ファイアーエムブレム / 聖杯大戦(Fire Emblem / Holy Grail Grand War) 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。ファイアーエムブレムのキャラを動かすにあたり、素材を最高に生かそうとした結果、原作とは矛盾が生まれることもありますが、この世界独自のルールとして受け取ってください
これでOKという人はお楽しみください!
ファイアーエムブレムのキャラを使って聖杯戦争をします!
――手が熱い。
気が付くと、手の甲に見たことのない刻印が刻まれていた。
藍色の髪の剣士が俺の方を向く。
ここにきて俺はようやく頭が冴えてきた。
先ほどまで、はっきり無我夢中だった。
なんの策も持たないまま城から街へ飛び出し、そしてリュエンが捕まったあの日と同じように必死に走った。
そして騒ぎになっているところに突撃した。誰かと誰かが戦っていたが、あまりに見なかった。飛んできた刃をはじき返して、リュエンを連れ去った。
そして今、リュエンが俺の後ろにいる。ひどい格好だ。体は栄養失調しているんじゃないかというくらいに細く、虐待の傷も多く正直直視ができないほどだ。
「レン……」
先ほどまでも言葉を交わしていたはずなのに、リュエンの声を初めて聞いたような
感覚になる。
――手が熱い。伝わってくる痛みでようやく冷静になったのだが、これはなんだ?
「あなた……」
驚いた顔で俺を見るリュエン。しかし、彼女のその反応を気にする前に俺は、目の前に現れ、謎の槍使いから俺を救ってくれた剣士が俺に語りかける。
蝶の形をした仮面で目を隠している。藍色なのは髪のみでなく、来ている服も同じで、王族を象徴するような権威を示すマントを翻す。
「問おう」
彼は少し笑みを浮かべ、俺に向かって言った。
「あなたが――僕のマスターか?」
「え……マス……ター……?」
問われた言葉を口にするだけ。彼が何を言っているか、何者かも分からない。
今の自分に判る事と言えば――神々しい剣を持つ、細身で華奢な体をしているように見える彼も、向かい側にいる男と同じ存在ということだけ。
「……」
俺が何かを言うのを待っているのか。しかし、俺は言葉にできなかった。助けてくれた騎士は、特別な感じだった。具体的にどうかはうまく言えないが、本当にそう思った。
先ほどまでの危機感は、殺されるかもしれないという恐怖は消え、今は目の前の彼だけが視界にある。
「あなたの召喚の招きに従い参上した。マスター、指示を」
マスター? サーヴァント?
まさか俺に言っているのか?
まさか俺の手に在るのは……。
彼は俺がその証を見たことに頷き、
「――これよりわが剣はあなたと共にあり、あなたの運命は僕と共にある。ここに契約は完了した」
「契約……?」
まさか、彼はサーヴァントであり、俺がマスターとでもいうのか。俺には聖杯戦争に参加する資格など、持ち合わせていないはずなのに。
彼は再び振り返る。
向いた先には、未だ槍を構えた男の姿がある。男は妙な形状の刃を持つ槍を構え、この場に現れた乱入者を見定める。
「てめえ、何者だ」
仮面の剣士は、持っている剣を構え答える。まさか戦うつもりなのか。
それはだめだ。これでも近衛騎士として戦いの作法は一通り身に着けている。対格差、武器の相性、この2つとも不利ならば、正面で戦っても勝ち目は薄い。
先ほど助けてもらった身として、そんなことを言うのはよくないかもしれないが、
「だめだ……!」
