ファイアーエムブレム / 聖杯大戦(Fire Emblem / Holy Grail Grand War) 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。ファイアーエムブレムのキャラを動かすにあたり、素材を最高に生かそうとした結果、原作とは矛盾が生まれることもありますが、この世界独自のルールとして受け取ってください
これでOKという人はお楽しみください!
どれほどの時が経っても決して消えない後悔がある。
これは、あの日の続きだ。リリーが倒れていたあの瞬間から。
「あ……あ……」
苦悶の表情を浮かべるのも当然だ。むしろまだ生きているのが驚きであるかもしれない。
リリエラは泣いていた。
「リリー!」
必死に呼びかけたが、リリエラはもうだめだと、子供ながらに分かった。
こんな形でお別れだなんて、嫌だった。もちろんどんな別れが理想的かなんて考えているわけではなかったが、それでもこんな別れは間違っていると。
「リリー! しっかりしろ」
「レン……」
「リリー!」
「泣いてくれるんだ。人間のくせに……」
「はぁ? 何言って」
「私……実は……」
「言わなくてもいい。俺、もう分かったから」
そう、さすがに先ほどの兵士たちとの話を聞けば誰が殺されているのかは分かっている。
リリエラは魔族なのだ。だから殺された。
別に普通の人と見た目も中身も変わらない。唯一、魔族と蔑称で呼ばれる人たちは、なぜか魔法を魔法書無しで発動でき、普通の魔法書を使う人間より、強力な魔法を使える、というだけの存在なのだ。
しかし、魔族というだけでこの国の人間はその存在を忌避する。生存を許さない。
それは長い間、アルアトールが帝国になったその時から続いている負の伝統なのだ。
確かに昔、人間と魔族は戦争をした。
でも数百年も前だ。そんなものを今も引きずっているんなんてくだらない。
なんでそんなことが理由で、リリーは殺されなきゃいけないんだ。
許せない。こんなことにした奴はみんな許せない。
「レン……」
「リリー、もうしゃべるな!」
「だめよ……だって、今、アレスは必死にリュエンを連れて逃げてるの」
「え……リュエンも魔族なのか?」
「うん……でもレンならそんなことで嫌いになったりしないでしょ?」
「当たり前だろ。俺にとってみんな友達だ」
「ありがとう……。そう言ってくれたの……君が2人目。だからこそ、アレスを助けて……リュエンを助けて……」
「……でも」
「私の……こと……いいから! お願い!」
致命傷なのに、これほどの威圧を持った言葉はいったいどこから出てくるのか不思議だった。それは彼女の覚悟であり、それほどの大きな願いだと言うこと。ならば、俺はそのリリーのお願いに応えなければ。
ドゴン!
俺の部屋に何者かが入ってきたのはその時だった。
「見つけたわよ」
俺を捕まえようとしていた魔法学の先生だった。
「先生! リリーが死ぬ。助けてくれ!」
つい助けを求めてしまった。その直後、俺は大変な間違いに気が付く。ここに務める教員は全員が王国に仕える士官。
先ほど、下で聞いた話を考えれば、あの先生もまた魔族は殺すように言われ続けてきた人だ。
「レン君。彼女は」
「先生。先生なら助けられるよな!」
「……それは無理よ」
「ふざけるなよ! 先生は魔法の杖も使えるだろ! だったら傷をいやすことも……治らなくたって痛みを和らげることくらいできるはずだ!」
「それよりも、あなたの避難が先よ。助からない命に慈悲をかけるのは、生きられる余裕のある人間の役目。あなたにそれを乞う権利はない。素直についてきなさい」
この人でなし、と俺は先生を睨みつけた。どうして苦しんでいる人間を助けようとしないのか、理不尽に命を奪われる人間を見捨てるようなことを言うのか。俺には理解できなかった。
「先生! 見損なったぞ!」
侮辱しても先生は動こうとしなかった。
このままでは連れていかれてしまう。
リリーを見た、もう限界そうだった。それでも俺に頷きかけたように見えた。早く行けと。
俺は槍を構え、
「先生、どいてもらうぞ!」
そのまま突進した。
建物内ではすでに至るところで火事が起き、辺りには死臭が漂うというとんでもない環境の中でこの行為に走ったのだ。さすがにそれは予想外だったようで、俺を捕まえることはしなかった。おかげで俺は部屋の外に飛び出すことができたのだ。
リリーは言った。助けてくれと。その時の俺は、アレスがどこに逃げていったのか知らなかった。
それでもとにかく走ったのだ。走り回ってなんとしても見つけるつもりだった。
5階建ての寮をくまなく、兵士に見つからないように探しまくり、それで見つからなかったので俺はいつも授業を受けている学び舎へと戻った。
ひどい有様だ。今まで神聖な学び舎だったはずのその場所は、あらゆる箇所が血で染められていて、窓ガラスは割られている。
おそらくリリー以外にも魔族がいて、そして殺された。この国のなんの意味も成さない伝統によって。
学校内はすべて探した。それでもいないということは、どこか別のところに逃げたのだ。
どこかに隠れている?
