ドSの銀髪美少女が姉になった   作:睡眠欲求者

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第14話

「どういう意味だ?」

 

「言葉のままですよ」

 

船内のラウンジの一角は地獄絵図となっていた。葛城の背後には葛城派の人間が、有栖の背後には坂柳派の人間がそれぞれ控え、双方にらみ合っている。

 

「今回の試験は葛城君の方針に従います」

 

「何が狙いだ?」

 

いぶかし気に有栖を睨む葛城の顔には余裕がなかった。焦っているわけではない。葛城は決して油断してはいけない相手であることをここ数週間で再確認したのだ。

 

「いえ、何も狙っていませんよ」

 

「そんなわけないだろ!また葛城さんの邪魔をするに決まってる!」

 

「いえ、そんなつもりはありませんよ。心外ですね」

 

介入してきた弥彦には目もくれず葛城から視線を外さない有栖。それは、弥彦にとっては侮辱以外の何物でもなかった。

 

「しいて上げるならば、葛城君には挽回していただきたいと思っています」

 

「………」

 

「私の派閥の人間が気になって力が出せなかったというのであれば、私の派閥が気にならなければ勝てるということですよね?」

 

それは明確な挑発。自分は手出しをさせないからどうにかして見せろという挑戦状だ。葛城はそれを理解しながらも、答えを迷った。それが本当にAクラスのためになるのか判断し損ねたからだ。そんな葛城の思考を知ってか知らずか有栖は続ける。

 

「今回の試験葛城君の方針に従うと約束しましょう。ただし、負けた場合はそれ相応の代償を払ってもらいます」

 

「代償だと?」

 

「ええ、そうですね……龍園君との契約で支払うことになったプライベートポイント。私の分を葛城君に支払ってもらいましょうか」

 

「な!?」

 

「ッ………」

 

弥彦は驚きの声を上げ、葛城はわずかに顔をしかめた。龍園との契約、つまり毎月2万prを支払うというもの。有栖の条件を飲むということは葛城から毎月4万prが支払われるということだ。葛城からすれば痛手だ。

 

「おまえいい加減に「よせ」葛城さん!?」

 

「いいだろう。その条件を飲もう。ただし、約束は守ってもらうぞ。もし、勝手な真似をすれば俺はこの契約を受け入れない」

 

「いいでしょう。証人はAクラスの人間すべてです」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っというわけです。分かりましたか?」

 

「お姉ちゃんの性格の悪さと葛城君の真面目さ加減が分かったよ」

 

外のデッキに呼び出されたかと思えば、俺が寝ている間になんてことをしていたんだっという文句はひとまず置いておき、今回の契約について考える。

どちらもろくなものじゃない。この試験は葛城のような堅実な戦い方をする方が勝てる確率は上がる。Aクラスに限った話ではあるが…。しかし、堅実に守りの戦いをするということは攻めることを放棄したのと同じだ。結果3を連発されて集中砲火されたら敗北は必至だ。先生の説明を聞く限り、結果3を手繰り寄せる方法は明確に存在しているとみていいだろう。それになにより————

 

「葛城君の作戦が上手くいったとしてもお姉ちゃんが敗北を回避する方法はいくらでもある。でしょ?」

 

「ええ、間違いではありません。70点でしょうか」

 

「辛口採点をどうも」

 

「ルツ、一つゲームをしませんか?」

 

「ゲーム?勝負ではなく?」

 

「ええ、流石にそこまで消耗している貴方では私の相手になるとは思えませんから。あくまでただのゲームです」

 

言ってくれるな。まあ、否定できないが…。酔い止めは手放せないし、まだ万全の体調とは言えないしな。

 

「内容は?」

 

「どちらが先に今回の試験の法則を解き明かすかでどうでしょう?」

 

「いいんじゃない?」

 

「やはり投げやりですね。報酬がなければやる気は出ませんか?」

 

「そもそも船の上で何かをしようってやる気が出ない」

 

投げやりな対応をしている俺を見かねて有栖は何かを考えこむように、少し黙りそしてこう言い放った。

 

「……そうですね、ではルツが先にクリアできたらご褒美を上げます」

 

「…俺は犬か何かか?」

 

「いいえ、貴方は私の可愛い(玩具)ですよ?」

 