と、思ったことをつい口にしてしまう悪い癖がここで発動してしまう。
しかし、彼は俺のその言葉に従うこともなく単身で槍使いに突撃する。
距離を詰めた。
「問答無用ってか」
槍使いも当然迎撃に出る。
先ほどまでの俺とのやり取りがすべて手を抜かれていたものだと分かった。
――速い。
研ぎ澄まされた刺突の一閃を俺は捕えられなかった。あんな速度並みの人間では刺されたことすら気が付かないだろう。
しかし、それほどの刺突を、藍色の剣士は軽く躱す。
「はぁ!」
槍使いは大した反応はしない。槍を引くような動作に見せて、刃を相手に当てに行く高等技術。それも、普通の槍使いでは人を傷付けるに十分な速度が出ないものの、今行ったそれは間違いなく人を斬れる。
しかし、仮面の剣士は。特に驚く様子もなく、その槍に向けて剣を振り上げた。
槍は大きく上に弾かれる。
剣士はそれだけでは止まらない。決定的な隙を見せた槍使いに、迷いなく斬りかかった。
「せあ!」
舗装でから、信じられない威力の一閃。大男とまでは言わないが、筋肉質で鋼体だろうその槍使いを1の剣戟で奥へと叩き押した。
「うお……」
藍色の剣士の攻撃は続く。再び斬りかかった。
俺は息を呑んだ。信じられない光景を目にしたからだ。
互いが神速ともいえるすさまじい速さの斬撃を繰り出す。しかし、その中で、体格的に劣り、正面から打ち合えば力負けしそうな彼女の攻撃は、間違いなくあの男を圧倒している。
この歳まで必死に己を鍛えてきたその日々はまるで無駄であるかというように、視認すら厳しい槍使いの斬撃を、確実に逸らしながら間合いに踏み込む剣士。
「ちっ!」
武具の激突。一瞬、槍に光が灯った。剣士が振るう剣を受けた瞬間、槍は感電したかのような光を帯びる。
俺はそれを知っている。
あれは視覚できるほどの魔力の猛り。剣士の一撃一撃には、力の差を埋めてそしてさらに圧倒するだけのとんでもない魔力が籠っている。そのあまりにも強い魔力が、触れ合っただけで相手の武具に浸透しているのだ。
衝撃だけなら、その剣士は一振りで家を崩壊させるに等しいエネルギーを毎度放っているに等しい。
「ぐお……!」
剣士の猛攻を捌きながらも、槍使いは再び奥へと押し込まれていく。
「くそ……!」
悔しそうな、しかしそれでも楽しそうなという矛盾した顔で剣士を見る。
決してその槍使いは剣士に比べ弱いとは言い切れない。先ほど述べたとおりの衝撃で放たれる剣戟を、奴は己の槍捌きと体術のみで確実に対応し続けている。並みの人間では折られて終わりになるはずの槍も、未だ多少の傷はついていても健在だ。
渾身の剣の叩きおろし。それも持ち前の技で防ぐ槍使い。剣士の剣は地面に深く潜り込み周りの道にひびを入れた。
「せあ!」
しかし大振りの一撃は、同時に隙を生むということ。押し込んだはずの男はすぐに自らにかかった衝撃に叛逆し、己の槍を必勝の構えへと持っていく。
跳躍。短い間合いで最大の助走を付け、相手の心臓を狙う槍。たった1秒も経たずに跳ね返ってくる槍に対し、剣士は剣を下ろしたまま、コマのように体を反転させた。
その攻防はただ1撃のみ。
金属音が響き渡る。
そしてお互いが再び距離をとった。
お互いがお互いを仕留めようと放った手だ。それが決まらず互いに不満の色を示すのは当然だろう。
今の攻防は互いに負担が大きかったようで、深呼吸をしながらも相手に殺気を向けるだけにとどまっている。
なんという戦いだろうか。こんな戦いに人間が介入する余地などない。
――これがサーヴァント……!
