「どうせ桜咲ごとき、相手にもならんと思っているのだろうが」
「違うのか?」
「いや、違わんよ」
刹那はチカラを欲している。弱いから、刹那はチカラを欲しているのである。歴戦の魔法使いである近右衛門ならば、刹那はまず相手にもならない。それは事実である。
それでもエヴァは近右衛門を嘲笑した。甘いなと、エヴァは思った。
近右衛門は刹那をただの小娘と侮っている。生まれたばかりの赤子のように、刹那は世の理も恐怖も知らない。それがどれほど恐ろしいか、近右衛門は理解していなかった。ついに耄碌したかと、傲慢にもエヴァは嘲っていた。
「なら、いったいなにが」
「なあに、別に大した問題じゃあない」エヴァは嗤った。佚楽としていた。「分からんならそれまでだ。せいぜい忘れろ」
「ぬぅ……」
顎鬚を撫ぜながら、近右衛門は唸った。
近右衛門も烏族の鬼子であるという刹那の素性を知っているが、それは表面的なものでしかない。刹那と親しいらしいエヴァが近右衛門以上に彼女を知っているのは、当然の道理ではある。
――エヴァンジェリンはなにを知っておるのか。
懊悩とする近右衛門に、エヴァは上機嫌である。
「では邪魔したな、じじぃ」
「しっしっ。二度と来んでもいいんじゃよ」
近右衛門の皮肉にも、エヴァは一顧もしなかった。「失礼いたしました」居丈高な主とは裏腹に、従者の茶々丸は瀟洒に理事長室を辞していった。辟易とした近右衛門の姿にエヴァは欣悦としていたが、それもやがては黙然としていった。
薄い雲に覆われた麻帆良の夜空に、星はなかった。
「どうかされましたか?」
茶々丸の言葉に、エヴァは嗤った。人造のヒトガタながらも、茶々丸の表情には不安があった。それがエヴァには愉快であった。
「お前は桜咲をどう思う?」
「どう、とは?」
「なんでもいい」
「なんでも、ですか」
エヴァの言葉は実に曖昧であった。エヴァの意図は分からなかったが、茶々丸はしばし黙考した。エヴァは茶々丸というオーバーテクノロジーをほとんど理解していなかったが、客観的な意見が欲しいときは観測者としての彼女を頼っていた。
「私の推測でしかありませんが……」
「なんだ?」
「彼女は、解離性同一性障害ではないかと」
「ビリー・ミリガン、か」エヴァは乱読家である。ダニエル・キイスも読んでいた。「なるほどな」
エヴァは刹那の過去を知っている。茶々丸の言葉にエヴァは納得もしていた。
鬼子として迫害されていた過去。
まるで幼子のような言動。
木乃香への依存。
専門家ではないエヴァに確証などなかったが、解離性同一性障害の条件としては十分なように思われた。
刹那の、原点。
刹那は「刹那」を守る為に生まれた。「刹那」を守る為にチカラを欲している。蛇の道は蛇と、「刹那」を守る為に悪たるべしと下種になった。
誰かが「刹那」に悪意という黒のペンキを落としたが為に生まれてしまった失敗作。
刹那に矜持はない。
刹那に自己もないからである。
「ハ」
エヴァは刹那を憐憫していた。
だが、不幸であることを忘れられたかもしれない刹那が、エヴァは羨ましかった。
○
京都、奈良修学旅行二日目である。
「あの、ネギせんせー。今日の自由行動、よろしければ私達と回りませんか?」
どうしてか分からなかったが、宮崎のどかはほとんど緊張しなかった。のどか自身が唖然としていた。のどかの言葉に、ネギ・スプリングフィールドは快諾した。もしかすれば相部屋である神楽坂明日菜や木乃香の班だからという理由であったかもしれないが、それでもいいとのどかは思っていた。
のどかはあまりに冷静であった。のどか自身、それが不思議ではあった。
のどかは無意識下に
エヴァの仕業であった。のどかはエヴァの眷属である。捕縛したアルベール・カモミールの情報から、エヴァはネギに好意的なのどかを眷属にしていた。エヴァはネギの動向を監視するにはいいかもしれないとのどかを眷属にしたが、現状では便利な手駒でしかなかった。具体的には、のどかの視界を共有して京都、奈良を擬似的に観光していた。
