VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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花田煌の場合

始めて『京太郎』が彼女の元で起動したとき、煌の反応は『京太郎』にとっても予想外であり、驚きをもたらすものだった。

 

「初めまして須賀京太郎さん。いつも優希と和がお世話になってます」

 

『な、な……なぜ俺の名前を?』

 

おろおろとする『京太郎』に対して煌は正座で柔らかく答える。

 

「インターハイでの団体戦の後、優希や和と旧交を温めまして。その際優希が『私のタコスは京太郎が毎回献上してくるんだじぇ』と。そして和は『須賀くんの厚意なんですからその言い方はちょっと……』と優希を諫めまして。

 まあそういうわけで、一方的に私は貴方を知っていたんです。優希から写真も見せてもらいましたから顔も」

 

はにかみながら告げられた事実に『京太郎』は膝をつき頭を抱える。

 

『優希ぃ、お前というやつは、お前というやつは……事前に了解を取れとは言わないけどせめて事後報告はしろよぉ』

 

力なく呟く『京太郎』。彼の中で『和は自分が言うまでもなく優希は報告してるだろうと信じてたに違いない』などと擁護されていた。普段の振る舞いによる信用度の差である。

それだけ信用度が違ってもしっかりと友情は変わらないというあたりに『京太郎』の寛容さは顕れていた。

 

「あの、京太郎くんとお呼びしても?」

 

『あ、はい、どうぞ』

 

ちゃんと名前呼びの了解を取ってくる常識人っぷりに虚を突かれつつも頷く『京太郎』。

 

「このようなことは差し出がましい物言いなのですが、京太郎くんもあまり優希のことは言えないガードの薄さかと。世間に公開するアプリに実名で、しかも容姿も全く変えずというのは危険だと思うのですが」

 

穂先を丸めてはいるが言葉の槍が『京太郎』の胸に刺さる。

 

『うぐっ。それはその、『どうせ身内が遊んでからかいの種になるくらいだろうし別にいいんじゃないかな~』ってノリでして。あ、はい。浅慮ですみません』

 

自分のような別に見所もない人間とわざわざ他人が話したいなどとは思うまい、などと自己評価の低さと適当っぷりで製作協力をしてしまったのは明らかな迂闊さであった。

 

しかし開発陣営でも全国にこれほど広まると予想できた人間はいなかったため、京太郎1人の責任とは言い切れない。

誰もが甘く見ていたのだ。全国の女性雀士に異性との交流を求める寂しさを抱えている人間の数がそれほど多いとは想定外だった故の欠陥。

 

『その、出来れば俺の個人情報は内密に』

 

「分かっています、親友にも内緒にしますね。話してはならない内容だと理解してますから」

 

当然そのつもりだと煌は安心させるように微笑む。『説教はこれで終わり』の明確な合図である。

 

『あー、安心した。でも色々知られてるならこれも言っちゃっていいかな?

 花田煌さん、準決勝見てました。すごく格好良かったです』

 

「え? 確かに私はベストを尽くしたつもりですけどもっと強い人はいくらでも」

 

メンタルが強く捨て石の役目にも徹することができるが、他人の評価というものも十分にできる煌にとって、インターハイでは自分が埋もれているという自覚があった。

 

『いえいえ、確かに訳の分からない連中はたくさんいましたけど、あっちは何の参考にもならないんですよ。俺、初心者なんで。

 それに比べて煌さんはあのインハイチャンプに決して諦めることもせず、それどころか千里山と協力してあの人を止めた……鳥肌ものですよ』

 

「そ、そうでしょうか?」

 

絶賛の嵐に照れて顔を赤くする煌。ここまで異性に尊敬の目を向けられるのは面はゆいものがある。

 

『俺、中学の時ハンドボールやってたから対戦相手は敵って思ったんです。だけど『状況によっては他家とも協力プレイができる』、これはほんとに目から鱗でした。

 おかげで部活内対戦で3位を取ることができたんです!』

 

3位で喜んでいる『京太郎』だが、同卓になるのがインターハイトップレベルの人間ばかりであるためトビ終了や焼き鳥でないだけ偉業と考えていた。

実際、初心者が勝つには無理のある環境である。

 

『俺、一時期才能ないから辞めちゃおうかなって考えたこともあったんです。みんなと一緒にいるのは楽しいけど、やっぱ競技者として活躍したいって気持ちがあったんで。

 でも、煌さんの諦めない姿を見て、『俺は今まで煌さんほど頑張ってたのか』って疑問を抱いて気づいたんです。自分がどこかで才能のせいにして諦めていたこと、強くなりたいって思いが足りなかったこと、何より全部やってみてもしないで逃げるなんてかっこ悪いって』

 

真正面から『京太郎』の熱くなった目に見つめられて、伝播したように煌も別の部分が熱くなる。

 

「こ、光栄です。その、私冬休みは長野に帰郷するつもりなのですけれど、京太郎くんさえよければ少し会えませんか? 私も才能に頼ってる方ではないので、いくらかはお力になれると思うのですが」

 

『え、本当にいいんですか!? あ、でもこの『俺』の独断じゃどうにもならないので、和か優希経由で本体が了承したらって形になるとは思いますが』

 

この時『京太郎』は浮かれていて、煌の中の熱が別の形に変わる未来などさっぱり考慮していなかったのであった。




すばら、まさかの本体と出会うルートへ。ただこの時点では恋愛感情には至っていない模様。
姫子にも哩にも羊先輩にも、ただ『正月だから実家に戻る』と言うだけなので修羅場は回避。優希も和も先輩のことは慕っているため同席の形ならOK出す可能性高し。

他の病んでる人間と違って王道青春物語、正に健全。

京ちゃんの実在を知らない人間にバレたらその時点で大惨事だが、聖人すばら先輩なら大丈夫である。
ポンコツ要素のあるテルーとは違うのだテルーとは。あっちはぽろっと漏らしかねんからね。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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