そう考えたが、学校は探さずに外に出た。隠れているのなら、俺みたいな馬鹿に見つかるのではすでに大人に見つかっている。
まだ逃げているとしたら、城ではない。子供ながらにあそこには敵が多いと俺は感じた。
街の中も兵士がうろうろしている。
逃げ回り混乱していた間に外はもう夜。それに兵士がうろうろしていれば、さすがに夜の市も開催は憚れる。故に、街には兵士が走るときに鳴らす甲冑の音のみが響き渡る。
アルアトール城下街の構造は非情に簡単になっている。
碁盤の目、というらしいその構造により、街には上空から見て縦と横の道しかない。街と外を隔てる大門から、城までまっすぐ続く大きな通りは、商店通りと呼ばれる街の経済を担う店が並ぶ。当然他のところにも店がないわけではないが、生活必需品はこの通りですべて買うことができる。ちなみに由来はアルアトールから東方に行ったところの大陸の言葉らしい。
そのように張り巡らされた道を右に行ったり左に行ったり、それでも必ずいると思ったのだ。
兵士が街の中を跋扈している理由こそ、まさにアレスを探してのことだろう。反魔族の父君に逆らってでもリュエンを助けるという彼の願いは本物のはずだ。
しかし、もうすぐで街の大門だ。ここまで必死に探しても見つからないとは、一体どこに行ったのか。
街の防衛の問題から、街から出るには大門しか存在しない。それは兵士や王族が通るため専用の利便性のための道を一切に作っていないところは徹底している。さすがに隠し通路はあるだろうが、そこまでは知らない。
以前アレスが言っていたが、そのような王家の秘密を知るには成人にならなければいけないらしい。それが本当であれば、アレスも大門を通る以外に外に出る方法は知らないはずだ。
そして、大通りから、5つ隣の裏地に差し掛かった。向かい側の横の道を、周りを警戒しながら進んでいる2人を発見した。
「アレス、リュエン」
俺を見ると、アレスは一瞬驚いた顔をしながらも、
「助けに来てくれたのか?」
「ああ」
「それは……ありがとな」
俺が来たことを喜んでくれた。だからこそ、俺も何か役に立たなければと思った。
リュエンは、すでに泣いて、泣いて、涙が枯れ果てたのか、顔は泣いているのに、涙はもう出ていなかった。
「リュエン……」
「うう……レンぅ……怖いよぉ……」
「俺が来た。その……なんなら囮にでもなるから、絶対に逃げれる」
俺だってここまで来て、どうしてこうなったのか、という原因探しをする気はない。今はとにかく逃げる。逃げるのだ。
「ぐ……ぅぅ。レン……リリーが」
「見た。その、お前だけでも逃げてほしいって」
「リリぃ、うああ……」
リュエンはぎゅっとアレスの手を握っていた。
しかし、驚いた。アレスはここに来るまで、兵士に見つからず逃げてきたのか。俺は言えた話ではないが、リュエンを連れてよくもここまで来たものだ。
「ハナムさんのおかげだ。兵士をうまくかく乱してくれるらしい。子供を逃がすこともできるなんて、本当にすごいな……」
「え、あの、お前の近衛騎士になるっていう……」
「そうだ。後は大門を開けたところにハナムさんの弟子が待っているはずだ。その人にリュエンだけ逃がしてもらう」
「お前、こんな時のために、そんな計画立ててたのか?」
「いや。寮に襲撃があったときに、いち早く俺の部屋にハナムさんが来たんだ。そこで、俺に逃げ方を言ってくれた。……一つの場所にとどまるのも危険だともね」
「あ、悪い」
「いや、いいんだ。行くぞ」
そう、迷っている暇はない。いろいろと話をするのも後にしなければならない。
ゴォォォ。
聞いたことのあると音が聞こえた。重い何かが動くような、荘厳ではない者の、決して軽い音でもない何かが動く音だった。
「大門が開いた」
大門の開閉は本来昼間しか許されていない。それが夜に開く光景は、街の人間もほとんど見たことはないはずだ。
ただ大きな扉が開くだけのその光景は、どこか神秘的なように錯覚してしまう。
「でも、こんなことをしたら、兵士たちがすっ飛んでくるんじゃ」
「だな」
「捕まるだろ」
リュエンの体が震える。
当然だろう。奴らはリュエンを殺すつもりだ。
殺されるのが怖くない人間なんかいない。
「リュエン。頑張れ。もうすぐだ」
「うん」
「レン、一気に走るぞ」
アレスがリュエンを引っ張り走り出したのを見て、俺もそれについて行く。
大門まではさほどかからない。およそ10秒走れば絶対にたどり着く。
「でも、兵士たちも来てるんじゃ」
「それもハナムさんが何とかしてくれている。少なくとも、リュエンが門を通るまでに他の兵士は来ないように動いてくれている」
よく見ると、大門の近くに、すでに死んでいるのか、兵士の死体が転がっている。まだ死んで間もないのか、血が赤かった。
