ドSの銀髪美少女が姉になった 作:睡眠欲求者
「んーわからない!!!!」
俺以外の全員が寝静また部屋でベットに腰掛けながら優待者の名前が書かれた紙を睨む。Aクラスの優待者とBクラスの優待者の名前だ。有栖も俺も優待者ではなった。
あの後、こっそりと一之瀬と密会して優待者の情報を交換し、別れた。
Aクラスの優待者は3人。鼠、鳥、猪にいる。しかし、法則がわからない。Bクラスは、牛と虎と猿に優待者がいる。
優待者が選ばれる基準に不平等があってはならない。つまり、全員が平等な条件で判断されているということ。
教師側のくじ引きなんかは平等に決まるが、これでは法則性が存在しない。じゃんけんをしたわけでもくじ引きをしたわけでもない。呼び出された最初の日に席に座った順番とかどうだろうか?だめだ、クラス間で呼び出しが分かれていた以上このルールだとたどり着けない。
ランダムとかくじ引きととか以外のルール。平等なもの。なんだ?出席番号とかか?いや、絵もこれ平等とは言えないよな。………とりあえずやってみるか。
メンバーを知っているグループの名前をあいうえお順にする。
「こっからどうしろっていうんだ?」
並べてみたが何も見えてこない。わざわざ干支の名前をグループに付けた以上、何かしらの意味があるだろう。干支…誕生日とか?クラスメイトの誕生日とか知らねえ………。
「もう眠いし、疲れたし、諦めようかな」
なるべく周りの人間を起こすことのないように声を小さくして諦めを吐露した。
ただのゲームだし、素直に降伏しようかと考えたがニコニコと愉悦の表情を浮かべる有栖の顔が浮かんだため諦めるのは却下した。
再度先ほど書き出した50音順のメモを見る。法則の発見はいつだって仮定から成る。仮説を作って検証するしかない。
今の仮説は十二支の順番=名字の順番だ。鼠のグループの優待者の名前は安藤。牛は江間。この時点で、仮定した通り名前の順と干支の順が合致しているやつが優待者となっておる。
心拍数が上がる。まさか、これで正解か?期待に心と体温が高まる。逸る気持ちを何とか抑え、名前と優待者を並べていく。
正解だろ。これ。すべて合致していた。この法則通りなら、辰グループは櫛田が優待者だ。俺らのグループであれば、4番目の干支で綾小路→一之瀬→伊吹→軽井沢の軽井沢が優待者となる。有栖のグループは舟方だ。
俺を玩具と言い放つ有栖にの鼻を明かせるのではないかと期待に胸が躍りながら、メールを打つ。
To:おねえちゃん
いえ~い!有栖見てる~?俺は優待者の法則を解き明かしました~。明日教えに行くから震えて待ってろ!!!!!
流都
「よし!これで完璧だ。寝よう!」
この時の俺はメールボックスに未読のメールが一件来ていることも、マナーモードにしていたことも気づいていなかった。
そして、現在深夜テンションであんなメールを書いた過去の俺を呪いながら有栖の前で正座していた。
「私の送ったメールにも気が付かず、自信満々であんなメールを送ってくるなんて………困った弟ですね」
羞恥心で火を噴きそうな俺の耳元で死体蹴りの様に俺の失態を囁いてくる姉はやはり人格がひん曲がっていると思う。
逃がさないように有栖は俺に後ろから抱き着いて離れない。力ずくで引きはがす真似をしないとよく分かっているのだろう。
有栖の甘い吐息と頭を撹乱しそうな癖になる匂いが俺の情けなさを助長する。有栖から俺がメールを送る3時間前に連絡が来ていたのだ。内容は、法則を解き明かしたというもの。それを知らず、俺は深夜にあんなメールを送ったのだ。
「夜中にメールを見て驚きました………私に負けたくなくてあんなに遅くまで考えていたんですね。解けた嬉しさで真夜なのにあんなメールを書いて自慢してきて、フフッ————可愛いですね。そんなに私からのご褒美が欲しかったのですか?」
「ごめんなさい…勘弁してください」
そんな言葉は虚しく、有栖の猛攻は続く。恍惚とした表情で人を嬲る有栖はあまりにも蠱惑的でありながら恐ろしくもあった。
「恥ずかしいですね?余裕のつもりでBクラスの優待者の情報を私に渡しておいて負けてしまうだけでなく、こーんな失態をするなんて。本当に貴方は可愛い
羞恥のおうふくビンタが俺を襲う。あああああああ、もう殺してくれ!いやだ、こっから2週間はこのネタで遊ばれるんだ。
許しを乞うても白旗を上げてもこの姉の死体蹴りは止まらない。だから次のセリフもわかる。
「イヤです♪」
ああ、知ってた。
メンタルブレイクした俺は惰性でグループディスカッションに参加していた。綾小路や一之瀬から大丈夫かと心配された気もするがよく覚えていない。あの
最終日になった今でも俺のメンタルは回復しなかった。
一番乗りで部屋についたもののまだ誰も来ていないようなので、いつもの場所に陣取り背中を壁に預けて座り込む。携帯の画面を開いて後悔する。時間を勘違いしていた。1時間以上早く来てしまっていたようだ。ただ、戻るのも面倒くさいし負けたような気がするから嫌だ。
「寝るか」
腕を枕にしてその場で横になる。どうせこんなところでは深くは眠れないと確信があるので、目覚ましを掛けることなく目を閉じた。
案の定、数十分後に目を覚ましたのだがすさまじい光景が広がっていた。まず、俺の正面の壁側に一ノ瀬が横になって眠りこけていた。そして、綾小路が一之瀬に対して、右足を出したり引いたりという奇行を繰り返していたのだ。推測の域を出ないが、すやすやの寝ている一之瀬がそう簡単に起きないかを確認しているのだろう。
これ撮影したら何かに使えないだろうか。そう思い、携帯を取り出した瞬間綾小路と目が合う。
「…………」
「……」
沈黙がいたい。俺は端末を構えたまま固まっているし、綾小路は無表情のまま俺を見下ろして固まっている。
「ナニモミテイマセン」
「そうか」
目が笑っていなくて怖い。いや、あんな奇行に及んでいたことの方が悪くない?
