VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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福路美穂子の場合

福路美穂子、風越高校のキャプテンにして長野個人戦1位、つまりは原村和を抑えてトップを取った女性である。そして美穂子は和と同じ安定して勝つタイプ。確実に全国区の強者に分類される実力を持つ。

 

しかも発育のいい胸に抜群の家事力、さらに温厚な性格と清純な顔立ち。天は彼女に二物や三物では済まないほど与えていた。

そんな彼女だが欠点もある。電子機器と破滅的に相性が悪いのだ。パソコンなどに触るとなぜかケーブルまみれになり電源を引っこ抜いてしまうという異才。こんな才能は誰も欲しくないだろう。

 

その対策として下級生が目を付けたのがあるアプリ。本来は恋愛シミュレーションの類なのだが課金すると許可された範囲の電子機器をコントロール下に置くという機能。

これさえあれば美穂子は間接的に欠点を解消できることになる。

 

当然スマホ自体が電子機器であるため、様々な作業は一つ年下の猫っぽい可愛い後輩が色々とやってくれた。

美穂子自身は触らない方がいいので袋で包み、袋の部分だけをつまんで運ぶという仕様である。

余談ではあるがその袋は美穂子のお手製である。

 

「京太郎くん、今日の牌譜みせてくれるかしら」

 

『はーい、ただいま』

 

美穂子の要望に応えて机の上のデスクトップパソコンが立ち上げられ、今日の牌譜が椅子に座っているだけの美穂子に勝手にコマ送りにされていく。

 

『速度大丈夫ですか?』

 

「ええ。もうちょっと速くても大丈夫よ」

 

言われるがままに『京太郎』は一段階上げた後は端正な美穂子の顔にじっと視線を送る。

物理的に接続されなくても行われるパソコン操作、非常に便利ではあるが一度設定してしまえば『京太郎』としては暇なのである。

 

「あら、どうかしたの?」

 

『京太郎』の視線に気づいた美穂子は優しく首を傾げる。その仕草までもが愛らしい。

 

『美穂子さんって美人さんだなーって思ってただけです』

 

ぶっちゃけ『京太郎』にとって美穂子はどストライクなのである。彼でなくとも結婚したい女性として条件をあげれば美穂子はそのほとんどをクリアするのは誰でも分かることだ。

 

「も、もう、年上をからかわないのっ」

 

頬を染めて拗ねるのがこれまた似合う美穂子である。

 

『お姉さんぶるところも可愛いなあ』

 

もはや『京太郎』は頭に浮かんだことを垂れ流すだけの装置に堕ちている。自分で垂れ流しているものがどういう効果を生むかなんて頭の外側だ。

 

「京太郎くんったら……でも、私の本当を見たら」

 

いつもは閉じている右目、青い瞳は美穂子にとってのトラウマだ。久に褒められ親友になっても幼心に着いた傷はそんなに軽くは癒えない。

 

美穂子はそっと、ゆっくりと右目の瞼を開く。そして驚きに見張ってる『京太郎』の姿に自嘲する。

 

「ほらやっぱり。醜――」

 

『――綺麗だ。空みたいに吸い込まれそうな蒼……』

 

美穂子の自失の間に『京太郎』は美穂子の頬に手を添えて、そのまますぐそばにある唇との距離が徐々に縮まり

 

『――っと、すいません。雰囲気にのまれて、あはは。でもやっぱり美穂子さんはすっげー美人ですよ』

 

キスまで数ミリというところまで近づいてから『京太郎』は我を取り戻し、照れながらも真意は伝わるようにまっすぐ美穂子に微笑む。

 

「ぁ……」

 

この瞬間に美穂子を襲ったのは数え切れないほどの感情。嬉しさ、照れ、安堵、驚き、期待感、満足心、焦燥、喪失感、エトセトラ。

混ざりすぎて分からなくなって視線は『京太郎』の唇の色や柔らかさを見て取り、なぜか残念そうに小さな声が漏れる。

 

急速に、美穂子の中で認識が切り替わる。『年下の男の子』から『身近な異性』へと。

そして湯気が吹き出しそうなほど顔を熱が襲い、心臓の鼓動が大きく速く響いていることに気がついてしまう。

 

チラチラと京太郎の唇と瞳を交互に見て、つい先ほど実現しかけた光景を頭に浮かべて必死に振り払うように頭を小さく振る。

 

「そんな、からかわないで。ほらえっと、華菜の牌譜も見せてくれる?」

 

『からかったつもりはないんですけど。っと、華菜さん先輩のですね』

 

独特の池田華菜の呼び方。単に立ち上げ時に「華菜さん先輩って呼ぶし」と言われたので素直に従っているだけである。

だが美穂子はなぜかその親しげな呼称に心がざわつく。

 

「年上の人はちゃんと呼ばないと」

 

普段の美穂子であれば訂正なんてしなかったであろう。(華菜は相変わらずね)なんて微笑むだけ。

なのにこの瞬間は咎めてしまう。

 

『あ、はい。じゃあ池田先輩のを――福路先輩?』

 

自分の心の中の靄に美穂子は自問自答。しかし自分への呼称まで変わったことに強い焦りを覚え、咄嗟に『京太郎』の袖を摘まむ。

 

「私はいい、のよ?」

 

なぜか疑問形。美穂子自身自分の心が分からずパニック状態。『京太郎』の呼び方に表情だけが変わる。

 

『美穂子先輩……美穂子さん……美穂子?』

 

不満、安堵、そして固まる。『京太郎』は呼び捨てはさすがに失礼だったかと元の呼び方に戻そうとして、クンと弱く袖が美穂子に引かれる。

 

「最後の……」

 

美穂子はもう耳まで真っ赤。呼ばれた瞬間に胸を締め付けた感覚のままに口が勝手に動く。

そして言葉少なに作業へと戻るも、美穂子の挙動不審は続く。

 

心の内をかき乱し振り回す感情の名前を美穂子が見つけ認めるのは、もう少し時間が経ってからだった。




『福路美穂子の場合』、カン。

わちゃわちゃってなって自分で制御できずに小さなわがまま言っちゃうキャプテンとか最高だし! って池田が言ってた。

なお京ちゃんは画像で青い目は知ってるのですが、生で見た時の幻想感にやられた模様。

純愛系のいちゃいちゃが王道。キャップはやはり王道かなと。

病みに転がるかは本体の所在を知ったタイミングと経緯によるんじゃないですかね。
親友と想い人に同時に裏切られた(主観)だったら、うん。頑張れヒッサ。


次回は――誰だろう?
ちゃちゃのん、王者先輩、憩……『佐々野いちごの場合』にしときますか(ノープラン)。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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