美しい笑みを浮かべて俺を玩具と言い放つ有栖に腹は立つものの、逆らう元気が出ないのでスルーする。

 

「お姉ちゃんはてっきり竜のグループだと思ってたよ」

 

俺は先ほど渡された有栖調べのグループ分けを見る限り、竜グループだけが異質さを醸し出している。

 

竜グループ

A葛城康平 西川亮子 的場信二 矢野小春

B安藤紗代 神崎隆二 津辺仁美

C小田拓海 鈴木英俊 園田正志 龍園翔

D櫛田桔梗 平田洋介 堀北鈴音

 

何をどう見てもここだけは意図的にメンバーをいじったようにしか見えない。Aは葛城、Bはよく分からないからパスで、Cは龍園君、Dは堀北鈴音、櫛田。各クラスのリーダー格が参加している。この流れを見る限り、Bのうちの誰かが一ノ瀬に匹敵する生徒なのだろう。

 

一ノ瀬がいないようにここには有栖がいない。本格的に何を基準にグループを組んだのかわからない。

 

「ええ、それについては同感です。ただ、ある意味で都合がいいとも言えます」

 

「都合がいい?」

 

「各クラスのリーダーが集まっているグループで敗北した場合、葛城君の評価は落ちますから」

 

月明かりが照らす有栖の表情はとても幻想的で美しくも好戦的な笑みだった。そして俺は再確認する。葛城君では有栖に対する有効な駒には成り得ない。ここは一つ他クラスに目線を向けてみよう。手始めに一ノ瀬からだな。波のさざめきに身をゆだねつつ、これからの行動方針を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ………ん………さん!…流都さん、起きてください」

 

「————!?」

 

目を覚ますと隣には森重の顔がある。なるほど、つまり俺は寝ていたらしい。昨日、よく寝られなかったせいだろうか?それにしてもひどい仕打ちだ。男に耳元でささやかれ起こされるという最悪の起こされ方をするとは。

 

幸い居眠りをしていたことは誰にも知られていないようで、全員俺に視線を向けていなかった。

 

『ではこれより一回目のグループディスカッションを開始します』

 

簡素で短いアナウンスが流れた後、一ノ瀬が切り出した。明るく声を出し、右手を挙げることで注意を引き付ける。

 

「はい、ちゅーもく」

 

「大体名前は分かってると思うけど、一応学校からの指示があった、自己紹介からやらないかな? 初めて顔を合わせる人もいるかもだし」

 

司会者役は簡単に見えて実はかなりめんどくさい。色々と理由はあるが一番は周りの人間をうまくまとめ、なおかつコミュニケーションを円滑に進めるために会話のパス回しを補助しないといけない。特に今回のように迎合する気がない人間が混じっているとめんどくささは、通常の比ではない。

 

どれだけのものか見せてもらおうか。

 

「今更自己紹介をする必要があるのか?学校も本気で言っていたとは思えない。やりたい奴だけですればいいだろ?」

 

早速町田君が一ノ瀬に噛みつきに行く。だが、この噛みつき方はあまりにもお粗末だ。

 

「町田君がそうしたいなら強制はできないけど、この部屋に音声を拾う機械が隠されていたらどうする? その場合困るのは自己紹介しなかったひとだし、グループの責任にも問われちゃうかもしれないよね」

 

一ノ瀬に簡単に丸め込まれた町田君はあっさりと自己紹介を受け入れる。そして、一ノ瀬の自己紹介を皮切りにぐるりと一周自己紹介が始まる。

 

「坂柳流都です。坂柳でも流都でも呼びやすい方で呼んでください。よろしくお願いします」

 

無難に終わらせ、他の人間が終わるのを待つ。自己紹介をしたとき、Bクラスと綾小路から熱い視線を感じたが、気づかなかったことにしよう。

 

しばらくして綾小路の番が回ってくる。

 

「綾小路清隆です。…えーっと、よろしくお願いします」

 

いい感じに自己紹介をしたくて頑張ったみたいなオーラが出てる。Bクラスの拍手がなければ、痛々しい限りだ…。俺も人のことなんて言えないけど。

 

「やっほー、綾小路くん! 今回はよろしくね!」

 

綾小路は一ノ瀬に慰めてもらい腰を下ろす。これで一応は、運営側からの指示は達成したことになる。

 