「………」
「………………わかった。信じよう」
気まずそうにしながら綾小路は一之瀬と距離を開けたところに腰を下ろした。3人を結んだら二等辺三角形ができそうだ。
しばらくするとかわいらしい音楽が室内に鳴った。それは一之瀬の携帯からだった。
「んー………」
目を閉じたまま後頭部に手を伸ばし端末を適当に操作すると音楽が鳴りやんだ。一之瀬は欠伸をしながら上半身を起こして周りをぐるりと見てから、おーはよーっと一言つぶやいた。
「おはよう。一之瀬さん」
「二人ともよく寝てたな」
「あははは。ごめんね。グースカ寝ちゃって。寝ている坂柳君見てたら眠くなちゃって」
「俺は寝かしつけ機か」
「何時から居たんだ?」
俺の突込みは全スルーされ、綾小路から質問が飛んでくる。
「俺は1時間前かな?」
「あ、私もそれぐらい。じゃあ、入れ違いだったんだね」
「そうだな。入れ違いになったのは夢の世界と現実だけどな」
そこから、この学校の制度の話や目標などを話し合っていたら徐々に人が集まってきた。
今日だけはいつもと違う話し合いになった。幸村のカミングアウトからそれを看破され、町田がドヤ顔するところまで黙ってみていたが、優待者を知っている人間から見れば三文芝居だった。
幸村の仕草はだいぶ挙動不審で、わかる人が見れば隠し事をしているのが明白だった。綾小路はそんな彼にこんな大事な役を任せるのだろうか?おそらくは答えはNOだ。これはブラフ。綾小路は優待者である軽井沢を庇うためにこの策を考えたのだ。
っという思考に優待者を知らない俺は至っただろうか?幸村の挙動不審は見ぬけても、軽井沢が優待者だと確信は持てなかったかもしれない。
まあ、後の祭りだな。
意気揚々と部屋から出ていく森重を見ながらため息を付く。一緒に帰る気にはならなかったため、部屋に残っていると一之瀬が口を開いた。
「ねえ、ちょっと待って」
出て行こうとする綾小路の肩に手を置いて、それを制止する一之瀬。その瞬間、部屋の空気がピシッと張り詰めていくのを感じる。
「この携帯入れ替え作戦さ、誰の立案?」
「堀北に決まってるだろ」
「そっか。じゃあ堀北さんに伝えてくれないかな?作戦大成功だったよって」
「大成功?失敗も失敗だろ。一之瀬に見破られた」
「あはは。同じ作戦を思いついてたっていうのはちょっと想定外だったかもね」
「騙すような真似して悪かったな。協定があるのに。怒ってるか?」
「まさか。私たちも勝手に作戦決行しちゃったし、お互い様だよ」
「そう言ってくれると助かる」
綾小路は今度こそ部屋を出ようとした。
「わ、ちょっとタイムタイム。肝心の話がまだ終わってないよ?」
「肝心の話?」
「もー、とぼけないでよ綾小路くん。さっき言った通り、たしかにSIMカードは端末ごとにロックされてて交換できない。でも、交換する方法はあった……だよね?星之宮先生に確認したら、お店に行ってポイントを払えば簡単に解除できるって言ってたもん」
ああ、なるほど。その手は思いつかなかった。頭が働いていないにしても失態だったな。
「嘘のあとに出てきた答えを、人は真実だって思ってしまう。偶然かかってきた電話で、パスワードを解除してみせた幸村くんは優待者じゃないことが分かった。綾小路くんと携帯を交換してたことも。もう誰が見ても綾小路くんが優待者だって思っちゃうけど、それこそが罠。私はこの入れ替え作戦は未完全って言ったけど、この一手はかなり有効だもん。二重以上にトラップを仕掛ければ、の話だけどね。これをやられたら、もうほんとうの優待者が誰なのか誰にもわからない。それからあの電話も多分仕組まれたものだったんだよね?いくらなんでもタイミングよすぎるもん」
一之瀬は理屈立てて、この作戦の裏の裏まで見通している。本当にいい拾い物をしたのかもしれない。
幸村は綾小路が優待者だと思い込んでいる。成功の瞬間が近づけば否が応でも気持ちが高ぶるし、失敗が確実になれば焦り、動揺する。それは本物の反応だった。だから外から見ればそれが真実になる。
単純な人間なら綾小路と幸村が端末を交換していることにも気づかない。少し頭の回る奴がこれを見破っても、本当の優待者が軽井沢だという真実には絶対にたどり着くことができない。見事な作戦だ。
「もしDクラスに優待者がいなかったらどうしてたの?」
「お前と同じだ。他のグループで、自分が優待者だと明かしているクラスメイトと交換すればいい」
「ありゃ……バレちゃってたか」
一之瀬は左右両方のポケットから一つずつ、端末を取り出した。
一之瀬は、持っていた片方の携帯を操作して、綾小路に見せている。
「本当の優待者は軽井沢さん、だったりして」
俺は口角を上げるのを必死で抑えた。これは逸材だ。綾小路や有栖には及ばないものの、十分な潜在値を持っている人間だと確信した。これは使える。
そんなことを考えていると3人の携帯が同時に鳴った。
『グループの試験が終了しました。結果発表をお待ちください』
「あーあ、やっぱり誰かが裏切っちゃったか。AクラスかCクラスのどっちかかな」
「たぶんうちだな」
「あははは、やっぱりかー」
「それよりも一之瀬さん。なんで軽井沢だって分かったのか聞いてもいいかな?」
気になっていたことを聞いた。目の前の少女の思考回路を知っておきたいと思った。
