ドSの銀髪美少女が姉になった   作:睡眠欲求者

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この試験はほとんど原作通りの結果になる予定なので、次の話からかなり飛ばします。


腹黒女教師ってどうなんだよ

「この試験を確実に簡単にそしてプラスでクリアする方法が…俺らにはその未来が見えている」

 

「聞かせてもらえるかなその方法ってやつ」

 

「もちろんだ、俺たちが提案する試験攻略法とは最初から最後まで話し合いを持たないことだ」

 

「なかなかユニークな話ですね話し合いを持たないでどうやってこの試験を攻略するんです?誰かも分からない優待者の一人勝ちを許すんですか?」

 

突然の対話拒否宣言に一ノ瀬より先に浜口が割って入った。

 

「そうだ余計な話し合いをせず試験を終えることこそが勝利への近道だ」

 

「にわかには信じられませんね。これじゃあAクラスに優待者がいると思われても仕方ありません、この段階で優待者の情報を共有し守ろうとしているのでは?」

 

「どこのクラスにいるのか?そんなことはどうでもいい。話し合いを持たなければ絶対に勝てるそれが葛城さんの提唱するやり方だ」

 

「葛城くんのなるほどね」

 

一ノ瀬は葛城の名前を聞いた瞬間ひとつの答えにたどり着いたようだ。そして俺に視線を向ける。

 

「それはAクラスの総意と受け取ってもいいのかな?」

 

明らかに俺に向けた言葉。だが、俺が何かを言う前に「これがAクラスの戦略だ」と言い切った。

 

町田が提案した攻略の意図が分からず混乱している人間に町田が詳しく説明していく。それを聞き流しながら、ここからの流れについて予想する。少し考えれば、葛城の策はAクラスだからこそ取れるものだと分かるだろう。それが分かってしまえば、この案は受け入れられない。Aクラスのみが話し合いに参加しないで試験は進んでいくだろう。

 

「でもさ、それってAクラスだけが提案出来ることでもあるんだよね」

 

やはり一ノ瀬がからくりに気づいた。綾小路も気づいてはいただろう。

 

「葛城君が提唱しているのは、クラス闘争は一旦おいて、ポイントをみんなで学校から貰おうというもの。確かに一見みんなメリットだらけに見えるかもだけど、でもこれって、私たちには見えないデメリットがのしかかってる」

 

町田の顔が曇りだした。

 

「確かに全クラスに均等に優待者がいれば一定のメリットがある。でも、それと同時に私たちはチャンスを棒に振っているんだよね?卒業までにあと何回特別試験が開催されるのかわからない。貴重な1回をここで棒に振るリスクは避けるべきだと私は思うな」

 

一ノ瀬は他クラスに語り掛けるように話す。

 

「戦わないってことは、クラスの変動も起こり得ないってこと。私はBクラスの委員長として、貴重なチャンスを棒に振るわけにはいかない」

 

 

「ま、まて一ノ瀬。言いたいことは分かったがそれだと望める結果は結局ひとつしかないぞ。全員で正解したとしてもこのグループ全員が均等に大金を手に入れるだけ!お前の望む展開にはならない。それとも話し合っていう台詞を見つけ出し、Bクラスが一目散に裏切るつもりなのか?お前は結果1応望むか全員に聞いたばかりだ。とても信用できたもんじゃないよな」

 

焦っているのがまるわかりな町田の反応に森重は冷ややかな視線を向ける。

 

「差が詰まることはないって言ったけどそれは間違いだよ、このグループの人数はAクラスとCクラスが4人、BクラスとAクラスが3人。つまり結果1でクリアすれば下のクラスは 上位クラスとの差を確実に詰めることができるって事じゃない? 」

 

「確かにな…だか、その上位クラスであるBクラスはそれを受け入れると自己犠牲を払って下のクラスを得にさせるメリットなんてないだろ?」

 

「そうしないとAクラスに逃げ切りを許しちゃうかもしれないからね。特にAクラスに優待者がいた場合を考えると厄介極まりないし」

 

「僕も同意見です。Aクラスに逃げ切りを許す考え方にはなれませんね」

 

葛城の案を受けたときは驚いていたようだったが、今の一ノ瀬の口ぶりからすれば焦っている様子や考え込む仕草はブラフだったとみるべきだろう。

一度は賛成に挙手した生徒もこれでまた大半が中立あるいは一ノ瀬たち寄りになったはずだろう。

 

