ファイアーエムブレム / 聖杯大戦(Fire Emblem / Holy Grail Grand War) 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。ファイアーエムブレムのキャラを動かすにあたり、素材を最高に生かそうとした結果、原作とは矛盾が生まれることもありますが、この世界独自のルールとして受け取ってください
これでOKという人はお楽しみください!
黒のセイバーVS赤のランサー
どこかで聞いた対戦カードのような……
2-1 2人の戦士の約束
赤のライダーは、竜に乗る女性騎士である。ドラゴンナイトと一般的に呼ばれるその職業は『竜』とは違う、『飛竜』という生物を使役しながら戦う騎士。
飛竜は当然ながら狂暴性を秘め、一流の騎乗センスを持っていても、乗りこなすのは、難しく、操縦も力がいるため、基本は男が乗るものだ。しかし、赤のライダーは珍しい女のドラゴンナイト、その中でも素晴らしい腕を持つ、ドラゴンマスターと呼ばれる存在だった。
そんな彼女は、先ほど、赤のアサシンと合流し、リュエンを乗せて飛行している真っただ中である。
「大丈夫ですか?」
自分が竜を操作するその後ろに、リュエンが乗っている。先ほど彼女を救出していたサーヴァントアサシンは下から竜騎士を追いかける。王族側の追跡を警戒し、弓の類などの遠距離攻撃に対処するため離れて攻撃の準備をするとのこと。
「……どうして私を?」
当然ながら、赤のライダーとリュエンは初対面である。しかし、そのライダーはまるでリュエンのことを知っているかのように、親し気に話しかける。
「我々赤のサーヴァントは、この世界の魔王を守らんとする勇士に呼ばれるサーヴァントです。あなたを救わんとするため、我々のマスターは既にこの街に来ています」
「つまり味方ってこと?」
「はい。ご安心ください。リュエン様。私のマスターも貴女との再会を望み、合流地点であなたをお待ちしています」
「私と……? 知り合い……なのかな?」
「私がサーヴァントとして召喚されたのは数週前なので、詳しい事は存じ上げませんが、話を聞くと、貴女が王国に連行される前の知り合いだと」
「あれ……はっきりと思い出せない……友達、いたような気がするんだけど」
「無理もありません。あなたが王国に連行されたのはまだ9歳か10歳の頃だと聞きます。幼子の頃の記憶はそう長く保たれないものです」
その理由に加えて、リュエンは長い監禁、虐待により、脳に少ないながらも影響があった。強い恨みの由来である、士官学校での出来事は強く残っているものの、穏かに暮らしていた頃の記憶はあまり強くはない状況である。
「我がマスター、名前をハルムといいます」
「……だめ、会ってみないと。でも、迷惑だから、すぐ帰ってもらうことになる」
「なぜでしょう。なにかお気に障ることをしてしまったでしょうか?」
「そうじゃない。こうして助けてくれたことは感謝してる。でも、私、すぐに王城に行かなきゃいけないから」
「それは、なぜ?」
「皇族を殺しにいく」
急に穏やかではない話に転換し、赤のライダーは少し驚いてしまう。
「……まさか、1人でですか?」
「ええ。私の怨みに誰かを付き合わせるつもりはない」
「お言葉ですが、それは、いささか無謀かと……」
「あなたもそんなことを言うの? アサシンみたい」
「いえ、その……この国の王族を暗殺するのは、1人では難しいかと。皇族はすべて武道か魔道を身に着けているうえ、伝承上の英雄にも劣らぬという近衛騎士。その存在がアルアトールの皇族は暗殺でさえもただ1人として許したことはないと聞きます」
「でもやめるつもりはないわ」
頑なに忠告を聞こうとしない魔王らしき見た目をした少女に、一抹の不安を覚えるライダー。せっかく救いにきた命を無下に散らされるのは、根が善い人間である彼女には耐えられない話である。
しかし、今は彼女もサーヴァント。この世界には本来いてはならない人間。故に、自分が意見を述べることは許されても、自分の意見で、人の運命を変えることを許されることはない。
故に、ライダーはここで彼女にこれ以上、忠告は重ねなかった。
「今、私のマスターがいる、今宵の宿場へと向かっています。そこに、貴女を迎えに来た赤のマスターの方々がいらっしゃるので、どうか、貴女がお抱えになっている思いを一度告白していただけないでしょうか」
「巻き込まないって言ってる」
「いいえ、この場に集った赤のマスターたちは、全員、貴女のその思いに応えてくれるはずです」
赤のライダーは徐々に飛行する高度を落とし始める。
「ここから徒歩です。赤のマスターの方々の一時の休息場所を知られるわけにはいきません」
「……分かったわ」
その瞬間。先ほどまでリュエンがいた街中、その空中で大きな爆発が起こる。
「もっとも、王国の兵士は、あれに最大の警戒を払っていると思いますので、仮に追尾されていても、練度の高いものは来ないでしょう。ご安心ください」
