ファイアーエムブレム / 聖杯大戦(Fire Emblem / Holy Grail Grand War)   作:femania

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注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。ファイアーエムブレムのキャラを動かすにあたり、素材を最高に生かそうとした結果、原作とは矛盾が生まれることもありますが、この世界独自のルールとして受け取ってください

これでOKという人はお楽しみください!
ファイアーエムブレムのキャラを使って聖杯戦争をします!

ちなみに、サーヴァントとして出しているファイアーエムブレムキャラ。原作は「紋章の謎」「聖戦の系譜」「トラキア776」「封印の剣」「烈火の剣」「聖魔の光石」「暁の女神」「覚醒」「if」「echoes」から出してます。



プロローグ2 15人目の英雄

リュエンは歩くには問題はないものの、いざ逃げるとなると、衰えた筋力で長く走る事は不可能だった。

 

そのため、急に現れたサーヴァント、アサシンが彼女を抱きかかえながら、地下監獄を走り続ける。

 

リュエンは己の運命を歪めた聖杯戦争という存在を恨んでいる。そしてそれに関係するものをすべて破壊することを心に決めている。そのため、今アサシンに抱えられている現状も不愉快極まりない。

 

歴代の魔王の血を引いた先祖たちもきっと同じだとリュエンは信じている。己の中に湧いてくる黒い感情が脳にその命令を刻み込むのだ。

 

――聖杯は魔族の神秘。それを奪った人間を許すな。全てを殺せ、全てを壊せ、殺せ、壊せ、殺せ、壊せ、壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ――

 

「……復讐を止める気はない。それでもなお言うならば、俺を殺すには、まだ早いと思うが?」

 

「……さっきまで自分のことを『私』って呼んでたじゃない」

 

「あれは外向きの言い方だ。今はマスターとサーヴァントという関係になった以上。少しは素を出させてくれ。その方が言いやすいんだ」

 

リュエンは、血に濡れたキルソードを右に持っているアサシンに心を見透かされたようで、さらに不愉快な気分になる。

 

「なあに、そう怒るな。これでも命乞いをしているつもりだ。君はいずれサーヴァントも人間もすべてを殺すだろう。それに文句はない。だが、いま俺という駒を失えば、君はまた捕らえられる。そうなれば、復讐の機会すら与えられない。そんな愚かな真似は君も御免だろう」

 

頭の中が殺戮衝動でいっぱいになっていたことにリュエンは初めて気づいた。否、気づかされた。

 

アサシンという役割で目の前に現れた男は、自らの主のことをよく見ている。

 

リュエンは先ほどまで靄がかかっていた頭が少しすっきりし、現状を見る。

 

斬りかかってくる兵士を、アサシンは左の腕でリュエンを抱えながら、右に持った剣で切り倒していく。

 

リュエンは、その光景が不思議だった。一騎当千という言葉が事実であることを実感したが、それ以上に、流麗に振るわれる剣の演武、まるで最初から完成を目指して行われた演劇のように軽やかな身のこなしで敵を殺していく光景は、綺麗なわけではないが見ていてある種の感動を呼ぶ。

 

「君のファンがずいぶんと多いな?」

 

「嬉しくない」

 

「……少しは人間らしくなったか。そんな風に、これから来る仲間にも愛想をまき散らせ」

 

「仲間。私に?」

 

「ああ。入り口で止められている馬鹿は置いておくとして、他の君の仲間はおそらく、今この街に向かっている。もうすぐ到着するだろう。サーヴァントを引き連れてな。よくこの数のサーヴァントをそろえたものだ、今回の戦争は過去最大規模になるだろう」

 

「分かるの?」

 

「ああ。これでもサーヴァントを察知する能力だけは自信がある。この街に、王族側とは違うサーヴァントが近づいている」

 

「詳しいのね」

 

「サーヴァントは召喚されたときに、この世界に関する知識を与えられる。そのおかげだ」

 

雪崩のように現れた百ほどの兵士を容易く斬り殺し、ようやく監獄の入り口にたどり着いた。

 

「このまま出るなら、私は降りる」

 

「甘えていても構わないぞ? お前は幸運なことに軽い」

 

「いいの。さすがにいつまでもこれは恥ずかしい」

 

「そうか。ならそうしよう。俺としても、外は万全の状態で君を護衛したい」

 

アサシンは不運なことに木製だったその扉を蹴破り、外に出る。

 

リュエンは驚いた。その場所は城下町だった。

 

アルアトール帝国の本城下街は碁盤の目で整備され、王城のある大門に通じる道は、馬車が10横に並んでも十分通れる広さを誇る。建物は特殊な事例を除き、上から見て正方形で、一階の高さ5メートルの二階建てに固定されている。画一的なその街のつくりはリュエンにとっては実に6年ぶりに見た光景だった。

 

現在は夜であるが、魔法によって起こされている灯で街はいまだ輝きを保ち、活気があると表現するほどではないにしろ、まばらに人が交通している。

 

「まだ騒ぎにはなっていないが、どうやら、先ほど逃がした兵士がいるようだ。もうすぐここに帝国兵が押し寄せる」

 

平静を保ちながら状況の説明を始めた己のサーヴァント。しかし、内容が未だ危機が去っていないという警告に過ぎない。

 

「どうしてそんな冷静なのよ」

 

「取り乱したところで仕方ないだろう」

 

「そんな平気ぶって。私、何もできないよ」

 

