滅びかけの世界で道中記   作:湿気った銃弾

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あら、初めまして。貴方は一体どちら様?





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「……ふぅ、さっきので敵は最後かな?」

 

その言葉とは裏腹に、カバーから二つの銃口を敵が居た方向の物陰に向けながら仲間へと問いかける。

 

「みたい、ですわね」

 

廃車のエンジン側に隠れつつ、回りを伺っていた仲間がそう答えた。

 

「じゃ!一先ず、リロードするからそれまでは警戒宜しくね」

 

「はいはい、私は大丈夫ですから早くしてくださいな?」

 

「分かってるよ~早くするってば」

 

そう返しながら、カバーへ完全に身を隠し、片方ずつ中身の減ったマガジンを変えていく。

同時に戦闘記憶ログとダンプポーチを手繰りながら残りの弾数を弾き出す。

 

もう満タンのマガジンは少ないなぁ……

 

「StG、リロード終わったよー。ありがとーね」

 

そう呼ばれた少女(StG44)は少しだけずれてしまった帽子を直し、艶やかに流れる金髪を整えながら立ち上がった。

 

「スコーピオン、じゃあ行きましょうか。……はぁ、其れにしても服が汚れてしまいました」

 

「にゃはは、結構撃ち込まれたもんねー?それと、そんなに汚れてないし気にしなくても大丈夫だって!」

 

「私は!気にしますの!あぁ、もう。早く洗いたいですわ……」

 

本当に綺麗好きだなー、スリングで銃を背中に回し服を出来る限り綺麗にしようとしてるStG44を見ながらそう改めて思った。

 

「一先ず、済んだ事だしペーペーシャに連絡いれちゃうね。お魚さんも不安がってるだろうし」

 

「お願い致しますわ。私は今の内にダミーを集めておきますから」

 

「はいよー……じゃっ、暗号通信始めるね」

 

私達戦術人形には、人形同士での通信が出来る広域通信機能が搭載されている。

通信機や衛星の補助を必要とせず、人形のみで運用可能なシステムであり、距離が離れていてもかなりの広範囲で交信が可能である。無論、支援機器を使えばより幅は広がる。

 

後はこれを活用して指揮官からの指揮も受け取ったりも出来たりと結構使い勝手のいい良いシステムだ。

 

今はその機能を使ってペーペーシャへ連絡を取ろうと言う訳。

 

左手に収まる銃をホルスターへしまって、電脳内で暗号化の演算処理をしてから通信を繋ぐ。

 

「此方、スコーピオン。聞こえますか?」

 

数秒間、無線のノイズが聞こえ━━ピピッと電子音が耳を叩く。

無事、繋がったようだ。

 

『此方、PPSh-41(ペーペーシャ)。キチンと聞こえていますよ』

 

 

「私とStG共に本体の負傷無し。遭遇した敵を全て撃退。

ただその代わり、私の最後のダミーがやられちゃった」

 

その台詞にジト目で睨んでくるStGの目線を背中に受けながらペーペーシャへ報告をする。

 

『スコーピオンさん、また無茶したんですか……?危ないですよっ……』

 

「へ、へへ!でもタダでやられた訳じゃないんだよ?

持たせた手榴弾で敵を一緒吹き飛ばしてやったんからセーフだよ、セーフ!」

 

『でも、気を付けで下さい……ね? もしもの事があったらみんな悲しいんですから』

 

本当に心配そうなか細い声に、私の疑似感情がズキリとまち針が浅く突き刺さる、そんな感覚に襲われた。

 

「ご、ごめんね……でも、結構ダミー被弾しててこれ以上持ちそうに無かったし、このまま失うのも勿体なかったから……

あ!え、と。そ、それでそっちは問題なし!?」

 

『……もう。えと、此方は問題ありません。お魚さんも元気です。お二人が引き付けてくれまたお陰です』

 

「なら良かったよー!取り敢えず、集合地点Cに十五分後に集合ね……あ」

 

「ねぇ、StG!残弾は大丈夫ー?」

 

後ろを振り向いて見れば、二体のダミーを集め終わったStGがマグポーチの中にあるマガジンを整理している所だった。

 

「ダミーも私も残り半分ってところかしら?」

 

「そっか、ありがと━━って感じらしいけど私は3割弱しかないから、集合したらマガジンへ弾込めしていい?」

 

『此方は問題ないですよ。

じ、じゃあ十五分後にまた会いましょうね!』

 

「はーい、また後で~」

 

プツリ、ペーペーシャとの通信が切れた。私達が敵を引き付けたお陰で向こうは被害無し。

連れて帰るお魚も問題無さそうだ。

 