赤のライダーはライダーが、エスコートのために差し出してきた手を握った。
教会は街のはずれにあるため、先ほどレンとアレスがいた街の十字路からはある程度距離がある。
「魔道二輪とか、持ってくればよかったな」
「はぁ、はぁ。………ああ、はぁ、そうだな、はぁ」
アレスの様子がおかしいことに気が付いたレン。
「おい、アレス、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ、すまん」
いかに皇族と言えど、アレスは決して運動音痴ではない。一日中、鋼の剣を振り回し、近衛や兄と激しい斬り合いをしても、息一つあげることはない。
そんなアレスがたった数刻走っただけで、ひどい息切れになるのは、体力の限界ではないことをレンは知っている。
「魔力が……」
魔力は魔法の行使だけでなく、サーヴァントを使役するために、マスターがサーヴァントへと送るエネルギーのようなものである。
供給はサーヴァントが必要とした分だけ、マスターの貯蔵量から供給される形である。今アレスのサーヴァントが多くの魔力を必要としているということだ。
「抱えようか?」
レンのサーヴァントである藍色の剣士が提案する。先ほど壊れたはずの、蝶型の仮面は既に治っていて、見えていた右目も今は隠されていた。
アレスはその提案に、
「いや、こんなところでくたばってられない。今はこの感覚に慣れさせてくれ。今後も有り得そうな感覚だからな」
と、強気で断った。しかし、息苦しさは収まらない。
(セイバー……いったい、どんな戦いをしてるんだ……)
赤のランサーの宝具『魔を穿て我が真槍(レギンレイヴ)』と、黒のセイバーの強大な魔力放出のぶつかり合いは、街全体に轟音と衝撃波として広がり渡った。
しかし、空中でぶつかったことで直接の破壊力が街に与えられなかった幸運、そして聖杯戦争に備え頑丈に作られた住宅などの帝都の備えが、その衝撃波を受けても、街の崩壊を防いでいる。
逆に言えば、今のぶつかり合いによって発生した衝撃波だけで、通常の街は爆心地から崩壊してもおかしくはなかったということだ。
そしてそれを引き起こした黒のセイバーと赤のランサーは戦いを続けていた。
突き出される宝具の槍による刺突。先ほどのような破壊力は真名解放という、最低限宝具の名前を明かす詠唱が必要になるため、今の刺突はただの槍による攻撃と同義だ。
しかし、その冴えは一流。間違いなく命を狙ったその槍戟、その軌道を黒のセイバーは持っている剣で軌道を逸らすことで、自らに刺さらないよう受け流す。
そして槍の勢いが弱まった一瞬を狙い、剣による斬り上げを行い、赤のランサーの槍を弾いた。
踏み込み、黒のセイバーの重い斬撃が赤のランサーを狙う。赤のランサーも対応し、一時距離を取って剣戟の範囲から逃れる。
槍を右上段から、黒のセイバー相手に叩き落とす。黒のセイバーは、それを受け止めた。
「はあ!」
黒のセイバーの魔力放出。己の魔力を武器に宿し、推進力を増すことで、通常の斬撃では考えられないほどの威力を伴った攻撃を行う、黒のセイバーのスキルである。
魔力が伴った攻撃に、生身のみで振るった槍は軽々返されるだけでなく、その勢いによって赤のランサーは後ろへ飛ばされる。近くの住宅への激突を何とか踏みとどまることで避けた赤のランサーだったが、すでに黒のセイバーは、その機に見せた隙をつくため肉薄していた。
再び槍と剣が激突する。
しかし、先ほどとは違う。次に迎え撃つ側になった槍には、赤のランサーの宝具の効果である炎の魔力放出の力が宿っていた。その力は、黒のセイバーが攻撃に込めた魔力の数倍。
激突。しかし、結果は歴然。込められた魔力の量が桁違いである。赤のランサーの槍の振るい上げにより、黒のセイバーは空中へと打ち上げられる。
王城の13階を真横に望めるほどの高さでようやく星の重力が体に働き始め、体勢を立て直す黒のセイバー。しかし、その時にはすでに、赤のランサーは次の攻撃をするため、黒のセイバーに接近した後だった。
槍の斬撃が黒のセイバーに襲い掛かる。剣で受け止めるものの、とても威力を相殺するには足りず、再びその槍を受けて、黒のセイバーは空中を凄まじい速度で浮遊する。
空中では迎撃の体勢を取ることが難しい。このままでは、赤のランサーの猛攻をただ受け続けるだけになる。
本来はサーヴァントは、マスターの魔力の状況を考えながら戦わなければいけない。すでに一度、第2宝具と変わりないほどの魔力を、魔力放出による一撃で放っていて、それからもかなり使用をしている。黒のセイバーとしては、これ以上の魔力使用を控えたいところだった。
しかし、と黒のセイバーは回転する視界の中で、赤のランサーを捉える。
赤のランサーは炎のジェット噴射を行い、空中でも自在に加速減速、移動を可能にしている。空中でも戦いの安定度は向こうが格上だと認めるしかない黒のセイバーは、迎え撃つには魔力放出で向こうの真似事をするしかなかった。
(ごめんマスター、魔力をもう少し絞り採る!)