エヴァは暇であった。
「よくやったねー、のどかー!」
「え……?」早乙女ハルナはもはや感激していたが、のどかは上の空であった。「あ、うん……。ありがとう」
「テンション低いなー、どしたー?」
「なにかあったですか?」
「大丈夫」心配する綾瀬夕映に、のどかは微笑んだ。「なにもないよー」
のどかの笑顔に陰はなかった。夕映は安心したが、不安があるとすればいつもの親友らしからぬ姿であった。綺麗であった。まるで別人のように。「ラブ臭、じゃない……?」ハルナの戯言も、夕映はどうしてか無視できなかった。
「んー……」判断に迷っていたようだが、やがてハルナは嘯いた。「なにはともあれ、告るチャンスだよ!」
「む、無理だよー」
「大丈夫だって! たぶん!」
「もう、たぶんってなにー……?」
動揺すると夕映は思っていたが、のどかはふわふわと笑っていた。
もはや能天気なのどかに、ハルナも悩ましいとばかりに唸った。
「無理に今、告白する必要もないのでは?」夕映はハルナに囁いた。「のどかもこの調子なら、いつでも告白できると思います」
「でも今がチャンスなのは変わらないっしょ」
「もっと親密になってからでもいいはずです」
「堅実だねー」
「ハルナはもっと慎重になるべきです」
つまらないとばかりに苦笑したハルナに、夕映は呆れた。
内緒話をする二人を余所に、のどかは先を歩いていたネギや明日菜、木乃香と合流していた。「置いてくえー」ネギや明日菜と談笑するのどかの隣で、木乃香が悪戯に笑っていた。
「い、いつの間に……」
「あれなら大丈夫かな」
綺麗さっぱり忘れたかのように、ハルナが笑った。
呑気なハルナに、夕映は嘆息した。夕映の脳裡には、まるで別人のようなのどかの姿が
○
興福寺や奈良国立博物館、東大寺と奈良見学の日程を無事に終わらせていた五班は、春日野園地にある東屋で休憩していた。
「奈良公園って意外と広いのね」明日菜が縁台に腰を下ろした。「疲れたー」
「ディズニーランド十個分はありますから」
「マジか……」
夕映の言葉に、明日菜は唖然とした。
奈良公園は実に長閑である。アナーキーな麻帆良で育ってきた明日菜にはなおさらであった。木乃香とのどかは茶屋で買ってきた団子を堪能しながら、ネギと談笑していた。作画資料にする為か、ハルナは写真を撮っている。鹿せんべいを買った夕映が鹿と戯れようとしていたが、鹿どもは呑気に昼寝をしている。「ぐぬぬ」夕映は呻いていた。明日菜は笑った。
平和であった。
図書館島の地下で巨大ゴーレムと格闘していたのが嘘のようであった。
「ゴメン、ちょっとトイレ行ってくる」
「了解です」
夕映に言伝をした明日菜は、景観を楽しむようにのんびりと御手洗に向かった。木立の奥には、有名な東大寺南大門があった。
――あれ以来、ネギも大人しいけど……。
期末テストの図書館島と長谷川千雨が半裸にされた一件を最後に、ネギとの騒動らしい騒動はなかった。
――でも……。
もしかしたらと、明日菜は思った。「マギステル・マギの仕事は、世のため人のために陰ながらそのチカラを使う」ネギの言葉である。もしかしたら明日菜が知らないだけで、ネギは誰かを陰ながら助けているのかもしれないと、彼女は思った。
大階段からのどかを助けたように。
――てか、桜通りでなにしてたのよあいつ……。
満月の夜、明日菜は桜通りに倒れていたのどかをネギと一緒に介抱した。なにがあったのか明日菜は疑問であったが、ネギはただ黙していた。なにかあったのは、明白であった。秘密にしなければならない理由が、ネギにはあったかもしれない。それでも明日菜は釈然としなかった。
明日菜は歩きながらぷりぷりとしていたが、奇妙な感覚に襲われた。
まるで眩暈のようであった。
――あ、あれ……?
