ネスト王国:国土ではフェザーワールド中最大の広さを誇る王国。所持兵団は白鳩騎士団。その名の通り、所属騎士の翼が白鳩のものでなければならない。魔力を用いた魔法、そして槍術を得意とした兵士が多い。カナタとキョウカの住む国。
クロウ帝国:和を意識した国。建物が大体和風。しかし、所持兵団に関しては黒い噂があり、恐れられている。その兵団とは、鴉之武士。文字通りカラスの翼を持つ侍集団。使う武器も刀や火縄銃と徹底している。兵士の中にはムレ共和国の銃弾を切り裂くほどの猛者がいるとの噂もある。
ムレ共和国:国土としては三大国のうちで最も小さいものの、一番の科学力、経済力を持つ国。一番現代日本に近い建物が建つ国でもある。ムレ共和国にのみ、蝶蛾族や、昆虫族が生きている。
所持兵団は群隊。主に統率力の高い昆虫族の羽を持つ兵士が多い。持ち前の科学力を駆使した銃や戦車といった現代兵器を使った戦いを得意とする。
翌日。カナタは自宅で目を覚ます。まだ太陽も姿を見せ始めたばかり。早起きしすぎたと少し後悔するも、たまにはこんな日があってもいいだろうと思い直す。
「さて、昨日の復習をしないと…」
早起きは三文の徳。この世界においてこの時間に目が覚めるものは滅多にいない。いたとしてもすぐに二度寝する。それをせずに勉強のできるカナタはかなり真面目といえる。
「えっと、河童の"川,,流れ…弘法も"筆,,の誤り…」
どうやらことわざの復習をしているらしいカナタ。と、そこに下から金属が鳴り響く音がする。
「っ…!?」
「カナター!朝だよー!起きてー!朝ごはん!」
さらに聞こえる幼馴染の声。キョウカだ。
「…キョウカちゃん……」
苦笑してカナタは筆箱に筆記用具を収納し、カバンに入れ、それを持って階段をおりる。
「おはよう、キョウカちゃん。」
「ん、おはよ。カナタ…って、え!?着替えてる!?」
「うん。ちょっと目が覚めちゃった。」
そう言ってテーブルにつくカナタ。それを見てキョウカは少し顔を曇らせる。
「もしかして、
「…ううん。もう暫く見てないや。多分何かの音で起きたのかな?」
そう言ってカナタは配膳された料理を見る。
「うわぁ…今日もすごいね…」
「…うん。朝はちゃんと食べないと元気でないからね。」
「うん。ありがとう。じゃあ、いただきます!」
顔をほころばせ、カナタは料理に箸をつける。キョウカもすぐに席につき、朝食を食べ始める。
「そういえば…キョウカちゃんはおうちは大丈夫なの?鷹宮の家って王様を除いて一番高い位でしょ?来て大丈夫なの?」
カナタは心配そうな声を上げる。キョウカは構わずに食べ続け、
「大丈夫だよ。私は期待されてないから。」
「!そんなこと…」
「ホントのことだよ。姉さん達の方がすごいから。私は自由にしてても大丈夫なの。」
カナタの言う通り、鷹宮家は名門も名門だ。フェザーワールドはどこもかしこも階級社会だ。だからといって差別などがある訳では無いが、それが軋轢や、確執を生むことを、現代の我々は知っている。さて、フェザーワールドにおける位の高さは、苗字で見分けることが出来る。
低い方から、地→木→林→森→村→町→門→砦→城→宮となる。さらにこの上に「神」があるが、これは王族のみが名乗ることとなっている。つまり、鷹"宮,,の家の子であるキョウカは、我々から見ればいいとこのお嬢様なのだ。…さて、ここで疑問に思うだろう。…え、気づかない?では、我らが主人公の名前を思い出してみよう。そう、飛崎カナタである。先程の位に、「飛」も、「崎」も存在しなかった。その理由は後ほど紡ぐが、彼が村八分…いや、国八分にされている大きな原因であると言っておこう。
「キョウカちゃんはすごいなぁ…僕なんて階級のどこにもいないのに…」
「…もう。階級なんてただの飾りでしょう?さ、そんなこと話してないで、さっさと食べよう?冷めると美味しくなくなっちゃうよ。」
「…うん。」
カナタには、ほかの家にいるはずの者がいない。ここまで読んでくれた方ならば既に気づいているだろう。
「父さん、母さん、いつ帰ってくるんだろう…」
「っ………」
ポツリと呟くカナタの言葉に、キョウカの心は締め付けられる。そう。カナタには両親が存在しない。それはカナタが何かのクローンだとか、魔法生物だとか、そういうことではなく、ただ単に、両親が死んでしまったのだ。
