ファイアーエムブレム / 聖杯大戦(Fire Emblem / Holy Grail Grand War) 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。ファイアーエムブレムのキャラを動かすにあたり、素材を最高に生かそうとした結果、原作とは矛盾が生まれることもありますが、この世界独自のルールとして受け取ってください
目が覚める。
いったい俺はどうしてしまったのか。覚えているのはハナムさんが俺の借りている街のねぐらに来て。
なるほど、それ以降の記憶がない。
ここは城の中に構えられた近衛騎士専用の部屋。近衛騎士になれば誰にでも与えられる着替え場所および、簡単な荷物置き場兼仮眠室。幸いにも例外はなく、俺にもその部屋は与えられた。
そのベッドで俺は寝かされていた。単純に幸運だったといえる。あそこで俺は殺されていたのかもしれないのだから。
そしてなぜか俺が持っていた槍、ゲイルスケグルも近くに横たわっていた。その近くには手紙が置いてある。ハナムさんの筆跡であることは見て分かった。
独房よりは居心地がいいが、さすがに王族とは違い、王城の中でもかなり質素な部類の部屋なので、壁は白一色の壁紙が張られているのみで、これと言った特徴はない。俺は平民の出なのでそんなこの部屋に多少の安らぎを覚える。
その手紙を読むには十分な平静を俺は取り戻していた。
手紙にはそれほど長いことは書かれていなかった。むしろ短かった。
『今宵はそこから出ないように。出れば命の保証はできませぬ故』
聖杯戦争のことだろうか。俺の為を思って、というのはさすがに考えすぎだろう。ハナムさんには何か俺がいては不都合があったと考えるべきだ。
早速自室に放り込まれている現状を考えると、ハナムさんも味方として頼りにするのも考え物だと思ってしまう。結局は自分の身は自分で守らなければ。
「そういえば、今は……」
皇帝が聖杯戦争の開幕を宣言したのは今朝。戦闘が始まるのは今日の夜。
と思っていた矢先の出来事なので、もしも、1日昏倒していたのなら、すでに戦争が始まってしまったということか。
幸いにも変な服には着替えさせられていないので、俺は槍を持ってすぐに部屋を出た。
今は日が暮れてすぐだった。
「間に合ったか?」
どうか、今日でありますように。という願っても仕方のないことを願いながら、どうするかを考える。
ハナムさんに見つかったら即アウト。部屋に閉じ込められてしまう。理由を聞かせてほしかったが、それはまたの機会にすべきだ。
今はとにかく、リュエンを助けることが先だ。大陸には、囚人を入れる監獄がいくつかある。魔族嫌いの王国の奴らは生贄を来賓室に入れたりも、並みの生活をさせているわけもない。どこかの牢屋で生かすだけ生かして、徹底的に痛めつけているに違いない。
そして今日、生贄が処刑されるらしい。ならば何かしらの動きはあるはずだ。
俺はすぐに部屋の外に出て、王城の中を駆け抜ける。
王城の1階には広い中庭がある。雅な庭園を日々維持している人々には申し訳ないが、ここを突っ切ることで多少の近道になるはずだ。
「いや……」
しかし、やめておいた。なぜなら、何かよからぬことが起こった後らしい。魔法陣が見えたのだ。おそらくは英雄を召喚した後だろう。
すでに夜なので、1階の正面入り口の門は閉じられている。ここから出るには、1階裏口か、多少遠回りになっても、階段を上がり、4階の監視塔の連絡通路を通ってから、監視塔の2階から飛び降りるのが早い。
それ以外だと、見張りに見つかる可能性もあり、最悪ハナムさんがすっ飛んできたり、今度こそ、第2皇子の執事に殺されることもあり得る。
玉座のある謁見の間はその途中にあるので、そこは躱すべきか迷った。
「いや、今は時間が惜しいか」
それにこの時間には誰もいないだろうと高を括る。
走る。とにかく、外へ行くために。
この急ぐ気持ちは、時々夢に見るあの日と同じ感覚だった。しかしすべて同じではない。俺は俺でリュエンを助けるための力を、今日まで可能な限りつけてきたつもりだ。あの日のように何もできずに終わりみたいなことには絶対にならない。
実際はそう願っているだけかもしれないが、諦めるのとそう考えるのはまた別の話だ。
謁見の間の近くにまでは、なんの問題もなく走ってこれた。
