VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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閑話~その頃京太郎達は⑤~

宮永咲の朝は早くも遅くもない。基本的にアラーム頼りである。

 

『咲、起きろ~。ご飯食べる時間なくなるぞ』

 

そのアラームは幼馴染の姿をしてユサユサゆする感覚を通して起きるまで続けるというちょっと変わったものではあるが。

 

「ふゎぁあ、うにゅ」

 

『ほら、ここ寝癖ついてる、なおしてきな』

 

寝ぼけ眼の咲の髪を『京太郎』は掌で撫で、まるでお母さんのように咲を手洗い場まで誘導する。

咲は言われるがままに顔を洗い、しゃっきりと目を覚まして自分の髪を整え始める。それを見守っている辺り『京太郎』は保護者かなにかの佇まいだった。

 

咲は流石に家では迷わずリビングに降りていき、朝食と着替えを済ませたら『京太郎』の元へ。

鞄にちゃんと今日の教科書が入っているか確認してスマホを手に取りトントントンと足音を響かせて学校への道のりへ。

 

さらっと手をつないでくる『京太郎』に咲は何も言わずリードされ、そのまま道を歩くとちょっと前の方に見覚えのある金髪を発見。

 

咲は瞬時にスマホの電源を落としてトテトテと近づき、体で軽くぶつかる。

 

「おはよ、京ちゃん」

 

「おー、咲か。最近よくこの辺で会うな」

 

わざと時間帯を合わせていることなんて咲は匂わせもせず、なんでもない顔で離れないようにきゅっと手を掴む。

 

「そういえば京ちゃん、優希ちゃんに告白されたんだって?」

 

「ごほっ、ごふごふ、はっ」

 

昨日帰りに聞いたことを咲はそのままぶつける。あまりのストレートさに咳き込んだ京太郎だが、手をつないできたのは逃げないようにするためかと悟る。

まあ何もなくてもすぐ迷子になるから手をつなぐのだが、今回は違ったらしい。

 

気がつくのが遅れて脱出不可能のピンチに陥る京太郎。おさななじみからはにげられない。

 

「その時優希ちゃんは「私が京ちゃんのこと好き」だって言ったらしいけどそれ違うからね」

 

背を曲げたままの京太郎の視界にひょこんと入って咲は京太郎の勘違いをただす。

実際咲は優希の告白を聞いて多少びっくりはしたが特にショックを受けたりしなかった。

 

「じゃあ咲さんにとって俺は何ですかね?」

 

息を整えた京太郎からの質問に咲は笑顔でこう答える。

 

「空気」

 

「お前俺が弱いから存在感皆無だとか、雑用ばっかしてて最近別行動が増えたしいなくても変わらないかな、とでも言いたいのかおいこらこのポンコツ」

 

躊躇のない一言に傷ついた京太郎はちんまい幼馴染の頬を引っ張ってぐにぐにとしだす。当然咲は痛みから逃れようと頼りない力でバタバタとする。

 

「ひらいひらい、ひあうよぉ」

 

言い訳なんて聞きたくないと口を曲げた京太郎は手をほどいて小学生のように走って離れ、振り返って暴言を吐く。

 

「ばーかばーか、咲なんて迷っても2時間くらいしか探してやらないからな」

 

暴言にしては内容が優しすぎる気もするが、とにかく怒った京太郎はぷんぷんと頭から湯気を出すように一人で勝手に学校へと走りだしてしまう。

 

咲はそんな幼馴染を見送って「やれやれ」とでも言いたげな顔をして呟くように。

 

「京ちゃんは分かってないなぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あっさりと1+1=2だとでも言わんばかりの口調とともにその顔から感情が消える。

優希が告白したってどうでもいい。だって好いただの惚れただの腫れただのそんな()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

「うーん、でも別に貸してあげるぐらいはいいかな」

 

自分の本心を自覚するいい機会になったし、いい思い出を作る程度に目くじら立てる必要もないだろう。

優希や和が京太郎と付き合ったって別に邪魔しようとも思わない。そこでデートの作法や色んなことをわざわざ京太郎に教え込んでくれるのだから()()()()()()くらいだ。

 

「そもそもみんな何が楽しいんだろう、あんな京ちゃんの偽物相手にして」

 

周りのハマっている人間の気持ちが不思議でならない。手を伸ばせばすぐそこに本当の京太郎がいるのに、なぜ劣化コピーで満足するのか。

だから咲は今日もアプリの『京太郎』と会話をしなかった。便利だとは思うが、それだけ。

 

頼まれたからテスターはしたし、上手くインストールできなくて本物の京太郎を勘違いで家に泊まらせてしまったといった失敗はあったけれども。

 

「あの時は科学ってすごいなって思ったけど、本当の偽物さんは結局違ったし」

 

本当の偽物という言い方が少しおかしいがまあ些細なことだろう。

 

「でも本物の京ちゃんは最後は私のところに帰ってくるもん」

 

それは太陽が東から登って西に沈むようにごくごく当たり前の事実と信じて疑わない。

 

「もし誰かが私から京ちゃんを奪って返さないつもりなら――それは私を殺そうとしてるんだから正当防衛だよね」

 

咲には悪意などかけらもない。ただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけ。カルネアデスの板は無罪としっかり記されている。

 

だから何も問題ない。ただ一つ気を付けるべきことがあるなら。

 

「やっぱりお姉ちゃんだよね。京ちゃん攫って高飛びとかされたら見つけるの大変だよ」

 

既に気性を理解している姉、照だけは絶対に戦わずに逃げをうつ。だから油断できないと、姉妹であるがゆえにお互いが理解している。

 

「私は京ちゃんの()()()()になれればそれでいいんだ」

 

これを愛と呼ぶのなら、確かに青春の恋なんておままごとのようだ。

宮永咲は誰よりも須賀京太郎を愛している自信があった。




清澄の最終兵器、宮永咲。

ラスボスからはにげられない。
ただしそもそもエンカウントしないように立ち回るので照は別。

え? 更新が早い? 咲は穏乃書いてる時にすでに構想ができてましたからね、はい。

咲さんはこの作品の元である架空恋愛を全否定してますが、それでそれぞれの思いや恋心・積みあがった絆が否定されるわけじゃないと作者は強く言いたい。

「つまりみんな可愛い、やったー!」


次は鶴賀にしようかなとおもってます。ワハハとむっきーの恋愛を頑張って考えなきゃ。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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