「なら、反対というわけか?さっきも言ったが既にAクラスの方針は今話した方向で固まっている。いかなる理由があっても話し合いには応じないことだけ覚えておけ!お前たちが結束して話し合うなら好きにすればいい!」

 

決別を行動で示すように、町田は立ち上がり部屋の隅に移動した。渋々といった感じで森重がその後に続く。俺も椅子をもって部屋の隅に移動する。

 

しばらくの間一ノ瀬達の会話を盗み聞きしているとCクラスの女子とDクラスの女子が言い争いを始めた。確か、真鍋と軽井沢だったな。

 

言い争いはヒートアップしていき 両者とも声を荒げ始める。Cクラスの方は3人。大してDクラスの方は1人。多勢に無勢。勢いに負けそうになったDクラスの女子が、町田にすり寄って助けを求めた。

 

「嫌だってば!ね、こいつになんか言ってあげてよ!無断で写真を撮るなんて許せないんだけど!!!!町田くんはどう思う?」

 

「そうだな…軽井沢が嫌がっているんだからやめてやれ」

 

「ま、町田くんには関係ないでしょ………」

 

今の話を聞く限り悪いのは真鍋のように思える軽井沢が知らないと言っているんだから強引に決めつけることはできないだろう。友達に再確認したほうがいいだろうな。

 

町田の意見は正論ではあった。出会った故に、渋々、真鍋達も引き下がる。

 

「変な言いがかりはやめてよね!?まったく………ありがとう町田くん!」

 

尊敬の念を込めた目で町田を上目遣いに見る軽井沢。

 

「当たり前のことをしただけだ」

 

そう照れくさそうに町田は答える。たしか軽井沢って、彼氏がいたんじゃなかったかなーと、噂は思い出しつつこの話し合いは進まないだろうとため息をついた。

 

 

 

 

 

 

しばらくしてグループディスカッション終了の合図が流れた。まったくもって有益な結果を得られずに解散するという予想通りの結果になったようだが、一ノ瀬はそれも想定していたようで、落ち込んでいるという感じではなかった。

 

俺は森重と共に部屋を出て、途中で用事を思い出したと言って別れた。その後、元居た部屋の廊下の前で時を待つ。徐々に人が部屋から自室に帰っていき、最後に一人になったところで再び俺は部屋に入った。

 

「あれ?どうしたの?」

 

案の定最後まで残っていた一ノ瀬が驚いた様子でこちらを見ていた。

 

「ちょっと、一ノ瀬さんと話しておきたくて」

 

「へ~ちょっと意外かも…坂柳君の方から話しかけてくるなんて」

 

「今俺はAクラスの坂柳流都ではなく、俺個人としてきている」

 

こういえば、こちらの意図が伝わるはずだ。案の定、一ノ瀬は少しだけ警戒を解いて椅子に座りなおした。俺も部屋の扉を閉め一ノ瀬から少し離れた椅子に座りなおす。十数秒が経過したところで、話を切り出した。

 

「ちゃんと話すのは2週間ぶりくらい?」

 

「そうだね、無人島試験の時は話さなかったしねー」

 

まずは世間話から入るというこちらの動きに合わせるつもりなのか、一ノ瀬もこちらの本題を聞き出すそぶりはなかった。

 

「坂柳君随分と具合が悪そうだったけど、大丈夫なの?」

 

「大丈夫ではないけど…まあ、大丈夫。寝不足なだけだから」

 

「寝れてないの?」

 

「酔い止めが切れると寝付けなくなっちゃうんだ」

 

「あちゃ~、船酔いかー。大変だね。星野宮先生に相談した?」

 

「これ以上ひどくなるようならするよ」

 

一ノ瀬は心配そうに俺に視線を向ける。おそらく本当に心配しているのだろう。少なくとも、俺に打算を感じさせない。マジで天使。

 

有栖も一ノ瀬を見習って俺に優しくしてほしいものだ。

 

「なかなか厳しい試験になりそうだね」

 

少し話題を変えて、試験の話にした。

 

「にゃはははー、そう簡単に話し合いが進まないのは予想通りではあるんだけどねー」

 

一ノ瀬ははにかんだ笑みを浮かべる。ん~、有栖とは別ベクトルの魅力を感じる。というか有栖のちゃんとした笑顔ってここ最近見てない………愉悦を感じている時か、威嚇してる時の顔ばっかだな…。家にいる時はもう少し笑ってたのになぁ。

