1人の少年、須賀京太郎は呼び出しに応じて龍門渕家を訪ねていた。
その場には龍門渕高校麻雀部が全員ずらりと並んでおり初めて見た人間は圧迫感を感じることがあるかもしれないが、すでに何度も訪れている京太郎には関係なかった。
「こんにちは。なにか新しいデータがとりたいって話でしたよね?」
京太郎の質問に、この場のリーダー格である龍門渕透華は胸をそらして答える。
「ええ。実はユーザーと株主の希望が出ていて、それに応えてほしいのですわ!」
いつぞやのようにモーションキャプチャーを差し出されたのでそれを受け取りつつ視線で先を促す。
「ではR版実装のためこれから京太郎さんと智紀にはセ〇〇スしていただきますわ!」
規制の入る発言をしたお嬢様に京太郎の目が遠くなる。
そして一方、龍門渕における一番のおもちさんがしずしずと京太郎に近づいてくる。
「よろしく」
「いやいや、なんであなたまでやる気なんですか智紀さん!?」
京太郎の驚愕に対し智紀は何でもないように答える。
「感覚フィードバックシステムで再現するには実際に体験するのが手っ取り早いから」
「もっと自分を大事にしてくださいよ!」
叫びに喉が枯れそうな京太郎に対し透華は全く頓着しない。
「もちろん相手の体格によって色々変わるはずですから智紀の次は私、純、一、衣と続けていただきますわ!
これにより龍門渕財閥の名は世界に轟、ちょ、えっ」
演説を始めた透華さんのすぐ傍に出現した執事姿の青年が透華さんの首根っこを掴んで猫を運ぶようにドアに向かいだす。
「透華お嬢様、淑女としての自覚を持ってください。そもそもそういうことは強制するものではありません」
「そんな、これはチャンス、チャンスですのよ! ハギヨシ離しなさい! 私は主人ですわよ!」
「私が雇われているのは透華お嬢様の御父上ですので。それでは、後はよろしくお願いいたします」
キーキーと鳴く透華さんを抱えたままハギヨシさんは優雅に一礼してそのまま去っていき、透華さんの声が小さくなっていく。
呆然としていた京太郎の背をつんつんと一が突き、困ったような笑顔を京太郎に向ける。
「ごめんね、透華はボクたちが言っても聞かないから」
「つまりあれは透華さんのいつもの暴走と?」
どうやらこの場の一同は一さんが代表するのかと確認の意も込めると、彼女は頬を掻きつつ応える。
「いやまあ、要望と圧力がそれなりにあるのは事実だけど無理強いなんてできないよ。そもそも呼び出したのは別件だしね」
透華さんのアレが本題でなくてよかったと京太郎は安堵する。
だが同時に思う『それなり』とはいえそんな要望が寄せられるって世界はどうなっているのかと。
「今回京太郎くんに頼みたいのはさ、別衣装の合わせなんだ。今アプリで実装されてるのが私服・デート用・パジャマの3種類なのは知ってるよね?」
「ええまあ。最初制服ですませようと思ったら怒られましたし」
特定され易すぎるからとβ版から変更された部分だ。特に和が力説していた。
「そこで課金で衣装を増やせるオプションを作ろうとしていてね、
実際に着て動いてもらわないと細かい裾の動きや跳ねなんか見落としそうだから」
「つまり着せ替え人形ですね」
『そういうのを喜ぶのは女性だけではないか』と思ったが、そもそもターゲットの客層が女性だったのだからきっと正しいのだろう。
「うん、ごめんね。100着ほどあるから時間取らせちゃうけど」
「ひゃ、100!?」
あまりの数に京太郎は意識が遠くなる。
「あ、そうそう。京太郎くんは最近自分の口座見た?」
急な話題転換に疑問を覚えつつ首を横に振る。
「高校生がそんな頻繁に見ませんよ。引き出すこともないですし」
「だよね。これ、京太郎くんへの振込額の明細」
渡された書類に目を通していく。一、十、百、千、万、十万、百万、千……
予想だにしない額に京太郎の体ががくがくと震える。
「こ、これ、桁間違ってませんか?」
「あはは、それが正しいんだよね。
R版出すなら億単位で突っ込むって人まで何人かいてさ、それで透華も魔がさしたというか」
京太郎は世の中の闇を見てしまい、抵抗する気が完全になくなってしまった。
「ワカリマシタ、ヤリマス」
「ありがとう、ごめんね。もし周囲で変な兆候があったら言って。『ボク』が絶対に守るから」
「オネガイシマス」
現実逃避にロボットのようになった京太郎は気づかない。国広一がピンク色の唇をチロリと舐めたことには。
リアル京ちゃんの幕間の①、そのメインは開発陣のもんぶちーずの国広一ちゃんでした。
最初は小悪魔化させる気はなかったのだけれど、出来上がったらなぜかなってた。
もしハギヨシさんが透華を止めない世界があれば、京ちゃんはVRも現実も大変ですね。
なお億出すとか言ってる人間はアラフォー。別の使い道考えろよ、すこやん。
次回は宮守高校に入ります。誰にしようか……
白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?
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面倒見のいいところ
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自分を女扱いするところ