VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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閑話~その頃京太郎達は③~

片岡優希、清澄高校1年生。その性質は面倒な小細工とは程遠く一直線なまでに素直である。

実際からかうようにではあるが自分のスカートの中を見せようとしたりとスキンシップも多ければ、手作りタコスは毎度美味しくいただき時折ではあるが礼も言う。

 

他人から見ても好意を抱いているのはまるわかりであり、嫁候補の咲と並んで『京太郎の彼女には誰になるかトトカルチョ』でもかなりの割合を占めている。

 

一人勝ちとならないのは単に優希が京太郎の公言するタイプとまるっきり掠ってもいないせいであり、それがなければあっさりと勝負がついていただろう。

他が素直じゃなかったり慎重を期すタイプであることも有利に働いていた。

 

だが優希の計算のしなさは並大抵のものではなかった。

それを有り体に表したのは部活前に他に誰もいなかった二人きりの時。

 

「なあ京太郎、好きだじょ」

 

「ああはいはい、俺も好きだよ」

 

京太郎は牌譜整理の手を止めることすらなくおざなりに返した。これには優希もカチンとくる。

 

「私が言ってるのは友達的なlikeじゃなくて恋愛的なloveの方だじょ」

 

ピタリと、人形のように京太郎の手が止まった。

 

「……マジぽん?」

 

「マジぽん」

 

驚きのあまり言語が怪しくなっている京太郎の凝視に対して優希は鷹揚に頷く。

 

「ちょい待ち、俺はお前をそういう風に見たことがなくてだな、ちょっと整理する時間を……」

 

「別に今すぐ決めろなんて言ってないじぇ。咲ちゃんやのどちゃんのこともあるからな」

 

これには京太郎、首を傾げる。

 

「なぜそこであの二人?」

 

「のどちゃんも咲ちゃんもお前が好きだからに決まってるだろ、この朴念仁」

 

ついさっきloveだといった相手を盛大にdisるのも優希らしいといえばらしい。

 

「いやそれはないだろ。和は学園のアイドル、咲に至っては幼馴染だぞ」

 

仮に和に告白されたら瞬時に頷くだろうこの男も先入観からは逃れられない。だが優希は異なる。

 

「お前は肩書と恋愛するのか?」

 

ぐうの音も出ない正論。基本的に考え無しだが時に物事の核心をつく、それが片岡優希である。

 

「ううーん、でもなぁ」

 

「とにかく、選ぶのは二人がお前に告白してきた後にしろ。私は待ってるから」

 

先制パンチを決めたにもかかわらず二人を待つと言い出す優希に京太郎は面食らう。

 

「でもいいのか? それ言わなかったら俺がお前を選ぶ確率も」

 

誰にも相手にされなければこの好みからかけ離れた優希の告白に絆されたかもしれない、そんな未来もあっただろう。

 

「いいんだ。確かに私は京太郎にぞっこんだけどのどちゃんの親友で咲ちゃんとも友達、その関係も壊したくないんだじぇ」

 

優希の決意は固い。それが仇となって負けるかもしれないが悔いの残る勝ちより納得のいく負けを望む、そんな人間だった。

 

「……お前、思ってたよりいい女だったんだな」

 

「やっと気づいたのか、ばーか」

 

なおこの優希、部長のねじくれた愛情表現には気がついていない。あれは恋愛感情を持つ相手にする態度じゃないという考えである。

 

優希と京太郎の間の空気はまだ少しばかりぎくしゃくしていたがそれは京太郎が接し方に迷っているだけ。じきに元通りに戻るだろう。

優希にとってはその時が来るまで今まで通りアプローチをしながら返事を待つだけ。そこは全く変わらないのだから変化のしようがない。

 

自分から抜け駆けのチャンスをゴミ箱にぶん投げて正攻法で一直線、これが片岡優希という人間である。

 

 

「ってわけでお前に告白しといたじぇ」

 

優希は家の自室の中でスマホアプリの中に再現されている『京太郎』に対して事後報告を行っていた。

 

『……それマジぽん?』

 

「あ、そのくだりは昼にやったから巻きで頼むじぇ」

 

驚くことにこの少女、アプリで練習することすらなく実行に移すという図太さである。

 

「のどちゃんはなー、自覚が遅れたから遠慮してるんだじぇ。その頃には私は猛アピールしてたし、咲ちゃんとも親友になっちゃったからな。

 ぶっちゃけ咲ちゃんはなんであんな余裕なのか今一わかんないけど、一番心許してるのは明らかだし」

 

『お前、損する性格な』

 

「まあ振られたらひとしきり泣いて応援するだけだな。いまやスマホの中にも『京太郎』はいるし、その時は慰めろ」

 

あっけらかんとしたものである。何もかもが大事なせいで天に身を任せるしかないと早々に吹っ切った結果であった。

 

『あれ? ひょっとして俺ってキープくん扱いされてる?』

 

「はっはっは、気にするな。そんなことはあるけど気にするな」

 

『やっぱりあるんじゃねーか、感動した気持ちを返せこのやろー!』

 

「女子だから野郎じゃないのも知らないのか、もっと勉強するんだな!」

 

優希にとって楽しい時間がいつまで続くのか、それを知るのは神様くらいだろう。




優希のスタンスはアプリだろうが本物相手だろうが一切変わりません。「元が同じなんだから区別する意味がない」とまで思ってます。

優希の行為は一見して敵に塩を贈っているのですが、意図を明らかにしたことで京ちゃんの中で株が上がってたり。

ただ優希の中で咲と和に負けるのはありでも他に対してはそうでもありません。自分にとっての仲間や友達が大事だから目をつむれるだけ。


次回は『愛宕雅枝の場合』、娘を二人ともたぶらかした男に1人の母として黙ってみていられるはずもなく……大人編の始まりです。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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