初顔合わせの際の自己紹介以外、学校側からは何も指示がされていない。事前説明でも、自由に過ごして良い旨が伝えられている。つまり、真面目に話し合うのも良し、携帯端末を弄るのも良しだということだ。

 

ほとんどの奴が互いに牽制し合っている。相手の出方を見ている。ってわけか。

 

「さてさて、どうしようか?私が進行役になってもいいけど、他の人はどう?」

 

やはり挙手するものは誰もいなかった。

 

「うん、それじゃあ、私が務めさせて貰うね」

 

現時点での彼女の行動は満点と言っても良い。コミュニケーションという点では文句なしだ。普段からBクラスのリーダーとしてクラスを纏めているからこそ、彼女には何をするべきなのか理解している。

 

一ノ瀬は腰に手を当て毅然とした余裕の様子で笑顔を振りまいている。

 

「みんなに聞きたいことがあるから質問させてもらうね。私としてはみんなが優待者ではないというのを前提に聞かせてもらいたいことなんだけど、この試験を全員でクリアする、つまり結果1を追い求めるのが最善の策だと思っているかどうか聞かせて欲しいの」

 

「なにそれ。そんなの当たり前のことじゃないわけ? 」

 

Dクラスの女子が疑問を口にする。

この質問はある意味かなり性格の悪い質問だ。この質問に対する答えによって、各クラスの優劣が大体分かる。Dクラスの女子に続いて、Dクラスの男子、Cクラスの女子と何人かが協力することは当たり前だと答える。誰もが叶うなら結果1でクリアしたい。そんな自然な発言をするようにBクラスの男子の一人もゆっくりと手をあげ、自身も肯定派だと示す。

 

 

何気ない質問に聞こえるのだとすればその人物が優待者ではないことが推測できる。前向きに一致団結する気持ちを持っているかを確認しつつ、優待者に対しては嘘を強いることになる。一ノ瀬はそれを分かっていてこの質問をしたのだろう。想像しているよりもずっと優秀なようだ。

 

多くの生徒が賛成派の中、町田は一之瀬に食ってかかった。

 

「一ノ瀬その質問はずるくないか?自分が言う台詞ではないなら利点がある。グループ報酬を期待したくなるのは当然だろ?それに堂々と裏切りを宣言する人間も普通いない。これじゃあまるで優待者と悪人のあぶり出しだ。とても適切な質問とは思えない」

 

一応この誘導尋問のような質問の意図に気付いたのか、町田は一之瀬のことを批判した。それに対してBクラスの浜口が間髪入れず反論する。

 

「試験とは妥当な質問じゃないですか?正直に答えなきゃならない脅迫のようなことも一ノ瀬さんは言ってませんし嫌なら答えなければいいんです」

 

「そうか。なら俺たちは黙秘させてもらう。直情的に喋るのは馬鹿がすることだ」

 

「ありゃりゃ、これは攻め過ぎたかなぁ?」

 

一之瀬の苦笑いを浮かべる。そんな彼女を浜口が慰めた。

 

「いえ、あなたの質問は至極普通のものでした。誤算だったのは彼らの警戒心が想像よりも高かったこと、それだけです」

 

浜口は町田に問いかける。

 

「あなたは先程『適切な質問ではない』と言いましたよね?」

 

「………だったらなんだ?」

 

「では、あなたが思う『適切な質問』を教えてもらいますか? 」

 

もっともな意見ではあるものの、町田は鼻で笑い飛ばした。

 

「代替案? そんなものはない」

 

「そうなると場合によっては多数決で最終的なジャッジを決めることになるよね?質問に答えてくれない人達を疑うことになるし優待者をあてずっぽうで指名するかも?それで納得できる?」

 

一ノ瀬は正面からAクラスという城門にぶつかりに行く。これは一ノ瀬だからこそ取れる戦法だ。周囲と手をつなぎあいちょうどいい塩梅で周りの賛同を得つつ戦う。簡単なよりすごく難しいことだ。少なくとも俺には無理だ。

 

「脅しか?」

 

「勘違いをしないでね私たちは話し合いをしたいだけ」

 

「本当に話し合いで解決すると思っているか?」

 

バチバチと火花を散らす二人。そんな二人を見比べながら、綾小路に視線を向ける。その後、一ノ瀬に視線を戻し確信した。この話し合い長引くやつだー。

 

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