「だろうな。もしもの時は、援軍が来るまで俺が時間稼ぎをしなくちゃならない。その時は近くにいてもらうぞ」

 

「なんで、逃げた方が……」

 

「こんな些事に王族はサーヴァントを2体も呼ばないと思うが、1体は来る可能性がある。兵士を殺す程度の魔法も出せない、役たたずの魔王様に単独行動されては、それこそお前を捕らえられる隙が生まれる。だが、俺の近くに居るならば、サーヴァントが仮に出てきても、片手間でお前に迫る兵士を止めることはできる」

 

「そう。あなた強いのね」

 

アサシンはリュエンの問いに答えを返す。

 

「いいや、はっきり言うが俺は最弱の部類だ」

 

先ほどの殺しの技を見せられた身としては、その言葉は理解できないものだった。

 

「……あんなに強かったのに?」

 

「無論サーヴァントだ。最低限の仕事はする。だが、サーヴァントの標準的な強さを比較するのなら、次に来る敵のほうが標準的だろう」

 

アサシンはリュエンの手を握り、街の出口の方向へ引っ張っていく。

 

リュエンはその後ろ姿に、何か懐かしい光景を思い出せそうな気がした。頭に浮かんだのはたった一瞬で、いつ、どこの話だったかは覚えていない。

 

「やっぱり、抱えられていた方がいい?」

 

「いや。どうやら時すでに遅い。街の出口に、相当数の兵がいる。援軍が来るまでここで時間稼ぎだな。城下街大門の近くに行けば行くほど、おそらく兵が寄ってたかる。援軍にアレを片付けてもらおう」

 

「目がいいのね」

 

「視力の良さは戦いを左右するものさ」

 

先ほどから迷いのない行動、意見を言うアサシン。さぞ、修羅場を乗り越えてきた大英雄なのだろうとリュエンは思った。

 

サーヴァントなど認めたくはなかったが、その存在は格別であることは、脱出までの戦闘能力で認めざるを得ない。せめて利用できるだけ利用しようと、ようやく、意を決する。

 

「フ……少しはまともに話してくれるようになったか」

 

まるで猛犬と言わんばかりの言葉にリュエンはムッと来たがそこは耐える。今は言い争いをしている暇はないことは心得ていた。

 

先ほどまで闇の中ではただ人間を殺すことしか考えられない獣だったところを、このサーヴァントは冷静に落ち着けてくれた。彼は彼なりにマスターをどうにかしてくれようとしているのだろう。そういう風にリュエンは感じた。

 

今、リュエンは自分を顧みると頭が少し軽いように思えている。そして考えるだけの思考が少し生まれている。

 

「……さて」

 

リュエンのサーヴァントは向かいたい出口と反対方向を見て、鞘にしまっていた剣を再び抜いた。

 

「アサシン?」

 

「マスター。多少は魔力が回復したか?」

 

「うん。Cランクの魔法なら使えると思う」

 

リュエンの答えに頷いたアサシンは、魔道書を差し出す。アサシンは特に書物を入れる入れ物は持っていなかったにも関わらず。

 

「一体どこから」

 

「その話はあとだ。ファイアーの魔導書だ。兵士相手ぐらいなら役に立つだろう。持っておけ」

 

リュエンは頷く。差し出された本をとり、中を見る。リュエンは幼いころから魔道の勉強を続けていたため、その扱いに困りはしない。

 

アサシンが敵意を向けた先を自分でも見た。

 

アルアトールの兵士のさらに前に立ち、自分の身長よりも長く刃が曲線を描く、槍のような見たことのない武器を持った異邦人がいるのを見た。

 

その存在は他の兵士より、下手をすると将軍よりも危険な存在だとリュエンは本能的に理解できた。

 

「サーヴァント」

 

槍使いは、しばらくアサシンとリュエンを見定め、ようやく口を開く。

 

「ほう……意外と別嬪さんだな。黒髪か。俺の故郷には多いが、どうやら同族ではないらしい。あれが本当に魔王なのか?」

 

その槍使いと行動を共にしているのは、この国の第1皇女であり、リュエンが殺したくて仕方がない相手の一人。ミレーユだった。

 

「そうよ。今回のくだらない戦争のために十数年かけて見つけた生贄」

 

「まじか。ミレーユ」

 

「呼び捨て?」

 

「いいじゃねえか。あの女持ってくりゃいいんだろ? せっかくだ。俺の槍さばき、そこで見てけよ」

 

「言われなくても見るっての。父上直々の命令が急に下ったんだから。せっかく神秘的な殺し合いもこれでもうお祭り騒ぎじゃない」

 

「ハハハ、違いない」

 

ランサーと思われる相手の男は歳はまだ若いものの、その佇まいからは熟達した何かをリュエンは感じた。

 

「さて……その兄さん。あんたがサーヴァントなら、そこの彼女を護るわけか?」

 

アサシンに問いを投げる槍使い改めランサー。アサシンは答える。

 

「それは当然だろうランサー」

 

「アサシンっていうのは、暗殺専門の忍者だけっか。もっとコソコソ動き回る虫だった記憶があるな」

 

「私もこうやって目の前に姿を晒すのは不本意なんだよ。だが、味方がいない以上、彼女を護る為には仕方がない。ここはせいぜい足掻かせてもらうさ」

 

「なら、問答はここまでだな。『赤の』アサシン」

 

アサシンが急に険しい顔になったのをリュエンは見逃さなかった。

 

――来るぞ。気を張れ。

 

