VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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末原恭子の場合

末原恭子、それは姫松高校麻雀部の3年生でありインターハイでは大将を務めた少女。

そしてオカルト使いや魔物ばかりに囲まれた状況で奮闘した自称「凡人」であった。

 

確かに彼女自身は異能を携えてはいない。

同時に持ち前の思考と対応力によって場をかき乱し、準決勝では宮永咲を封じた「ただの人間」だ。

 

『ほへー、普段からこんなに研究してるんですね』

 

様々にまとめられた本棚の資料に目を落としながら『京太郎』は感嘆の声をあげる。

 

「色気なくてごめんな」

 

恭子は恥ずかしそうに身をよじるが、当の『京太郎』は資料の山に目を奪われている。

 

『いやいや、これは恭子さんの努力の跡ですからね。人柄を見るにはちょうどいいんじゃないですか?』

 

この男は自らの幼馴染と対戦し互角以上に張り合った人物に興味津々だった。

 

『そう、ある意味裸の恭子さんを見ているみたいで――』

 

何も考えずに口走ったその言葉に恭子が羞恥に耳まで赤くし視線を逸らしながらも問いかける。

 

「や、やっぱ、男の子ってそういうんに興味あるん?」

 

『い、いや、今のはちが』

 

否定の声をあげようとする『京太郎』ではあったが恭子は熱に浮かされたように潤んだ目でチラ見しながら唇を震わせ

 

「見た、ない?」

 

しゅるりと胸上の赤いリボンを解いて漏れる吐息は熱を帯び濡れた唇から声が紡がれる直前、

 

『いや正直興味がないと言えば嘘になりますがそういうのはもっと段階を踏むべきというかまだ早いというか規約でやってはいけないというかなんといえばその――っ』

 

焦りのあまり早口言葉になってしまった『京太郎』の様子を見て恭子は手で口元を抑えて指の間から笑い声が漏れる。

 

「ふふ、本気にしたん? いくら好みでもまだ知りおうて間もないのにそんなふしだらなことせえへんよ」

 

『ああ、からかったんですか、ひどい! こっちは必死で考えて止めようとしたのにっ』

 

どこかの部長に揶揄われ慣れてはいても耐性はつかない『京太郎』は子供っぽく拗ねる。

言の葉の間に「好み」だのと紛れていたり口元を隠す手の指先が震えていたことに『京太郎』は気づかない。

 

もしも『京太郎』が止めなければどこまで行ってしまったのか、なんてことは恭子自身にも分からないし心が本当に望んだものかただの勢いだったのかも判別がつかない。

 

今だって残念がっているのかほっとしているのか、心の針が揺れているのは実は男女ともに同じだったりした。

 

そして分かりやすく膨れる『京太郎』と、その子供っぽい面に年下の男の子の可愛らしさに微笑みながら機嫌を取る攻防の末に双方表向きの平静さを取り戻す。

 

『うーん、でもこれほど沢山調べないと全国じゃやっぱ厳しいんですか?』

 

偵察役として録画と牌譜とりを任された1年生男子は書き込みの多さに眉をしかめる。自分がここまで細かい作業に夢中になる姿が想像できないからである。

 

「私の場合は、な。何が正しいとかは結局自分と結果でしかわからんよ。

 私は心配性やからこうやって見落としがないか確認せずにはおられへんって部分もあるから」

 

『え、でもテレビだとそんな様子には見えなかったんですけど』

 

自らの記憶の中にある『末原恭子』像との違いに首をひねる『京太郎』。

 

「外見を必死で取り繕ってるから。心の中まで見れたらめっちゃ弱音はいてる」

 

『でも諦めはしないんですね』

 

試合中の意志の灯った姿を見ていればその程度のことは『京太郎』でも分かる。

 

「凡人は今できることしかできん、積み上げて積み上げて、それでも届くか分からなくても崩れそうでも、投げだしたら本当に何もできへんかったことになるから」

 

恭子は自分の弱さを知らないわけではない。むしろ誰よりも知ってるし心だって強くはない。

ただ最後までかじりつく覚悟を離さない、それが彼女の強さだ。

 

その在り方に同じ「持たざる者」である『京太郎』は尊敬のまなざしを送る。

 

「まあ偉そうなこと言ったけどこうやってアプリで話してるんも私の弱さなんよ、だからその、これからもよろしくな『京太郎』」

 

『はい、よろしくお願いします』

 

にこやかに応える『京太郎』は麻雀観だけに囚われ、自身の行動が女性の心の中に積み重なって大きく強い感情になるという自覚は一切なかった。

 

一方の恭子は、恋もまた積み重ねとチャンスを逃さないのが大事だとしっかり意識していた。

 

この辺りは年季の違いなのか、女性雀士の心の寂しさに単に考えが及んでないのか、物議にもなりはしないだろう。




『末原恭子の場合』、姫松のトップバッターでした。

トップバッターに決めたはいいものの中々アイデアが浮かばず難産でした。
その結果、なぜかチャンスを狙う肉食系女子になってしまっているという不思議現象。

コスプレで恥ずかしがる恭子さんが恋愛面においてはまさかのスタンスという。なんでか作者にも分からん。

なお、恭子さんは『京太郎』が早口で撤回しにかかったので冗談の方向にもっていき長期戦に着地しただけです。

普通にその場の雰囲気で行けたら行こうという使えるものは使う精神。それが自分の体でも躊躇はないという。
R-18指定だったらかなりやばかった可能性。


次回は誰にしよう? 愛宕姉妹を連続でやることしか姫松は決まってないんですよね。


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咲キャラの魅力を引き出す力が欲しいと最近思う作者です。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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