 

っと頭を切り替えないとな。

 

「…俺はこの試験で何かをするつもりは今のところない」

 

「それは葛城君の………Aクラスの方針に従うってことかな?」

 

「ああ、そう受け取ってもらって構わない」

 

一ノ瀬は少し、目を細めて俺から視線を外す。俺の言葉をかみ砕いているのだろう。有栖のことは有名っぽいし、俺のことも当然ある程度は知っていると初対面の様子から断定してもいいだろう。そして、先ほどの俺の言葉。俺個人で来ている。つまり、一ノ瀬は俺がAクラス…葛城の策に肯定的ではない可能性も想定しているのだろう。

 

「今のところないってことはもしかして裏切ってこっちに付いてくれたりするのかな?」

 

「クラスとしてではなくて、個人的にならある程度の協力はしてもいいと思っている」

 

「……なるほど。それはまた魅力的な提案だね」

 

少し驚いた様子を見せながらもすぐにいつもの笑顔を取り繕う。警戒を解かないところを見るにまだ一ノ瀬の中で答えが出ていないようだ。

 

「その代わりに私は何を要求されるのかな?」

 

「話が早くて助かる。Bクラスの優待者を教えてほしい。代わりにAクラスの優待者を近日中に教えよう」

 

「!?………正気?それはAクラスに対する裏切りじゃないの?」

 

「言いたいことは分かる。考えていることも分かる。俺が本当の優待者を教える保証はないし、それは一ノ瀬にしても同じことだ。本来はこんな契約は成立ありえない」

 

唖然とする一ノ瀬を置いて俺はさらに続ける。

 

「紙の契約書を残してもいいけど、それはこの契約の重要な部分ではない。この契約は俺と一ノ瀬間の信用という名の契約なんだよ。俺も一ノ瀬を信用するだから一ノ瀬も信用してくれっていう契約」

 

人間は理性と知性の生き物であると同時に欲望と感情の奴隷だ。だからこそ信用、信頼という言葉は甘い蜜だ。なぜなら手に入れるのが容易とは言えないからだ。信用や信頼を築くにしてもしょっぱなからこんなに大胆なことは本来はしない。ちょっとしたことから始め、長い時間をかけて信用は形作らるものだ。それを一足飛びにするのがこの契約の意味だ。

 

いうなれば人の善性を試す契約である。

 

しかし、だからこそこの契約は危険なものだ。有栖や綾小路、龍園や葛城。ああいったタイプには使いたくない。危険な賭けだ。裏切られれば終わりだからだ。本来こういったリスクの高い策を俺は好まない。

しかし、この契約は過去の経験上、総合的にみると一ノ瀬帆波という人間にはこの方法が通じる可能性が高いと判断した。

 

「今ここで決めてくれ。受け入れるか否か」

 

「………」

 

全力で頭を回しているのだろう。一ノ瀬が口を開くまでかなりの時間を要した。

 

「この契約ってさ、今後のことを見据えてってことでいいのかな?」

 

「そう思ってくれて構わないよ」

 

「…わかった。受けるよ」

 

ひとまず第一段階は突破。この契約をおそらく一ノ瀬は守るだろう。そうすれば第二段階も突破。今後数ヶ月一ノ瀬と協力体制を取ってみて、俺の一ノ瀬に対する評価が正しいと確信できれば第三段階も突破。晴れて、俺にも(武器)ができる。

 

「改めてよろしく、一ノ瀬さん」

 

「こちらこそよろしくね、坂柳君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一之瀬との契約が済んで、部屋で休んでいたところ急にのどが渇きを感じた俺は、気分転換も兼ね、今まで行ったことがなかったエリアに足を運んだ。すると、自販機の近くのバーで奇妙な組み合わせの3人組の背中を見つけた。茶柱先生に星之宮先生。そして我らがAクラスの真嶋先生だ。

他にも何人か見たことのある先生がソファーなどでくつろぎながら静かに過ごしている。

この区画は立ち入りが禁止されているわけじゃないが、学生には関係のない居酒屋やバーなどの施設ばかりのため、生徒は誰も寄り付かない。気分転換のつもりだったが、何か面白い情報を拾えるかも知れない。気配を殺し、ギリギリの位置まで近づく。すると隣の柱の陰に意外な人物、綾小路がいた。目が合い、携帯を取り出しメモ帳を開く。そして、文字を打ち筆談の要領で話しかける。