「幸村くんと同じ理由かな。いつもは気にかけてない綾小路くんのことをずっと目で追ってたり、他にも色々変だったから。でも、違う可能性もあったから結局送れなかったけどね」
「なんでそのことを言わなかったんだ?少なくとも嘘は見抜けてただろ」
綾小路が問うと、一之瀬は笑って答える。その笑顔は、今までに見たことがないほどに含みのある笑みだった。
「そりゃそうだよ。だってAクラスとCクラスのどっちが間違っても、私たちにとってはプラスになるもん。このグループのBクラスに優待者がいないって分かった時点から、私は誰かに裏切らせることしか頭になかったから。多分Aクラスあたりが裏切ってくれると思ってたけどね」
「町田か?」
「違う違う、森重くんだよ。彼は坂柳さんの派閥だから、葛城くんの方針には極力従いたくなかっただろうし。あってるよね?」
首をかしげて俺の方に確認を取ってくる一之瀬に肯定の首肯を返す。
「答え合わせも済んだし、俺は帰るよ。またね」
当初の目的通り時間を潰せたので俺は部屋を後にした。
メールを確認して整理する。
鼠:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はAクラス。裏切り者はCクラス
牛:裏切り者の回答ミスにより結果4とする
→優待者はBクラス。裏切り者は???。
虎:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
兎:裏切り者の回答ミスにより結果4とする
→優待者はDクラス。裏切り者はAクラス
竜:試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
→優待者はDクラス。
蛇:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
馬:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はDクラス。裏切り者はCクラス。
羊:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
猿:裏切り者の正解により結果3とする
優待者は???。裏切り者はDクラス。
鳥:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はAクラス。裏切り者はCクラス。
犬:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
猪:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はAクラス。裏切り者はCクラス。
鼠:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はAクラス。裏切り者はCクラス
=A-50cl C50cl 50万
牛:裏切り者の回答ミスにより結果4とする
→優待者はBクラス。裏切り者はC。
=B50cl 50万 C-50cl
虎:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
→後述
兎:裏切り者の回答ミスにより結果4とする
→優待者はDクラス。裏切り者はAクラス
=A-50cl D50cl 50万
竜:試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
→優待者はDクラス。
=A200万B150万C200万D200万
蛇:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
→後述
馬:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はDクラス。裏切り者はCクラス。
=C50cl 50万 D-50cl
羊:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
→後述
猿:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はB。裏切り者はDクラス。
=B-50cl D50cl 50万
鳥:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はAクラス。裏切り者はCクラス。
=A-50cl C50cl 50万
犬:優待者の存在が守り通されたため結果2とする
→後述
猪:裏切り者の正解により結果3とする
→優待者はAクラス。裏切り者はCクラス。
=A-50cl C50cl 50万
以上をすべて合計すると
Aマイナス200cl 200万
B変動なし 250万
C150cl 550万
D50cl 300万
っという結果になった。Cクラスの一人勝ちだ。どうやったのかはわからない。少なくとも2クラスの優待者を把握している必要があるが、誰の情報提供なのだろうか?
一つ言えることは葛城君の胃は精神的な意味でも食費が削られる意味でも痛くなるであろうということだ。
嗜虐心たっぷりの笑みを浮かべる有栖を見ながら、葛城君に差し入れを持って行ってあげようと思った。