その言葉が聞こえ、リュエンも魔導書をひらく。

 

「アサシン、頑張って」

 

「あまり期待はするなよ? 俺は正面戦闘は苦手なんだ」

 

その向かい側では、

 

「ランサー。手助けはしないわ。あなたの力、ここで見せて」

 

「おう。任せろ」

 

第1皇女もまた、自らのサーヴァントに檄を贈る。

 

槍を構えるランサーに対し、アサシンはそのまま持っている剣で戦う。

 

サーヴァントは基本的に己が生前使っていた武器や魔法を用いて戦う。

 

つまり、ランサーは今持っている槍を、そしてアサシンはキルソードを使って生前も、今も戦うということ。

 

「さて、気合入ったし」

 

最初の言葉をすべて言い切る前にランサーは消えた。

 

そして気が付いた時にはアサシンの後ろをとる。

 

「殺すか」

 

刃を向け、上半身と下半身を両断する勢いの斬撃。槍を一回振っただけで、その威力を示す風が起こる。

 

「アサシン!」

 

無事だった。間一髪でその攻撃をかがんで避けたアサシンは、そのついでに体の向きを反転させた。

 

キルソードの風を切る斬撃の音が鳴る。

 

それは槍との激突音でかき消された。

 

「せあ!」

 

剣を弾き、槍の斬撃がアサシンに襲い掛かる。剣でその軌道を逸らしたアサシン。再び斬りかかるも、ランサーは槍を器用に引き寄せ、再びそれを受け止める。

 

「ち……」

 

舌打ちをするアサシンに、槍使いの刺突が襲い掛かる。

 

「はぁ!」

 

一撃。そしてまた一撃。

 

突き出し、引き戻すまでの時間が短い。2秒で3回の速さで襲い掛か突きの攻撃を、剣で弾き続けるアサシン。

 

しかし、その防御も5回で限界を迎える。

 

バキン!

 

それはキルソードが折れた音だった。

 

「何……?」

 

「馬鹿が!」

 

六回目、突き出されるその槍を防ぐ手立てはない。先ほども言った通り、サーヴァントは生前主に使った武器を使って戦う。その武器はマスターの魔力によって復元できるものの時間がかり戦闘でサーヴァントが武器を折られるというのは、それ即ち、敗北を意味する。

 

勝利を確信して突き出された六回目の槍。

 

しかし、その軌道は墜落した。

 

「てめえ!」

 

アサシンの手にはいつの間にか、鋼の刃を持つ片手斧が握られていたのだ。その斧の叩きおろしが槍にぶつかり、槍は地面を穿つ結果になった。

 

「どうなって――」

 

いきなり武器が現れたことに驚きを隠せない槍使い。しかし、それに気を使うこともなく、アサシンは次の攻撃に乗り出した。

 

横からの大振りの一撃。何とか意識を戦いへ戻したランサーは、一歩引いて、その攻撃の射程から外れた。

 

そして槍を引き、続けて攻撃を仕掛けるアサシンの一撃を、槍で受け止めた。

 

つばぜり合いに似た押し合いになり、それを制したランサーが、反動で隙を見せたアサシンに仕掛ける。

 

体を軸に回転を加えながら、相手の頭上から刃を叩き下ろすこと二回。それを一度は躱し、続けてくる追撃を斧で受け止める。

 

しかし、その威力を殺しきれず、数歩奥まで弾き飛ばされた。

 

間合いが空き、お互いは武器を構えて、相手を牽制する。

 

「……なるほど。確かにこれは剣では分が悪い」

 

アサシンの胴には、致命傷にはならない者の、最後の斬撃で殺しきれなかった威力の分だけ槍の刃に抉られた傷が刻まれていた。

 

対するランサーは無傷。そのランサーをアサシンは褒めたたえる。

 

「一度刃を打ち合わせて確信したことが2つ。その武器、透魔神話に出る薙刀だな。そして、君の技には、おそらく剣殺しの技術が含まれている。君の槍を剣で受ければ、たちまち壊されるということか」

 

傷を負いながらも、笑みを浮かべて語るアサシン。

 

「てめえ、その斧、どこに隠し持っていた。貴様は曲刀を使う英雄ではないのか!」

 

「剣のみで戦うほど、道を究める高潔な英雄ではない、とだけ言っておこう」

 

「ほざけ、あの身のこなし、剣を使うものとして十分な修練を積んだ者の身のこなしだ。そんな貴様が斧だと?」

 

「それは私の戦い方の問題だ。もっとも、斧はやはり大振りになってしまい良くないな。君ほどの高速槍術が相手では、先ほどのように最初の一撃以外、後手に回ってしまいそうだ。相性の良い武器を使う程度ではどうにもならないところ、さすが英雄だと素直に賞賛を送ろう」

 

「よくしゃべるな? 負け惜しみとして受け取っていいか?」

 

「どうだろうな。だが、私の行動は無駄なことなどない、とだけ忠告しておこうか」

 

「ふん、その薄ら笑い。すぐに消してやるぜ」

 

戦いに狂喜を感じるランサーを相手に、アサシンは再び剣を持って迫る。

 

再び打ち合いが始まる。アサシンはキルソードではなく、耐久力のある鋼の剣で、相手の槍と剣戟を重ねた。

 

初撃を流しながら懐に入って二度の斬撃、それを防ぐ槍の防御。再び槍はアサシンを捉えた斬撃を放つ。

 

