滅びかけの世界で道中記   作:湿気った銃弾

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ゲーム本編の章部分にある様な言葉回しを書くのを諦めました。あんな素敵なのポンポン思い付きません……
もし出れば本文に追加し、これからは前書き部分は前書きとして普通に使います。

今回の話は時系列的に1頁目の前になります。


6頁目

グラスを傾け、僅かにとろみを持つ透明の液体を少しずつ口内へ流し込む。

ボタニカルの薫りが自然と噴き抜け、複雑に混ざり合って調和する味を舌先で楽しんだ。

そして、するりと喉奥へと落としこめばーー途端にカッとしたアルコールの暖かさがお腹の中を暴れまわり……徐々に沈み混んでいく。

椅子の上で身動ぎをすれば右手に収まるグラスの中で、裸になった大粒の氷が一つ、寂しそうにカラリと音を立てて転がった。

 

グラスをテーブルへ戻し、霜が着く酒瓶の口を開けて傾ける。

とろとろと氷を伝いグラスに注ぎ込まれ、高さ3-4cm程のアルコール製の湖が再び姿を現す。

その中で浮かぶ氷を指先でクルリと回せば……先程とは違う…少し鈍く、でも何処か心地の良い氷の音が鳴り響く。

 

しかし……私も彼に悪い楽しみを覚えさせられた物だと思う。

最初は全然、美味しいとも感じなかったモノだと言うのに。

今となってはこうやってお酒を……しかも度数が40度前後あるジンを何も割らずに、そのまま味わい、そして楽しめる様になってしまったのだから。

 

薄暗い間接照明によってぼんやりと照らさせる地下の小さな小部屋で一人、また一口、また一口と再度グラスを傾け、ちびちびと注がれたジンを飲み続ける。

 

名残惜しい、が。今あるこれをラスト一杯としよう。

折角、遂に見つけた彼のセーフハウスで確保した良い酒なのだから……大切にしないとね。

まだこれは安い部類に入る物で、そもそも少し位なら勝手に飲んでもあの人は怒らないだろうけど……どうせ飲むなら一緒に楽しく飲みたいモノでしょ?

 

メンバーの中で純粋に酒を楽しめるのは(45)と指揮官、その二名だけ。

9(ナイン)は未々アルコール独特の苦味が苦手な様で、甘いカクテルやシードル、後は白ワイン位しか飲まない。

G11も同上と言った感じだけど、意外な事に9に比べたらかなり飲める方ではある。

でも、二人共にお酒よりジュースがあるならジュースを選ぶだろう。

それに、純粋に酒その物を楽しんで居ると言うよりかは、彼が嗜む故に同じ楽しみや時間を得たいと言う欲求の方が強いのだから。

 

そして、416は…416は…………うん……

私からはノーコメントって事にしといてあげよう。一応、彼女も飲めるには飲めるのだけど……ね?

 

おつまみとして添えておいたカルパスをひょいっと口のなかに放り込み、咀嚼する。

口の中を支配していたジンの空気に、硬い肉の荒々しい塩と油の味が広がり……良い具合に混ざりあって変化を起こしてくれた。

 

少量のジンを再び口に含み……手を動かしてグラスの氷と液体(ジン)の動きを目で楽しんでから、油と共に喉奥へと流していく。

 

グラスの中をゆらゆら巡るジンの僅かな残量と小皿に残るカルパスの本数を数え、チラリと水滴を垂らす酒瓶を見つめる。

しかし、こうして瓶を見つめていると……彼と二人きりで飲んだ時間を思い出す。

のんびりとお互いにグラスを傾け、その味わいを楽しみながら……映画や日常の出来事を肴にして会話を楽しんだ大切な思い出を。

 

なんだかもう一杯位、飲みたい気分になっちゃった。

 

そぉーっと手を伸ばし、右手が酒瓶を掴んだーーその瞬間、バタンと扉が勢いよく空いたではないか。

思わず、体を跳ね上げながらそちらを見れば……9が勢い良く両手で押し開きの扉を跳ね開けて中に入ってくる所であった。

 

「45姉!ここに居……って、あー!また勝手に指揮官のお酒飲んでる!」

 

椅子に座る私の方をビシリ!と指差しながら部屋の中へ。

そのままそちらを見つめ若干固まっている私の左横まで来ると、小皿のカルパスへ手を伸ばし……自身の口の中へひょいと投げ入れる。

 

