はーいよーいスタート!
いじめっ子からすれば、なんの冗談だ、と思うことだろう。ここ2.3年の間、翼がはためきもしなかったカナタが燃え盛る翼を背に、自らの力で空を飛んでいるのだから。
「な、なんで飛べてるんだよカナタ…それに…!」
少年の背で燃え続ける翼。
「取り消してよ。」
カナタの眼はいつもの穏やかな眼から一転、凶暴な、それこそ、猛禽類のような鋭い眼となり、いじめっ子…いや、もはやただの
「僕の父さんと母さんを侮辱したことを…取り消せェッ!」
「ヒィィッ!」
もう彼に選択肢など無かった。その場に震え、固まることしか出来ない。
「取り消さないなら…!」
カナタの手が子供の首を掴む。
「ぐぎゃあ!」
涙やら鼻水やらでくしゃくしゃな顔が、苦悶に歪む。明らかに強化されている握力。子供の首は、抵抗も虚しくどんどん締まっていく。
「ぐ…が…は…っ!」
「取り消せ…取り消せッ!」
カナタの語気はさらに強くなる。そうして、今にも子供の首がへし折られる────その寸前。
「カナタ!」
「!!」
カナタの耳に、キョウカの声が響く。
「キ、キョウカちゃん…?」
翼の炎と、腕の力が弱まっていき、カナタと子供をゆっくりと地へと誘う。二人が足をつけると、すぐにカナタは自分の腕に気づき、既に緩まっていた腕を離す。捕まっていた子供は咳き込みつつも一刻も早く此処を離れようと駆け出す。が、その前に飛んできたキョウカが立ちはだかる。
「な…なんだよ!?」
子供の声には怯えしか感じられなかった。キョウカは自分の中の怒りの炎が収まっていくのを感じつつ、子供に言い放つ。
「もうわかったでしょ?もう、カナタにちょっかいかけるのはやめて。」
キョウカの言葉に、子供は、
「あんな化け物に近づくなんて、こっちから願い下げだ!」
と、叫びつつ自らの翼で飛び去っていった。
「…!カナタ!」
キョウカは子供を一瞥するとすぐに立ち尽くしていたカナタに駆け寄る。
「キョウカちゃん…嘘だよね?僕の父さんと母さんが死んでるなんて…」
そう言うカナタの目に光は無い。先程の炎も消え、枯れ木のような翼に戻っている。キョウカは無言でカナタを抱きしめる。
「大丈夫。きっとカナタの両親は生きてる…私も…私も一緒に探すから…」
「うん…」
カナタには見えていなかったが、キョウカの頬には、一筋の涙が流れていた。彼女は真実を知っているからだ。そしてそれをカナタに告げられずにいる。カナタを悲しませまいとする気持ちでついた嘘は、積もり積もってキョウカの心を傷付けていた。
「さ、帰ろう?今日は腕によりをかけてご飯作ったげるから。」
「うん!」
それでも告げる訳にはいかない、とキョウカは思う。飛べないという絶対的ハンデがあるのに加えて、両親を失っていることまでカナタが知ってしまえば、カナタがどうなってしまうか─────キョウカは聡い子であった。しかし、警戒心は足りなかった。二人が飛び去った後、
───ネスト王国・王宮・王の間───
夜の帳も落ち、静寂に包まれた王の間。その最奥に聳える玉座に座り、机と睨めっこをしている男。彼こそ、ネスト王国第六代国王、鷹神シンヤである。
「…ついに目覚めたか…」
鷹のように鋭い眼がさらに鋭くなる。
「厄鳥・
シンヤは拳を握り締め、空を見上げる。
「…シロウ…カナリア…カナタは、きちんと守り抜くからな…」
シンヤの決意の言葉は虚空に溶け込んでいく。
「そうだ、カナタを養子としよう。それならば直接守れる。……さて、それならばあの服屋にオーダーメイドを…」
ネスト王国の善き王、鷹神シンヤ。彼の一日はまだ終わる気配を見せない。そして、その様子を窓から覗く鴉が一羽。その眼は紅く、シンヤの持つ書物に────
「!
シンヤは気配に気づき、羽を飛ばす。…が、そこに貫かれた鴉の姿は無い。
「…サクヤめ。」
狡猾な鴉はもう、動き出していた。
終わり!閉廷!プレイした感想。二度とやるか!
嘘です。続き書きます。勿論ね。