縦横無尽に場を駆け巡りながら戦うサーヴァントの戦いに、新米マスターである二人、そして第1皇女の私兵たちはその戦いに見入った。

 

槍の三度の斬撃を受け流し、反撃をしようとするアサシンに、その反撃を許さず刺突で追撃を放つランサー。

 

「doniwu」

 

理解不能な呪文を唱えるアサシン。しかしリュエンはそれが魔法の詠唱であることにすぐ気が付く。

 

ここでいう魔法とは主に攻撃に用いる超常現象の力である。炎を出したり、雷を発生させたり、風を起こしたり、闇のエネルギーを発生さたり、などの現象を起こして相手に攻撃する方法として、この世界では主に戦う武器として使われている。

 

その魔法が起こした風によって、刺突から逃れ宙に浮いたアサシン。

 

「な……!」

 

手には、またも別の武器が。魔族がかつて人と暮らしていた頃に作っていたとされる伝説上に存在した武器、紅い刀身が特徴の魔法の力を封じた剣である、炎の剣を出していた。

 

空中からその剣を、宿した炎もろとも振り下ろす。落下分の運動エネルギーを加算した渾身の斬撃を、ランサーは再び槍で受け止めた。

 

アサシンは武器から炎を爆散させ、お互いがその衝撃で再び距離を離される。この戦果では互いに軽い火傷を負うことになった。

 

「暗殺者風情が兵士の真似事とはな。てめえ、さっきから暗器も出してるだろ。剣だの斧だの呪術だの、どういうしくみだ。手品にしては気になるじゃねえか」

 

「教えると思うか?」

 

「いや、いい。ここで仕留めれば意味のない問答になるからな」

 

ランサーは目の前の戦士のまがい物を殺しきれないことを楽しくもあり、悔しくも感じている。その証拠にその顔には笑みが浮かんでいた。

 

一方で、鋼の剣にもひびが入っているのを見てアサシンはため息を一度つくと、それをゴミのように捨てた。

 

「先ほどの打ち合いでも、いくらか傷を負った。やはり本職には勝てないものだな」

 

「そうでもないぜ。面白いなあんた。白兵を心得ている暗殺者は初めて見た」

 

「白兵戦の専門職にそういわれると、多少の慰めにもなる。これでも最弱サーヴァントを自負していてね、世界を救った英雄に比べて、俺は大したことのない存在。正直、聖杯戦争に呼ばれたら基本全員が格上だ。せいぜい下剋上の相手を務めてくれ。私も一矢くらいは報いるつもりだ」

 

アサシンはこのように言っている。

 

しかしリュエンは、そうは思わなかった。

 

そしてこの場の人間もそうは思えなかった。

 

アサシンは自らを最弱と謳った。しかし、今行われた短い時間の戦いは、すでに並みの人間業ではない。アサシンの腕は間違いなくサーヴァントにふさわしいものなのだ。

 

現に、戦いに見入っていた間、リュエンに迫る一般兵に暗器を投擲して仕留めること3人。本当に兵士は片手間で倒すことができるところにサーヴァントの戦力としての凄まじさをリュエンは実感した。

 

しかし一方、アサシンは既に傷を負っている。このままでは敗北も見えてくる。

 

「アサシン」

 

返事はない。ランサーの相手をするのに集中している。

 

ランサーは槍を構え、腰を低く落とす。

 

「おう。ならしっかり相手してやる。俺としてはこのままお互い打ち合っても面白いが」

 

ランサーの薙刀と呼ばれた武器が薄く蒼白い光をほのかに放ち始める。そしてその薙刀を中心に、電光がはじけ始めた。その閃きは徐々に激しくなり、人を殺すに十分な雷となり、辺りを徐々に焦がし始める。

 

「……せっかくだ。マスターにいいところを見せたいからな。俺の力の一端で、肩慣らしに付き合ってくれた礼として、お前はしっかり殺してやる」

 

最弱を自負したアサシンに向け、殺害予告をした。

 

興が乗ってきたランサー、しかし、それに対しそのマスターであるミレーユは、

 

「ちょっと、まさか宝具を解放するつもり?」

 

「ああ」

 

「待ちなさいよ、さすがに早すぎ」

 

「いいじゃねえか、俺がやる気満々なんだからよ」

 

「あんたが乗り気でも私は違うの!」

 

「なんだよ、ノリ悪いな」

 

「うるさい。私の命かかってるんだから、何事も慎重に!」

 

このような反論をするほど、全く乗り気ではない。

 

『宝具』とはすべてのサーヴァントが持つ切り札。その英雄が『元の世界で愛用した武器』、もしくは、『その英雄に関する伝説を再現したもの』を。聖杯戦争のための力として昇華したものを指す。

 

これは他のサーヴァントが持つことのない唯一無二の英雄の力であり、効果はサーヴァントごとに異なるが、上手く決まれば勝負を大きく動かすほど強力な効果を発揮するものだ。例えば、攻撃宝具であれば、格の高いものはは街一つを一撃で破壊することもある。

 

もちろん、宝具には攻撃だけがあるわけではない。特殊な効果をもっているものもある。むしろ常時発動しているものなど、発動の仕方も多種多様に及ぶ。

 

厳密には異なるものの、基本的にはサーヴァントごとの奥義、必殺技であると認識すればイメージしやすいだろう。

 

ただし、リスクも無いわけではない。宝具はそのサーヴァントの伝承をそのまま現実化したものであり、使用すれば、他のマスターにサーヴァントの正体を明かしてしまうことになる。相手の正体が分かっていると弱点もアルアトールに伝わる神話や伝承から対策を立てられたり、弱点を突かれるリスクが大きく高まる。