「通信、終わりました?じゃあ、早く集合場所に行きましょうか」

 

「分かってるって。……あ、もうダミー居ないから援護宜しくね」

 

「はいはい。一体常に回しときますから、精々弾を食らわないように跳ね回って下さいな」

 

プスプスと火花と煙をあげる敵の残骸を尻目に、道の右側へよって曲がり角、ビルの入り口や廃車などのそこら辺にある物陰を警戒をしながら、それでいて素早く目的地点へと歩みを進める。

 

「……クリア。渡って進んでいいわよ」

 

側道へと、索敵に向かわせたダミーの情報を受け取ったStGが肩を叩きながら私に伝える。

 

「はいよー」

 

シュタタッと素早く、そして足音は殺しながらダミーと共に渡り、身を隠せる遮蔽物を確保してからStGが渡れるように援護へと動く。

 

チラリと目を合わし合い……少し間を置いて同じようにStGも渡ってくる。

 

「問題無しだね、早くいこっか」

 

「えぇ。でも……やっぱり市街地は嫌ね」

 

チラリとStGは崩れかけた雑居ビルや商店、それに道に朽ちる車両へと目を向けながらそう、呟きため息を漏らした。

 

「まぁ、私達は護衛抱えて帰る身だし隠れる所多い方が助かるけど……

警戒すべき所多すぎて実際疲れるよね、本当に」

 

お互いに愚痴りながらも足は止めない。

 

実際、見るべき所が多すぎてどうしようもないのが市街地戦だ。

下手な例をあげるなら。

隣同士の部屋に敵が居る事に気がつけなくて、部屋を出た瞬間にお互いびっくり鉢合わせ!

何てことが普通にあり得るんだから怖い。

 

スナイパーもトラップも潜み放題。

 

見る所全てが怪しくて危険で……

ひたすら警戒しててもあらぬ方向から不意討ち、曲がり角で予想外の接敵。

そんな言葉で埋まってしまうのがコンクリートジャングル━━市街地戦の怖さだ。

 

「所で、スコーピオン?貴女残弾三割って言ってましたけど……

もっと狙って丁寧に撃ちなさいな。流石に無駄弾多過ぎよ?」

 

うげ、まーた始まった。

 

「別にいいでしょー?てか、私の武器サブマシンガンだし、狙って撃つ武器じゃないんだから。

バラ撒いて牽制して……最後に接近して弾を土手っ腹に叩き込む武器なの〜」

 

「に、しても!無駄弾が多いと言ってるんですわ。当たらないって分かってる牽制射撃にも拘らず、過剰なほど叩き込むんですもの。

特に貴女の銃はRPM(発射速度)が高いんですから気を付けなさい?」

 

「う、……分かったよ、顔近づけないて怖いから!これから気を付けます!」

 

ズイっと鼻がくっつくほどに、私へ近づけてきたStGの顔を押しやってどかす。

 

たく……全く美しくないとか、そんなの気にしないで良いと思うんだけど。

しょうがないじゃんか、両手からブッパなすの楽しいんだから。

 

「何か言いました?」

 

「べっつにー?……あ、集合地点見えたよ。次の通り越えたら到着だね。待ってるだろうし急ごっか」

 

「……はいはい。今ダミーを回しますわ」

 

隊列の先頭に居たダミーが通りの角へ向かい、そして覗きこんだ。

 

「どう?」

 

「……問題無さそうですわ」

 

「じゃ、お先」

 

二車線のそこそこ広いはずの道をを塞ぐようにぐじゃぐじゃで転がる廃車の間をすり抜けながら私と一体のダミーが対岸へと渡った。

 

十秒前後、様子を見てから同じようにStGも渡ってくる。

 

そこから少し歩くと、集合地点に指定しておいた五階建ての雑居ビルへ到着した。

 

「うん、時間ピッタシ。二人はもう中かな?」

 

「お二人の方が位置的には近かったですし、そうかと」

 

また、通信をペーペーシャに繋ぐ。

 

「此方、スコーピオン。

目的地についたよ、二人はもう中に居る?」

 

今度も数秒の雑音の後で直ぐに返事が帰ってきた。

 

『此方、ペーペーシャ。

既に三階、一番奥の部屋の305室に居ますよ。窓からそちらを確認しています。どうぞゆっくりお入り下さい』

 

「うんうん。じゃっ、通信切るね」

 

後ろを向いて、通りやビルへと警戒をしていたStGへ声をかける。

 

「それじゃ、中に入ろうか!」

 

