VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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閑話~その頃京太郎達は②~

染谷まこという人間は物事を俯瞰的にとらえることを得意とする。だから早々に気がついた。

竹井久がちょっとしたことで頼る姿も、片岡優希が過剰にスキンシップを取っていることも、原村和の麻雀を教えるという厚意が好意にシフトしていく経緯も、宮永咲との特異な距離感も。

 

気がついてしまってからはその争奪レースに参加しようという気持ちは湧かなかった。

この中の誰が選ばれたとしても清澄高校麻雀部の結束は崩れる。なら誰かが中立の立場としてなだめ奔走するしかない。

 

だから自分の恋心は箱の奥底へと追いやった。外では誰にも悟られないように仮面をかぶりひた隠すことにした。

だがそれは思い悩む現状を変える力にはなってくれない。

 

「いっそ外部の高校の子とくっついた方がましかもしれん」

 

その場合なら身内で争っている余裕などなくなり一致団結して彼を取り戻すことに血道をあげるだろうから。

 

『まこ先輩、悩んでばかりいないでお茶の時間にしません?』

 

あっけらかんと投影されている『京太郎』は食卓に着いてお茶を飲むポーズをしている。

 

「わしゃお前さんの本体のせいで悩んでるんじゃが」

 

『それってあれでしょ? 俺が部長や和に優希、果てには咲に想われてるって妄想。

 ないわー、百歩譲って優希はあり得ても他はないわー』

 

まこから本体の立ち位置を聞かされていながらも自説を曲げない『京太郎』。

一応優希に関してはパンツを見せられそうになったりインターハイで手作りタコスを差し入れたりで友達枠から一歩進んだと考えれば、今一想像しづらいが可能性程度は考慮できなくもない。

 

だが明らかにパシリにされている久、高嶺の花すぎて届かない和、あくまで幼馴染でしかない咲、この三人に対しては頭が理解を拒否していた。

 

「お前さんはなんでそんなに自己評価が低いんじゃ」

 

『部内では未だに+収支無しで雑用ばかりしてた俺に惚れるとか、奇特すぎじゃないですかね?』

 

それは言いかえれば『雑務を一手に担い陰に日向に支え続けた』ともとれる事に思い当たらない辺りがこの男らしさであった。

 

「それはその、わしらも悪いとは思ってたんじゃが……」

 

久の方針に異を唱えなかった自分のせいでもあると自覚しているまこは申し訳なさそうな顔になる。

だが『京太郎』は別段恨みに思っているわけではない。

 

『ま、レギュラー落ちしたらサポートに回るのが定めなんでその辺はどうでもいいんですが』

 

「そこは多少は気にせい」

 

シリアスが続かないのもこの男の特徴である。別にわざとやっているわけでもなく毒気が抜かれる。

そのため安堵や居心地の良さを感じさせる面もあるため一概に悪いとは言えない。

 

『えー? じゃあまこ先輩が教えてくださいよ。最近和が俺の頭じゃ理解できない数字を交えだして、傍から見ても煙あげてるんですよ』

 

原村和の打ち筋は完全なデジタル、再現できれば確実に勝率は上がる。

なのになぜ多くの人間はデジタル打ちに徹さないのか?

 

それはオカルトという個人の特性もあるが、何より人間はミスをする生き物だからだ。常に最高効率を演算し続けるというのは人間業ではない。

 

和のアバター『のどっち』が公式チートだのスパコンだのと噂されたのはこれが所以である。

もちろん京太郎の頭が東大生レベルに引き上げられたとしても不可能である。そんな生易しいものではない。

 

「まあ確かに行き詰っているようではあるが、和のアピール機会を潰しやせんか?」

 

『まこ先輩は俺と和のどっちが大事なんですか!?』

 

唐突に床に正座した『京太郎』がまこの瞳を見上げるように哀願する。

 

「なんじゃその『仕事と私のどっちが』的なセリフは?

 後輩の邪魔をするみたいで気は進まんが、京太郎には報われてほしいからのぉ」

 

重い腰をあげる次期部長の姿に『京太郎』はよいしょする。

 

『さすがまこ先輩! 終わったら甘えさせてあげますからね』

 

「何を言うとるんじゃ、お前さんは大抵甘やかされる側じゃろ」

 

『それはまこ先輩の包容力がすごいってことで』

 

軽口をたたきあい、仲の良さを示すのはあくまで架空の『京太郎』とだけ。現実には決して持ち込まないのが染谷まこのスタンスである。

 

翌日、自分の出番を取られて膨れる後輩女子と助けの糸に縋る後輩男子の相手をして気を揉むはめになるのだがそれは別の話。

 

自分から身を引くという選択ができるのは本当に優しい人間だという事実に清澄の中で誰が気付くのか?

今のところ知っているのはまこのスマホの中の『京太郎』だけであった。




染谷まこの現実と電子の京太郎への立ち位置というのが今回の閑話の趣旨。
いや実際清澄の中で一番いいお嫁さん&お母さんになるのはまこさんだと思う。

現実では身を引き、アプリ内の『京太郎』とはいい関係を築き心の慰めとする。
一番真っ当な使い方をしている人であり、同時にやっぱり京太郎への未練をのぞかせてもいます。

残る閑話の清澄ーずは全員1年生、年長順になったのは偶然だけどその流れでいいかもと思わなくもない。


次回は姫松高校編として『末原恭子の場合』になる予定です。
「普通の麻雀させてーな」で有名な彼女ですが、『京ちゃんと一緒』をやっている時点で「普通の恋愛させてーな」と言う資格を失っている気がする。

内容は白紙なのでこれから考えます。
投稿予定日も未定だけどできるだけ頑張るのでこれからもよろしくお願いします。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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