 

さらに宝具の使用は、サーヴァントが持つ魔力を大きく使う。異界の英霊がサーヴァントとしてこの世界にとどまることができるのは、魔力で練り上げられた肉体に魂を憑依させる行為に近しく、魂の入れ物である肉体を維持するには、常にマスターから魔力を提供されなければならない。その魔力を大きく使うのだから、サーヴァントの維持をするマスターや、サーヴァント自身にも大きな負担となる。

 

以上のリスクから、宝具は基本使わないまま戦い、使用は勝負を決める時に限るのだ。

 

「この槍、受けてみるか、赤のアサシン?」

 

「止めろと言えばやめてくれるのか?」

 

「いいや。武器な手品を使うお前はここで消す。宝具――『雷神穿つ剋上の槍』。構えろよアサシン。お前が本気で戦うにふさわしい相手か、この一撃で試してやる」

 

リュエンはランサーの槍に秘められた力はが想像以上であることを肌で感じる。この場にいるすべての人間を一瞬で蒸発できそうなエネルギーを秘めている。

 

「アサシン……防げるの?」

 

「どうだろうな。だが……いずれは越えなければならない相手だ」

 

「貴方も使えば、宝具っていうの」

 

「俺の宝具は、力技と拮抗できるようなものではなくてね。おそらく、あの槍を投げられただけでも防ぐことは難しい。最も、奴の宝具がそう単純なものではないことは間違いないが」

 

「どうするの?」

 

「できる限りなんとかしてみよう。その代わりそこを動くなよ? 少しでも動かれたら――ちっ」

 

舌打ちをして、再び暗器を投げるアサシン。

 

リュエンは今度は自分に迫る男に気が付いた。

 

自分と同じくらいに若い男だった。王国の近衛兵の服を来て、長い槍を持ちリュエンに接近する。

 

アサシンは今までと同じように、自らのマスターに迫る敵に暗器で対応するが、リュエンに迫る近衛兵はそれを一発肩に受ける以外弾き飛ばした。

 

アサシンは仕留められなかったことことに自己嫌悪の舌打ちをもう一回鳴らし、リュエンを守ろうとするが、それを断念する。仮にランサーから注意を逸らせば、宝具を解放され、それこそ対応を間違えるだけで自らのマスター、もしくは自分が死ぬことになる。リュエンのアサシンがここまでマスターを必死に庇いながら来た意味が水泡となる。

 

「マスター!」

 

マスターに檄を飛ばすアサシン。

 

幸いにもリュエンは、今度は敵の接近に気が付いていた。自分のサーヴァントからもらった魔導書を開き、手に火の球を生成し、撃ち放つ。

 

「うわぁ」

 

近衛兵とは思えない情けない声を出しつつも、その近衛兵はしっかりと放った魔法を躱す。

 

すでに二撃目は間に合わない。本来であればリュエンはここで走り出さなければならなかったが、今のリュエンには既に逃げるだけの体力はなかった。

 

殺される。

 

リュエンは確信する。

 

そしてあろうことか目を閉じてしまった。

 

――しかし、持っている槍で貫かれることはなかった。

 

その近衛兵はリュエンの手を勝手に握ると、

 

「こっちだ。リュエン!」

 

なれなれしくその名を呼び、街の出口の方向に走りだす。

 

リュエンは何が起こったのか分からず、抗うだけの力も体に入らないため、そのまま引っ張られて行ってしまう。

 

「あいつは……あの間抜け!」

 

アサシンはすぐに追いたかったが、それはできなかった。ランサーの宝具がどんなものか分からない以上動けない。魔のアサシンたるリュエンのサーヴァントがとれる宝具防ぐ手段は、発動時の隙をついて接近し、宝具の使用を未然に防ぐしかない。

 

しかし、この状況は、実は王族側にとっても緊急事態だった。

 

「あれ命令違反じゃない! もう……なんでこんな時に」

 

ミレーユは後ろの私兵たちにすぐ命令した。

 

「すぐに追いなさい! 聖杯に捧げる生贄を失ったら重罪よ!」

 

しかし、私兵は動けない。

 

ランサーは宝具を使う構えを解かないまま、

 

「仕方ねえだろ。サーヴァント同士のやり合いに巻き込まれたくない気持ちは分かるぜ。奴らから見れば俺らは化け物だ。安心しろ、これで仕留められればそれでよし、そうじゃなくても、道は空けてやる。アサシンもろとも、どこかにぶっ飛ばすさ」

 

「ランサー、だから宝具は……」

 

「別に俺は正体明かしても構わないぜ。正々堂々もまた武道の心得。なら、俺はそれでいい」

 

「私がよくないんだってのー」

 

しかし、ランサーは何かに気が付くと、宝具を放つ構えを解いた。同時に槍に纏っていた電光は鳴りを潜める。

 

「まじか……」

 

赤のアサシンも気が付いていた。

 

――何かが飛んでくると。

 

「どうしたの、ランサー?」

 

「ヤバい奴が来た。アサシンは後にする。仕事は俺らでやるぞ? 手を離すなよ!」

 

ランサーは問答無用で、

 

「ひゃあ、何を」

 

ミレーユを担ぐと、一気に駆け出した。

 