「了解ですわ」

 

入り口の観音開きの扉をギギィと押して中へ入る。

ロビーには砕けたコンクリートや調度品が転がっている。

ここはマンションだったみたいで、ガラスの砕けた受付に沢山並ぶ郵便ポスト。片方のドアを失い、動くことのない箱がチラリと見えるエレベーター。

それに割れたオートロックの残骸、と。

 

正に廃墟って感じ。

 

「うぅ、埃っぽい……また汚れちゃいますわ……」

 

「もう気にしててもしょうがないと思うけど……」

 

小話しながらカツカツカツと階段を上がって三階へ。

廊下は開放的ではなく、壁と窓は打ち付けられた木の板で光は遮られ薄暗い。

 

時々、砕け落ちた破片を蹴り飛ばしながら一番奥の部屋、斜めに落ちかけの305が掲げられた部屋の前で止まる。

 

「ここだね」

 

コンコン、とノックをすればパタパタと言う足音がした後、扉が空いた。

 

「やあ、さっきぶり」

 

「お二人共に無事でよかったです……あ、どうぞ中にお入り下さい」

 

ギッ、とペーペーシャがくすんだ金属の扉を一杯に開けて私達を向かい入れる。

 

「これはどうも。さて、お邪魔するわよ?」

とか

「お、開いてんじゃーん!ここがペーペーシャさんの引っ越し先か~」

 

二人で軽く冗談やお礼を言ってから中へ入る。

ペーペーシャもクスリと笑いながら、汚いところですが。そんな返しをしてくれて扉を閉めた。

 

ビルの汚さと言うか、外見の割には広かったようで。

1DKの間取りの様だ。

 

玄関を土足のまま上がり、スライドドアを一つ開けると、そこには二体のペーペーシャダミーと椅子にちょこんと座って待っていたお魚さんこと━━護衛対象のSPP-1が居た。

 

「あっスコーピオンさんにStGさん!無事でなりよりです」

 

キラリと嬉しそうな笑顔を見せて、SPPが此方へと顔を向けた。

 

「へへん、あれくらい何て事ないって!」

 

「……その割には最後のダミーを失ってるわよね?スコーピオン?」

 

ギクリ

 

「えっ、それ大丈夫なんですか?」

 

「この娘、無茶してダミー突っ込ましてボロボロにした挙げ句、最後は敵とダミー共々手榴弾で汚い花火をあげてきたのよ」

 

「あっ、ちょっ!」

 

「一緒に爆発させたんですか!?」

 

「みたいですよ……?

さっき通信越しにスコーピオンさんから私も聞きましたから」

 

折角かっこいいって言われたかったのに!

二人がニヤニヤしながら……特にStGがSPP-1へあらましを説明していく。

 

「スコーピオンさん……流石に危ないですよ」

 

「いや、しょうがないって!もうボロボロでダミー持たなかったんだし……」

 

「それに絶対それ、スコーピオンさんの指揮官に叱られますよ?」

 

SPP-1の言葉でうぐっ、と狼狽えたところにニヤリと笑いながらStGが追撃をかける。

 

「壁として使うダミーとは言えそんな使い方は叱られて当然よ?ねぇ、ペーペーシャ?」

 

「えっ?あ、はい。そうだと思います。ダミーも安くないですし……

少なくとも整備班と補給係と指揮官から叱られて報告書兼始末書位は書くことになるのでは無いでしょうか……?」

 

え、マジ? そんな感じで皆一人一人へ顔を向けるけど……

 

「ひえっ、始末書はめんどくさいからいやだー!」

 

「あはは……ドンマイです。始末書はスコーピオンさんには向いてない任務かもしれませんが頑張るしかないですね」

 

「自業自得じゃない……あ、ペーペーシャ。その時、貴女は手伝いしちゃダメよ?少しは痛い目見ないと反省しないから」

 

「え、あ、分かりました。スコーピオンさん、ごめんなさい、ね?」

 

絶望である。助けはなかったのだ!

