飛べない少年と飛べる世界   作:紡ぎ手@異人

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第六話「飛べない少年と烏の翁」

「ん…う…」

夜風の音と冷たさでカナタは目を覚ました。目に見える景色はとめどなく流れていく。どうやら飛んでいるようだ、とカナタは把握する。

「起きたか、少年。」

上からしわがれた声がした。視線を声のした方へ向けるの、鋭い目をした老人がカナタを抱えていた。

「突然のことで困惑しておるかもしれぬが、落ち着いて聞いて欲しい。」

と、老人…ゴエモンは一呼吸おいて、

「ここはお主のいた国ではない。」

「ここ…クロウ帝国…ですか?」

「!もう見抜いたのか…?」

カナタの指摘にゴエモンは目を見張る。

「この和風な建物はクロウ帝国特有ですから。…でもなんで僕がここに…?」

ゴエモンはその問いには答えず、自分の住む庵に降り立つ。

「ここは儂の家だ。しばらくはここで暮らしてもらう。」

「暮らしてもらうって…僕は貴方を知らないんですよ?質問にも答えてもらってないし…」

「その辺りも含めて中で話そう。」

カナタは少しばかりの警戒心と共に、ゴエモンの家に入って行った。

──ゴエモンの家──

ゴエモンの家の中は質素な造りとなっていた。モノが少なく、いつここを離れても大丈夫なくらいに。

「座れ。」

「あ、はい…」

ゴエモンに催促され、座布団に二人、向かい合うように座る。

「自己紹介が遅れたな。儂は鴉神ゴエモン。」

「!"神,,…?」

「ああ。やはり賢いな。名字で儂がどういった存在か、ある程度察するか。それに、違和感にも気づくとは。」

ゴエモンは感嘆の声を漏らす。

「だって、今のクロウ帝国の王様って…」

「左様。今のクロウ帝国の当主は鴉神サクヤ殿である。」

「ですよね。じゃあ…?」

「儂は特別に、鴉神を名乗ることを許されておる。」

ゴエモンは翼を一度バサリとはためかせ、

「儂の翼がお主同様、特別だからだ。」

「…?僕と、同じ…?」

カナタはふと、自分の枯れ木のような、はためきもしない翼を見る。ゴエモンの立派な烏の翼に比べると、月とスッポンだと思い、不思議がるカナタ。それを見たゴエモンは、

「…まさか、お主、自分の翼が何なのか、理解しておらぬのか…?」

ゴエモンはまさかと思いつつ問う。するとカナタは、

「は、はい…」

と、躊躇いがちに頷いた。ゴエモンは一つため息をつく。

「…鷹神め。甘いにも程があろう…」

と小さく呟き、

「落ち着いて聞くがいい、少年。」

「あ、カナタです。」

「…む?」

ゴエモンは一瞬、何のことか分からなかったが、すぐにカナタが自己紹介したのだと思い至り、笑った。

「カナタか、佳い名だな。」

本当はゴエモンはカナタのことを知っていた。だが、それでもゴエモンはカナタのことを"少年,,と呼ぶつもりだった。

「はい。父さんと母さんがつけてくれた名前です。今は、外国のどちらかで仕事中ですけど、いつか帰ってくるって信じてます。」

「…!カナタよ、お主の名字は…」

「あ…飛ぶに崎で、飛崎って言うんですけど、本来は鳶地って名字だったらしいんですけど…」

カナタがそこまで言うと、

「!鳶地とな!?まさか、お主の父は…」

「僕の父さんですか?父さんの名前は…シロウ!鳶地シロウって言います。」

瞬間、ゴエモンの目が見開いた。

「鳶地シロウ…やはりあの時の…」

その言葉に、今度はカナタが反応した。

「父さんを知ってるんですか!?今、どこに!?母さんは!?」

「お、落ち着け!儂も今気付いたばかりなのだ!それに、儂とあの男は先の戦乱の折に手合わせしただけなのだ!」

「!そ、そうですか…」

ゴエモンの言葉に、手がかりを期待していたカナタはしゅんとする。

「…僕、生まれた時から1度も父さんと母さんの顔を見た事がないんです。」

「!な…それは、真か?」

「はい。あ、写真で顔は分かってますけど、会ったことがないお金はあ幸いお金は送られてくるので、生活に困ることはないんですけど、手紙も何もないんです。周りの人は、死んだとか、不死鳥(フェニックス)に焼かれて灰になったとか言ってますけど、僕は信じてません。」

ゴエモンは絶句した。この子は、親を知らないのだと。ゴエモンにもその昔、親がいた。もちろん今はもう墓の中で永遠の眠りについているが、愛してもらった記憶は確かにゴエモンの中で息づいている。しかし、カナタにはそれがない。カナタの身の上を聞いて、ゴエモンの心は決まった。

「…カナタよ。…空を飛びたいとは、思わぬか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、カナタは運命に攫われた。

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