「どうした槍使い? 止まっているのは貴殿らしくはないだろう。そちらが来ないのなら僕がいく」
強気に出る剣士。
「来いよ……、と言いたいところだが一つ訊かせろ。お前は『黒』か『赤』か? 場合によっては生かさなきゃ、俺のマスターを不機嫌にしそうなんでね」
「何の話だ?」
「あくまでしらばっくれるか。まあ、いい。命乞いをしろって言ったつもりだが、それが通じないっていうのなら、お前をわざわざ生かす理由にはならないな」
しかし槍使いは、構えを解かないまま、それでも笑って見せたのだ。
「だが、好敵手ってのは常に得難いものだ。その点にかければお前はとってもいいな。親父には及ばないにしても、お前も相当の剣使いと見える。お互い初見だしよ、ここらで分けって気はないか?」
剣士は提案を聞いて黙った。つまり一考の価値はあるということなのか。槍使いは俺の方を見ていった。
「悪い話じゃないはずだ。あそこのマスターは、度胸はあるが使い物にならない半人前、大して俺のマスターもまだこの果し合いにビビっているときた。ここはお互い、万全の状態になるまで勝負を持ち越すのも、俺としては悪くない」
この流れはまずい。あの槍使いは剣士との戦いを放棄すると言っても、リュエンを逃がすわけではない。正直俺ではあの男に勝てない。
リュエンを救えない。
いつの間にか剣士は俺を見ていた。そして再び槍使いと向きなおる。
「断る。君はここで倒す。ランサー」
槍使いはため息をついて、次の瞬間には、先ほど瞳に宿していた殺気を見せた。
「そうか。俺としちゃ、様子見でも満足な打ち合いだったんだがな……」
轟音。
それは生物としての本能に恐怖を与える音だった。
目の前で落雷が起こったのだ。星の見える夜空だったはずなのに、天空から青い雷が男に降り注ぐ。
しかし、男は死なない。それどころか。その槍は今の雷を帯び、咆哮をあげている。
姿勢は低く、しかし確かにその矛先は剣士に向けられる。閃きの糸は拡散し、辺りを焦がし続ける。
「あれは、宝具――!」
剣士は今までの声の質と少し違う声を発した。表すなら、警戒、その一言に尽きる。今から行われようとする攻撃がどれほど恐ろしい攻撃が、未熟者の俺でも感じ取れる。
「俺は雷神を継ぎ、そして剋する者。我が奥義を示す!」
ランサーと呼ばれた槍使いは地面を蹴った。
そしてうねりを挙げる雷撃は、やがて彼全体を多いように伝播し、恐怖を超えていく。
「『雷神穿つ』」
その発動は、一瞬だった。それ自体が強力な魔力を帯びる言葉であり、
「『剋上の槍』!」
地面を蹴った瞬間、その槍使いはそこで消える。
一瞬。それは本当にワープなのではないかと誤認する。人間ではどうあっても到達できない速さで剣遣いの前に現れた。
放たれる刺突は先ほどまでと違い、雷が宿る分破壊力が増している。
「――っ」
何より、先ほどに比べてさらに早い刺突が襲い掛かる。剣使いはその軌道をかろうじて逸らし、事なきを得た――。
これは夢?