 

「……さて、冗談はここで止めましょ。

早く弾込めとブリーフィングして、グリフィン支配地に向かいましょう。私も早く帰ってお風呂と服を洗濯したいんですもの」

 

「それは私も同じですね!SPP-1さんを無事に返す、指揮官様から預けていただいた重大な任務ですもの……

終わったその後はのんびり休みを取りたいです」

 

「私も潜入で疲れましたし、同じ意見ですっ」

 

じゃ、とっとと取りかかった方がいいね。

 

「じゃあ、申し訳ないんだけど……

あるだけ弾をマガジンに再装填するの手伝ってもらっても良いかな……?」

 

「私達二人は既に終わっておりますし、このペーペーシャ、お手伝い致します」

 

「私にも任せて下さい」

 

「お二人はスコーピオンのを手伝ってあげて下さいな。私は私自身のをしてしまいますから。

あ、ペーペーシャ。私の一体玄関の外に半自立モードで哨戒させますわ。貴女は窓の方を」

 

「了解です、StG」

 

「二人ともありがと!じゃあ、やっちゃおうか!」

 

バックパックとダンプポーチからAmmoBoxに入った弾とマガジン、そしてローダー三つをテーブルへと出す。

 

「これだと…6本と半分ってところですか?」

 

「うーんと、まぁ、取り敢えずマガジンに入れてちゃって!殆ど空のはこっちに!

最後に余ったのから弾を抜いてから纏めて一本にいれて、空のは数本持ったら後は捨ててちゃうから」

 

皆がローダーへと弾を着け、マガジン内に押し込んでいく事に集中する。

とはいっても、手慣れた作業だ。

 

ガチャガチャと作業音を部屋に響き渡らせながら、素早く弾を込めていく。手慣れた、そう言ったように私達も慣れたもんだから10分もたたずに作業を終わらせる事が出来た。

 

「こっちも終わりましたわ」

 

「無事かんりょー!二人ともありがとーね!

あ、StG。私のは5割程度まで戻ったけど、そっちは?」

 

「元々そんなに予備持ってきてませんし、精々6割半程度って所ですわね」

 

ペーペーシャやSPP-1の残弾も5割程度って弾込め中に聞いたし……

うーんまぁ、大丈夫だとは思うけど。

 

「やっぱり、結構消耗してるね」

 

「そこそこ戦いましたからねぇ……

でも、残りの距離的に考えても約束の時間までに余裕を持って回収地点まで行けますし、戦闘を極力回避すれば問題ないかと」

 

「そうですわ。探知能力の高いSPPさんもいらっしゃいますし。難しくはないでしょう。

先程は奇襲に気がついてくださってありがとうございますわ、SPP」

 

先程の敵はSPPがギリギリで察知してくれたことによって不意の戦闘にならずに済んだ。

でもビルの中に、鉄血の人形と機械兵器が潜んでるとはねぇ……

 

「いえ、気にしないで下さい。

私は戦闘面ではあまり役に立てませんから、得意な任務で成果を見せないといけません」

 

「さて。じゃあ、改めてルートはどういたしましょうか?」

 

その問いかけに各自、電脳内で共通の地図を広げながら考える。

 

「でも、事前に手に入っていたマッピングデータと変わってましたね……」

 

「そうね、ペーペーシャ。特に道中のビル何ヵ所かは倒壊してしまっていて、通る予定だったルートが駄目になってしまいましたし」

 

「あー、あのビルが倒れてなきゃ今頃はゆったりのんびりグリフィンで休養出来てたのに」

 

「三十階クラスのビルが完全に倒壊してたせいで遠回りせざる得なくなりましたもんね」

 

「だよねーSPP?あれは本当に予想外だよ。

てか、このデータ今のところ信用ガタガタ何だけどこれ、鮮度古いの?」

 

「一応、出発一ヶ月前に取った衛星写真とUAVの観測データを元に作成したらしいですわ。

とは言え、最近鉄血も活性化していてこの地域もかなり荒れたそうですから、その影響だとは思いますが……」

 

電脳内のマッピングデータに事前のルートがすぅーっとと引かれていくが、道中で幾多の×マークがそれへと重なり、刻まれていく。

そこそこの所で倒壊なり、事前データと違う状態になっている場所だ。

 

「最近、あんまりいい話聞かないもんねー?

さて、無駄話はこの辺にして。当初のルートはダメそうなんだっけ?」

 

「はい、先ほど確認はしたのですが……

やはり、一部建物が倒壊してしまっていてスナイパーが潜んでいる危険性が高いかと。先ほど含め、既に三回も鉄血の哨戒部隊とも遭遇したこともありますし……

時間はかかりますが、より安全なルートを取るべきだと私は思います」

 

そうすると、ペーペーシャによってまた別の線が地図へとスルスル引かれていく。

 

「このルートだと予定の三ブロック隣を通る感じになるのかな?」

 

「はい。時間は一時間半程余計にかかる予定です。現在時刻は午前11時。道中で迂回や戦闘など余計にかかったとしても、午後5時前後には到着いたします。

回収時間は午後5時半ですから余裕はありますし、此方の方が平屋の建物が多く、地形的にも不意討ちも避けやすいです。

また、足元には比較的太い下水道が通っていますから緊急時にはそちらを使って離脱できます」

 

