少しフェアになったかもしれない第四次聖杯戦争   作:L(・◇・)┘

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ACT.3

 

 

 アーチャーを召喚した翌朝である。

 薄暗い地下魔術工房の中に独り、時臣はゆったりと安楽椅子に腰かけていた。

 

『霊器盤が七騎全てのサーヴァントの召喚を確認しました。時臣くん、いよいよ聖杯戦争が始まる頃合いでしょう』

 

 響く声は、聖杯戦争の監督役たる言峰璃正のものである。

 

「そうですか。ご連絡、わざわざありがとうございます」

 

 予め遠坂邸と冬木教会に設置していた、魔導通信機越しでの会話だった。

 監督役と参加者という立場にありながら、二人は密かに通じている。

 それは、元から友誼を結んでいたというのもある。加えて聖堂教会側としては、“根源に到る”という無害な願いで、聖杯を安全に使い潰してくれる時臣を勝者とするのが望ましいのだ。

 この報告も、一参加者には伝える必要もないことだ。にも拘らず璃正が時臣に連絡してくれたのは、時臣を全力でバックアップするという意思の表れだろう。先々代から続くこの誼みに、時臣は感謝の念が絶えなかった。

 ところで璃正がもたらしたこの連絡自体は、然程大した内容でもない。だが時臣はこの連絡こそを待っていた。

 七騎のサーヴァントが召喚された際に、是が非でも知らなければならないことがあったのだ。

 

「璃正さん、一つ伺いたいことがあります。召喚された七騎のサーヴァントのクラスは、如何なるクラスを示していますか?」

 

 返答はすぐにはなかった。無言である。ただ、答えを告げるのを躊躇っている気配だけは、明白なまでに伝わってきた。

 

『……七騎全てが、アーチャーのクラスを示しております』

 

 数秒の沈黙の後に、璃正がその言葉を苦々しそうに吐き出した。

 時臣も、これには溜息を吐かざるを得なかった。

 

『しかし、なぜアーチャーが七騎なのやら』

「召喚されるサーヴァントのクラスは重複しない……そのはずなのですがね」

『原因は判りますかな、時臣くん?』

「原因ですか。そうですね……」

 

 深く考え込んだ時臣は、ふと大聖杯のある機能について思い出した。

 

「──もしや、予備システムが誤作動を起こしたのかもしれません」

『予備システムというと……サーヴァントを追加召喚する例のアレかね?』

「はい。万が一、七騎のサーヴァントが同じ陣営のものとなった際に起動できる術式です」

『だが時臣くん、アレは新たに七騎のサーヴァントを召喚し、七騎によるバトルロイヤル形式から七騎対七騎のチーム戦へと移行させるもののはずです。アーチャーが七騎召喚された今回の事態とは関係がないのでは?』

「無論、予備システムがそのまま起動したわけではないでしょう。注目すべきは、既に召喚されている七つのクラスが二重になるという点です」

『ふむ……』

「聖杯戦争において、基本的に召喚されるサーヴァントのクラスは重複しません。しかし予備システムを用いれば、召喚されるサーヴァントのクラスは重複します。誤作動とは、つまりは追加召喚の術式が、本来の召喚機能と混線したがゆえのバグとは考えられないでしょうか? いや、あくまで確証のない推測でしかありませんが」

『なるほど……しかし、そうだとして、いったいなぜ誤作動を……?』

「それは……」

 

 ──何者かに聖杯戦争のシステムを狂わされた……?

 脳裏に浮かんだ推測を、時臣はすぐに首を振って打ち消した。

 そんなことができるとは到底思えなかったのだ。

 システムが狂わされたということは、大聖杯の術式に細工を施されたということだ。

 これを行うには、二つの問題をクリアしなければならないだろう。

 一つ目は、ずばり大聖杯の所在を特定することである。

 それ自体は困難ではあるが、不可能ということはない。聖杯戦争ほどの大規模な魔術儀式を行うには、その土地の霊脈の力を利用することは必須と言ってもいいだろう。冬木の土地の魔力の流れを調べれば、いずれ円蔵山に辿り着く。そして円蔵山を精査すれば、地下大空洞とその最奥にある大聖杯の発見は可能と言えなくもない。

 が、二つ目の問題はそうもいくまい。

 聖杯戦争の要である大聖杯。それはアインツベルン、マキリ、遠坂の“始まりの御三家”に加え、魔法使いであるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの立ち合いの下に築き上げられた神域の魔術礼装である。