「もぐもぐ……あまり飲み過ぎちゃうと指揮官に怒られちゃうよ?」

 

私の右手に収まる、中身が2/3にまで減ってしまった瓶へチラリと視線を向けながら、9がボソッと耳元に告げた。

 

「……そう、ね。これ位で止めておくわ」

 

確かに9の言う通りである。

手に収まる瓶を見れば……じくりと波紋のように罪悪感が私の中に生まれ、じわじわと広がっていく。

あの人が少し飲んだ位で怒る程、心の狭い人では無いとは言え……決して良いことでは無いだろう。

少し、利己的になりすぎてしまった事を恥じる。

 

隣に立つ9へと、テーブルの上を滑らせるようにして瓶を渡した。

9が瓶を受けとり……顔の前へ持ち上げ揺らしながらまじまじと見つめ、表のラベルをトントンと指先でつついた。

 

「でも、指揮官に45姉も良くこんな……ジン?みたいな強いお酒をそのまま飲めるよね?

私はオレンジジュースで割ったのとかじゃなきゃ飲めないよ~」

 

指揮官が初めて9に振る舞ったジンのカクテル……確か、名前は。

 

「オレンジ・ブロッサムの事?」

 

「そうそれ!あれば美味しかったなぁ~

……アルコールの苦い感じもそんなしなかったし」

 

9(ナイン)もまだまだ、お子様ね?」

 

「むぅ……って!いけない、いけない。

用事を忘れるところだった!」

 

とてとてと歩き、他のお酒も並ぶスモークガラスの扉が付いた棚へ手に持ったジンをしまってから、クルリと此方へ顔を向けた。

 

「情報を取りに行ってた416がさっき帰ってきたよ。……何だか興奮した様子だったし、多分指揮官について手掛かりを得られたんじゃないかな?」

 

「そう……で、416は11の所に?」

 

今の時刻は21時を少し過ぎた辺り。

早寝遅起のG11なら自室で既にモゾモゾと芋虫になっている時間帯だ。

 

「まぁね~?指揮官の寝袋取ってきてからからずっとそれで寝てるもん。

……あー、わかったよ45姉。ちょっと先いって416の手伝いしてくるね」

 

流石は9、私の意図をキチンと理解してくれる。

カルパスを一つ取って、9へひょいっと投げ渡す。

放物線を描いたカルパスは、狙った通り9の顔の前へ飛んでいきーーパシッと片手で受け取ると……ニコりと笑った。

 

「もう一つあげる。これ飲み終わったらすぐに行くから……本当にありがとうね」

 

カルパスをもぐもぐ咀嚼する9に、笑顔で色々な意味を込めたお礼を伝える。

 

「45姉……じゃあ、私は行くね?

416と一緒に11を引き摺ってリビングで待ってるから早めに来てよね~」

 

そう言い残して、手を降りながら9が扉の向こうへと消えた。

数分間、ぼーっと手持ち沙汰にグラスを回し、流れに巡る小さくなった氷を見つめながら気持ちを固める。

……さて、私もこうして感傷に浸り酒を飲んでいる場合では無くなった訳だ。

グラスの中にある僅かなジンを一口で飲み干し、テーブルの脇に置いてあったミネラルウォーターのキャップを開けて、半分程を一気に流し込む。

一気に流れ込んだアルコールの鈍く熱い広がりが水によって徐々に薄まり、消えていく。

 

椅子から立ち上がって、グラスやペットボトルの水に空になった小皿と使っていた物を纏めてテーブルの脇へと片付けながら、同時に体内の調整も行う。

私達人形も処理設定次第では酔おうと思えば酔える…が、今は酔っている場合では無いのは明白でしょ?

だから体内の生体処理やナノマシンの設定をいじり、アルコールの処理を最大限に行う様に。

 

さぁ、早く行きましょう。

……上から寝てたであろうG11にドッタンバタバタと暴れる音がこの地下室で聞こえる位に416が熱くなっているのだから。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「何時も通りグリフィンの情報を漁ってたら、こんなものを見つけたの」

 

私達のセーフハウス、そのリビングの一室で416が端末を弄り……壁掛けのモニターへ情報を写し出す。

 

それをソファーに共に座る9と(45)。そして床に寝袋の上から縄で縛られて簀巻きとなっているG11の三人が見つめた。

 