 

(何やってるんだ?綾小路)

 

(こっちのセリフだ)

 

俺の意図を察したようで、綾小路も携帯を使って会話をする。

 

(俺はたまたま通りかかっただけだ)

 

(俺も同じだ)

 

「なんかさー、久しぶりよね。この3人がこうしてゆっくり腰を下ろすなんてさ」

 

「因果なものだ。巡り巡って、結局俺たちは教師という道を選んだんだからな」

 

「よせ。そんな話をしてもなんの意味もない」

 

俺たちは会話をやめて、先生たちの話に聞き耳を立てる。

 

 

「あーそう言えば見たよ? この間デートーしてたでしょ? 新しい彼女?真嶋くんて意外と移り気なんだよね。朴念仁ぼいくせにさ」

 

「チエ、おまえこそ前の男はどうした」

 

「あはは。2週間で別れたー。私って関係深くなっちゃうと一気に冷めるタイプだからやることやったらポイーね」

 

(マジか意外な一面だな)

 

(そう………だな?)

 

(何で疑問形なの?)

 

「ふつうはそれは男側が言うことなんだがな」

 

「あ、だからって真嶋君にはさせてあげないからね。ベストフレンドだし、関係悪くさせたくないでしょ?」

 

「安心しろ、それだけはない」

 

「えーなんかそれはそれでショック」

 

星之宮先生は空いたグラスに自分でウイスキーを注ぐ。ストレートでがぶ飲みしている…対する茶柱先生は、カクテルのようなお酒をチビチビ飲んでいた。 

 

「それより……どう言うつもりだ、チエ」

 

「わ!?なによ急に。私がなにかした?」

 

「通例では竜グループにクラスの代表を集める方針だろう」

 

「私は別にふざけてなんかないわよー。確かに成績や生活態度だけ見れば、一之瀬さんはクラスで一番だよ。でも、社会における本質は数値だけじゃ測りきれないもの。私は私の判断のもと超えるべき課題があると判断したってわけ。ほらそれに兎さんって可愛いでしびょんぴょんって感じで、一之瀬さんっぽくない?」

 

確かに一ノ瀬はウサギっぽいかも…。っていうかよくよく考えたら、今のところ俺の周りの人間の中では一ノ瀬って癒し枠なのでは?俺がそんなくだらないことを考えている間に腹の探り合いは激化している。

 

「だといいんだがな」

 

「星之宮の発言はもっともだが、何か引っかかることでもあるのか?」

 

「個人的な恨みで判断を誤らないでもらいたいだけだ」

 

「やだ、まだ10年前のこと言ってるの?あんなのとっくに水に流したってー」

 

「どうだかな。おまえは常に私の前に居なければ我慢ならない口だ。一つ一つの行動に先回りしていなければ納得しない。だから一之瀬を兎グループにしたんだろう?」

 

「どう言う意味だ、星之宮」

 

「私は本当に一之瀬さんには学ぶべき点があると思ったから竜グルーブから外しただけ。そりゃあ?サエちゃんが綾小路くんを気にかけてる点は気になるけど。ただの偶然なんだから。偶然偶然。島の試験が終わった時、綾小路くんがリーダーだったことなんて、全一然気になってないしー?」

 

「そういうことか」

 

真嶋先生は納得したように頷いた。しかしすぐ、厳しい口調で星之宮先生をたしなめる。

 

「規則ではないがモラルは守ってくれ。同期の失態を上に報告するのは避けたいんでな」

 

「もうー信用ないなぁ。それに私ばっかり責められてるけど、坂上先生だって問題じゃない?Cクラスも順当な評価をすれば他の子が来るべきなのに龍園くんをぶつけてきたし。それにさぁ、真嶋君だって坂柳姉弟をあえて竜から外したでしょ?」

 

「…今年は例年と違い、生徒の質が特殊なようだからな。俺は総合的に評価した結果、順当に葛城を竜に配属しただけだ」

 

この試験に関する情報は殆ど得られなかったが、そろそろ引き返そう。長時間ここにとどまると見つかって面倒なことに巻き込まれる可能性も上がる。

 

そう思い、真横を向くと再び綾小路と目が合った。おそらく、似たようなことを考えているのだろう。

 

(そろそろ、ここを離れよう)

 

俺たちは頷き合い、気配を殺したまま静かにその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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