VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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愛宕洋榎の場合

『関西最強の高校生雀士はだれか?』、その問いに対して挙がる候補の一人に数えられる者、それが『愛宕洋榎』である。

 

ビッグマウスを体現し、派手な上がりを見せることから地元民からの人気は非常に高い。

だが彼女の最大の強みは『リーチ後以外は振り込まない』という異常ともいえる防御力にある。

 

その絶対的といえる防御力を持つ洋榎は今

 

「え、いや、その、デートとかはまだ早いんちゃうん?」

 

『いいじゃないですか、大阪といえば食い倒れ道中。あの動く蟹と人形を見ないなんて大阪城を見ないようなもの、そんなオカルトありえません』

 

「オカルトと何の関係があるっちゅうねん。せやけどな、うーん」

 

『ダメ、ですか?』

 

「……う、しゃーないな」

 

仲間の切り札まで使いおねだりオーラを醸し出す年下の男の子相手にタジタジであった。

自分が『デート』という単語にこだわり恥ずかしがってしまうほどに意識しているのだという事実には洋榎は気づけない。

 

ただの食べ歩きと考えれば己の庭であるにもかかわらず、こうして自爆している姿には麻雀で発揮する鉄壁な防御力の片鱗もなかった。

 

『あ、明日何時に起きます? タイマー代わりもしますよ』

 

要望を満たされてご機嫌な『京太郎』がサービスのつもりで口にしたつもりだったが

 

「いらんわ。寝起き顔を見せる女がどこにおるっちゅーねん」

 

『どこって、ここ?』

 

「ちと話し合いが必要なようやな、喧嘩なら高くこうたるで」

 

ただの茶々のような会話に落ちてしまうのは二人の相性がいいのか悪いのか少々悩みどころであった。

 

 

『ほへー。祭でもないのに屋台が並んでるんですね』

 

「こんなん普通やろ。それよか無断でなに手ぇ握っとんねん」

 

感服する『京太郎』と表面上は流しながらも手の感触に照れが先行する洋榎。

 

『っと、すみません。人込みで迷いそうでつい』

 

「スマホがどうやって迷うねん」

 

迷子常習犯と長く付き合いがあるせいでほぼ無意識に手をつないでいた『京太郎』、『京太郎』に元となった人物が存在するなどとは全く想定していない洋榎、お互いの言い分はかみ合っているようで微妙にかみ合わない。

 

『言われてみればその通りなんですけど、おっ、本当に蟹が動いてる! ところでこの動くのは何の意味があるんですかね?』

 

「そんなん決まっとるやろ、目立ったもん勝ちや」

 

基本的に派手であることを求める大阪人の遺伝子、理屈ではなく魂に訴えるその手法はお上りさん相手には効果てきめんである。

 

『カニはあんまり食べられないんだよなあ』

 

現代っ子とはいえ海から離れた長野出身者にとっては海産物というだけで贅沢に映る。

 

「スマホがどうやって食べるねん」

 

至極もっともなツッコミを入れる洋榎だが今一キレがない。本来ボケる側であるということを除いても平常心が仕事をしていないことは明らか。

先ほど握る手にツッコミつつも離さなかった時点で洋榎の心はかなりかき回されていた。

 

一方で『京太郎』はお上りさんの典型で周囲の光景を見るのに夢中で洋榎の異常に気がついていない。すぐ隣を見れば髪色にも負けないほど紅潮した顔があるというのに気づかないのは吉か凶か。

 

「ここでボケっとしとったら日が暮れるで。男なんやからリードくらいしてみいや」

 

『え? 地の利がある洋榎さんが案内してくれるんじゃ?』

 

「うちに任せたら横でうまいもん食いつくしたるけどそれでええんか?」

 

『そんな生殺しをするなんて悪魔ですか貴女は!?』

 

周囲に見えてはいないがこの二人の凸凹ぶりはある意味お似合いであったのかもしれない。

少なくとも退屈しない逢瀬になることはこの一幕だけでも明らかだった。

 

 

蛇足ではあるがその日の夕方、緊張から汗をかいた洋榎がリビングにスマホを放置していた風呂上りに、妙に微笑ましいものを見るような温かい視線が妹と母から注がれた。

 

妹の弁は

「お姉ちゃんもそういうんに興味あったんやな」

 

母の弁は

「こないなこと黙っとるなんて薄情やな、彼氏ができたんなら紹介せーや」

 

洋榎は勝手に人のスマホを見たことに怒るよりも先に自室のベッドに高速で潜り込み、その日から三日間出ようとはしなかった。

 

食事の時間になっても出てこないという珍事にさしもの親子もやりすぎたことを知るのであった。




洋榎ネキといえば飯テロがよく挙げられるけど、アプリ京ちゃんととの間だと逆しか成り立たないことに気づいた。

そして身内バレは打撃が大きいと思うこのアプリ。
仲間ができてもすこやんも洋榎も全く嬉しくないだろうけどある意味弄られ系として愛されてるんじゃないですかね、知らんけど。

次回『愛宕絹恵の場合』、家族が侵略されていく愛宕家は果たして大丈夫なのか?


それはそうと最近の感想の少なさに方向性間違ってるのかとふと不安になったり。
クオリティ低下してるのかな? それとも引き出し不足か、悩みはするけど書き続けなきゃ。
まだ書いてない子はいるから「止まるんじゃねえぞ」ってなぜか言われてる気がする。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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