そこにはグリフィンの戦術人形部隊が緩衝地域にて鉄血と戦闘を行った際のデータが写し出されている。

端から幾つかの通信ログや戦闘報告書……それに添付されている10枚前後の画像や動画と言った物で画面が埋まる。

その内の大半の画像は人形の目線から取った見慣れた戦闘を写したものであるが……

その中に三枚だけ、明らかに放置され荒廃を続けている緩衝地域には似合わない、ある程度整い家具や物が並ぶーー部屋を写し出した画像があるではないか。

 

その画像に移る部屋の物を見て……私達は一瞬で把握した。

 

「「「指揮官のセーフハウスね」だよね?」だね……」

 

私、9、G11の声が同時に並び、重なる様に飛び出す。

壁に大穴が空いて中へとコンクリートの破片が転がり込み、部屋の中が多少荒れてしまっているとは言え……

指揮官好みに作られた家具配置の雰囲気や酒にゲーム機が並んでいる様子を見れば私達が分からない訳がない。

 

「どうやら偶然、戦闘中にビルの一部が崩れて見つかったみたいね。

ーーでも、指揮官の部屋に勝手に知らない奴等(人形)が入り込んだと思うだけで虫酸が走るわ……」

 

リモコンをグリグリ力強く押しながら、416が画面を切り替えていく。

次に現れたのは、位置がポイントされた地図と発見された日時などの情報の詳細が報告書の文と共に書かれた物であった。

 

「……私も同じ。でも今は見つけてくれた事を少しだけ感謝しなさい。

見る限り発見は二日前…随分と報告書が上がるのが早い。それで、場所はここからだ、と……車と徒歩で6-7時間位かしら?」

 

「この報告書を作成した担当指揮官が真面目な奴で良かったね……って、酔うから辞めてよ9(ナイン)……」

 

そんな呟きに釣られ、そちらを見れば……9がソファーから身を乗り出し、簀巻きのまま床に転がるG11を面白そうに手で左へ右へとコロコロ動かしていた。

 

「指揮官の事なのにすぐ起きない11への罰だよー?ほれほれ~」

 

「う、ぅ……世界がぐらぐらするぅ……助けて416」

 

「ふん。……9(ナイン)?後五分はそうしてもらえるかしら」

 

「鬼!悪魔!完璧主義者(416)!って、本当に酔う…酔うから……!45、二人に何とか言ってよ!」

 

残念ながら無情にも蜘蛛の糸は足らして貰えなかったようだ。

……とは言え、これ以上グタグタするのも決まらない。

報告書には、【その場が落ち着き次第、余裕があれば見つかった部屋を調査をしたい】と希望が書かれていたのだ。既に二日も時間が過ぎている。

のんびりしてはいられない。

 

パンパンと二回、強く手を叩き……皆の意識をこちらに集める。

 

「はぁ……これで終わりよ。そろそろ真面目に話をしなさい。9(ナイン)、縛ってる縄を切って」

 

「はぁーい」

 

スッと上着のポケットから折り畳みナイフを取り出し刃を出すとーースッパリ、縄を切り裂いた。

力尽きるように拘束していた縄が散らばり、ニュルリと11が寝袋から這い出てくる。

 

「た、助かった。ありがと45……」

 

大切そうに寝袋を畳み、寝袋に繋がってぶら下がっていた収納袋へしまうと、それを胸に抱きながら隣にある一人掛けの椅子にドッカリと座り込む。

 

「そう?

ならお礼に明後日の布団(元指揮官の)で寝る権利の交代ね」

 

その言葉に、バッとまるでこの世の終わりの様な表情を見せて此方に振り向き固まった。

 

「…………冗談だよね?」

 

「私、あまり冗談好きじゃないの11も知ってるでしょ?

……ちょっとした罰よ。少しは何時も起こして貰ってる416に申し訳ないと思って反省しなさい」

 

「えへへ、11怒られてる~」

 

先程の表情のまま、私と416の間を視線をふらふらさせ……諦めたのかボスりと寝袋に顔を突っ込んだ。

 

「おかしい……ここ、セーフハウス(安全地帯)の筈なのに周り敵しかいない……」

 

「私は貴女の目覚まし時計じゃないのよ。何時も指揮官の寝袋を独占してるのだから少し位は我慢しなさいな。……さて、話を進めて良いかしら?」

 

416が再び、リモコンをいじると画面の地図の縮尺が少し広がり、地図上へ新たに幾つかの円と二つの赤点が追加される。

 

「地図上の円は今グリフィンと軍が作戦進行中のエリアになるから……所詮、進入禁止エリアね。

改めてこう見ると……本当、素晴らしい位良い隙間に指揮官はセーフハウスを構築出来る物だわ」

 