同時に地上に墜落してきた謎の青い球体。それは極小の隕石の墜落と同じ力、地面への着弾とともに、秘められたエネルギーが爆散し、逃げ遅れた兵士もろとも、ランサーと、アサシンに爆炎が襲い掛かる。

 

「くそ……」

 

アサシンはすぐにこの混乱と煙に紛れリュエンを追うつもりだったが、

 

「――グルァ!」

 

竜の爪のようなものがアサシンの肉体を抉ろうと迫り、アサシンは飛び退くしか選択しかなかった。

 

爪の斬撃によって煙が斬り裂かれる。

 

アサシンがその先に目にしたのは新たなサーヴァントだった。半人半竜、二足歩行を行う黒い鎧をまとったサーヴァント。左の腕が竜のものに変質していて、右には斬るというより抉って裂くという表現が正しい形状の刃を持った、神器の剣を持っている。

 

「話が通じそうにないな……バーサーカーか……」

 

バーサーカーは、サーヴァントの理性を奪う代わりに強大な戦闘力を持っている。正面戦闘では全クラスの中で最強と言って過言ではない。

 

「参ったな……」

 

これまで平静を保っていたアサシンだったが、一番苦手とする相手が飛来し、今度こそ、焦りが出てきていた。

 

「さすがにまだ死ぬわけにはいかない。何とか算段を整えなければな」

 

撤退の作戦を練るアサシンに、バーサーカーは狙いを定め襲い掛かる。

 

それを陰から見守る、第1皇子の命令であるが故に。

 

********************************************

 

すでに戦争が始まった城下街を目指し、数騎の騎馬が駆ける。

 

王族が英雄を召喚した時より、少し前、すでにもう一つの軍勢は召喚を終え、主である魔王を救うために、サーヴァントを引き連れて攻撃を仕掛けようとしていた。

 

王族が召喚したセイバーを仮に『黒の陣営』と呼ぶならば、こちらに召喚されたサーヴァントは『赤の陣営』。かつて、魔王と初代アルアトール帝王が決着をつけた戦いで用いられた人間側のサーヴァントと、魔族側サーヴァントを分ける際の伝統的な呼ばれ方だった。

 

魔族側の陣営である、赤のセイバーは、後ろにマスターを乗せ、慣れた手つきで馬を操る。赤のセイバーは刀に近い形の曲刀を腰に吊り、鎧は一切身につけていない。

 

「凄いなぁ、セイバー」

 

「馬の扱いは、故郷のサカでは必須の技能ですから。主殿、振り落とされないよう」

 

「ああ。リュエンを助けるために、がんばろう」

 

それを追う、赤のランサーが乗った馬と、そのマスターが乗った馬。赤のランサーは当然槍使いなのだが、

 

「元気だな」

 

ただの槍兵ではない。風によって揺らめくマントは高貴な身分の証明である一方、その佇まいは隙を感じさせない歴戦の戦士のものであり、年若き姿で召喚されていてなお、『勇王』という伝承上の異名にふさわしい姿である。

 

そのマスターと思われる男は騎士だった。見習いである齢15の娘を後ろに乗せ、体の至る所に傷痕を刻んだ姿は、彼もまた歴戦の戦士であることを示す。

 

「……本当は巻き込みたくなかった」

 

「だが、本人たちが参加するといったんだろう。彼らにもサーヴァントがいる、それにもしもの時は俺が何とかする。今からは戦場だ、気を切り替えろ」

 

「そうだな。ランサー、すまない、迷惑をかけた」

 

「いいさ。いつだって人は迷う。俺だって、友を討つことになったとき、そうだった」

 

赤のランサーのマスターは、同じ陣営のセイバーのマスター、アーチャーのマスター、ライダーのマスター、この3人の師匠に当たる。しかし根の子供好きが影響してか、未だ大人になり切れていない弟子たちを心配させてしまっていた。

 

ライダーは騎馬ではなく空中にいた。飛竜にまたがり、その後ろに、自らのマスターを乗せていた。飛竜に乗って空中から奇襲をかけるドラゴンナイト、赤のライダーはその中でもドラゴンマスターと呼ばれる、上級者である。彼女は竜騎士ではなかなかいない、赤いポニーテールがトレードマークの美しい女性騎士だ。

 

「マスター、どう、空は?」

 

「ああ、いい感じだ。……後ろはだめそうだけど」

 

そして翼竜にはもう2人乗っている。赤のアーチャーと、そのマスターだ。赤のアーチャーは、眼光鋭い猛獣のように目元が厳しく、口がとにかく悪い。生前は、暗殺集団の一員であったゆえの警戒心の強さが現れている。

 

「ちょっと、なんで私がクズと一緒に高飛びしなきゃいけないわけ! 馬でよかったんだけど!」

 

「しかたないだろ。その馬があれしかいなかったんだから。我慢しろ!」

 

「サイテー!」

 

リュエンが幽閉されている城下街に向け、4人のマスターとサーヴァントが、魔王の後継者救出のため、必至に大地を駆けて、空を飛んでいた。

 

********************************************

 

 

 

あまりに急に引っ張られたため、最初は為すがままになっていたが、リュエンはその手を振り払う。

 

「離せ!」

 

「リュエン?」

 

驚いたような声を上げる帝国兵。

 

リュエンにとって帝国兵は、たとえ死地から救い出してくれた人間であっても、恩を感じることはない。

 

魔導書を開き、炎の球を出現させる。

 

「待て、待ってくれ!」

 

帝国兵はリュエンを制止するが、問答無用で炎を放った。

 