すでに赤のランサーは迫り、槍を突き出そうとしていた。
「……っ!」
しかし、その攻撃を中断した。黒のセイバーが再び、赤のランサーの宝具と拮抗した蒼い光の魔力放出を行っていたのだ。
そして体をひねり、黒のセイバーは斬撃を放つ。
夜のもたらす暗黒を焼きつくす眩い光。
斬撃は空を斬り、そして斬撃はそのまま直線状に放出された。輝ける光によって空は一時、昼にも負けないような閃光が発生する。
しかし、それだけでは終わらなかった。その蒼い光の中から、紅蓮の炎を纏った何かが現れる。
魔力放出を正面から受けてなお、赤のランサーは炎を纏い、己を消そうとする光に打ち勝ち貫いた。炎の槍は、黒のセイバーを確かに捉え、そして、左腰に間違いなく刃を突き立てた。
「ぐ……ぁ!」
しかし、空中での動きになれてきたセイバーは、受けるだけでは終わらず、剣を想いきり振り下げ赤のランサーを地面へと叩き落した。
予期せぬ衝撃に、少々肉体ダメージを受けた赤のランサーだが、すぐに地上に降り追撃をしようとした黒のセイバーに向け、反撃を試みる。
刺突。斬撃。赤のランサーの槍は人を魅せる演武ではなく、ただ人を制するための覇を見せる力強い攻撃。
しかし、それは黒のセイバーも同じだった。型を重んじ、素早い剣技を特徴とする剣士のものではなく、誉れある伝統と強さを兼ね備えた騎士のものでもない。いかに相手を圧倒するか、その1点を突き詰めた、覇王の剣舞。
故にどちらの攻撃も、洗練されているが故に無駄な素早さを持たず、ただ一撃一撃が必要な速度を保ちつつも、凄まじく重い。
それはこのアルアトールの大陸を探しても、その域に至っている剣士、騎士、戦士は果たして何人存在するか。いないと言っても不思議ではない。
激突する2つの斬撃は、一撃一撃の衝突音で、周りの人間の鼓膜を破くような音を響き渡らせる。
重なり合うこと20を越え数戟。
最後は互いの渾身の一撃を、魔力を籠めぶつけ合い、そして激突の衝撃によって相反する方向へと身を躍らせた。
「……すごいな、お前」
赤のランサーが唐突に口を開いた。すでに槍は直立させ、戦闘を行うときの戦いの気をすべてどこかへとやっている。
「どうしたんだい? 急に」
黒のセイバーもその様子を見て、また自らも体をリラックスさせた。
「自分で言うのもなんだが、俺の攻撃は火力が過度に高すぎる。まあ、昔の戦いを考えればこれくらいの力はあって然るべきなんだが、それでも、まさかこうして、快く戦える相手が向かい側にいるとは。武人としての血は抑えていたんだが、久しぶりに昂ってきている。この戦い、ここで終わらせるには惜しい」
「まだ余裕そうだね」
「そうでもない。俺はまだまだ槍を振るっていたいんだが、マスターのこともある。これ以上の魔力放出は危険そうだ。今宵はここまでにしたい。黒のセイバー」
黒のセイバーも、アレスから魔力を奪いすぎたと主を案じている身であり、赤のランサーの話は頷けるうえ、自身としても悪くない提案だった。
「僕は構わない。ここで赤のランサーを倒してほしいという依頼は受けていないし、僕のマスターも同じ状況だからね」
「……、まさか承諾してくれるとは思わなかったな。お前は気持ちのいいやつだ。……よし。今宵は赤のサーヴァントはお前のマスターを狙わない」
「約束できるなら、それに越したことはないけど」
「俺が全力で止める。だからお前は気にせず主を守りに行け。だが、その誓いと共にお前に守ってほしい約定がある」
「何かな?」
