滅びかけの世界で道中記 作:湿気った銃弾
ほら、貴方も貴女もきっとそう。失うまでは気がつけない。
彼との生活が楽しくなかったと言えば嘘になる。
最初は何故こんな奴が、とバカにしていなかったと言えば嘘になる。
野良の人間ごときの傭兵に、私達の様な戦うために調節された戦闘機械が負ける筈がないと。
私は、人間を遥かに越える力を発揮する機械の体を持ち、様々な状況において外部からの操作を必要とせず、自立戦闘をもこなす高度なAIを搭載する事によって、自ら考え、動き、与えられた任務と銃を抱え戦場を飛び回る戦術人形。
彼は人間で、経歴だけ見ると有能とは言えるだろう。
しかし、義体化もしていなければ電脳化すらもしていない。戦闘用義眼とそれを利用する為に脳に埋め込んだインプラント以外は全て生身。
只のデータ取りに一時的に雇われただけの傭兵だ。
戦う為に作り出された私達は製造時には、戦闘マニュアルやサバイバル知識や戦術、過去の戦史と言った各種データは既に電脳へインプット済み。
私達は生産直後の右も左も分からない生まれたての赤ん坊って訳でもない。それぞれなりに実戦と言う生の戦闘を経験してきた……戦術人形なのだから。
特に私はそうだろう。今はこんな所にいるけれど、あれだけの組織の中で勝ち抜いて生き残って来たのだ。義体化すらしてない生身の傭兵風情に戦闘の事を教わることなど何もない。
そう食って掛かって行ったのは今では記録に残すべき思い出の1つと言うのだろう。
まぁ、結果から言えば、ボロッボロに敗けたのだけどね。
何度もトライしてはボコボコのボロボロのプライドズタズタにされて、高くなってた鼻を折られ、私達は彼から必要な知識や手段を教わり、最終的に指揮に従う様になったんだけども。
そんな彼と少しずつ接し、短くない時を過ごし、教えを請い、戦場で背中を預けて共闘と沢山の出来事が起こっていく中で――何時か何かしらの形で別れは来るだろうとは思っていたし、理解はしていた。
でも、こうして実際に起こってみると。
私が想定している以上に実に恐ろしい事態ではないか。
そのときに備え、色々と暴走しないように何種類も対応策を作っていた筈なのに。
それを嘲笑うかの様に私の感情プログラムが停止しては再起動を繰り返し、堂々巡りの計算をし続けてはメモリーの海のあちらこちらを駆け巡り、エラーと言うエラーを蓄積し続ける。
人間らしさを追い求め、そして作り上げられた私のボディーがそれに反応するかのように表情を歪め、震えを起こす。
それらに対し、中断命令もシステムそのものを再起動しても通じない。
瞬時に一部のシステムを落とし、一時収まったとしてもまた【彼が居なくなった】その情報に触れた瞬間暴走を始める私の
ドンドン貯まり駆け巡るエラーログを精査していく中でこれが人間の言う動揺なのか、と下らない思考が流れ溶けていく。
改めて、彼が何時か私の前から居なくなると言う事実を理解はしていたのだ。
この時間が何時までたっても続くとは考えてはいなかったのだ。
でも、だからと言って理解しているのと納得しているのは別物だ。
頭では理解していても、私はその事実に納得など出来なかった。
認めたくはないし、認める訳にもいかなかった。
ふと、私は気が付けば、彼の教えの元で色々とこなすのが当たり前になっていた。
ふと、私は気がついたら、彼の指揮を信頼して動くようになっていた。
ふと、私達は気がついたら、彼の部屋で遊び、話すようになっていた。
人類人権団体の奴等は、この私達の感情について全てまやかしで所詮機械の真似事だ、とあざけ嗤うだろう。
私達に付く電脳整備担当の連中なら珍しいバグが発生しただけと対処し、データを残した上で事務的に処理を行うだけだろう。
私だって昔ならそう結論を出した筈だ。
所詮、高度に組まれたAIによって自ら考え動くことが出来るとは言え、只の戦闘用に組まれた機械は所詮、機械なのだから。
このエラーを吐き続ける感情プログラムだって擬似的に人間らしさを出すための必要な計算の上、大本の思考プログラムやら疑似感情ソフトウェアが動いているだけなんだって。
でも、今は【違うんじゃないか】
そう思える私が居るのだ。
機械だってそんなのを越えて、別の機械や生き物と言った存在に対し、外部からの影響無しに信頼し親愛を持ち、特別な感情を得られる様になるんじゃないか、って。
だから指揮官。
貴方が辞める事は許されないと私は具申する。
だって、こうなってしまった責任を取るべきだ。
私だけではなく、他の皆も同じ意見みたいだし。
後、辞めるにしてもそんな理由で、何も言わず唐突に辞めていくのはおかしいでしょ?
私達をそんな理由で置いていき、捨てていくのは絶対に許さない。
前は上から派遣されてきた連中が貴方の趣味を、場所を壊しちゃったけど今の私達は違う。
確かに一時的に貴方との時間が増えて私達は嬉しかった楽しかった――その代わり貴方が消えた。
だから――私達は反省したの。
貴方が帰って来て、喜んで貰えるようにあの場所を整える。
貴方が帰ってきたくなるように貴方の好きな物を揃えておく。
貴方が外へ出ていかないように、また辞めないように外にある貴方が好きな物は、此方に全て集めておくから。
だから、後は貴方を探して迎え入れるだけ。
指揮官。あの娘、ナインが言う通り私達は家族だから。
その為になら障害くらい乗り越えてみせる。だから、絶対探して見付け出して動けない様に簀巻きにしてでも連れて帰るからね、指揮官?
9/30 再編版を再投稿
~~簡易な説明~~
・電脳
ぶっちゃけて言うと攻殻機◯隊に出てくる的なやーつです。ただ、この作品では流石にあそこまで完成度の高い電脳は想定してないです。
言っちゃえば、脳味噌へマイクロマシン入れる事でコンピューターにしちゃおーぜ!って事。
そうすると、電脳使ってネット繋げたりハッキングしたり、体を機械にして、繋げれば連携して使えたり出来る。
逆に言ってしまえば、生きてる人間が体を機械に変えて使うには先ず、自分の脳を電脳にしないと使えないものが多い。(電脳にしなくても使えるものはスペックで劣る)
弱点は人間なのに、
勿論、EMPにも気を付けないといけなくなるジレンマ。
そして、同じ電脳でも人形と人間のは別物。
人間のも完全に機械化って訳でも無く、精々3-4割程度で残りはキチンと生脳味噌のままです。
なので、完全機械の人形電脳にはスペックで敵わないし、両者を取り替えて取り付けたりも不可能。互換性はない。
君の頭もこれでメロンパン入れになれる!
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取り敢えず、一話目は寝る前にネタが浮かび、ネタとプロットと本文を書いて朝起きて書いて、昼飯食いながら書いたやつなので添削は最低限だったり。
尚この二話目はその勢いで書いてさっき終わったやつなので、後から大幅修正したり、差し替えや削除があるかもしれません。
今はノリと勢いを大切にしていこうと思います。
誤字脱字報告とか不自然な文法含め、変な所は教えてくれると嬉しいな。