「私は絶対そんな緊急時来ないことを祈りますわ」

 

「StGさん汚いの嫌いですもんね……

私も流石に……水中専門とは言え、下水道はちょっとなぁ……」

 

まぁ、私も勘弁なのは同意する。

既に暫く人は住んでいない地域だし、未だましだとは思うが。

 

「ペーペーシャさんの奴が順当って所かな?」

 

「ですわね。SPPは何か意見あるかしら?」

 

「私は戦闘はからっきしですし、その辺りはお任せいたします。でも、このルートは退路も確保しやすいですし問題はないかと」

 

ペーペーシャは私達三人を見て、ほっとした様子だった。

 

「じ、じゃあこのルートで行きましょう。

時間も勿体ないですし、そろそろ動きますよ」

 

その言葉で皆が火が入ったエンジンの如く動き出す。

装備を整え、いざ戦場へ。

 

先頭と最後尾にStGとペーペーシャのダミーを置いて、真ん中に私達を配置する。

何かあったときには私はSPPを庇いつつ行動し、他の二人はダミーを囮にしてカバーするなり、一緒に逃げるなり反撃するなりしていく形だ。

 

護衛対象のSPPを隊列の真ん中へ置いて部屋から飛び出す。外からの狙撃を警戒しつつも軽快な速度で一列になって進んでいく私達。

 

慎重にビルの扉を開けて、外の世界へ。

警戒をして進み、お互いにカバーをし合いながら慎重に設定したルートに沿って歩みを進める。

 

「……クリア。ペーペーシャ」

 

「りょ、了解です」

 

路地や交差点が来れば、その都度死角に怯えながら覗き込み安全を確保する。それを繰り返し行う。

 

何度も言うが、やはり市街地は怖い。

全力へ反対のビルの壁まで駆け抜けて、自身が無事だった事にほっとしているペーペーシャの様子を見ながらそう思った。

 

「次スコーピオン、SPP行きなさいな」

 

「はいよ、じゃSPP?」

 

「タイミング任せます」

 

いくよ、声をかけてから一緒に遮蔽物の無い交差点を越えていく。

 

もし、ここでスナイパーに撃たれたら。

嫌な考えが常に頭に引っ掛かり続ける。

 

身を隠すものはこの交差点には何もない。被弾で行動不能になってしまえば……終わりだろう。

悲鳴をあげて味方を引き寄せる餌にされるなり、何もせず殺して貰えずに苦しんで逝く様をそのまま観賞される事だってあり得る。

 

前後をペーペーシャとStGが警戒しているし、信頼していない訳ではない、が。

怖いものは怖いのだ。

 

そんな考えは無駄に終わり、今回は特に何も起こる事は無く二人で渡りきる事が出来て、その後StGも無事に渡りきれた。

 

そんな事を繰り返しながら進んでみれば、そこそこ順調に行程は進んでいる。ふと、空を見上げれば、太陽は順調上ってサンサンと光輝いていた。

 

「今丁度12時です。んー、当初の予定より寧ろ早いくらいですね」

 

壁を背にし、前方とビルの影を警戒しながら進むペーペーシャがポツリと皆へ伝える。

 

「おー、てことは良い感じってことだね!」

 

「このまま何もなければ良いですね」

 

「……まぁ、後一回くらいは戦闘起こりそうな予感はしますわ」

 

「ヒィ……これ以上不毛な戦いは嫌ですよ……」

 

その言葉にビクリと体を跳ね挙げると不安にそうにキョロキョロしだすペーペーシャ。

 

そんな様子を見て、StGが思わず溜め息をついた。

 

「ペーペーシャ、貴女ビビりすぎよ」

 

「怖いものは怖いんですよぅ」

 

「潜入でもそうですけど、怖がりな方が生き残れますから……」

 

「まー、そうだよStG?