それを辛くも躱した帝国兵は自分を指さし、

 

「俺だ。レンだ。覚えてるだろ!」

 

「……レン?」

 

知らない名前だ、と炎を再び放とうとするが、先ほどまでの怨みで固まった頭であれば浮かばなかったかつての思い出が頭をよぎった。

 

「レン……学校の?」

 

「そうだ! アレスとリリエルと一緒に居ただろ。影は薄かったかもしれないけどさ」

 

リュエンには、アルアトールの学校で共に学んだ頃がある。それはリュエンにとって初めて友達ができ、楽しい時間を過ごした記憶が多く残っている場所だった。そして、アレスに裏切られ、幽閉されるきっかけになった場所でもあった。

 

「……その服。帝国兵の。裏切者の味方じゃない」

 

「違う。俺が帝国兵になったのは、お前を助けたかったんだ」

 

帝国に恨みを持つリュエンにその言葉は通じない。

 

「そんな言葉を信じるとでも?」」

 

「信じてもらわなくてもいい。けど、会えてよかった。一緒に外に逃げよう」

 

リュエンは再び火を出す。

 

「来ないで」

 

そして、手を差し出したレンに敵意を向けた。

 

「リュエン」

 

「嫌いよ、みんな嫌い。殺す。あいつらの仲間は殺す」

 

差し出した手を下ろして、それでもリュエンを、レンはまっすぐ見ていた。火の球を出されて脅されてなお、レンはリュエンから目を逸らすことはない。

 

「頼む。今だけでいい。俺は信じてくれ」

 

「……私は信じないわ。あなたでも」

 

「俺はずっと君を助けたかった」

 

その言葉を最後に場は静まり返った。

 

リュエンは攻撃を撃ちだすタイミングを計るために、そしてレンは信頼を得るために。

 

しかし、止まってはいけなかった。

 

リュエンは止まるべきではなかった。すでに彼女に魔の手は迫っていたのだ。

 

「リュエン!」

 

急に駆け出し、リュエンを押し飛ばすレン。

 

「何を……」

 

地面に叩きつけられ、恨みをもってレンを睨んだ。

 

「え……」

 

その時目の前に広がる光景に、驚愕で再びリュエンは体を固めてしまった。

 

槍の刃を、自分の武器で受け止めるレンがそこにはいたのだ。

 

上からの刃を必死に押し返そうとするが、力の差が歴然であり、徐々に刃が肩に食い込んでいく。

 

レンを今にも殺そうとしているのは、王族が召喚していたランサーだった。

 

「アサシン、負けたの……?」

 

追い詰められて次をどうするか迷うリュエン。しかし、頭には何も浮かんでこなかった。

 

レンは、必死にランサーに反抗するが、すでに肩から血が流れ出始めている。

 

「俺の槍を受け止めたのはいい筋してるぜ。けど、弱い。守りたいもの守りたかったら、もっと強くなくちゃな」

 

にやりと笑いながら、さらに力を籠めるランサー。刃はより深くに食い込み、

 

「ぐぁぁぁ!」

 

痛みでレンは叫ぶ。しかし、それでも諦めないレンは、足を上げ、ランサーを蹴り飛ばそうとした。ランサーはそれを軽く躱し、後ろに下がるが。

 

「いや、耐えればよかったか。癖でつい躱しちまった。まあ、次で終わりだけどよ」

 

ランサーの槍は、光を放ち、蒼い電光を放ち始める。

 

「あんたに恨みはないが……マスターの指示でね。死んでくれ」

 

相手はサーヴァント、帝国の皇子の近衛であるとはいえ、ただの人間のレンが勝てるはずもない。

 

少し離れたリュエンでさえ、己の死を予感している中、レンが敗北を、自らの死を理解していないわけはなかった。

 

「ちょっと、あなた。私なんかほっといてよ。帝国兵でしょ。私を殺そうとしてる奴らの仲間なら、その道をどきなさいよ」

 

レンはリュエンの声にすぐ言葉を返す。

 

「ダメだ」

 

「なんでよ」

 

「さっきも言っただろ。俺は君を助けたくて、ずっと生きてきた」

 

レンは逃げなかった。

 

――風が起こった――。

 

「逃げないのか、いい度胸だ。嫌いじゃないぜ。名前を聞いておこうか?」

 

「レン。お前にリュエンは殺させない」

 

「そうか。覚えておこう」

 

ランサーは狙いを定める。レンの命を奪うために。

 

――異界の門は開いた――。

 

レンはそれでも逃げなかった。

 

死ぬのが怖いわけではなかった。

 

しかし覚悟があった。逃げられない理由があった。

 

「ここで、お前を止められなかったら、リュエンを連れていかれたら、俺は絶対に後悔する。だから俺は逃げない。リュエンを絶対に守る」

 

レンは持っていた槍を構えた。

 

絶対に防ぐことができないのは分かっていても、決して臆さない。

 

目の前で、必要もないのに、自分のせいで人が死ぬという状況。

 

それがリュエンは悲しかった。

 

本当は恨むべき敵なので、死ぬことは喜ぶべきだと思うはずなのに。

 

「レン……くん」

 

「逃げるんだ 早く!」

 

「あ……ああ……」

 

――そのマスターの手に、赤い刻印が刻まれてゆく――。

 

「レン。異界の誇り高き戦士。その心臓貰い受ける!」

 

ランサーはレンの最期となる一歩を踏み出すため、足に力を入れた。

 

「俺は――!」

 