そう思ってしまう信じられない光景が前にあった。
ランサーが2人。――否、2人いるはずはない。
ならばなぜ2人に見えるのか、とてもではないが理解が追いつかない。
しかし確かに2人いるのだ。剣使いの前に来た槍使いは刺突を放った。しかし、もう1人、剣遣いの後ろに来たランサーは斬り下ろしによる斬撃を放った。
全くの同時ではない。しかし、ほぼ同時ではある。
「くぅ!」
刺突を防いだのは剣。しかし、そこからさらに迫る斬撃に対応する手はもはやない。
「っああ!」
しかし、藍色の剣士はそれを見切ったかのように、前へと跳躍した。受け身もできない、ただ逃げるように跳ぶやり方だった。
なので、地面に転がるようにして着地という痛そうな方法で地面に激突したのは致し方ないだろう。
背中に切り傷と火傷。あまりにも痛々しい姿。
それでもすぐに剣を構えなおし、立ち上がる剣士。見ると先ほどまで蝶の形をしていた仮面が半分程度壊れ、消えていた。
「は――っ、く……!」
やはり今のが効いているのだろう。背中から血が流れている。
「最初の刺突、そして次の斬撃。そのうち最初の君は既に残像――」
残像? 馬鹿げている。どんだけ速く動いているんだ。
「ほう? 魔法による幻覚かもしれないぞ?」
「それはない。君は確かに一人で動いていた。気配が君一つしかなかった」
「そうか。いい勘してるな」
つまり、残像ができるほどの速さで動き、槍を二度、相手が対応に難しい方向から二度、振るったということ。そんなの子供が夢想で考えるような馬鹿馬鹿しい技なのに、あの男はそれを実現しているということだ。
これが、聖杯戦争の決戦兵器と呼ばれる、サーヴァントの力。
俺は、何も言えなくなった。
俺はこんなのが戦う戦争の最中で、リュエンを守ろうとしていたということだ。これを見てしまえば、思い上がりも甚だしい。
こんなのと戦うには、一体どのような修業をすればいい。
そう考えるのも筋違いか。そもそも、サーヴァントを相手に、人間が勝てるはずがない。それは歴史も物語っていた。
「く……!」
「ちなみに、俺の宝具は特殊でね。もちろん通常に比べて多少魔力を持っていくが、それでも令呪なしに5回は今の攻撃ができる。当然型なんか決まっちゃいない」
それが事実ではあの剣士に勝ち目がない。
まずい。助けに入るべきか。俺を助けてくれた剣士がピンチなのに。
「今のでお前の動きの限界も大体読めた。次は、斬るぞ」
勝利を断言するランサー。対して剣士は口こそうごいていないものの、手が震えている。おそらくランサーの宣言が事実であると受け止めざるを得ない状況なのだ。
「ランサー」
次の一撃。と、足を大きく踏み込んだところに、主からの声がかかった。
「ミレーユ」
「マスターって言いなさいよ! それより、宝具を使ったわね! もう! これで正体ばれたかもしれないのよ!」
そしてその悪い予感を事実に変えたのは、藍色の剣士だった。
「薙刀を扱う者は透魔伝承にある白夜の槍使いの特徴だ。そして青の雷撃、それはかの有名な神器たる雷神刀に連なるものだ。であれば、白夜の王族で槍使い、加えて英霊として昇華される存在であれば一人しかいない。御身は白夜王リョウマのご子息とお見受けする」
「ほらあ、バレちゃったじゃない!」
「仕方ないだろ、もとより俺はバレやすいんだ。使おうが使わまいが時間の問題だ」
「だから宝具だけでも隠せって」
「なあに、正々堂々の方が俺も後ろめたさがない。策ではなく、技で敵を倒す。それもまた武道を歩くものとしては、最低限守りたい矜持ってもんだ」
「むう……」
「だからそう怒るなよ」
ランサーとそのマスターが言い争う。
しかし、よく見ると、あれは第1皇女のミレーユ様ではないか。
どうしてミレーユ様がサーヴァントを従えているのか。本来聖杯戦争に参加するのは皇子だけなはずなのに。
「レン!」
俺にとっては死にかけるわ、皇女が戦争しているわ、謎の剣士が俺をマスターと呼ぶわ、ともうめちゃくちゃなことになっている。
だからこそ、今の声はとても頼もしく聞こえた。
「アレス!」
俺の主であり、友でもある、アレスが教会の神父を連れてこの場に来てくれたのだ。
その手に紅い刻印を携えて。
遅れてごめんなさい。
お正月にちょっとしたハプニングがあり、小説の投稿が頭から離れていました。
つい先ほど思い出し、このように投稿した次第です。
内容は今回はレンのサーヴァントらしき、謎の剣士と黒のランサーとの戦いになっています。そして次回はこの続きから――ではなく、赤のアサシンの黒のバーサーカーとの戦いを書きます。お楽しみに。