それに今はこんなんだけど、戦闘時にはしっかり動くのがペーペーシャさんだし問題ないって」

 

スコーピオンの言葉にガーン、とした表情を浮かべるペーペーシャ。

 

「それもそうね……さて、お喋りもここまでにしましょうか。

予定だと次の通りを右折後、そこから550m通りを直進。突き当たりの丁字路を左折ですが……

次の直進してる間の道は正面から撃たれた場合、ろくな遮蔽物が無いですわ」

 

皆で電脳内のマップを確認しながら考える。

 

確かに、この通りは嫌な感じだ。

脇は雑居ビルやコンビニで埋まっており、丁字路に当たるまで脇道は無い完全な一直線。

私達が来た方を考えないとしても、今歩く歩道上に正面からの攻撃を守れる遮蔽物は無いだろう。

脇の建造物の入り口や窪みに避けるか、路上の廃車の影か。

 

それに、だ。

 

「マップ見ると正面に八階建てのマンションが建ってるね、これ。うげ、おまけにこっち側が窓側じゃん」

 

「つまり、窓からスナイパーやらマシンガンにロケット兵器が置かれてたら逃げにくいし、一網打尽の可能性がある最悪の地形です」

 

SPP-1が補足的に説明してくれる。

 

「私もここは作成時、懸念してました。ですが、他ルートは建物の倒壊、地雷源等があって時間の制約で厳しそうでしたから……」

 

「気にしても仕方がありませんわ。どのルートでも一つ位は危険なポイントが出来てしまうものでしょう?」

 

「最大限警戒しながら進むしか無いよねー、結局」

 

「あ。隠れられてたら厳しいとは思いますが、一先ず私がサーチします」

一番高い索敵機能を持つSPP-1が手を上げる。

その言葉に皆がコクリ、と頷き行動開始。

 

先ずはダミーが覗き込み、安全を確認。

すると丁度良く、数十メートル先のビルに運転席部分を突っ込んで横転しているごみ集積車があった。

完全に歩道を塞ぐように横転している為、ビルからの射線を完全に隠せ、そして中身に機械が詰まっていて弾は抜けにくい。

 

正にぴったりの遮蔽物だ。

 

「……ついてますわ。先ずはあのごみ収集車の所まで進みます。ペーペーシャ、ダミーの先行をお願いしますわ」

 

「了解……では、行きますね」

 

ダミーが物陰から飛び出し、素早く壁に沿ってごみ収集車まで歩みを進める。

ダミーは銃声に晒される事無く、無事にたどり着いた。

 

すると、ダミーは手早くごみ収集車のチェックを始める。

 

「……IED無し。StG、進んで問題ありませんよ」

 

あの横倒しのごみ収集車が使える遮蔽物なのは敵も分かっているだろう。だからこそ、トラップが怖いのだ。

 

「じゃあ、行きますわ」

 

後は別方位をカバーし合いながら一人ずつまたは複数で素早く右折していく。

 

無事に撃たれる事無く、全員が影まで進む事が出来た。

 

「よし、取り敢えず来れたね」

 

「ですわね……

只、怖いのはここからですわ。私がスナイパーなら、撃つタイミングは脇に逃げられず、そして戻ることの出来ない所まで来た瞬間ですもの」

 

「じゃあ、そろそろ正面のビルを索敵しますね。

あ、センサー類に処理を全力で回します。正面以外には反応出来ないと思いますので援護お願い致します」

 

「了解!任せてよ!」

 

SPP-1が潰れた運転席側へと向かい、ビルと車の隙間からマンションへと視線を向けた。目の光彩の色が変わっており、センサー類を稼働させている事が分かる。

その間、私達はSPP-1の方を伺いつつも、回りへ銃口を向けて警戒は怠らない。

 

「一…二階までクリア……三階も……」

 

皆の電脳へ直接極近距離通信を使って、SPP-1の小さな声とデータが送られてくる。

 

「五階まで問題、無し」

 

四階、五階へと解析が進んでいく。今のところ問題はない。

 

送られてくる解析データが六階の右端から始まった、その瞬間だった。

 

「六階……え、ッ!?」

 

SPP-1突然驚きの声を上げ、そして慌てて体と頭を引っ込める。

 

そして私達は顔を見合わせた。

 

「え、と。その、皆さんへ同時進行でデータ送ってましたから分かってるとは思うんですけど……」

 

「そうね、でもこれは……」

 

戦闘時には、常にリーダーとして冷静沈着なStGも珍しく困惑している様子だ。

私もペーペーシャもその反応に無理もないと思った。

 

確かに私達が睨んだ通り、正面の八階建てのマンション。

その六階の部分真ん中に反応があったのだ。……あったのだけど。

 

「これ…その、SPPさん。間違いないですか?……あっ、SPPさんの腕を疑ってる訳じゃないんです!」

 

「気にしないで下さいペーペーシャさん。私もバグなのかと思って、先程から四回程再解析をかけましたから……」

 

「じゃあ、間違いないって事だよね……

で、皆どう思う?このデータが間違ってなかったら、六階に生きてる《人間》が居るんだけど」

 