「その赤い点は前に私達が見つけた指揮官のセーフハウスだよね?」

 

9が二つの点と新たに見つかったセーフハウスの地点を指で線を引くようになぞりながら問い掛けた。

 

「そうね。これが一番最初に見つけて……恐らくメインで指揮官が扱ってたあろう地下室のセーフハウス。

で、こっちが二番目に見つけたマンションの中にあったやつよ」

 

リモコンについたレーザーポインターでなぞりながら416が説明していく。

一番目と二番目についた点は比較的近距離であったが……新たに見つかった所はそれに比べそこそこ離れている地点にポツンと浮いていた。

 

それが指す意味は。

 

「……これ、地区を移動してない?」

 

「何、って事は今まで探してた所にはいなかったの……?眠いの我慢して頑張って歩いたのに……」

 

「そう言うことになるわ。我らがリーダーが一杯食わされるなんて……流石は指揮官って所かしら?」

 

416の視線を感じながら、じっと画面の地図を見つめて考える。

私達は数ヶ月前……居なくなった指揮官の地下室セーフハウスを一つ見つけてから……その地区周辺を主に探してきた。

 

実際、二件目のセーフハウスも無事に発見出来た事。そして何より、その後も指揮官らしき闇市での目撃情報や電子通貨の取引記録と言った幾つかの痕跡を見つけていたからだ。

とは言え、だ。

少し指揮官にしては足跡が見つかりすぎとは思っていたけれど……本当に流石よ。

 

「……ふぅ、流石は指揮官。一筋縄じゃ行かないなー」

 

「で、どーする45姉?」

 

皆の顔をゆっくり見渡し……立ち上がり命令を下す。

 

「先ずは、新しく見つかったセーフハウスに向かうに決まってるじゃない。

……さぁ404小隊各員準備しなさい。

市街地戦装備で今から2時間後を目安に出発。明け方…0700時前後には目標地点に着くように動くわ」

 

「了解、移動手段は?」

 

「確保してある使い捨ての足を使うつもり。……9(ナイン)、準備少し早めに終わらしてもらっても良いかしら?

一緒にγ2のガレージに置いてある車を取りに行きたいから」

 

「おっけー!γ2γ2……あ。あのおんぼろ装甲車ね!」

 

「ドローンはどうする……?」

 

「そうね…熱感知の付いた飛行タイプが二機もあれば十分よ」

 

「分かったよ……うーん、使い捨て出来るそこそこ安いのにしとくよ」

 

「大体決まったかしら?

収納ケース類はついでに私が用意しておくわ。もし、追加で何かあったら小隊の共通チャンネルにリスト上げて……それじゃ、お先に」

 

持っていたリモコンをテーブルに置くと、ひらひらと背中越しに手を降りながら416がリビングから出ていき、それに着いていく様にG11も出ていく。

 

「じゃ、準備終わったら連絡するね!」

 

シュタタ、と駆け足で9も部屋から飛び出していった。

 

さて、私も急いで準備するとしよう。

EMPグレネードに緊急用の爆薬(C4)類は私が用意する役割だ。

それに帰りはもしかしたら日が暮れている可能性もあるのだから夜戦装備も忘れてはいけない。

必要な物を脳内でリストアップし、同時に各員へ伝える為共通チャンネルにも上げておく。

 

ーー彼へ繋がる新たな手掛かりが私達を待っている。この機会を絶対に逃がしてはならない。

その為に迅速かつ完璧に準備を済ませる。

 

 

だから… 待っててね指揮官?

 

 

 




先週の水曜日分のロスタイムを換算することにより、実質日曜日投稿成功したと見なすので、ギリギリ一週間投稿成功です()

やっと、404の皆さんを出せました。
時系列的には、一頁目に出てきたぷれいす爆破後の少し後の辺りです。後数話位は過去の話やっていこうと思います。

因みに45がお酒大好きマンになってます。
私の個人的な趣味バリバリです。酒の内容もバリバリ個人的な趣味です、自分……特に蒸留酒好きなんで……(駄目人間)
45としっとり飲むのもいいし、M16姐さんと笑いながらウィスキーかっくらう様に飲んでみたいですねえ……

尚、今出先で投稿してるので後日後書き含め、細部の修正は出てくると思いますの。

誤字脱字報告や厳しい感想や優しい感想含め、いろんなご意見お待ちしております。
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