 生半な魔術師どころか、一流の魔術師ですらその術式を読み解くのは至難のはずだ。それこそ、何十年という歳月を大聖杯の解析に費やすか、あるいは幾つものあらゆる魔眼を駆使して大聖杯を解析する──などといった手段を用いなければ。

 そう、つまりは下手に大聖杯を弄繰り回せば、その機能を損壊させてしまうのは眼に見えているのだ。

 ましてやそんな都合よく、召喚される七騎のサーヴァントのクラスを同じになるように仕向けることなど不可能に近い。

 断言できる。そんなことは魔法使いや、キャスターのクラスを担えるほどの英霊でもなければあり得ない、と。

 時臣は熟考の末に、諦めて首を振った。

 

「……申し訳ありません、璃正さん。遠坂の者としては忸怩(じくじ)たる想いですが……皆目見当がつきません。私も首を傾げるばかりです」

 

 そう。恥ずかしかった。同時に憤懣やるかたない。

 あり得ぬ推測だと、さっき結論を出しはした。だがもしも本当に何者かに聖杯戦争のシステムを狂わされていたとしたら、そこはかとない怒りが込み上げてくるのだ。

 例えるなら、聖杯戦争そのものを愚弄されている。そんな不快感を煽られてならなかった。

 まったく以って、心の贅肉である。

 

「璃正さんの方こそ、何か心当たりはありませんか? 例えば……そう、前回の戦いの折に、聖杯に何かが起きた、という線は?」

『うむ、第三次聖杯戦争か……』

 

 璃正が暫しの間唸った。

 

『……確かに、あの戦いで何かが起きていても、おかしくはないかもしれません。アインツベルンが召喚したサーヴァントはエクストラクラスであったし、ナチスに与していた魔術師も、何やら怪しい動きをしておりました。アサシンのマスターの人形遣いも不審といえば不審だったかもしれません。さらには帝国陸軍の介入もありました。エーデルフェルトの姉妹も、確かセイバーを別側面から二騎、多重に召喚していましたな』

「……前に何度も聴きましたが、やはり前回は何もかもが狂っていますね」

 

 エクストラクラスのサーヴァントが召喚されたというのは怪しい点だった。標準である七クラス以外のサーヴァントが召喚されてしまったがゆえに、クラス関係のシステムに不具合が生じたという見方もできるだろう。

 別を挙げれば、“セイバーが別側面から二騎召喚された”というのもアーチャーが重複して召喚された原因とも取れる。

 他の不審な動きをしていたマスターにも疑問は残る。

 結論として、非常に疑わしく、かつ怪しい要素ばかりだ。不審な点が多すぎて、原因などとても絞り込めそうもない。

 アーチャーが七騎の原因。それを追及するのは無駄であると、時臣は否が応でも悟るしかなかった。

 

『このイレギュラー、聖杯戦争の運営に支障はあると思いますかな?』

「──いえ、それに関しては何も問題はありません」

 

 僅かな逡巡の後に、時臣は断言した。

 

「何やらクラス周りがおかしなことになってはいますが、サーヴァントそのものは召喚されています。ならば順当にそれを倒していけば、その魂を糧として聖杯は問題なく降臨するでしょう」

 

 ただし、である。

 召喚されたサーヴァントのクラスが全て同じである以上、ある意味より一層過酷な闘争になったと言えるだろう。

 クラスによるそれぞれの特徴や優劣がない以上、クラスのアドバンテージは活かせない。ならばそれは、完膚なきまでの実力勝負になること請け合いだった。

 アーチャーとアーチャーが激突するということは、それ即ち弓術と弓術を競い合うということに他なるまい。

 より優れたアーチャーこそが、己より劣るアーチャーを撃ち貫く。この当たり前の条理を覆すのは容易ではない。それを覆すには、マスターの采配こそが鍵となろう。

 サーヴァントとマスター。今回の聖杯戦争においては、それぞれの実力がより赤裸々となる。

 もっとも時臣は、己のサーヴァントの性能に関しては何一つ不安を懐いてなどいなかった。

 昨夜、狙い通りに引き当てたのだ。最強の英霊である英雄王ギルガメッシュを。

 ギルガメッシュはその申し分ないステータスに加え、評価規格外の宝具を有している。

 最強の威力を誇る神造兵装“乖離剣エア”と、全ての宝具の原典を収めた宝物庫“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”。それらを以ってすれば、如何なるサーヴァントの撃破も容易かろう。その火力において右に出る者はおらず、数多の宝具を持つがゆえに、敵のあらゆる弱点を衝けるのだから。

