ドSの銀髪美少女が姉になった 作:睡眠欲求者
橋本視点
俺は、勝ちあがるために坂柳のグループに入ったんだ。俺は約束されたAクラスが欲しい 。2000万ポイント貯めればAクラスに移動する権利が買える。それを手にした生徒は安泰、誰もが羨む状況だ。
しかし現状はそれは難しい。だから、価値がありそうな有能なやつに取り入り、寄生することにした。当然必要とあらば坂柳を売る覚悟もある。ただ現状坂柳を売るのは安くない。今のところクラス内に坂柳より上に立てる人間はいない。そうそう、坂柳が崩れることはないだろう。そう思っていた。
だが、坂柳の弟、坂柳流都と過ごして少し認識が変わった。
俺は、坂柳に坂柳流都を手伝うように坂柳に言われ、無人島生活で流都の指示通りに動いた。印象としては、やはり姉の方が優れているという印象を最初に受けた。だが、
『そんな顔をするなよ。得意だろ?っていうか、必要に駆られれば坂柳派の情報も売りかねないだろ君?』
きちんと話したことはないのに、一瞬で見透かされたんだ。俺の考えも、理念も行動も。
正直、あの時の流都の瞳からはぞっとするほどの何かを感じた。だが、現段階ではどうしても姉のほうがやはり優れていると判断せざるを得ない俺は少し試す意味合いを含めて
『坂柳さんがいないんだし、そこまで望むのは高望みってやつだろ』
と挑発した。流都が、姉に対して劣等感みたいなものを感じているのは分かったから必ず乗ってくると思った。そして、案の定流都は乗ってきた。これで、あいつも判断できる。そう思っていた。
結果から言えば、あいつは見事Bクラスに並んで見せた。それも、弥彦蹴り飛ばし負傷させることでリーダーを当てられることを防いで見せた。その手法もさることながら、最も戦慄したのは弥彦を蹴り飛ばした時のあの男の顔だ。
加減はしているようには見えたが打ち所が悪ければ、死んでいたかもしれない………そんな蹴りを入れておきながら表情には全く罪悪感がなかった。少なくとも俺には罪悪感なんてないように映った。ただ、勝つためだけに弥彦を躊躇なく蹴り飛ばしたのだ。
その冷徹さは、坂柳有栖を彷彿とさせた………いや、もしかしたら………
坂柳流都は、今よりも成長すれば坂柳有栖にその爪を立てることができるのではないかと思わせる何かを持っていると感じさせられた。であるならば、今の陣営が完全に安全だとは限らない。
現状では素晴らしく有利な陣地にいるのだ。それは変わっていない。しかし、手は打っていくべきかもしれない………世渡りは得意な方だ、うまく風上に立たせてもらいたいものだと改めて考えた試験だった。
「ご苦労様でした」
試験が終わり、疲労でグロッキー状態の俺に有栖は話しかけてきた。体の節々が痛い。頭もいたいし、船酔いも気持ち悪いし。最悪だ。
「ここ、俺の部屋なんだけど」
「ええ、他の方のは出て行ってもらいました」
笑顔で、言う有栖。何を言って、出ていかせたのだろう。
「その様子だと、かなり今回の試験は負担だったらしいですね」
「ああ、有栖お姉ちゃんがだいぶ無茶なことを依頼してきたからな。無理する羽目になった」
「よい結果でした。お見事と言っておきましょう………葛城君の失脚だけで終わるかと思っていましたがBクラスに並ぶとは」
「………有効策は最初に浮かんではいたんだ。おぼろげだけどね。まあ、賭けの要素は強かったけどさ。運がよかった」
「運も実力のうちと言いますし、今回は良いでしょう。そんなに拗ねないでください」
どうやら、俺はだいぶ拗ねているように見えているらしい。いや、だいぶ拗ねているだろう。最善策ではなかった。有栖なら、もっといい考えが浮かんでいただろう。
はっきり言って、今回の龍園が持ち掛けた契約は受けるべきではなかった。あまりにもデメリットが多すぎる。龍園は、この先大して行動をしなくても2000万ポイントを手に入れることができるだろう。
「私はこの夏休みの試験では派手に動くつもりはありません。ですから、多少の失点は問題ないのですよ」
「動くつもりがない?」
「ええ、この夏休みは葛城君の勢力を削ることに集中します」
憐れ葛城………。天使の皮をかぶった悪魔を敵に回してしまったばかりに、完全に心が折れるまで潰されることだろう。
「恐らくこの後も試験はあるでしょう」
「………………」
「せっかくです。次の試験も葛城君に任せてみましょう。流都もあまり頭が回る体調ではないようですしね」
「ハハハハハ………ハァ、すみません」
「おや、素直なのはよくありませんね。虐め甲斐がない」
「ああ、そうかよ」
「まあ、いいです。疲れているでしょうから、今は帰りますのでゆっくり休んでください」
そう言って、有栖は出て行った。
「あら?待っていたのですね?真澄さん」
「珍しいわね。あんたが、弟をいじめないで出てくるなんて」
「本当は、虐めたかったんですよ。ええ、ゾクゾクとこみあげてくるものをこらえるのは苦労しました。フフ、弱っているところを隠そうと強がっているところなんて、いじらしくてつい踏みつけたくなってしまいました」
「………」
うっとりと顔をほころばせて、嗤っている坂柳を見て神室はドン引きしていた。それと同時に流都に同情していた………それはもう、これからは優しくしてあげようと心に誓うぐらいに。
「ですが、あの様子だと相当きているようだったので、許してあげました。木偶の坊になってもらっては困りますので」
「あんた結局、弟は好きなの?嫌いなの?」
「フフフフ、決まっているじゃないですかもちろん――――――――」
やっと三巻が終わりました。次から四巻ですね。今度からは、少し他の人の視点でも書いてみようと思います。
ちなみに、最新刊読みましたか?全体的に、中々考えさせられる内容でしたね。もう最ッッッッッッッッ高に有栖がかわいかったですよね。
あと、神崎君のホワイトルーム説どう思います?