「計画通り……!」
門の前で待機している、ハナムさんの弟子がやったのだろうか。
いずれにしても、今、大門に、俺達を阻むものはいない。
走った。走った。そして大門の正面にたどり着いた。
後はそこを通り、ハナムさんの弟子にリュエンを引き渡すだけ。
――それだけだ。
「ご苦労だったな。アレス」
独りの男がいた。たった1人の男が。
「な……!」
アレスが驚いている。つまり、これは計画にはない展開だと言うことか。
「フィラルド兄上……」
「よくここまで生贄を連れてきた。計画通り、お前は彼女をしっかり連れてきてくれた」
この男が言っていることを、俺はすぐには飲み込めなかった。
フィラルドと言えば、この国の第一皇子。そんな大物が立っている。そしてその足元には、血を流し立横たわっている女性が一人。
「フリニア!」
「心配することはない。彼女は生贄と逃がそうとしていた反逆者だ。大方情が沸いたのだろう。俺からは寛大な処分をするよう、父上に申し付けておく」
本来、大門の先に灯はない。あたりの暗闇を照らすのは、フィラルド皇子の部下と思われる魔法書使い。火球を浮かせている。
「さあ、アレス。彼女は今から俺たちが引き継ごう」
「兄上、知っていたのか?」
「知っていたも何も、これは、お前が私に生贄を渡してくれる手筈だろう?」
アレスの体が固まる。
「アレス……、ねえ、嘘だよね。嘘だよね!」
リュエンが叫ぶ。
「違う。違うよリュエン! 俺は君を逃がそうと」
「もう演技はいいんだぞ? アレス。わが弟よ。皆も弟の素晴らしい手腕に拍手を送ってほしい。彼は父上の無茶を見事聞き入れ、遂行して見せたのだ」
その言葉とともに、第1皇子の後ろで屯するニコニコと笑みを浮かべる兵士たちが、拍手を始めた。
「素晴らしいですわ」
「さすがです」
そしてアレスを賛美する声が高らかにあげられる。
「違う。やめろ、やめろ!」
「何を戸惑う。お前は皇子だ。生贄を立派に捕らえたお前は皆に己の武勇を誇るべきだ」
アレスが裏切った……ここまでが、リュエンを帝国に引き渡すための計画だったのか?
「違う。ふざけるな。そんなに俺が気に入らないのなら俺を殺せ!」
否、違う。アレスは本気だ。それは顔を見て分かる。あいつは元々嘘をつけないという意味ではバカだし、だからこそ誠実の塊みたいなやつだ。
「アレス……」
しかし、リュエンはそうは信じきれないらしい。アレスに疑いの目を向けている。
「リュエン……違うんだ。俺は、最後までお前の味方だ」
「……アレス……」
「本当だ。信じてくれ! 俺はお前を裏切ったりはしない」
「なら……なんであの人がいるの?」
「ハナムの立てた計画を知ってたんだ。あいつから情報を聞き取った。拷問でもなんでもしたんだろう」
アレスは第1皇子に言い放つ。しかし、それでも、奴は、
「何を言う、この前、俺に教えてくれただろう?」
と、奴は懐から1枚の手紙を出した。
俺も目を疑った。
そこには、リュエンを連れて逃げてきたここまで道のりを詳細に全部書いてあったのだ。
それも、アレスの筆跡で。
リュエンは手を離した。そしてひとりでに逃げようとした。
しかし、すでに逃げ場はなかった。王国兵に包囲されていた。
「アレス。裏切った……んだ」
「違う。あんなの書いた覚え……」
アレスが驚愕で空いた口がふさがらなくなっているところに、第1皇子は追撃する。
「これは……お前が俺に送ってくれた手紙だ。お前の字で、本物を証明するお前の血判までついている。ここまですべてはお前の手柄だ」
疑いようのない証拠。リュエンを連れ去ったのはアレスだという。
その時は俺も、アレスを疑わざるを得なかった。
「最低……」
リュエンは枯れたはずの涙を再び流しながら、
「……そんなに家族に褒められたいの、クソ野郎!」
「ちが」
反論などできるはずもない。そこに証拠もあるのだから。
「死んでも恨んでやる。呪ってやる。お前なんて、絶対に!」
「違う、これは、これは嵌められたんだ」
「絶対に許さ――」
そこまで言ったリュエンの口はふさがれた。誰でもない第1皇子の手によって。
先ほどまで俺たちの前にいたはずのその人間は、たった一瞬で、俺達の気づかない間にリュエンの後ろに回り込み、口を手に持った布でふさいだのだ。
人間業とは思えない速さだった。
化け物、などと思ったのも嘘ではない。
もがくリュエン、しかし力の差は絶対で、息も十分吸えないリュエンはすぐに意識を喪失した。
「アレス、そしてレンだったか、此度の働き、大義だった。今宵はゆっくり休め」
――それ以降の記憶はない。
この続きもすぐに投稿する予定です。
詳しいあとがきはそのときにしたいと思います。