「次の機会は、街の中心ではなく、せめて街の郊外から外にしよう。そこで、次こそは心ゆくまで戦い、決着をつける。どうだ?」
「それは……僕が約束していいことじゃないけど、もしマスターが許可してくれるなら、僕はその約束を守ろう。それでいいかい?」
「構わん。これはいわゆる心意気の問題だ。異界の英雄と死力を尽くして戦う。それが俺の全力を出して戦いたい好敵手が相手なら、俺も戦い甲斐があるというものだ」
赤のランサーはそう言うと、少し嬉しそうに微笑む。
「また会おう。黒のセイバー。マスターを追いかけるといい」
黒のセイバーは敵ながら、赤のセイバーを悪ではないと直感した。故に、黒のセイバーはその言葉に笑みを返し、
「ああ、またいずれ」
と言い、赤のランサーに背中を向け、自らのマスターを追いかける。
そして、この場に残ったのは赤のランサーと、グラド神父だけになった。
「素晴らしい。あなたが赤のランサーですか」
神父を見て、先ほどまで良い笑顔を浮かべていた赤のランサーは再び険しい顔になる。
(黒のセイバーを逃がしてでも、俺はこの男と話をしなければならない。場合によって戦うこともある。口惜しいな、一緒に来なければよかったのに)
「アルアトールの聖杯戦争の監督役を務めております、グラドと申します。聖杯戦争の監督としては、ぜひ赤のサーヴァントとそのマスターの皆さんにお会いして、聖杯戦争において守っていただきたい約束事を説明致したいと思っており、わざわざ、ここに残らせていただきました」
口を開きかけた赤のランサー。しかし、神父の唇に立てた人差し指を当てる、静粛を求めるジェスチャーでその口を閉じた。
「あなたが何を言おうとしているのかはわかるつもりですが、どうかここではご遠慮いただきたい。それを言ったら、私は――」
神父は穏やかな笑顔を浮かべながら言う。
「あなたをここで殺さなければならなくなる」
「お前。『憑いた』状態だな。……やってみろ。それなら、俺は迷わずお前を殺せる」
神父は穏やかならざる表情を見せる赤のランサー。しかし、神父は表情を変えることなく、
「どうかその話はまた今度に2人きりで。それに、今私は、教会の仕事は真面目にやっていますので、赤の陣営との接触を優先させていただきます」
「赤の連中は、そもそも貴様ら帝国とこの聖杯戦争を破壊するために俺達サーヴァントを呼び出した。ルールなど守りはしない。聖杯戦争の勝者を選ぶつもりもない。ただ、帝国を滅ぼすのみ」
「恐ろしいですね。まあ良いでしょう。本来はルールの遵守を心がけてほしいですが、かつて起こった大戦の再現というものまた一興。あなた方の抵抗が続くことをお祈りしています」
「……抵抗? まるで俺達が劣勢とでも言いたげだな」
「私としては、聖杯戦争を正しく終わらせ、聖杯の起動を成功させることが望みです。別にどのような結果になっても構いません。しかし戦いが盛り上がらないのもつまらないですから、赤のマスターたちにもぜひ頑張って戦っていただきたい。どうか、無謀な戦いを挑み、『人間』に殺されるなどと言う無様だけは……披露しないでほしいものです」
神父は一度、深々と頭を下げると、まるで闇に溶け込むようにその場から姿を消した。
赤のランサーは、その神父がいたところしばらく眺めていたが、やがて霊体化し姿を消した。
人物紹介は黒の陣営と赤の陣営で分けて行うことにしました。
次回は黒の陣営、つまり帝国の皇族、および帝国側の人間の紹介ができる内容になりそうです。
これまでの情報を整理する回になりつつ、話も進展していくのでお楽しみに!