ファイアーエムブレム / 聖杯大戦(Fire Emblem / Holy Grail Grand War) 作:femania
・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。ファイアーエムブレムのキャラを動かすにあたり、素材を最高に生かそうとした結果、原作とは矛盾が生まれることもありますが、この世界独自のルールとして受け取ってください
これでOKという人はお楽しみください!
ファイアーエムブレムのキャラを使って聖杯戦争をします!
1-4のつづきです。
この場に現れた人間は2人。
1人は俺の盟友であるアレス。左の手の甲に俺によく似た赤い刻印を刻んでいる以外は聖杯戦争らしき戦いが始まった後もあまり変わりがないように見られる。
そしてもう一人は、たまに会ったことがあるくらいの、街のはずれにある教会の神父。グラド……という名前だったか。
俺の後ろに隠れているリュエンはアレスがこの場に現れた瞬間、
「アレス……!」
見なくても分かる怒気を一気に解き放ったのが、俺には分かった。
知っている。彼女の怒る理由は間違いなく、彼女を結果的に売り渡してしまった形になったあの時が理由だろう。
アレスが、第1皇子フィラルドに彼女を売り渡した、とリュエンはあの日勘違いしたままこの国の闇の中に投獄された。それが彼女の知る事実。
しかし、アレスにそんなことをしようとする意思はなかったのは間違いない。
あの後、俺とアレスは魔族を逃がそうとした反逆者ではなく、罪人を連行した功績者としてお咎めなしで明日を迎えたものの、とてもではないが、昨日と同じとはいかなかった。
リリーが死んだこと。リュエンが攫われたこと。それが悔しくて、次の日から王国への、己の家族への復讐を誓ったのは、俺ではなくアレスだった。
いずれ来る継承戦争。この聖杯戦争で勝ち残り、皇子を皆殺しにして聖杯を勝ち取り、アレスはリュエンのために聖杯を使うことで、彼女に許しを乞うと、決意を示したあの日を俺は覚えている。
だからと言って、リュエンはそれを知らない。今のアレスとリュエンの間には、決して埋まらない谷ほどの亀裂がある。それは今の俺にでもわかる。
「……リュエン」
アレスは俺の後ろにいるリュエンを見る。俺はそれに何も言わなかった。
今俺が感じた怒気、殺気。たとえリュエンがアレスを今すぐ殺そうとしているのに気が付いていても、俺はアレスに何も言わなかった。
アレスもそれは重々知っていると思ったから、ここで警告する必要はない。辛いだろうが彼女からの罵声も痛みも受ける覚悟はできている。
「……殺してやる」
アレスに聞こえないように殺害予告の言葉を述べた彼女は、持っている魔道者を発動させようとするが、彼女の魔力はあまり残っていない。
さすがにそれではアレスを殺せない。
それがリュエンも分かっているのか、魔導書を衝動でほらいたものの、それ以上は何もせず、アレスを睨み続けていた。
「リュエン。君を助けに来た」
「戯言を……どうせお前も、私を生贄にするつもりだろ!」
リュエンの怒りの声が、夜の街に響き渡る。
アレスは反論しない。それが間違いだと指摘しない。
「私が忘れたと思った? あの日、あなたは私を売った。私を売って王宮内の自分の評判を上げたんだ! 私に近づいたのももともとそういう目的だったからだ!」
「……俺は君を助けたい」
「牢の中であの仕打ちを受けると知っていたくせに、私をそこに閉じ込めた! 全部、自分が王になって、聖杯を手にするために! 違うか!」
「……俺は君を助けたい」
「まだ言うか! なら死ね。そこで死ね!」
華奢な女の子から出ているとは思えない、鼓膜を突き破る、尖った叫び。
「……俺は」
「あの牢の中で私は……痛かった、痛かった、痛かった、痛かった! 私を救いたい? なら、そう思ってたなら、なんで助けに来なかったの!」
「……どこにいるか俺は知らなかった。ただ、この聖杯戦争で明るみになると思って待ってたんだ」
「嘘つくな! 王族であるお前が知らないはずがない。やっぱり嘘つきだったんだ。昔からずっとずっと! 死ね! お前みたいなクズはそこで死ね!」
アレスは嘘を言ってはいない。聖杯への生贄となる彼女の存在は皇帝とその近衛騎士、そして牢獄の監守しか知らない国家機密扱い。それはたとえ皇子であっても知らされることはなかった。