あれだけ群れていた鹿どもの姿が一頭もなかった。
マヌケにも迷子になったのかと明日菜は狼狽したが、視界には子供の姿があった。子供の奥には奈良公園の喧噪があった。不思議な子供である。冬のような子供であった。春になれば忘れられてしまう雪のように、存在が稀薄であった。
小柄な背丈。
七分丈のズボンと、白のフードパーカー。
小奇麗なフードパーカーからは、子供の存在をより華奢にさせるような純粋な白髪が零れていた。
子供はフードを目深にしながらぼんやりと佇んでいた。明日菜は子供と対峙した。静謐としていた。明日菜と子供二人だけの空間は、ぽっかりと穿たれた隙間のようであった。シエスタのような
ふと、明日菜は
――ヤバ……。もう戻んないとマズイよね。
明日菜が東屋へと踵を返したときには、もう子供の姿はどこにもなかった。
○
天ヶ崎千草達は昨晩のように偽装したバンで木乃香達を監視していた。ホテル嵐山の隅々には、刹那と従業員に扮装した千草によって傍受用の呪符が貼られている。「扉」の役目もほとんど終わっていた。フェイト・アーウェルンクスは仮眠をしていた。
「あー……」犬上小太郎はバンの後部座席で嘆いた。「暇やー、退屈で死んでまうてー」
「やかましいなあ、刹那と遊んどき」
「コイツ弱いからイヤやわ」
小太郎の言葉を、刹那は否定しなかった。
小太郎は何度か刹那と手合をしたことがある。刹那は弱かった。京都神鳴流とは名ばかりの平々凡々とした実力であったが、刹那はいかにも手札を残していた。小太郎が全力でなかったように、刹那も全力ではなかった。京都神鳴流としての野太刀も、つまりはただのブラフでしかなかった。手合をしているときも、刹那の瞳は、ジョーカーを切れば小太郎も相手ではないと嘯いているようであった。
ムカついた小太郎は刹那を瞬殺した。
「じゅうぶん強いと思うけどなあ」
「千草はウシロやろ。コイツはマエ。話がちゃうわ」
「ウシロとしての話や」
「あん?」
小太郎は怪訝としたが、刹那が手札を隠しているのは千草も分かっていた。ウシロ、つまりは後衛である呪符使いとしての直感であった。
千草は刹那が「両刀」であると思っている。
「刹那の身代わりは一級品や」千草は刹那に嗤った。「他にもイロイロできるんとちゃうか?」
刹那は「身代わりの紙型」の作成を得意としている。刹那はこれを生業としていた。刹那の紙型による「身代わり」は術者本人と寸分違わぬと、関西呪術協会でも評判である。実は千草も買っているが、手札として隠していないのはさほど痛手ではないからか、金になるからか。千草にも判然としなかったが、呪術は剣術の補助程度という刹那の言葉はまるで信じていなかった。
千草の疑念にも、刹那は微笑んでいた。
「神鳴流は武器を選ばず、ですから」
「術師としての話をしとるんやけどな」
「誰にでも奥の手はあるものです。天ヶ崎さんにも、犬上君にもあるように」
刹那の言葉に、小太郎は不愉快とばかりに仏頂面をした。
「やっぱムカつくなあ」
「ムカつくなあ」
「心外です」
刹那の軽薄とした言葉が、千草は憎々しかった。
信頼関係もクソもなかったが、それでいいと千草は判断していた。所詮はビジネスライクな関係である。下手な情は、野良犬にでも喰わせればいい。刹那と親しいのは、よほどの傑物かよほどの馬鹿か両方であると千草は思っていた。
だが、千草の思惑とは裏腹に、刹那は彼女に興味があった。
厳密には千草の「術」である。
「あの、天ヶ崎さん」
「なんや」
「えっと、ですね……」
刹那はまるで恋をする乙女のようであった。
千草はイヤな予感がした。
「私、知りたいんですよ」
「なにをや」
「貴方の術について、です」
「アンタは……、どこまで知っとる?」
千草の言葉には棘があったが、刹那は無垢として瞳が爛々と耀いていた。
かつて千草は「東」への復讐の為に、木乃香の「魔力」でリョウメンスクナノカミを調伏して式神にするつもりであった。呪符使いとしては凡俗であるが、千草には天ヶ崎としての「術」があった。式神をきぐるみのように変化させ、彼女自身のチカラを「気」や「魔力」に頼らずとも増大させるという一子相伝の秘術であった。
誰も知らないはずであった。千草は動揺していた。
刹那が頭を下げた。
「対価はご用意いたします。天ヶ崎さんの術を、どうか私に教えてくれませんか」
