真瀬由子は姫松高校の3年、つまり来年度は大学生になる予定である。
国麻に自分が呼ばれることも特待生として大学に入学するといった未来もまたないと考えている。
由子は弱いわけではない。堅実に+収支を重ねた自負もある。
だが各校のエース格には見劣りするし、目立つタイプの打ち方でもない。次鋒の役割はそういうものだ。
なので普通に受験して受かるしかないわけだが
「思ったより進まないのよー」
全国大会の準決勝まで残ったということはその分拘束時間が長かったという意味でもある。
そして姫松高校は本来強豪に数えられるため自然と大会前まで麻雀漬けの日々。
しかも由子は箱入りのお嬢様であり、親から望まれるのはブランド大学。
ブランド大学の中でも入りやすい所を選ぶのならばそれはお嬢様大学になり、要するに女子校に行くことになる。
合コンでもしない限り男子との縁はない。そうなれば待つのはお見合い、しかも政略結婚の類であろう。
「それは嫌なのよー」
安定した生活はできるだろう。ただ一度も恋というものができないという欠点が確定する。
好きな人と結婚したい、無理ならばせめて恋愛経験ぐらいは。由子が望むのは高校生が抱くごくごく普通の夢だった。
しかし彼氏を作ったと親が知ったら別れさせられる。
受験に影響したらどうすると言われたら反論のしようがないのだ。
そこで由子は誰にも見つからないで安心して恋愛できる方法を探した。結果、このアプリに目を付けた。
どこぞの界隈でプロが絶賛しているらしいという噂も途中で得た。何のプロなのか全く分からないことに多少の不安を感じつつも、こっそりインストール。
「なんだかいけないことしてる気がするのよー」
ただのゲームアプリだというのに「見つかったら叱られる」という考えに軽い高揚感が生まれる。
起動させた途端にわずかなノイズが視界によぎり、次の瞬間には目の前の床に座った状態の『京太郎』が出現する。
その金髪の少年の肌のきめまでわかりそうな再現度に由子は思わず言ってしまう。
「ふ、不審者っ?」
『いやいや、呼び出したの貴女でしょ? いきなり罵倒されるのか俺は』
軽くツッコミを入れつつしょんぼりとした姿は、ゴールデンレトリバーが尻尾を垂らし顔を伏せる仕草にそっくりだった。
あまりにも分かりやすく落ち込むので、由子はしばし周囲をきょろきょろと見てから『京太郎』の頬をさする
「すごい、触ってる感触もするのよー。科学はこんなに進化してたのねー」
『あ、表面に触れたりちょっと押すぐらいなら感覚のフィードバックと見た目で反映されますけど、無理やり押し込んだら手が抜けて体勢崩しちゃうので気を付けてくださいね』
どの程度の感覚にまで対応すべきかは厳正な審査の結果、長野在住の本体は龍門渕一同からいろんな部分をつんつんむにむにされるのに耐えるという実験を経て成り立っていた。努力の方向音痴である。
「ふわっ、男の子って結構ごつごつしてるのねー」
何やら興味をひかれたらしく由子は掌で『京太郎』の体格を確かめるようになぞっていく。
首筋、鎖骨、肩、胸板。おっかなびっくりではあるものの少しずつ由子は前のめりになり、
『その、言いにくいんですけど、顔近くないです?』
膝立ちになっていた由子の顔が目線をあげて二人の距離が鼻がくっつきそうな位置になっていることに気づき、真っ赤になった顔を背ける
「その、今のは」
『あはは、キスされちゃうのかと思いました』
由子は言い訳しようとして、からからと笑う『京太郎』の顔も赤くなっていることに気づいた。
その途端、男の唇の動きをスローモーションで見ているような感覚に囚われて意識がのぼせたように緩慢になっていく。
「キスの味、教えてほしいのよー」
気がつけば『京太郎』の丸く開かれた眼の自分の顔が映っているような錯覚とともに唇を離す。
ふわふわとした、今さっき知った感触を思い出すように由子は自分の唇を指でなぞり舌先が指の腹に触れる。
『あ、あの』
先ほどまでより赤くなった男の子の顔が動揺しているのを見てなんだか可愛く思えてくる。
「私は真瀬由子、なのよー」
その日、由子は男の名を知るよりも先に『京太郎』の唇の温度を知った。
誰だっけ由子がお嬢様でゆるほわ系って言ったの? 作者だね、うん。
あれー? 出来上がったのを見直すと……全く違う意味でのゆるぽわになってね?
なんだろう、臨海・まこさんと天使系が続いた反動で姫松は小悪魔系に染まるのん? 肉食なの?
次回、肉食でも焼き肉か鶏のから揚げ食ってそうな愛宕の姉の方、『愛宕洋榎の場合』。
愛宕姉妹をやった後は閑話挟んで、大人勢(プロ含む)へと行く予定です。
わっかんねー、作者にも誰がどうなっていくのかわっかんねー。
白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?
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面倒見のいいところ
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自分を女扱いするところ