人間、その言葉に皆が改めて顔を見合わせた。

SPP-1が送ってきてた解析データには、間違いなく六階部分の窓から立って此方を見ている人間の影が写っていたのだ。

サーモや画像解析その他諸々の結果からも機械ではなく、人間の男性の可能性大と出ている。

 

「この辺りって少し前までそこそこドンパチしてた地域だよね?」

 

「ですわねぇ」

 

「ここって一応緩衝地域だけどまだグリフィン支配地域より、鉄血サイドに近いよね?」

 

「はい、そうです」

 

「……んで、近いグリフィンの支配地域に民間人の居住エリアは無かった上、そもそもここ半径10km位は立ち入り禁止だよね?」

 

「で、ですね!」

 

「じゃあ、何でこんなところのビルに人間が居るの?」

 

「「「さぁ?」」ですわ」

 

予想外だよ、正に。

任務の内容もあって、細かく指揮官からの指令が受け取れない以上、事前指令や暗号化された司令データを順次状況に応じて解凍する事で進んできた私達だけど、こんな事態に落ちいるとは考えてすら居なかった。

 

「ど、どうしましょう?保護いたしますか?」

 

ペーペーシャが保護、その案を上げた。

実際に任務の際、正常であり反社会的では無い民間人を見つけた場合、最大限配慮をもって人命保護に当たるのが基本だ。

……しかし。

 

「今回の任務指令及び指示された交戦規定(ROE)には保護に関する記載が無いわね」

 

「こっちも改めて確認したけどやっぱり無いねぇ」

 

それが今回の任務に関しては、対処指示が存在して居なかった。

私達はずっと任務内容やら交戦規定(ROE)に従っていれば、ルーチン内で処理出来たことであり……自ら考えた事等一度たりとも無かったのだ。

 

「そちらの指揮官に通信繋いで聞いてみると言うのは?」

 

「んー駄目ね。規定で決まった時間とその他状況でないと繋げてはダメになってるの。後、ここでそんなデータ量の多い通信したら近くにいる敵にバレるわ」

 

「……そもそもこんな所に態々来たりするのってスカベンジャーもしくは反社会的武装集団……つまりは違法な連中が大半だよね」

 

「で、ですねぇ」

 

「……取り敢えず、撃っちゃう?」

 

「だ、駄目ですよ!?

それはグリフィンが規定する人形への交戦規定(ROE)に反します! 今回の任務で出された交戦規定(ROE)がグリフィンの規定に対しての優先命令が出ていない以上……人間への攻撃は手順に従わないと出来ませんっ」

 

「スコーピオン、流石にそれは駄目ですわ……」

 

「ご、ごめん!軽い気持ちで言った冗談!冗談だから!」

 

そこそこガチめに怒るペーペーシャとジト目のStG。そして、苦笑いのSPP-1に囲まれ、慌てて私は頭を下げて謝った。

 

「まぁ、それも一つの考えではありますが……

何れにせよ、相手から敵対行為が確認出来ない限り規定にしたがって、外見及び武装確認、警告、警告射撃の三つの手順を踏まないと危害射撃は出来ませんわ」

 

「一応、私のデータを元に外見、武装確認手順は踏めるので一段階目は問題無いかと。画像をみる限り、明らかに武装した男性だとは思われますが……」

 

「手に持ってるのはアサルトライフル(A R)……データ照合の結果を見限り、FAL系統の銃なのは間違いないね」

 

「7.62mm…フルサイズ弾ですか。……完全に此方は射程負けしてますね。私やスコーピオンさん、SPPちゃんでは撃ち合いになっても射程外です」

 

SPP-1は拳銃であり、水中銃だ。

ダーツ状の特殊な弾を撃ち出す特殊な銃であり、地上での有効射程は精々長くて15m~20m程度。

 

私とペーペーシャ、その認識名と同じ名を持つ、もう一人の自分と言っても過言ではない小さな相棒は相手の持つフルサイズ弾を撃てるライフルと違って、拳銃弾を利用するサブマシンガン(SMG)だ。

 

ペーペーシャこと、PPSh-41が使用する弾薬は7.62×25mm トカレフ弾。同じ口径の弾でも、弾を飛ばす為の火薬量、そして弾頭重量すら二倍以上小さく違う。その有効射程は150m~200m前後だろう。

私のVz61が使用する弾薬はそれよりも更に小さい .32ACP弾。有効射程はそれに比例してに短く、80m~100mあれば良い方だ。

 

つまり、謎の人間から撃たれたとしても、私達三人は反撃できないと言う訳。

無論、これらの有効射程は状況に応じて変わるしあくまでも目安的な存在ではある。とは言え、私達には約500mと言う距離は長すぎる。

まぁ、弾は飛ばそうと思えばマンションまでたどり着きはするだろう。本当に飛ぶだけでマトモに当たりはしないし、被害も与えられはしないだろうけど。

 

