VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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清水谷竜華の場合

清水谷竜華は別に恋愛ゲームがしたくてこのアプリをインストールしたわけではない。

利便性や拡張機能の方が目当てだった人間だ。

 

親友の園城寺怜と示し合わせて一緒にインストールし、拡張機能で両者の『京太郎』を通してリアルタイムの伝言を可能にすること、これが元の狙いだった。

 

『京太郎』の声は所持者にしか伝わらず姿も見えない。さらに多少距離が離れようが問題はない。

つまり授業中だろうと見咎められることはなく、怜の体調が崩れたりしたら怜の『京太郎』からの伝言ですぐさま対応できる。

 

怜がどんな様子か聞けばそれに合わせて駆けつける途中で市販薬を買うことだって可能だ。

 

保護者意識の強い竜華にとって、このアプリは非常に有用だった。

 

もちろんデフォルトでこんな機能が使えるわけではない。できたらストーカーを量産してしまう。

有料の拡張機能のインストール、所有者同士の設定による同意、さらには二人共有のセキュリティコードの入力と確認。

割と面倒な手続きではあるが、不正使用を避けるためにはこの程度は必須なのである。

 

そして竜華の心配性な性格の結果『京ちゃんと一緒』は24時間休みなく起動し続けていた。

 

そう、24時間。

朝日が眩しい起きる時も

 

「おはようなぁ、着替えたら朝ごはん作るから待っとってくれる?」

 

『いや、俺食べることはできないです』

 

「あ、せやったね。なんか「ぶいあーる?」なんやったっけ」

 

 

真面目な授業中も

 

「なあ、今怜の体調どないなん?」

 

『授業中は集中してくださいよ。

 んー、午前中は検査で、そのあと学校って答え来ました』

 

「今日は調子よさそうやね。うちも勉強しよっと」

 

 

のどかなお昼休みも

 

「ごはんにしよか。怜、弁当あるでー」

 

「おー、ありがとうな竜華。あ、これ京太郎2人へのお供え物」

 

『大福……というか守護霊扱いなのか俺は』

 

 

しのぎあう部活中も

 

『竜華さん竜華さん、なんでこれ切ったんですか?』

 

「家に帰ってからなー」

 

 

リラックスするお風呂タイムも

 

「お風呂入るけど覗いたらあかんで」

 

『……我慢します』

 

「見たいんや?」

 

『そりゃもう!』

 

「力強い肯定やけど将来の旦那様にしか見せへんよ」

 

『旦那候補になりたい』

 

はらはらと涙を流すも竜華は特に何も言わず『京太郎』を脱衣所から追い出す

 

 

1日の終わり、夜寝る時も

 

「そろそろ電気消すでー」

 

『はーい。明日は何時に起こせばいいです?』

 

「七時でお願いな」

 

『アラームセットしますね』

 

 

そんな日々を過ごすうちに、いつの間にか1ヶ月が経ち

 

「京くん怜のこと羨ましそうに見とったね。膝枕する?」

 

『え、それは嬉しいんですけどいいんですか? 怜さんが自分専用って言ってましたけど』

 

「なんやの、京くんはうちより怜の言うこと聞くん?」

 

ムッとした表情に『京太郎』は慌てる。

 

『そういうわけでは。では失礼します』

 

「よしよし、いい子いい子」

 

竜華は『京太郎』の頬から耳、髪の毛と掌で優しく撫でる

『京太郎』はくすぐったく思いながら太ももの弾力と横目で見上げれば視界を埋める双丘に照れくささを感じる。

 

「この前からな、怜とお互いの京くんの話してたんよ。それで写真に向こうの『京くん』に膝枕してもらっとるん見付けてな。

 怜が先に裏切ったんやから、うちらも見せつけんとしゃくやろ」

 

竜華はスマホで『京太郎』に膝枕している写真を撮り、迷いなくメールに添付して送りつける。

 

『いつの間に課金サービスを』

 

普段『京太郎』の姿は網膜投影されているのでその姿は他人には見えない。当然、写真にも写らない。

だが課金することによって『京太郎』の姿を写真に反映する拡張機能が解放される。

 

その機能は網膜投影されている『京太郎』の姿をスマホカメラの位置・角度から算出して、あたかも『京太郎』が現実に存在しているかのように映りこませるというもの。

龍門渕財閥をして実現に難航した技術であり、βテストに参加した清澄高校の面々から無茶ぶりされた結果であった。

 

「ん、返事きた。ちゃんと怜も反省して……へんやん! なに後ろから抱きしめてもらっとるん!?」

 

添付写真には『京太郎』にベッドに座りながら背後から抱きしめてもらい、勝ち誇った顔でピースしている怜さんの姿が。

 

「へー、そういうつもりなんや。その喧嘩こぉたるわ

 京くん、うちのこと正面から抱きしめて。肌の温度感じるぐらいぎゅって」

 

『い、いいんですか? そりゃ俺は役得ですけど』

 

「そ、そら恥ずかしいけど、怜に負けてられんもんっ。早して」

 

耳を赤くしながらも竜華は両手を広げて『京太郎』に抱きしめを要求する。

服越しに肌が触れ合い心臓の早鐘が聞こえないか気にしながらも、片手でピースを作ってパシャリ

 

「あかん、映りの角度が悪い。もっぺん……ん、よし、まあいいやろ」

 

撮り終えた次の瞬間には竜華は距離を取り、手で顔を扇ぎながら片手で怜へのメールを送り返す。

そして数分後、スマホの振動に着信メールを開いて竜華はにっこりと微笑み、だが目は全く笑っていなかった。

 

「戦争や、もう容赦せん。怜は敵や」

 

『何をそんなに怒っ、あっ』

 

ヒョイと『京太郎』は位置を変えスマホの画面を覗き込んで、明らかな煽りを見てしまう。

 

文面は『どうせやったらこのくらいはしてみい。大人ぶっとるけど竜華にはまだ早いかな?』、そして添付写真はどう見てもキスしている怜と怜側の『京太郎』。しかも怜はベッドに背をつけ押し倒されているかのよう。

 

「京くん、キスしよう。深いやつな」

 

完全に据わった目で『京太郎』を捉え、発しているプレッシャーに押されて『京太郎』は徐々に後ろに下がる

 

『りゅ、竜華さん、落ち着いて。止めときましょう、ね? ほらこういうのはその場の勢いですると後悔するものですし』

 

だが竜華は止まらない。

 

「怜なんかに負けてられへん。うちやって京くんのこと好きなんや。うちが京くんの正式な彼女になるんや!」

 

そして二人の距離はゼロになり、唇が重なる。

その場面を見ていたのは差し込む夕焼けの太陽と、竜華のスマホのカメラだけだった。




千里山のトップバッターは竜華。
竜華って怜との関係見るに、一度ハマったらそのままずっぽりな気がするというお話。

なお、これでも1ヶ月経ってるから玄は当然として穏乃より進展は遅かったり。


次回は怜サイド。竜華サイドを補完する形となります。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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