VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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姉帯豊音の場合

姉帯豊音は元々が閉鎖的な村出身だったのがようやく同世代の仲間に囲まれたという経緯を持つ。

だからこそというべきか、皆の変化には敏感だった。

 

まずエイスリンの笑顔が増えた。とてもいいことだと嬉しくなった。

次に胡桃がシロであまり充電しなくなった。違和感を覚えた。

最後に塞が気もそぞろになり会話も聞いているのか聞いていないか微妙になった。大変な事態だ。

 

なので、唯一変わってなさそうな白望に聞くことにした。

すると彼女はほんの少しばつの悪そうな顔になって次のように述べた。

 

「塞のあれには私も責任の一端があるというか。長々と説明するのもダルいし、これやってみて」

 

送られてきたアドレスを見ると、アプリのページ。

これが元凶、豊音は覚悟を強く固め起動した。すると横を向いている金髪の少年が真剣な表情で自らの牌を倒す瞬間を見た。

 

『ロン! 闇の炎に抱かれて消えろ!

 ……あ、あれ? もしかして見てました? いやあれはですね、思い込みがオカルトになるって話を聞いたのでちょっと試しにやってみたというか……』

 

恥ずかしいところを見られたと顔を赤くして言い訳をする『京太郎』に対して豊音は

 

「ちょーかっこいいよー。もういっぺん、もういっぺんやってみて」

 

キラキラとした目で純粋に憧れを宿す豊音に京太郎は困惑するもすぐに顔をキリリとしたものに変えて、

 

『うえ? そ、そうですか? 同じのは芸がないので……ツモ、打っていいのは打たれる覚悟のある奴だけだ』

 

右目を左手で隠し、セリフとともにあらわにされた瞳は燃えるような眼光で相手を見据える。

割とノリノリであった。友人に「この試合に東二局はないじぇ」とか大言を吐く人間を持った影響かもしれない。

 

「ちょー痺れるよー」

 

そして豊音には下地があったらしい。覚悟や目的を忘れ、ミーハーな部分が露出していた。

 

 

「爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! Vanishment This World!」

 

口上とともに豊音はパソコンのマウスをクリックし、追っかけリーチに入る。だが対戦相手の次に自模った牌は河に出るが、それは互いが狙った牌ではなかった。

 

「先負が効かないよー」

 

『電子境界線にはあらゆる力を無効化しランダム配列へと世界を組み替える……要するにネット麻雀ではオカルトは全く意味ないそうです』

 

「がっかりだよー」

 

難しそうな言葉を綴った後、さらりと普段の言葉遣いに戻す『京太郎』。

 

「こうなったらみんなと卓を囲むときにやってみるよー」

 

『あ、それはやめた方がいいです。痛い子を見る目をされるんで』

 

オリジナルが既にやらかした結果、幼馴染にとても冷たい目で見られた記憶を『京太郎』は引き合いに出す。ただ「打っていいのは(略」のセリフの方はなぜか和に「真理ですね」と高評価だったが。

 

「面白そうだと思ったのに使いどころはないんだね」

 

ちょっと気に入ったらしい豊音は実際には全く使えないことを指摘されて肩が下がる。それでも『京太郎』よりは身長が高いのだが。

 

『まあ、俺と遊ぶ時くらいは使ってもいいんじゃないですかね』

 

「二人で?」

 

『そう、二人だけの秘密ってことで』

 

別に中二病は発症していない『京太郎』だが喜んでもらえるなら別に振舞うのは構わないと考えていた。どうせ豊音以外には見えないし聞こえないのだから恥ずかしさを感じる必要もない。

そんな軽い気持であったのだが、豊音にとっては初めて異性と秘密を共有するわけであり、重みは全く違った。

 

「じゃあ契約、だね?」

 

『はい、これからよろしくお願いします』

 

契約という名の絆がここに結ばれた。このとき豊音はいけないことをしているようなドキドキと異性に対するドキドキを全く区別することはできず、結果両方の気持ちが育まれることになる。

 

 

そして週末が明けると、塞の様子は前までと同じになっていた。胡桃が相変わらず充電率が減ってはいるが、別に喧嘩をしているでもないので口を挟むようなことではない。

 

「エイスリンさんが楽しそうなのはいいことだもんね」

 

豊音が何をするでもなく部活の様子は元に戻り、ただ違いは豊音の視界に『京太郎』がいることだけ。

 

(そういえば彼は己より身長の高い女子についてどう思うのだろう)なぜ急にそんなことを思ったのか豊音自身にも分らず、帰ってからおずおずと聞いてみたところ

 

『そうですね、新鮮? 豊音さんはすらっとしててよく被ってる帽子も似合ってますし、それでいて……』

 

『京太郎』の視線がちらっと豊音の胸部に向かうが彼女は気づかない。

 

『美人さんですよね豊音さん。それでいて性格はとてもかわいいですし。うん、その辺のギャップがすごくいいです』

 

そんな手放しの賛辞が来るとは思っていなかった豊音は熱くなった顔を帽子で隠し

 

「ちょー照れるよー」

 

小さな声で恥ずかしがる姿を見て『京太郎』は

 

『やっぱ可愛いよな仕草の一つ一つが。こんな人に好かれる男なんて爆発した方がいいんじゃないかな』

 

うっかり声に出したことに気づかない『京太郎』はさらに豊音に強く意識されることになり、自爆への道を着々と進んでいた。




宮守編はこれにて終了。25日の日替わりに間に合うとは思ってなかった。

今回は中の人ネタに走ってしまったのでたぶん評価は微妙。詳細は『中二病でも恋がしたい』参照。
福山潤ボイスで真剣に告られたら何人かはくらっとくるんじゃないかな?と思ったらやってしまった。反省はしている。

問題は作者に豊音の可愛さを余すことなく再現できる筆力がないことですね。
豊音の恋はまだ芽吹きかけ。後々腕を組んでほしいけど言えなかったり、キスの際にわざわざ京太郎よりも下に顔を持っていこうと屈んだり、そんなことをしてくれそう。


次回は新たな高校へ舞台が移ります。出番の順番どうするか悩み中。

もしかしたらリアル京ちゃんの幕間を挟むかも? まあ閃き次第ではありますが。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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