アレスはリュエンが捕まってから、大陸中の監獄や地下施設をしらみつぶしに調べ、ハナムさんやクラウスさんにも調べさせ、そのどこにもリュエンがいなく、城下街地下に広がる監獄以外はあり得ないだろうと目算がつくまでに、およそ6年かかっている。その目算すらも正しいと信じられる証拠は何一つなかった。
それすらも、アレスが皇子として大きな権力を持っていたからできた裏技で、一般人の俺みたいな人間では、恐らくそのような目算すら立てられなかっただろう。それくらいに情報統制が完璧だったのだ。
しかし、それほどの時間をリュエンのためにかけたアレスは、それでも彼女の罵声に何も言わない。
「俺を許してほしい」
「なら死になさいよ! 待ちに待った戦いなんでしょ! ならそこで無様に死体晒して死ね!」
「ここで死ぬことに意味を感じない。それでは君を守れない」
「死ねって言ってんのよ! お前ら王族は、リリーを魔族っていう理由で殺したお前らは全員死ね!」
リュエンの怒りは収まる様子はない。
しかし、これ以上黙っていられないと、口を挟む人間が1人。
「アレス」
「ミレーユ姉様」
「……あんた、どういうこと。あの生贄の子の事は忘れるって私と約束したよね」
「姉様。俺は聖杯戦争で戦う理由は彼女だ。それ以外にありはしない」
「嘘をついたの?」
「ええ。俺はリュエンの嘘をついてしまった日から、ずっと嘘つきでしたよ。だからあなたとの約束も、いえ、皇子としてのこれまでの振る舞いもすべて嘘でした」
「お父様はあの聖杯の生贄を捕まえるよう仰せよ」
リュエンに殺気を向けられているアレスは、リュエンから目を逸らすことが彼女の怒りから逃げるようで躊躇ったが、しかし、自らの姉に目を逸らしたまま話すわけにもいかないのが、皇族としての振る舞いだ。
「姉様、俺は本気だ」
「そう。なるほどね。つまり、あそこの男の状態もあなたの指示と言うこと?」
ミレーユ様はとても怒っている。さすがに後ろにかくまっているリュエンに比べたら、生易しいものだが、それでもとっても起こっているのが伝わってくる。
そして俺の話になっているようだ。
「ちょっと、レン近衛兵。ずいぶんと生意気な立場になったじゃない。あなたがマスターだった聞いたらソフィアは悲しむでしょうね」
「それは……」
「あなたは今、帝国を敵に回したのよ?」
――ここで俺はようやく今の俺の立ち位置が危険であることを思い出す。
どうやら俺の手に宿っているのは、令呪のようだ。なぜか攻撃の手を止めているランサーと睨み合っている藍色の剣士は、俺をマスターだと言い切った。
もしそれが事実なら、俺はあの参加者ただ1人しか生き残れない聖杯戦争のマスターになってしまったということだ。
聖杯戦争は継承戦争であり、外部の人間がマスターになった時点で帝国的には処分の対象になる。速やかに殺すことで、本来の継承戦争へ戻すよう皇族のみならず帝国軍全体が動き出す。
つまり俺は既に帝国に命を狙われる処分対象になってしまったということ。もはや俺の命が長くないのは確定してしまった。
しかし、さらに問題なのは、俺は英雄をこのように呼び寄せてしまうことなど微塵も考えていなかった。故に、アレスにとっても今のこの状況は予想外だということだ。
当然アレスは考えるだろう。レンがサーヴァントを召喚し、自分に対抗する力を使役するのは、自分を裏切り、聖杯戦争で己の願望をかなえる為だった。という可能性を。
それではアレスまでも敵に回すことになる。元々リュエンを助けようとした時点で、俺が帝国の敵になるのは分かっていたが、さすがに数年間も共に過ごしてきたアレスにまで裏切者と言われるとさすがに堪える。
俺はアレスが俺のことをなんと言うかは、かなり気になるところだ。場合によっては俺も身の振り方を考えなければならない。
そして問題のアレスは、俺の処遇について話す。
「……あれは、俺の指示です。近衛として俺に尽くす気があるのなら、俺と共にサーヴァントを召喚し、共闘せよと」
なんと、俺を庇ってくれるらしい。アレスは本当にいいやつだと心から思う瞬間だ。
「……つまり、レン近衛兵は望んで召喚したわけではないと?」
「――俺は今、レンにサーヴァントと聖杯戦争について神父に説明を頼もうと連れてきたんだ」
「そう。つまり彼も私の敵ということね。残念」
ミレーユ様の顔が険しくなった。アレスも表情に余裕はなく、何度かちらちらと俺の方を、否、リュエンの方を見ている。
そのリュエンはアレスに限らず、王族2人と監督役の神父に最大の警戒を払っている。
今思えば状況は混沌してきたといったところだが、不思議なことに膠着状態だ。何かきっかけがあれば大きな騒ぎがまた始まるだろう。