 ……ただ、結局彼の英霊をアーチャーのクラスで召喚する破目になったのは、時臣にとって頭痛の種ではあるのだが。

 召喚して間もなく、自由気ままに夜の街に繰り出していく有様だった。早くもアーチャーで召喚した弊害が出ていると言えるだろう。

 そもそも、なぜギルガメッシュがアーチャーなのか。ギルガメッシュ叙事詩を読み解いても、彼が弓兵として呼ばれる所以が時臣には判らなかった。昨夜はなんとか彼の宝具について聞き出せたものの、戦い方までは教えてもらえなかったのだ。いや、アーチャーである以上、当然弓矢を用いた戦い方が主となるだろう。あるいは、数多の宝具を持つ英雄王ならば、クラスの縛りなどあって無いようなものなのか。

 ともかくだ。ギルガメッシュが街に散策に出ているのは良しとしよう。時臣は若干の苛立ちを覚えながらも、遠坂の家訓を思い出して殊更余裕を失わぬようにと意識した。

 とりあえず、当面は英雄王に戦わせる気などないのである。ならばその間だけ、望むまま遊興に耽ってもらおう。

 聖杯戦争はまだ始まったばかりだ。まずは綺礼が召喚したアーチャーを用い、諜報戦に徹するのが上策だった。

 それまでは、どうにか英雄王の機嫌を損ねぬように気をつけるしかない。

 

『ともかく、時臣くん。アーチャーが七騎となった以上は』

「ええ、判っております」

 

 アーチャーが七騎。璃正が改めて口にしたその事実に、時臣はやはり苦笑してしまう。

 

「狙撃には、充分注意しなくてはなりませんな」

 

 そう。何せ狙撃手(アーチャー)は、他の陣営に五騎も存在しているのだから。

 加えて、衛宮切嗣の存在もある。アサシンはいなくとも、それに劣らぬ狡猾な毒蛇だ。目下最大の脅威は彼である。真正面から英雄王を攻略できるサーヴァントなど存在するはずもないが、暗殺者であれば時臣の命の方に狙いをつけてくるだろう。

 しかしサーヴァント七騎全てがアーチャーとは、これまたマスター殺しの意味合いが薄まる案件だった。

 それもそうだろう。マスターを殺したところで、全てのサーヴァントが“単独行動”を有しているのだ。マスターを失ったサーヴァントが、新しいマスターを捜すことなど苦ではない。

 聖杯戦争は相手のマスターを全て脱落させれば勝者となる、というわけではないのだ。肝要なのは、召喚された全てのサーヴァントを脱落させることの方にこそある。あくまでもマスター殺しとは、サーヴァントの現界に維持する為の魔力供給──つまりは生命線を断つ意味合いしかない。

 

『私からの連絡はこれだけです。此度の聖杯戦争は、前回に比するほどのイレギュラーになり兼ねません。充分にお気を付けなされ、時臣くん』

「お気遣い、痛み入ります」

『いやはや、それにしても霊器盤に次々と表示されるアーチャーの反応には私も眼を疑いました』

「ごもっともです。私も英雄王がアーチャーで召喚された際には、自分の耳を疑いましたとも」

 

 綺礼がアーチャーを召喚しているのだから、英雄王がアーチャーで召喚されるはずがない。そう確信してからの、アーチャーでの召喚である。

 あまりに不条理で理不尽ではないか。そう時臣は思ったものだ。召喚直後に茫然としてしまったせいで、危うく英雄王の不興を買うところだったのだ。すぐにはっとして臣下の礼を取れたから良かったものの、下手をすれば殺されていた。英雄王の気性を鑑みれば、それくらいは何も不思議ではなかっただろう。

 思い返すは召喚直後の英雄王とのやりとりだ。

 