「アンタには必要ないやろ」
「私は知りたいのです。私になにができるか。ウチになにができないんか」
刹那は興奮していた。やはり情緒が不安定であった。
「いったい、なにがしたいんや?」
千草の言葉には、刹那はただ嗤っていた。
刹那には興味があった。
ヒトを式神にできるのか。
千草の「術」は、ヒトにもできるのか。
――このちゃん……。
木乃香とひとつになれるかもしれない。
刹那は狂喜していた。
○
歴史がズレていたが、超鈴音に焦燥はなかった。なかば予想していた事態であった。
ズレの中心は刹那である。
観測者である超は刹那の過去を知っている。刹那は生まれたことを否定され、迫害されてきた。刹那は「普通」になれなかった。刹那が「普通」になれない可能性を、戦禍に生きてきた超は予期していた。
刹那は壊れてしまった。
歴史を正さなければならなかった。
超は自嘲した。
――神にでもなったつもりか、烏滸がましいネ。
思考とは裏腹に、超に躊躇はなかった。いまさらな話である。超は理想の為に、何度も葛藤してきた。それでも超は決断をした。
超に、いまさら翻すという選択肢はなかった。
だが、超は煩悶とした。
――さて、どうしたものか……。
どう歴史を正せばいいのか、どう刹那を正せばいいのか、超はほとんどノープランであった。「超包子」の起業に茶々丸の開発、さらに「計画」の準備に追われ、規格外の天才である超も限界であった。実に無謀なスケジュールである。超はかつての彼女自身を呪っていた。「やろう、ぶっころしてやる。」気分はさながら過去の自分自身にぶちギレるドラえもんであった。
「なにやら物騒でござるなあ」
「寝不足ッスか?」
「きっとお腹が空いてるアルよ」
「乳酸菌が足りていないんですねー」
「カルシウムじゃないの?」
呑気なクラスメイトに、超は呆れた。よもや葉加瀬聡美もである。超は呻いた。
茶々丸の親である超も、彼女のように刹那が解離性同一性障害か、それ相応であると判断していた。
ならば、超は刹那の人格を統合すればいいのか。それは否であった。解離して生まれた別人格にも意思がある。別人格にとって統合が消滅を意味すれば拒絶される。別人格がどうして生まれたのか、なにを望んでいるのかを知らなければならない。解離性同一性障害の寛解に必要なのは、理解と共存である。
超は刹那を知らなければならない。
超は刹那と対話をしなければならない。
――あの刹那サンが素直に話をしてくれるのか……。
だが、超に問題はなかった。
木乃香と接触すればいいだけである。木乃香は近衛詠春と近右衛門の意向で魔法を秘匿されている。魔法使い達から要注意人物と目されている超が木乃香と接触すれば、護衛である刹那は無視できない。もし無視すれば、刹那の護衛としての能力が疑われ、麻帆良での立場が失われる。それは刹那も望まないはずであると、超は判断していた。
木乃香が刹那との関係に悩んでいるのは、超にも明白であった。超にこれを利用しない手はなかった。超に懸念があるとすれば、刹那と敵対する可能性である。寵愛している木乃香に接触したとなれば、刹那が躍起になるかもしれない。邪険にされるならまだしも敵対するとなれば、刹那との対話も儘ならない。
超は唸った。
「お二人とも凄いですねー」
「もはや雑技団じゃないッスか」
ハカセと春日美空が感嘆していた。
古菲と長瀬楓が呑気にトレーニングに熱中していた。見事なプランシェである。二人には随分と余裕があった。「超もするアルかー?」古菲がふわふわと笑った。
超は微笑んだ。
「しないネ」
超に即答され、古菲はしょんぼりとした。
「ひどいアル……」
古菲。
超の、大切な親友であった。
「ン……」やがて、超が頷いた。「ちょっと明日菜サンのとこに行ってくるネ」
超の言葉に、四葉五月が頷いた。
超は決断していた。もはや刹那と敵対しようが、超には関係なかった。超は子供のように、刹那と喧嘩をするつもりであった。古菲のように拳で「対話」をすればいいのだと、超は思っていた。
あまりにも馬鹿々々しかった。
あまりにも麻帆良らしかった。
儚い夢であったはずの麻帆良に、超は絆されていた。
刹那も、超のようになればいい。
超は、少年のように笑っていた。
○
木乃香は超と談笑していた。
刹那の泥のような瞳に、黒々とした炎が灯っていた。