それは沢村智紀が龍門渕透華の命令で『京ちゃんと一緒』というアプリを作っていた頃の話。
高速でキーボードを叩きプログラムを打ち込んでいきつつも、心の奥底では(ハギヨシさんの方が需要があるんじゃないかな)などと感じていた。
パソコンでの作業は慣れているとはいえ、情熱を傾けていなければ疲労の蓄積をどうしても感じる。何しろ大部分は智紀の領分なのだから。
眼鏡を外して霞んだ目を指で押さえていると部屋のドアをノックする音がする。
「なに?」
了承の意を込めた言葉にドアが開き、ここ最近になってよく見るようになった少年、須賀京太郎が桶を水平に持って揺らさないように歩み寄ってくる。
「そろそろ夕食前ですし休憩にしましょう。これ足湯と蒸しタオルです」
準備の良さに意表をつかれつつも智紀は足の指で靴下を挟んで脱ぎ、桶に湛えた湯に足を浸すと同時に蒸しタオルが視界を塞いで目の周辺を温めてくれる。
「肩を触っても?」
「ん」
夢見ごちに緩んだ神経の中で尋ねられたために深く考えずに智紀は了承の声をあげてしまう。
視界が暗闇の中で京太郎の手が智紀に触れ、
「あっ」
大きな手で肩を包まれほぐされていく手つきに思わず智紀は声をあげてしまう。
「あ、強すぎました?」
「平気」
咄嗟に言い繕う。本当のことなど言えるはずもない。
筋張った手に予想もしない瞬間に触られてそのまま撫でられピンポイントで押される力に異性を感じて、ゾクゾクと興奮してしまったなんてことは。
繰り返される感触、緩急をきかせた力具合、もっとと思った瞬間に離され、次は予想のできない部分に刺激が走る。
(ただのマッサージでこれなら『あの行為』の時はどれだけ)、そんな普通ではありえない考えが智紀の脳裏をよぎる。
そして一度考えてしまえば勝手に想像が先走る。今も続いている京太郎の手の感触をマッサージと受け流せなくなっていく。
それからの十数分間はとにかく声をあげないように我慢することでいっぱいだった。「やめて」とただそう一言口にすれば終わっただろうに、そんなことは微塵もやる気にならなかった。
「はい、終わりです」
そんな京太郎の声でやっと気がついたのは足の浸かった湯も蒸しタオルもぬるくなって、代わりに智紀自身の体が熱を持っていること。
喉まで出かかった「もっと」と続きを、いやその先の行為を求める言葉を押しとどめる。
ただマッサージされただけでそんなはしたないおねだりをする軽い女だと思われたくはなかった。
その代わりに口から飛び出した言葉は
「また、してくれる?」
そんな内容をぼかしたにも拘らず濡れた声色が本音をにじませてしまっていた。
(気づかないでほしい)そう理性が言う。(気づいてほしい)そう本能が言う。そんなせめぎあいに煩悶する智紀の内心とは別に、京太郎は悩みもせずに軽く答える。
「もちろん。智紀さん頑張ってますしね」
にっこりと笑って京太郎はタオルを手にかけ、湯をこぼさないように桶を注意深く持って退室していく。その背中を見ながら智紀は打算的な考えをめぐらす。
(うちでは私が一番彼の好みの体型に近いはず。でもそんな横からかっさらう真似は絶対に許してくれない。なら純と同じように透華のサポートをしておこぼれを狙う方が勝算が高い。
透華は無茶は言うけど功には報いるタイプ。正妻になる必要はない、私は一や衣ほど欲張らない)
実は智紀は今まで皆がそこまで京太郎に熱をあげるのか理解できていなかった。だがもう冷めた目で見ることはできそうにない。
「私って女としてチョロいというか現金というか。男を見る目は私の方が節穴だったか」
何しろ目的が不純すぎる。だがそんな不純な動機であろうと引き下がるほど女というものは弱くできていない。
「透華の機嫌を取ろう」
今までよりも楽しそうに呟きながら智紀は無意識に自分の唇を湿らせていた。
この先、素知らぬ顔をしておけば何度もあの『マッサージを受けられるだろう』と確信して。
今回は幕間①で智紀の内心がどうだったかを明らかにする話。
R-18に分岐する可能性を秘めた女はこんな感じ。保険だったR-15が仕事を勝手に始めた。
重いというよりは黒い、そして割とひどい理由で落ちてるキャラのともきーでした。
もんぶちーずも残るは衣のみ。そして舞台は白糸台へ。
原作では判明してないけどテルーは知り合い設定で行きます。
その後は未定ですが①プロ勢、②個人戦勢(憩とか王者先輩とか)、③地元の長野(見かける可能性高くて怖い)、まあこれらの中からどれかですね。
なぜ純愛から遠くなっていくキャラが多いのか作者自身が不思議です。
白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?
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面倒見のいいところ
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自分を女扱いするところ