ドSの銀髪美少女が姉になった 作:睡眠欲求者
プロローグの少し前
突然だが、聞きたい。ある日、突然美少女の姉ができたらどうする?
何を言っているのかわからないと思うが、俺はそんな摩訶不思議な出来事に出会ってしまった。
あの雪の日に―――
俺は、ある日訳あって坂柳という家に引き取られた。引き取った、坂柳氏は高度育成高等学校の理事長をやっている。何でも、卒業生は希望する進路をほぼ100%認められるというふれこみらしいが胡散臭いにもほどがある。大抵、100%なんて数字には裏があるものだ。しかし、そんなことは大した問題ではない。俺にも関係ない話だ。
「紹介しよう、娘の有栖だ」
そこには、銀髪の美少女がいた。端正な顔立ち、ほんのりと上気した頬、吸い込まれてしまいそうな蒼色の大きな瞳。まさに絶世の美少女であった。もう俺のテンションは上がりまくりだ。新しい環境に対して不安を感じていたが、中々良い感じのような気がする。
「有栖は、心臓病を患っているため医師から一切の運動を禁じられていてね、歩行時には杖の使っている」
「有栖です、よろしくお願いしますね流都君」
「よろしく…何と呼べばいい?」
「………そうですね………私のほうが上なので『お姉ちゃん』と呼んでくれてもかまいませんよ」
そう言って、有栖はいたずらぽく笑みを浮かべる。普通なら、一瞬で恋に落ちてしまうであろうその笑みを俺は素直に喜べなかった。一瞬で、興奮が冷めていくのを感じ………警戒心が高まってきた。
確かに、パッと見は美しいだけの笑みだ。だが、その目は笑っていなかった。そこにあるのは、強者が弱者を見る目だ………昔、さんざん見てきたあの目だ。神経が泡立つのを感じる、不快な目だ。あの頃をほうふつとさせる。頭に血が上がった。
「じゃあ、有栖と呼ばせてもらうよ。それに上なのは俺の方だと思うけどな~」
先きのセリフ、つまり年の話ではなく『実力』が上だといいたいのだろう。
「ほー、そうですか。では、流都君。
「
「そうです、勝ったほうが相手に何でもいうことを聞かせることができるというルールで」
言いたいことは理解できた。ねじ伏せてやるからかかって来いということだろう。好戦的なことだ。だが、いいだろう。上等だ。
「何をする?」
「そうですね、私はこの通り動けませんので運動系はなしにしてもらいたいですね」
「なら、坂柳氏から一つ、案を出してもらうのはどうだ?」
「良いでしょう」
有栖は、恐ろしく妖艶な余裕の笑みを浮かべた。
坂柳氏が提案したのはチェスだった。しかし、言うだけ言ってあとは二人で楽しみたまえと言ったきり、仕事場に戻ってしまった。
有栖と向き合った状態で座る。
「では始めましょうか」
「ああ」
チェスは、個人的にだが性格が出る遊びだと思う。もちろん絶対とは言わないが、少なくとも有栖は駒の動かし方に性格が出ている。凄く好戦的、攻撃的なコマの動きなのだ。しかし、その実完璧に道筋が見えているらしくて気が付いた時には結構追い詰められていた。
「流都君、あなたはチェスは好きですか?」
「………嫌いではないが、どちらかというと将棋のほうが好きだな。有栖はどうなんだ?」
盤面を見ながら、有栖に問い返した。
「私は好きですよ。駒を動かし、相手を完封した時の快感はたまりません。まあ、それは現実でも変わりませんが」
そう言いながら、俺のビショップを取る。昔なら、俺もチェスを好きだといっていただろう。だが今は違う………
「チェスは、
「ほー。中々、興味深いお話ですね」
次第に、有栖の顔を見る余裕もなくなってきて、必死に頭を回転させた。
しかし、何をどうやっても勝てるビジョンが見えなかった。しかし、リザインする気にもなれずずるずるとやっており、結局その勝負は三十分にも及んだ。結果は俺の敗北だったが。
「フフ、大口をたたくには少し実力不足でしたねぇ~。ですが久しぶりに楽しめました。しかし、これであなたは私の言うことを一つ聞かなくてはありません」
そう言い放つ彼女の顔は、凄く楽しそうだった。それは征服感からくるものか、退屈を忘れたことへのうれしさなのかは分からない。そして同時に恐怖する、どんな無茶な命令をされるのか。
「ルツ、あなたはこれから私の言うことには絶対服従です」
予想以上にきつい命令に思わず顔が引きつる。しかし、有栖は「ただし………」と続ける
「これから先、また私とあなたが勝負することもあるでしょう。その時、私に勝てればこの命令は取り下げて差し上げますよ。何でしたら、私に何でも好きなことを言ってもらって構いませんよ?」
驚きで、固まった。つまり、彼女はこういっているのだ。
『これから先も私が負けることなんてないでしょう』っと。
「ハハハハハ」
余りの傲慢さに、笑いが出てしまう。なめやがって………とは思わない。それだけの実力を備えていた。だが………
「吐いた言葉は呑み込めないぞ………覚えておけよ!坂柳有栖」
「ええ、忘れませんよ。それから有栖ではなくお姉ちゃんです」
再びフリーズ。この女は、思春期真っ盛りの中学生男児になんていうことを言うんだ。
「………俺と有栖は同い年だ。誕生日が2日遅いだけで………「お姉ちゃんです」………」
「それは、命令だよな?」
「はい」
良い笑顔でそう答える有栖の顔は、本当に可愛いい。
しかし、それとこれとは話が別だ。高校入学までに、何としてても勝たなければ。
「それと、これは強制ではないのですがどうして『あれ』を使わなかったのですか?」
ピクッ。体が勝手に反応した。
「あなたの体質は、父から聞いています。使えば、もっといい勝負ができたかもしれないのに」
「ノーコメントで」
俺は、答えなかった。否、答えたくなかった。
「まあ、いいでしょう………時間はたっぷりとありますし」