VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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~幕間・その頃リアル京太郎は③~

とある日、須賀京太郎は龍門渕家の厨房で腕を振るっていた。

 

「やっぱりここは食材がいいなあ。国産クルマエビなんて高くてうちでは」

 

ぼやきつつも手早く内臓を包丁の背でこそぎ氷水でサッと身を締めて隣へと渡す。

 

「フライにしちまうんだからブラックタイガーでもいいんだがな。衣はファミレスのが好きなんだし」

 

純は水気を切りながら油の温度を確かめつつ軽く肩をすくめる。

本格志向というか高いほどいいという雇用主の主義に反する態度をとりながらも、慣れた手つきで次々と揚げていく。6人前ともなるとなかなかの量だ。

 

「俺、最初は純さんが一手に担ってるなんて思いもしませんでしたよ」

 

背が高く中性的な純はさばさばした性格もあり、家庭的な女性というイメージは確かにない。

だが事実として龍門渕で台所を預かるのは彼女である。

 

「ハギヨシさんがいればそっちに任せるけどあの人も忙しいしな。ソースはいけるか?」

 

「ほんの少しマスタード加えてますけど衣さん食べられますかね?」

 

子供舌の衣はカレーは甘口でなければ文句を言うタイプだ。好物のエビフライでへそを曲げられれば作り手に牙が向けられることだろう。

 

両手のふさがった純は味見用に掬ったスプーンを差し出され咥え、一つ頷く。

 

「ん、これくらいなら問題ねーだろ。しかしあれだな、国産のクルマエビで天ぷらにしねーのはもったいない気がするな」

 

「あー、その気持ちわかります。天ぷらで蕎麦と一緒にいきたいですよね」

 

さり気なく『あーん』状態になった照れから話を逸らす純だが、あっさりと京太郎がのっかったことに逆に肩透かし感を感じる羽目になった。

恋愛慣れしていない純は顔には出さないものの、京太郎の所作一つ一つに気が散らされてドギマギしていたりする。

 

「透華は最初伊勢海老をフライにしようと画策してたからそれよりはマシだがな」

 

「……マジですか?」

 

胡乱な視線をよこす京太郎に純はキッチンの隅を指さす。そこには頭のついた伊勢海老が6匹積みあがっていた。

 

「いい笑顔で産地直送を自慢してたから持って帰っていいぞ。1人1キロがノルマとかただの罰ゲームだ」

 

このままでは確実に食べきれず食材が無駄になるため、押し付けて須賀家の好感度を上げようという一石二鳥の策を純は取る。

 

「包丁だけじゃ捌きにくいからあとでニッパー渡すわ」

 

「……いただきます。お勧めの料理法とかあります?」

 

大きすぎて使い道が明らかに限られそうな物体に思いをはせる京太郎。実のところ初めての伊勢海老体験である。

 

「とりあえず頭で出汁とったみそ汁はイケる。今日中なら刺身だけど持って帰るなら火を通した方が無難だろ。

 悪いな、迷惑かけて」

 

「いえ。なんだかんだで純さんには料理教わってますし。ここに来るのも楽しいので」

 

他意のなさそうな京太郎の笑顔に純は苦笑する。何しろ龍門渕側はそこから一歩踏み出したことを望んでいるのだから。

そんな裏事情も知らずに肉食獣の檻に入れられた自覚のない京太郎は能天気に微笑んでいる。

 

「うし、料理も完成したし持っていくか」

 

「はーい」

 

夕食後、京太郎の泊る部屋をめぐって熾烈な争いが立場を超えて勃発するのだが、そこに至ってもなお彼女らの真意を見抜けない辺り、本当にアプリ上の京太郎と同一人物なのか不思議になるところである。

 

生存本能が働いて気づかないように仕向けでもしているかのように彼は今日も薄氷の上を渡るのだった。




短いけれども純くんでした。

実は京ちゃんが一番心を許しているのは龍門渕家では純くんだったりする。あくまでも友達のノリですが。

純くんは派閥としては透華や智紀と同じく『共有でもいい』タイプ。
しかし衣と一が『独占したい』派で裏切る機会を狙っているので注意が必要。

なぜ同じ龍門渕でも派閥が生まれてしまうのか?


次回は『鶴田姫子の場合』。最初と最後はリザベコンビで飾ってもらう予定。

もしすばらが京ちゃんの話を優希か和から聞いてたらやばくね?

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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