瑞原はやり、それは麻雀プロでありながらアイドルでもあるという女性である。牌のお姉さんとも呼ばれ、はやりんという愛称は定着している。
グラビアなどメディア露出を考慮に入れれば間違いなくトップの知名度であり麻雀新規への促進に身を粉にしている有名人だ。
ただ、27という年齢できゃぴきゃぴしたキャラを貫いているため一部の心ない人間からは「キツイ」だのと口さがない評価も散見される。
だが凹凸に恵まれたスタイル、趣味はお菓子作りで家事もできるなど女子力は高い。そして童顔な上美容にも気を使っているので実年齢よりはるかに若く見える。
だから、起動したばかりの『京太郎』が驚愕の声をあげるのは当然だった。
『あ、貴女は瑞原はやりさん!? え、え!?』
「はや☆ はやりのこと知ってるのかな☆」
驚きと興奮が入り混じり『京太郎』は意味もなく説明台詞をし始める。
『知らない人間なんていませんよ! 瑞原はやりといえば麻雀プロにしてアイドル、牌のお姉さんとして有名でグラビアや人気番組に出てて「世界一可愛いよ」とファンが熱狂する有名人!
なにより結婚したいプロのNo.1を飾るのがはやりんなんですから!』
ちなみに「結婚したい云々」は『京太郎』の独断である。この男、胸が大きくて家庭的な女性がタイプであった。
そして高校生というものは年上の女性に憧れるものである。
「はやや☆ そ、そんなに褒められると照れちゃうな☆」
アイドルであるがゆえに褒められる事には慣れているものの、二人っきりで異性に正面向かって口説かれる経験は少ない。
スキャンダル防止に基本的にマネージャーが同伴するのだから当然ではある。
『あれ? でもなんではやりんがこのアプリを?』
有名なアイドルはモテる、それが一般的な感覚である。ただその一般に当てはまらないのが瑞原はやりである。
「それはその、はやりはアイドルだから男の人と付き合ったりは事務所に止められてて、破ったらスクープされちゃうからね☆」
単に男友達と街を歩いたり家で遊ぶだけだったとしてもマスコミは騒ぎ立てるものである。そんな仲のいい男性がいるかはこの際置いておくとして。
『うーん、アイドルも大変なんですね。でもはやりんに恋人発覚ってなったら炎上しかねませんね』
実は『信者』と呼ばれるファンのエリートたちは「はやりんは幸せになっていいんだ」「浮いた話があってもそろそろいい年齢なんじゃ」「誰かもらってやれよ」などと心温かくもはやりのハートに突き刺さる心境にシフトされているのだが、『京太郎』はそんな業の深い事実は知らない。
「だからはやり、このアプリ見つけて思ったんだ☆ 他の誰にも見られない、聞こえない京太郎くんとならこっそり関係を育んでも誰にもバレようがないって☆」
『た、確かに。スマホをうっかり誰かが見える場所に置かない限りはアプリの存在すら気づけない!』
瑞原はやりの計画は完璧である。自室でしかアプリを使わないなら怪しまれることすらないだろう。
『でも、俺でいいんですか? 俺は役得ですけどはやりんに見合う男はもっとこう』
手の届かない存在への憧れはただの妄想である、とはどこの偉人が言ったのか。
はやりの周囲に男っ気はほとんどないし、万一あったとしても事務所がストップをかけるから実質皆無であった。
「京太郎くん『が』いいの☆ はやりの恋人になってくれるかな☆」
『その、光栄です。はやりんに相応しくなるように頑張ります』
男の子らしい強がりにはやりの胸はきゅんと締め付けられる。
「恋人になったんだからはやりのことは名前で、ね☆ 京太郎くんの前ではアイドルじゃなくて一人の女の子でいたいんだ☆」
『分かりました、はやりさん。えっとその、好きです』
その『京太郎』の言葉に我慢できなくなったはやりは腕を『京太郎』の首に回し、背伸びして唇を合わせる。
『京太郎』の目が驚きに見張られるのを見てまたはやりの心は彼に傾いていく。
「はやりの初めて、どうだったかな☆ ドラマでもふりだけだったんだぞ☆
……今度は京太郎くんの方から、ね☆」
『はい……』
何かに魅了されるように『京太郎』ははやりを抱きしめ、唇にキスを。濡れた感触と暖かな体温、はやりの胸の鼓動で彼女も緊張しながらお姉さんぶってるんだと分かる。
「……もう一回」
唇が離れた瞬間に小さく呟き、はやりは『京太郎』の唇を追いかける。相手を深く感じたくて舌が京太郎の唇に触れ、そのまま儚い防御を割って口の中に侵入し、その先に何もないことに驚愕と残念な気持ちが入り交じり、はやりの目から涙が一滴こぼれる。
その涙に、無理をさせたんじゃないかと今更考えた『京太郎』が声をかけようとすると、はやりは笑顔を浮かべて
「今のは嬉し泣き☆ 京太郎くん、大好きだよ☆」
そうやって演技でいい女もしっかりやってのけるのは、アイドルとしての賜物だったのかもしれない。
と、まあ、そこで終われば話はいい感じに纏まったのだが、アプリを落とした後に外に出かけた理由が問題だった。
「うう、私もっと色々したかったのに★ メールで要望なんてそうそう叶えてはくれないものだもん★
あ、アプリの提供元って龍門渕財閥の会社だったよね★ こうなったらたくさん株を買って株主総会に出て圧力かけちゃえ★
私ひとりじゃ足りないかもだから他のプロのみんなにも協力してもらおっと★」
『京太郎』に口の中まで再現できていなかったのはプログラマーである智紀にその経験がないから再現できないのだと、そんなことは知る由もないはやり。
こうして龍門渕財閥の株式会社にはなぜか有名女子麻雀プロが複数参列するという異常事態が引き起るのであった。
R-18版の実装のためには先に龍門渕高校の麻雀部の皆が経験しなければならないと彼女らは気づくことができなかった。
ある意味援護射撃なのか、それともただのはた迷惑か、それが分かるのはまだ先の話である。
『瑞原はやりの場合』、これにて終了。
途中まですごく恋する女感が出てたのに最後で台無しにするはやりんって一体……。
そしてこれが閑話~その頃リアル京太郎は①~へと繋がるわけです。
健夜ん達の課金先はアプリだけではなくもっと実質的な権力を持つ株へと投入されているのです。
更に開発費として億単位でつぎ込むつもりの女子プロ勢、金の使い方がおかしい。
次回は閑話~その頃京太郎達は~のナンバリングで清澄ーずの様子を高校(勢力?)毎に挟んでいきます。
誰から考えようか……咲ちゃんは何の迷いもなくプロットできてるけど幼馴染という美味しいポジションを溜めもなくトップバッターはもったいない気も。
あ、それとは別に次に書かれる高校(勢力)先をどこにするかを活動報告でアンケートとっています。
締め切りは日付が変わるまでなので6時間後になりますね。
作者的にはどこでも必ずおいしい人が1人はいるのでどこでも構わないと、読者の要望を大事にするスタンス。
白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?
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面倒見のいいところ
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自分を女扱いするところ