VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

38 / 80
閑話~その頃京太郎達は①~

竹井久は麻雀部もなかった清澄高校に入り、約3年間待ち続けたその先にようやく仲間を得て念願の夢であるインターハイ団体戦を征した少女である。

智謀に長け、目的のためならどんな手も打つ女傑、それが少女に向けられた他者からの評価である。

 

しかしそんな彼女は自室にて自分にしか見えない『京太郎』に対して縋るように告白していた。

 

「好き、大好き、愛してるの、貴方を……京太郎くんさえいれば他なんていらない。私のすべてを捧げるわ。だから、私を貴方のものにして。お願いよ……」

 

その熱のこもった懇願とも呼べる告白に『京太郎』の表情は呆れで満ちていた。

 

『あのですね久さん、これ何回目の告白です? もう練習いらないでしょ、俺じゃなくて本物の方にやってくださいよ』

 

「216回目よ。すべての告白を空で言えるわ」

 

『覚えてるんならなおさら先に進んでくださいよ!』

 

さもありなん。久はこれだけ『京太郎』相手に告白の練習をしていながらリアルに存在する方の京太郎へは一切のアプローチができないでいた。

 

「だって嫌われてるんじゃないかと思うと怖いんだもん。拒否されたら死にたくなる」

 

『「だもん」じゃないですよ! というかそう思ってるならなんで俺に色々無茶ぶりしたんですかっ!?』

 

「…………びっくりしたり困った顔をする京太郎くんが可愛くて、つい」

 

今明らかになる衝撃の事実。

 

『小学生か!? 小学生の男子なんですか貴方は!?』

 

「初恋だからどうしたらいいか分からなかったのよ。明確にいつからっていうわけじゃなくいつの間にか好きになってたし、態度変える踏ん切りもつかなくて」

 

生徒議会長としても麻雀部のブレーンとしても八面六臂の活躍をしてるくせに、恋愛ごとになると即座にヘタレて打つ手を間違える。

 

初心とか不器用とかの概念を超越していた。こんな情けない姿があるなどと予想している人間は久の周りにはいないだろう。普段は出来る女っぽいのだからなおさらだ。

 

「でもほら、私ってば悪い待ちであるときほど勝っちゃうし? 結果的にはこのままの方がいい可能性も……」

 

眼光鋭く久を見つめる『京太郎』の眼差しに久の語尾はどんどん弱くなる。

 

「ごめんなさい、何でもないです」

 

『全く、何もしないで久さんと付き合うなんてまずないですから。こういうダメなところ見るまで正直苦手だったし』

 

「に、苦手……そっかぁ。苦手か……死のう」

 

特にオブラートに包まなかった『京太郎』の言葉にうつ患者のように首吊り用のロープを探し出す久。あまりにも打たれ弱くはないだろうか?

 

『もう、何もかんでも考える前に行動に移す! そのままの本当の久さんをぶつけて、全てはそれからですよ!』

 

実はこの『京太郎』、一度目の告白はまず失敗すると確信していた。

だが失敗した先、外面で殻のように覆われた『竹井久』の虚像を打ち壊して本当の中身でなおも攻め続けられるのなら勝機も見えるとも信じていた。

 

「行動、ね。なら今からすぐに!」

 

久はスマホを手に素早く操作を始める。

 

「デートスポットの選出とコース、シミュレーションを練らなきゃ!」

 

『先に電話して本人誘いましょうよ! 順番守って!』

 

経験の少ない女子の傾向その1、雑誌やハウツー本の記述を本気にする。

 

「でも断られたら……」

 

『そのいつものマイナス思考は脇にどけてください。全く進まないんで。

 ああ、もう。仕方がないからとっておきの勇気を出せる魔法をかけてあげますよ』

 

根負けしたかのように『京太郎』はため息をついて本音をぶつけることにする。

 

『今の『俺』は、今の久さんのこと好きですよ。だからまあ、本物の俺も似たようになるんじゃないですかね』

 

「っっ、今好きって、確かに好きって!?」

 

リンゴより赤くなり動揺する外では絶対に見れない久の表情と、続く我儘に『京太郎』は苦笑する。

 

「もう一度、出来れば大好きって! 愛してるって、お願いよ京太郎くん!」

 

『そっちの言葉は本物の俺から聞くことを目標にしてくださいね』

 

最後の一押し。これから先は流石に『京太郎』でもどうにもならない。

それは竹井久と須賀京太郎の二人の人間の問題だからだ。

 

 

翌週末、薄化粧にオシャレをしながらもナチュラルに仕上げた久の前に京太郎は現れる。

 

「うーす、何の用ですか部長?」

 

「下見よ、下見!」

 

なかなか素直になれない少女と、その心の内を洞察することのできない少年の未来がどうなるのか、それが分からないからこそ彼らは動く。

 

「あのね須賀くん、ありがとうね。うちの麻雀部に来てくれて」

 

はにかみながらも華やぐ笑顔は、今までで京太郎が見た久の表情の中で一番キレイなものだった。




閑話・トップバッターは久でスタート。
久・まこが一番難産かなあと思っていたもので。結局総合スレでの延長戦みたいになってしまいました。

つか甘酸っぺぇ。久が一番まともな恋愛してるとは思う、感情表現はツンデレさん部分が強いので外からは分かりにくいけど。

お察しの通り清澄-ずはアプリ京ちゃんとリアル京ちゃんへのスタンスがテーマの一つ。
なので必然的に両方と接することとなります。


次回は臨海なんだけど、どうしようかな。
智葉は設定にその筋の人入れるかで悩み、ハオは共通会話に迷い、メガンはラーメンが主流になりそう、明華とネリーは割合決まってるけど、ネリーには満を持してほしいと思っています。

感想が作者の力になる、たまになぜ睡眠時間削ってるのか疑問に思うけど、まあ楽しいからいいよねってことで。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。