「私のStG44もこの距離は厳しいですわ。

……相手はFALですし、ポジション的にも不利ですもの」

 

StGの使う、StG44は所謂アサルトライフル(A R)の始祖と呼べるべき存在の銃だ。

弾薬は7.92x33mmクルツ弾を使用。有効射程も長く、300mは余裕で越えるだろう。セミ/フル切り替え可能の実に優秀な銃である。

だが、使用弾薬は中間弾薬と言われる存在であり、フルサイズ弾には到底パワーでも有効射程でも及ばない。

 

相手の持つFALは何度も出てきた、7.62mm×51弾(フルサイズ弾)を利用し、世界中で使われた歴史を持つ傑作銃だ。

フルサイズ弾を使用する関係で、フルオート射撃時には過大な反動によって射撃精度が見込めない、極地環境に弱い構造と幾つかの弱点はあれど、非常に優秀なのは間違いない。

 

セミオートでの単発射撃ならば素晴らしい射撃精度を持っているし、そもそも前世紀時に問題となった過大な反動も、今現在(2060年代)となっては最新の衝撃吸収材を利用したアタッチメントやら射撃支援システムやら新たな対応策が生まれている事。

そもそも撃つ存在が只の人間では無い事によって大きな問題では無くなっている。

 

つまりこの距離で撃ち合いになれば、相手が人間とは言えどStGが不利なのは間違いないね。

 

まぁ、なんだ。元から覚悟の上だったけど、人間とは予想外で変な空気になってるねぇ。

 

「さーてどうしよっか?てか、良く見るとこれアンダーバレルにグレネード付いてない?」

 

「着いてますわねぇ。恐らく、GP-25……いや30かしら?」

 

「それどっちでも対して変わらないんじゃないですか?」

 

「ひぃ!?

何でそんなに三人共冷静で居られるんですかぁ!下手しなくてもこれ40mmで吹き飛ばされるんですよぉ!」

 

「まぁ、慌ててもしょうがないじゃん?んで、こんな過剰装備してるんだし、規定を……無理か。拒否されたよ」

 

攻撃への処理を行おうとしたが、規定文の乗った警告と共に、処理の強制シャットダウンが行われた。

 

「そんなので突破できたら問題になりますわ」

 

「ダメ元ダメ元。あー、爆薬も無いから建物の壁を粉砕して進むのも出来ないし、出来るだけ壁に隠れつつ沿って進むかそれとも戻るか。その二択だね」

 

さて、どうするリーダー?

 

そう、StGへ問い掛けたその瞬間だったと思う。

 

プツリ、そう音をたてて、私達全員へと基本人形のみが使う'筈'の通信へ接続された音が響き━━

 

『あー、テステス。……よし。えー、収集車の影に隠れてるグリフィンの皆さん。キチンと俺の声が聞こえてますかね?』

 

 

暢気そうな男の声が私達へ響き渡った。

 

 

 




ちょっと遅くなりました。

この作品勢いで書いてたもんだから、当初の設定ふわふわ。
ドルフロって年代とかあるし、事件によっては何々の何ヵ月後とか何日目とかそこそこ細かい時間経過が出てくるので、時系列とか所謂プロットの整合性纏めたり……
今後の展開どーしようとか悩んでワクワク書いてたらそっちが楽しくなっちゃってました。

一応、今回は長くなったので途中でぶったぎっておしりをまとめて投稿してます。
これでやっと可愛い戦術人形達を出せました。
SPPとペーペーシャの口調が凄い脳みそに刻まれなくて、書くの辛いです。
何故俺はその二人を選んだのか……

あぁ、後は合コンおねーさんと三十代ケモミミさんを出して、何とか小隊のイチャイチャを出せれば満足だ……


しかし、何度投稿済み含め、見直し修正してもその度に新たなミスが見つかるので辛いです。
それと、間違ってその時にタイトルの道中記部分削除しちゃってたりね。
最初はそれでもいいかな~、何て思ってたけどやっぱり戻しました。
後悩んでいる事はスマホとPCでの見方の違い。スマホで書くと改行必要かなーってなるけど、PCで読むといらない過剰な改行と化してしまってることしばしば。これどーすりゃいいの。

誤字脱字報告には感謝感激いたします。
また、厳しい感想や優しい感想含め、いろんなご意見お待ちしております。

早く続きを書くのを頑張るぞい
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