しかし、そこを突っ切るのはやめるしかない。誰かがいる。俺は既に近衛騎士ではないらしいので、もしかするとまずいことになるかもしれない。
しかし、こんな夜にいったい何を言っているのか。
灯は豪華絢爛に灯っていたので、清掃ではないと思われる。ぎりぎり様子が見えるところまで体を寄せて、耳を傾ける。
声だけだが、何か聞こえてくる。
「皆の者、サーヴァントの召喚は終わったか?」
皇帝グランバニアの声がする。そしてそれに応えるのは、第1皇子から第4皇子までの王子たち。他には声も聞こえなければいる気配もない。
すでに聖杯戦争が始まっているようだ。まさかスタートをこんな形で知らされるとは思わなかった。それぞれの王子は問題なくサーヴァントを召喚したようだ。しかし、それならなぜ皇子同士が殺し合いになっていないのか。
「アレスは?」
第2皇子クーベルがアレスの不在について問いを投げた。そしてそれにグランバニア皇帝は答えた。
「奴なら教会だ。奴はこの城の中を召喚地には選ばなかったらしい」
そこに第3王子ヴァレルが口を挟む。
「は……怖気ついたのか。協会に保護を求めにでも言ったのか。あのクズ」
「そう言うな……くくく」
「どうした親父。えらくご機嫌じゃないか」
「なあに、奴も面白い男になったものだ、と思うてな」
何やらアレスは面白いことを起こしているらしい。俺はあいつの合図があるまでは手伝わなくてもいいという計画になっている。なので、アレスが今何をしているか初めて知った。
第4皇子、リュートが、皇帝のご機嫌を見て、
「アレスが。どうしたのでしょう?」
と、言うと、皇帝はずいぶんと上機嫌にアレスのしでかしたことを伝えた。
「奴め、王国の神器たるファルシオンを盗んで逃げた。おそらく召喚の触媒にするために。ふはははは」
「そんな……なんと愚かな。父上、何が可笑しいのです?」
「どうやらアレスの評価を変えなければならないようだ」
「それは、国の神器を勝手に盗み出した重罪人としてですか?」
「いいや。確かに法ではそう定めているがな。まさか奴が聖杯戦争にそこまで本気だとは思わなんだ。礼儀しか知らぬか弱い獣を装っておきながら、実際は奴も聖杯を求める欲深い願望を持っていた。ククク、それをこの私に悟らせぬとは、奴の中にも皇帝になるにふさわしい猛々しさがすでに完成していたとは」
第1皇子はそれに共鳴するようにして、
「そうですね。父上。私も、兄として実に成長を嬉しく思いますよ」
と一言。
「であろう。フィラルドよ。お前も足を掬われるやもしれんぞ?」
「お戯れを。と言いたいですが。今宵よりは聖杯戦争。何があるか分からない以上、もしかするとあり得るかもしれないですね」
ため息をついたのは2人。おそらく第2皇子と第4皇子か。まさかアレスがそんなやんちゃをしていたとは。聖杯戦争の前に、国の重罪で追い詰められたらどうするつもりなのだ。
「で、親父。罪人は捕まえなきゃな? 殺していいのか?」
「まて、ヴァレル。今はアレスのことよりも気がかりなことができた。お前たちには今宵のみ、殺し合いの前にしてほしい仕事がある」
「なんだよ。まだ殺し合いはできないのか?」
「急くな。殺し合いの相手が違うというのだ」
「ほう、おもしれえ、聞かせろよ」
「そのためにお前たちは、本来の聖杯戦争ではありえないと分かっていながら呼びつけたのだ」
話によると何か聖杯戦争絡みでとんでもないことが発生しているらしい。
「生贄が逃げた」
数秒、場が静まり返った。そしてようやく反応を返したのは第2皇子。
「生贄が逃げたと……いったいどのように……」
「よく聞くがいい息子たちよ。奴め、牢獄の中でサーヴァントを召喚したようだ」
「馬鹿な。彼女の今の待遇では、サーヴァントを召喚できるほどの生命エネルギーはないはず」
「そう、不可解だ。しかし、事は現実として起きた。先ほど監視の者から報告が届いた。すでにそのサーヴァントは牢獄を突破しつつある。当然通常の兵士では太刀打ちできん。このままでは生贄を逃がす」
生贄とはおそらくリュエンのことだ。あの日、夢に見たあの瞬間、第1皇子は確かに言った。生贄と。
「そこでだ。息子たちよ。そなたらのサーヴァントを使い、謎の発生をしたサーヴァントを殺し、再び生贄を捕えよ。この依頼は聖杯戦争を監査する教会から直々の以来である。これを成し遂げた者には、令呪を1画贈与する、とのことだ」
