VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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神代小蒔の場合

幾たびのおねだりを経て、神代小蒔はやっとのことで要望を勝ち取った。

小蒔は確かに周囲の六女仙と仲が良く、時には叱られることもあるほどの気の置けない関係を維持できている。

しかしそれでも完全に対等とはいかない。

 

立場上、同世代の男の子と遊んだりしたこともない。そんな機会は遠ざけられた。

だからこうして、架空といえども家とは関係のない関係を育めるのは嬉しかった。

 

「私、神代小蒔と申します。よろしくお願いしますね」

 

『あ、これは丁寧に。俺は須賀京太郎です。呼び方はどうすればいいでしょうか?』

 

「小蒔でお願いします」

 

『小蒔さん?』

 

「小蒔で」

 

網膜上に映る『京太郎』の目を見て正座のまますり寄るようにしっかりと強調する。

 

『……小蒔』

 

「はいっ」

 

絞り出すような声に小蒔は笑顔を輝かせる。

体育会系で揉まれた『京太郎』にとって年上を呼び捨てにするのは少々抵抗があったのだが、笑顔には代えられない。

 

「京太郎さん」

 

『はい』

 

「京太郎さーん」

 

『はい?』

 

「京太郎、さん」

 

『えっと、なんでしょう?』

 

何度も名前を呼ばれて困惑する京太郎に、小蒔は照れた子供のように頬を緩めながら幸せそうに告げる。

 

「えへへ、呼んでみただけです」

 

『あらやだ可愛い』

 

単に名前を呼んで、それに答えるだけでこうも楽しそうにする所有者の存在に『京太郎』は目を瞬かせる。

 

「そ、そんな。可愛いだなんて」

 

赤らんだ頬を手で挟みながら体をよじる小蒔の姿についつい『京太郎』も頬を緩めてしまう。

なお、決してその度に小蒔のたわわなおもちが強調されるからではない。

 

「私、ずっと京太郎さんが欲しかったんです。でもなかなか許可が下りなくて」

 

『そんなに俺のことを?』

 

「だから、してもらいたかったことがあるんです。その、私とお昼寝してくれませんかっ?」

 

一瞬『京太郎』は自分の耳を疑い、その次に頭を疑った。

 

『はい?』

 

「わーい、やりました。ありがとうございます」

 

聞き返したにもかかわらずその言葉を了承だととらえた満面の笑みに『誤解です』などといえるはずもなく、一種の役得だと考えざるをえなかった。

 

 

「えへへ、京太郎さぁん」

 

布団の中で小蒔は頭を胸板に擦り付けながら手を背中に回して満足げに抱きしめる。当然『京太郎』には豊かな乳房が何度も弾力を返す。

このある意味では拷問のご褒美タイムを与えられながら、小蒔のうなじを『京太郎』は猫をあやすように撫でていくと、さらに甘えた声で小蒔はすり寄る。

 

「ふにゃー。男の人ってたくましいです」

 

『甘えんぼさんですね、小蒔は』

 

そっと『京太郎』が囁くと小蒔はぴくっと一瞬肩が震え、その後体から力が抜けていく。

 

「なんだか昔お父様にしてもらった時と違います。安心感はあるんですけど、なんだかゾクゾクしちゃいます」

 

『ゾクゾク……はっ、風邪かもしれません。あったかくして寝ないと』

 

「じゃあもしかして頭がぼーっとしちゃうのも?」

 

『お薬飲みましょう』

 

小蒔の告白も『京太郎』は体調を気遣うばかり。さらに問題なことに小蒔自身もそれを信じ込んでしまった。

 

「病気は心細いです。手を握ってもらってもいいですか?」

 

『はい、もちろん。ちゃんと熱が引くまでずっと傍にいますからね』

 

「えへへ、嬉しいです」

 

風邪とは違う熱のこもった視線で顔を見上げながら、小蒔は体全体でぎゅっと抱きつく。

 

『体がないからうつる心配がないのは得ですね。代わりにお粥とかは作れないんですけど』

 

「『ふーふー』や『あーん』もしてもらえないのが残念です。

 あ、でも式神みたいに依り代を用意すればひょっとして」

 

『え、そんなことできるんですか? 巫女さんすごい』

 

「あ、でも……京太郎さんに魂ってあるんでしょうか?」

 

根本的な問題に触れたことで『京太郎』もある可能性に気がつく。もし『京太郎』ではなくオリジナルの方が宿ってしまったらどうなるのかを。

 

『やめておきましょうか。動作不良とかになると困りますし』

 

「そうですね、今は諦めます。

 京太郎さぁん、小蒔のことたくさん甘やかしてください」

 

『はいはい。病気が治るまでいくらでもいいですよ』

 

軽く了承を口にしてしまった『京太郎』だったが、彼は知らなかった。この『病気』というものは一晩寝たくらいでは絶対に治らず、それどころか時を経るに従って進行していくなど。

 

そしてこの『病気』が恋の病であることを二人が知るのはもっと後のこと。

今はただ兆しが見えるだけ、自覚したその時どれだけ大きな感情になっているかなど知るものは神さえいなかった。




今はまだ永水の中では軽い部類の姫様でした。

ただこの小蒔さん、将来は重くなるのがほぼ確定しています。唯一対等に見てくれて、『姫様』じゃなくて『小蒔』を甘やかしてくれる相手なので。
最初から懐いているのはその辺を本能的に理解しているからという。

次回は幕間の純くんを挟んで、新道寺へ。

なお次鋒の性格は原作読んでもさっぱり分からないため、すばら・羊先輩・哩・姫子の4人体制になります。

純くんと衣は開発陣の中でなにを担当してるんでしょうね? 作者が知りたい

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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