「さて、そろそろ行こうかな。」
「あ。そうだね。」
ふとカナタが時計を見ると、七時を回っていた。
「じゃあ行こうか。掴まって。」
「さ、さすがに登校する時は一人で大丈夫だよ…」
「昨日みたいなやつに絡まれたら大変でしょ。さぁ早く。」
「うぅ…」
渋々といったふうにキョウカに掴まるカナタ。バサリと羽ばたき、彼らの体は空へ躍り出る。フェザーワールドは浮島だ。下は一面の海。その中に入ったものはおらず、また落ちたものもいない。
「カナタ、寒くない?」
「うん、大丈夫…」
言いつつカナタはキョウカに身を寄せる。
「もうすぐ着くからね。」
そう言うとキョウカは靴箱目掛けて急降下していく。
都立鳥族学園。カナタ達の通う学校である。豊かな自然と広さを誇る学校だ。
「おはよー!」
「おはよう。」
「おあよ…」
「ぬわああああああああんつかれたもおおおおおおん!」
「早スギィ!」
…もっと言えば、自由な校風を持つ学園でもある。
初等部、中等部、高等部に分かれており、試験などは筆記試験を合格し、出席日数にて単位を取得、足りていれば昇学できる。真面目にしていれば普通に卒業可能である。しかし、学校名は鳥族と銘打ってはいるが、勿論蝶蛾族や昆虫族も入学できる。
「お、飛べないカナタがやって来たぞ!」
「っ……」
昨日のいじめっ子がカナタを見て嗤う。カナタは怯え、キョウカにしがみつく。
「…?待て、あれ鷹宮じゃないか!?」
「げ、一緒にいたのかよ!?」
「あんたら…覚悟は出来てんでしょうね!?」
「に、にげろ!」
蜘蛛の子を散らすように校舎へ逃げ込むいじめっ子達。ふぅ、と一息ついてキョウカは改めて校庭へ降り立つ。
「…あ、ありがと…キョウカちゃん。」
「いいよ。さ、教室行こ。勉強で見返そう。」
「うん…!」
二人は並んで歩き、教室へ向かう。
鳥族学園は勿論男女共学だ。クラスにおいてもそれは変わらない。
「おはよー!」
「おはよう。キョウカちゃん。」
「あ、シホちゃん、おはよう。」
教室に入ると、キョウカはクラスメイト達に声をかけられる。鷹宮という肩書きはやはり強い。
「…またカナタくんと来たの?」
「…うん。」
「ダメだよ。知ってるでしょ?カナタくんは……」
「言わないで。…お願い。」
キョウカにとって、カナタを悪く言われるのは我慢ならなかったのだろう、シホの言葉を止める。チャイムがなり、始業を告げる。皆にとっての日常の始まりだ。
一日の終わり。カナタは話しているキョウカを置いて、一人で帰る。カナタの頭の中はぐちゃぐちゃしていた。今日はこんなことをされた、こんなことを言われた…明日はどんな目に遭うのだろうか。いつか、自分は死ぬのでは無いか………そこまで考えて、上からの衝撃に思考を中断された。
「っ!?」
「ははは!飛べないカナタ!悔しかったら飛んでみろよ!ははは!無理かー!翼はピクリとも動かねぇもんなぁ!やーい!親知らずの飛び方知らずー!お前の親は不死鳥に飛ぶことも出来ずに死んだってなぁ!」
「───ッ!」
瞬間、カナタの
「………して。」
「ああ?聞こえねーよカナタ!」
「…取り消して!僕の父さんと母さんを馬鹿にしたこと…その事を!」
「はは!取り消して欲しかったら勝ってみろ!どうせお前じゃ俺のとこには来れないよ!」
上から見下してくるいじめっ子。カナタは自分ではなく、自分の親を馬鹿にされたことに腹を立て、悔しさに拳を握り締める。…翼が、熱い。心の奥に火がついたようだ…
「ぐ…あ……」
カナタの枯れ木の様な翼に、炎が灯る。
「あ…あああ…あああああああああっ!」
「な、なんだ!?」
いじめっ子が閃光に目を覆う。光が収まると、そこには────
「…許さない…」
泣きながら、燃え盛る翼をはためかせ空中に立つカナタの姿があった。
さぁ、これより物語は始まる。
少年よ、足掻け。これは、君が主役の物語だ。君が、心と共に空へ羽ばたく物語だ。
はい。カナタ君の覚醒です。
果たしてカナタ君の持つ翼はなんでしょうかね…?
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