「……破格の条件ですね……成し遂げた者には有利しかない」
「クーベルの言う通り。この機会にそなたらのサーヴァントの力をよく見極めながら達成するがよい」
ここまでの話で俺に問って重要なのは、リュエンが今脱走を図っているということだ。今ならまだ無事であり、まだ助けに向かうのに間に合うと言うことだ。
「父上、私からの1つ報告が」
フィラルドが口を開く。すぐにリュエンを捕えに向かおうとした他の王子たちも長男の話を聞くために踏み出していた足を止めた。
「父上。城の中に6つの魔力の揺らぎを確認しました。サーヴァントの召喚が6、行われたと思われます」
驚きの声を上げたのは第4皇子。
「アレスは教会と言ったね。フィラルド兄さん」
「そうだ」
「じゃあ、誰が。城の中に裏切者が?」
「……聖杯は基本的に王族をマスターとして選ぶ。アレスがいないとすると、城に居るはずの王族は2名。対し、謎の召喚魔力が2つ」
「まさか、ミレーユとソフィアが?」
「可能性としては考えておくべきだ。もしかすると、今回の戦争では、本当にただ一人になるまで殺し合わなければならないかもしれないことも」
「……く」
「お前にとっては、辛い話かもしれないがな? 所詮俺たちは欲を持つ運命にあるアルアトールの皇帝の血族。覚悟は今のうちに決めておけ、リュート」
フィラルドの諫言に、リュートは黙ってしまった。
しかし、まさか皇女もサーヴァントを召喚してるとは。アレスはこのことを知っているのだろうか。アレスは前に一度だけ、姉と妹とは殺し合わなくて済むのは本当に良かったと言っていた覚えがある。
話は終わった。皇子たちはそれぞれこの場を離れ始める。俺も来た道を戻りその場から逃げる。
しかし、話を聞く限りでは、全員がサーヴァントを連れてリュエンを捕まえに行くつもりだ。ならばそれよりも早く、リュエンを探し出し、助け出さねばならない。
行けるか?
「いや。行かなきゃ」
わざわざ口に出して言ったのは、己を鼓舞するため。
もはや時間の猶予はない。少し気が引けるが、中庭を横切っていくしかない。魔法陣が気になるが、それはぶっつけ本番で、何かあったら対処する。そこで死ぬかもしれなくても、今は他の皇子たちに追いつかれないように走らなければいけないのだ。
念のため、俺は背中の槍を確認する。ゲイルスケグルは確かにそこに在った。
中庭の直前まで来た。個々から裏口まで突撃し、そのまま城下街へ。
そして騒ぎが起こっているところに走る。そこにきっとリュエンがいるはずだ。
俺は必ず、今度こそ、リュエンをこの手で助けるのだ。死んでほしくないから。
死ぬべきではない人間を、リリーのように殺させはしない。
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「父上。よかったので?」
「フィラルド。何がだ?」
「盗み聞きをしていた近衛兵が一匹」
「良い。どのみち奴は聖杯戦争に何らかの関わりを持つだろう。今から利用できる駒を消すのは、お前含めて、他の聖杯戦争の参加者に公平な戦いの場を与えられぬというものよ」
「父上はこの戦いを楽しんでおられるようですね」
「無論。幼き頃より心躍らせた伝承、物語の英雄たちがこの地に来て、覇を競い合う殺し合いをするのだぞ。この政を楽しまずしてどうするという」
「そうですか」
「フィラルド。お前は気に入らんのか?」
「……いいえ、父上が見逃すと言ってくれて助かりました。私も彼をどう利用したものか、すでに考えていたのですよ」
「ふふふ、なんだ。お前も楽しんでいるではないか」
「ええ。ようやく、運命の出会いも果たせました。後は、彼女を――」
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「はははははは。恐ろしい大願だ。叶えろよ。ぜひ見たいものよ」
「……では父上。失礼します」
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ここまではレンの独白です。
次回、ようやくプロローグ2の続きを書きます。
場面は、謎の仮面をつけたサーヴァントがレンを助けたその場面からです。
いよいよ聖杯戦争が始まります!