 

――そして、彼女はこの世界に舞い降りた――。

 

 

迫る何者かに気づいた時には遅かった。ランサーは完全に後手に回った。

 

「新たなサーヴァントだと……!」

 

ランサーが気が付いた時には、すでにその剣士は懐に入っていた。

 

そして、月光を反射する煌めきの刃による斬撃を槍に、その剣士は叩き込む。

 

その一撃。

 

「な……」

 

ランサーが驚いたのも無理はない。たった一撃で、自らよりも華奢な体をした剣士に数歩分後ろまで飛ばされたのだから。

 

現れたその剣士を見て、レンは何が起こったのか分からず、唖然とその乱入者を見る。

 

手に痛みを感じ、手を視界に入れた。

 

「なんだ……?」

 

手の甲に見たことのない刻印が刻まれていた。

 

藍色の髪の剣士はレンの方を向く。

 

蝶の形をした仮面で目を隠している。藍色なのは髪のみでなく、来ている服も同じで、王族を象徴するような権威を示すマントを翻す。

 

その青年は立ち尽くしているレンを見て。

 

口を開いた。

 

「問おう」

 

少し笑みを浮かべ、その剣士は確かにレンに向けて、言った。

 

「あなたが――僕のマスターか?」

 

「――え?」

 

(プロローグ 終)




サーヴァントプロフィール
(王族が召喚したサーヴァントは黒、魔族が召喚したサーヴァントは赤が頭につきます)

黒のセイバー マスター:アレス
『バレンシア神話』で語られる剣の使い手。此度の聖杯戦争では悪しき教団との全面戦争の時の姿で現界している。

黒のアーチャー マスター:リュート
『トラキア戦記』に登場する女戦士。元々弓は持っていない。通常時は剣で戦う上、弓の使い方は覚えているものの、なぜ使えるのか覚えていない。

黒のランサー マスター:ミレーユ
『透魔伝承』に伝わる槍使い。アルアトールにはない薙刀という武器を使用する。

第1宝具『雷神穿つ剋上の槍』:対人宝具 ランクB
電光石火という言葉が彼の故郷にはあるが、それを彼は槍の技として体現した。雷を纏った槍を使い、不可視の速さで動きながら、相手の死角から連続攻撃を行う。

スキル 剣殺し
剣を使う相手に有利に動くことができる。ランクの低い剣を破壊することができるのもこのスキルによる。

黒のライダー マスター:ソフィア
『英雄王神話(上)』に登場する騎士。自らが主と認めた人間に捧げる忠義は本物であり、ランサーに対しても強く出ることができる槍の腕を持っている。

黒のキャスター マスター:ヴァレル
『エレブ戦記(上)』に登場する魔法使い。まだ戦場に出るには早すぎる歳の少女。魔道の才能はあるものの、使い方やコントロールが未熟で、戦いは不得手である。

黒のアサシン マスター:クーベル
『エレブ戦記(上)』に登場する暗殺者。領主の信頼を一手に引き受けるほどの、潜入調査、暗殺、などの実力を持つが戦闘能力はそこまで高くない。

黒のバーサーカー マスター:フィラルド
『透魔伝承』に登場する竜の王女。体の一部を竜のものに変質させ攻撃を繰り出すことができる。しかし加減ができないため、戦闘中に周りのものはほとんど破壊する。


謎のサーヴァント マスター:レン
『邪竜覚醒』という物語に登場する剣士。何かの因果によって召喚された15騎目のサーヴァント。クラスは不明。その剣筋は多くの死闘を超えてきたが故に洗練されている。


赤のセイバー マスター:???
『エレブ戦記(下)』に登場する剣士。剣の道を極める、という口癖があり、歳若くして剣聖と呼ばれた腕を持つ。

赤のアーチャー マスター:???
『英雄王神話(下)』に登場する弓兵。生まれ育った環境、そして生業から暗殺も得意とするが、今回は弓の腕を聖杯に認められたアーチャーとして現界している。

赤のランサー マスター:???
『光石伝説』の主人公の1人。『勇王』という異名を持つ。槍の技術は未だ修業中と本人は語るものの、部下の近衛騎士を凌駕する腕を持ち、騎士長とも互角に戦えたという。

赤のライダー マスター:???
神話『暁の巫女』に出る1人。一般市民たちが酷い差別視をしていた獣牙族との友好を結び、二つの種族の交友の架け橋となる先駆者として活躍した。

赤のアサシン マスター:リュエン
原典は不明。おそらく、アルアトールに伝説として語られなかった世界の英雄である。自分を最弱サーヴァントとして卑下している。

第1宝具『万能の使い手』:???
彼は生前相手を殺すためならどんな武器も使った。その逸話が宝具として昇華されたもの。神器を代表とする伝説の武器を除けば、クラスに関わらずあらゆる武器を使うことができる。そして生前使ったことのある武器ならばその場で複製することができる。


プロローグは以上になります。いかがだったでしょうか。
どのような形であれ楽しんで頂けれたなら幸いです。

今回でサーヴァント全員を出せればと思ったのですが無理でした。
しかし、できる限り出したつもりです。
今回は登場した英雄のプロフィールも可能な限り書きました。
一応原作はチェックしているのでたぶん大きな間違いはないです。多少違うところは、この話のオリジナル設定のはずです。
何か質問等あれば気軽にお尋ねください。

さて次回からは本編です。
主人公はレンの一人称視点を中心に進めていきたいと思います!
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