VRアプリ『京ちゃんと一緒』正式リリース版   作:風見猫

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岡橋初瀬の場合

岡橋初瀬は晩成高校の1年生、中学時代に新子憧と麻雀部でしのぎを削るライバル関係であり同時に親友でもあった。

過去形なのは現在の二人の間には歴然とした差があるためだ。

 

初瀬は晩成高校において一軍入りもしておらず、全国区では当然通用しない。

一方憧は全国のシード校である強豪、千里山のエース格と渡り合えるレベルにまでなっている。

 

1年でつく実力というレベルではない、明らかな異常成長。

中学では個人戦で県のベスト16が限界の同格だったはずなのに、今は仰ぎ見る空に等しい。

 

阿知賀のレジェンドのコーチはドーピング剤かなにかなのだろうか、そんな疑いすら生まれる。

 

だが初瀬は諦めてはいない。再び胸を張って『ライバルであり親友』と言える関係になるつもりだ。

 

そして最近、麻雀以外で憧に差をつけられているかもしれないという事実に気づき始めていた。

最近の憧はどうやら頻繁に電話をしているようなのだが、その時の表情がいわゆる恋する乙女のものなのである。

 

インターハイで出会った男と遠距離恋愛でもしている可能性が高いのではないかと、色気づいている憧の様子を見て見当をつけている初瀬であった。

実際にはその予想は外れており、男が苦手な憧は慣れようと恋愛アプリに頼った結果、段々と本気の入れ込み具合になっているというどうしようもない事態だったがそれを察しろというのは無茶な要求であろう。

 

そして初瀬はそんな親友を心の中で応援しており、しかし青春を謳歌しているのは羨ましいため自分も行動に移そうとしていた。

 

晩成高校は共学の高校であるため近場に目星をつける相手ならば探せばいる、はずなのだがいきなり本番というのには躊躇があり、ワンクッション置くことにした。

この辺ヘタレなところは親友同士、似ないでいい部分が似ていた。そして手を出したアプリも同じであった。

 

『ふんふん、つまり俺は告白の練習台になればいいわけですね』

 

「あと男の子的にこういう行動に惹かれるとかあったら教えてほしいかな」

 

呼び出された理由の真っ当さに『京太郎』は快諾、力になることにした。

恋愛ゲームアプリが恋愛相談アプリに変わった瞬間である。

 

『告白されないことに定評のあるこの俺に任せてください』

 

「それだめじゃん」

 

憧のことが頭にあったせいか、咄嗟の口調まで似てしまった。

 

『逆に考えてください。俺にかかれば『彼女欲しいなー』と思っている男を落とす手腕が磨かれると』

 

「な、なるほど?」

 

人差し指を立ててむやみにいい顔でずいっと距離を詰める『京太郎』。もう半歩踏み込めば初瀬は距離を取ったであろう位置取り、パーソナルスペースの侵略には無自覚な才能がある男であった。

そして言い切られるとなんとなく正しいように思えてしまう初瀬。詐欺などに引っかからないか心配なところである。

 

『とりあえず定番なのは趣味とか好きなことが似ていると親近感は抱きやすいですね』

 

「趣味……最近は麻雀漬けだったなー」

 

レギュラー枠も取れてないし、憧に追いつけ追い越せだったためそちらばかりに集中していた。晩成高校は進学校でもあるため勉強はある程度必要があり、時間を取られる。

 

『男子麻雀部はないんですか?』

 

「ある、けどチェックはあんまり」

 

インターハイの男子部門は女子部門よりも実力が低いのもあり目が行きにくかった。強豪ゆえにしっかりと分けられ接点もあまりない。

零細の方が苦労を共にして仲良くなりやすいもので、『京太郎』とは環境が大きく違う。

 

『ならチェックは後日に回して、手っ取り早い手段を』

 

「え、なに?」

 

秘密ごとだといわんばかりに声を潜める『京太郎』につられて初瀬の状態が前倒しになる。

 

『ボディタッチ』

 

「……え゛?」

 

スススと距離を取り始める初瀬。男なんてやっぱりそんなものなのか、などと軽蔑の目線すら送られる。

 

『いやいや「あててんのよ」的な奴じゃなく、偶然指先が触れちゃったとか、そういうやつのだから』

 

信頼を取り戻そうと言い訳、じゃなかった言い分を告げる『京太郎』。

 

『むしろ行き過ぎたボディタッチはあまり意味ないし』

 

さらっとどこかの幼馴染とタコス大好きっ子に悲報を送る『京太郎』、聞かれていればとっちめられること間違いなしである。

 

「そうなの?」

 

『あんまりべたべたしてくる女子は「ああそういうやつなんだな」って感じで意識から外れるので実際。勘違いが怖くて踏み込めなくなりがち』

 

例えば「もしかして好きなの?」「あははないわー」的なやり取りは前者が心の傷を背負い込むものである。家に帰ったら布団にもぐって「死にたい」と呟くまでセット。

 

『チョンと触ったくらいで離れて目線を逸らすぐらいの関係の方が付き合う前はドキドキする男が多いと思う』

 

「……男の子って意外とシャイ?」

 

『夢を見てるって部分もあるけど、結構多いぞ』

 

年齢が上がるとそうでもなくなるが、高校男子とは現実より理想の方が先行する。理想というよりもうそうかもしれないが。

 

『初回講義はこんなとこで。じゃ、よろしくな初瀬』

 

握手の代わりにつんと指で軽く触れる『京太郎』。初瀬はそれにぴくっと震えるも文句は言わない。

 

ところでお気づきだろうか? この男、最初は敬語だったにもかかわらず今は親し気な言葉遣い&名前呼びである。

初瀬は何かが引っ掛かったような顔だが結局気づけずに流してしまう。

 

原村和をひと月程度で名前呼びが自然になっている実績はこんなところでも発揮されていた。

相談役のはずが普通に仲良くなってしまっている。

 

初瀬が同じ高校の男に傾くか、架空の彼で満足してしまうか、岐路は結構近くにきそうである。




『岡橋初瀬の場合』、何となくこんな感じに。
無自覚攻略系男子、そんな分類をされがちな京ちゃんです。

読み返してみると割と続きがありそうな感じで話終えてること多いですね。
2周目期待されるのはこの成果と今更気づく。

次でとりあえずのエピローグとします。やはりシリーズ的に『須賀京太郎の場合』とつくのがそれっぽいかと。


砂糖吐きそうな甘々イチャイチャ? エロと一緒にR-18版に出来上がるんじゃないですかね。

IFでのリアルバレ事件とか修羅場とかの話は気が向いたころに番外でこちらに足されるかもしれません。予定は未定。

白糸台生活の菫は京ちゃんのどこが好き?

  • 面倒見のいいところ
  • 自分を女扱いするところ
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