「しかし姉様。それを言うのなら、姉様も継承戦争の決まりを破っているのでは?」
「どういうことよ。私が王位を狙ってはいけないと」
「個人としてはそんな感情は持ち合わせていません。しかし継承戦争は皇族の男が行うもの。女は継承戦争に参加する必要がないぶん、命が保障されている。しかし、姉様はその命を投げ捨てているに等しい」
「……それ、私を馬鹿にしているのかしら。私が女だからって?」
ミレーユ様の怒気が、殺意を帯びたものに変わったのはその時だった。今のアレスの言葉がよほどミレーユ様に言ってはいけない言葉を混ぜてしまったようだ。
「……決めた。ここで殺すわ。ランサー、アレスを殺すわ。手を貸して」
藍色の剣士に対する警戒を解かないまま、徐々にアレスとの距離も詰め始める。
このままではアレスにランサーが襲い掛かる。
「アレス様。どうやら姉君の説得は失敗したようですね」
アレスの後ろに立っている神父が口を開く。そしてランサーを凝視する。
このままなら、恐らくアレスにランサーが襲い掛かってアレスに危機が及ぶ。そして後ろの神父にも。
「……姉様。できれば俺はあなたと争いたくはない」
「あなた、聖杯戦争をなんだと思ってるの? 家族だからって情けが通じるとでも?」
「俺は男の王族は皆殺しにする。けど、姉様とソフィアは別のつもりだ」
「そんな覚悟で聖杯戦争に参加したのね。なら……その覚悟の甘さに殉じなさい」
ミレーユ様は叫ぶ。新たな戦いの火ぶたを切るものだった。
「ランサー、アレスを殺しなさい。レン近衛兵と生贄の女は生け捕り。いいわね!」
「生け捕り……? いいのかよ。あのレンてやつ反逆罪なんだろ。殺さなかったらまずいんじゃねえの?」
「いいのよ。とにかく命令執行! 私のサーヴァントなんだから、力を示しなさい」
「ああ。承った!」
曲刀を刃先としている槍をもって、最初にアレスへとその槍を向け突撃を始めた。
アレスが狙われている。
すぐに助けようとするが、一瞬だけ思いとどまった。
ここでアレスを助けるとしよう。昔の俺なら考えなくそうした。
しかし、今は違う。リュエンを生かすために、ここから先の動きを1つ1つ慎重に動かなければならない。
ここでアレスを助けたとしたら、リュエンはその行動を見てなんと思うだろうか。完全に裏切者だと判断されて後ろから殺されるだろう。それでは本末転倒だ。ここで死んでしまったらリュエンを生かすために行動を起こすことができなくなる。
そもそも目の前の藍色の剣士が俺の願いを聞いてくれるかどうかわからない。俺のサーヴァントという話は聞いたが、それは本当なのか?
――判断が遅い。愚か者――
その声が聞こえた瞬間、俺は既に脇腹を蹴られていた。それもとんでもない威力だ。体が浮き、そして横へとふっ飛ばされていた。
ランサーが走り出した瞬間とほぼ同時だった。
「マスター!」
俺への攻撃を察した俺のサーヴァントがこちらに跳んで俺を受け止めてくれた。
華奢な体に見えて、俺の体を受け止めたその体は、まるで子供の突撃を受け止めるように、なんの反動もなく俺を受け止めてくれた。
ちなみに彼女が受け止めてくれなかったら、近くの家に頭を激突させて即死亡。
ふざけやがって、一体誰だ。
しかし、その前にランサーがアレスとの距離をすでに詰めているのが見える。ここからではとても助けることはできない。
「アレス!」
アレスは逃げようとしなかった。
ランサーの槍は既にアレスを捉えようとしている。
――しかし、それは完全に防がれ、
「ぐおお?」
謎の剣戟を受けた黒のランサーは数歩後ろに押し込まれる。
「……あの皇子のサーヴァントか?」
ニヤリと笑って、ランサーとアレスの前に現れたのは、青の鎧を装備し、剣を振り終えた青年だった。
「サーヴァント、セイバー。名乗りを上げられないのは許してほしい。その代わり、全力で戦おう」
そのサーヴァントが現れた瞬間、空気が震えたのが分かった。
「ごめんセイバー、結局戦わせる」
「いいや。まず話し合いに持ち込もうとした君の行動は賞賛されるべきだ。僕は君の味方だ、アレス」
「ありがとな」
セイバーと名乗ったその戦士は、ランサーの前に立ちはだかる。
前回、登場人物一覧を次の話で出す予定だと言いましたが、思った以上に時間がかかっているのでもう少しお待ちいただければ幸いです。現在作成中のためもう少しお待ちください。
また登校日の同日20時に続きを出します。
本来はそこで出す続きとまとめて出す予定の話でしたが、ちょっと長くなってしまったので分けることにしました。
そちらもぜひご覧ください。