『雑種、この(オレ)を前にして、刹那ではあるが呆けていたな? その無礼、なんとする?』

『弁明のしようもございません。御身のご威光に直に触れ、知らず忘我に駆られておりました』

『ふむ……我が拝謁の栄に浴せばそれも当然であるか。よかろう。特に許す』

『ありがたきお言葉にございます。……ところで英雄王よ、恐れながらもご質問をお許しいただきたく存じます』

『述べよ』

『御身のクラスがアーチャーというのは、確かでございましょうか?』

『……貴様よもや、英雄王たる我の言葉に嘘偽りがあるなどと申す気か?』

『滅相もございません。しかしながらアーチャーのサーヴァントは既に他のマスターに召喚されているのです。聖杯戦争において、本来あり得ぬクラスの重複という事態を訝しんだがゆえの言葉のあやでございますれば……』

『…………』

『い、いえ、この遠坂時臣、御身がアーチャーであることに疑いは持っておりませぬ。聖杯戦争の常識を超越するとは、流石は英雄王でございます』

『常識を超越だと? ……それはつまり、この我を非常識と詰っているわけか?』

『か、重ねて滅相もございませんッ!』

 

 異常事態ゆえに、常に余裕を持って優雅たれなかった時臣だった。内心の焦りは相当であり、後半のギルガメッシュとの会話はよく憶えていなかった。

 ただ一つ憶えているのは、会話が終わった後の激烈なまでの胃痛だけである。

 ──と、そこで時臣はふと思い出した。

 というのも、綺礼のアーチャーである。

 

「璃正さん。そちらに綺礼はおりますか?」

『私でしたら、此処に』

 

 応じたのは本人だった。魔導通信機の向こう、すぐ傍に控えていたのだろう。

 時臣がアーチャーを召喚した後、綺礼は一度冬木教会に戻っていた。

 もっとも本格的に聖杯戦争が始まる前に、彼も教会を密に去らなければならない。監督役の息子とはいえ、彼も聖杯戦争の参加者である。マスターが教会に根を張るなどルール違反もいいところだろう。それを他のマスターに指摘されるような事態はよろしくない。

 

「ちょうどいい。綺礼、君に訊きたいことがあったんだ」

『と言いますと?』

「君が召喚したアーチャーについてだ。まだ詳細を確認していなかったからね。それで、いったいどんな英霊なんだい?」

『■■■です』

「………………は? いや──待て、綺礼。いま、なんと言った……?」

『耳を疑うのも、もっともかもしれません。ですが私が召喚したアーチャーは──』

 

 続くその言葉に、時臣は開いた口が塞がらなかった。

 言峰綺礼が召喚したアーチャーの真名は、それほどまでに信じられないものだったのだ。

 

 

  ◇

 

  

 清らかな竪琴の音色が、微睡んでいた間桐雁夜の耳に優しく滑り込んできた。

 眼を覚ましたのは、既に夕刻となってからである。薄暗い部屋の中を、窓から差し込む茜色の光が微かに照らしていた。

 

「俺、は……っ」

 

 硬いベッドから呻きながら身を起こした。壊れかけの体では、こんな簡単な動作にすら痛みを伴う。

 けれど、それがいつもよりも楽に感じたのは気のせいか。痛みの方も、普段よりもかなり軽い。雁夜は上体を起こしたものの、妙に安らいだ気分のままぼんやりしていた。

 その内に、奏でられていた音色がふと収まる。

 代わりに傍らからは、優美な声が投げかけられた。

 

「眼が覚めたようですね。おはようございます、マスター」

 

 雁夜はそちらへと視線を向けた。ベッドの横の椅子に腰かけるのは、竪琴を携えた騎士である。

 憂い気な雰囲気の、眉目秀麗な男だった。薔薇のように赤い長髪は、女性でさえ羨みそうなほどに艶やかだ。

 白銀の鎧と白いマントを纏うその騎士に、雁夜は一瞬呆気に取られた。しかし、すぐに彼が何者なのかを思い出す。

 

「お前、俺のサーヴァントか……?」

「ええ、そうです。私は昨夜、貴方に召喚されたアーチャーです」

「……そうか。俺は、ちゃんとサーヴァントを召喚できていたんだな」

 

 雁夜はほっと息が吐いた。心底から安心したのだ。召喚に失敗などしていたら、徒に臓硯の嘲笑を買っただけとなっただろう。この身が無駄に壊れ、潰え、桜を救うなど夢のまた夢だった。

 とはいえ、無事に召喚できたとは些か言い難いのかもしれない。アーチャーを召喚したその直後に、雁夜は倒れてしまったのだから。昨夜から夕方にかけて、ずっと意識を失っていたらしい。

 と、そこで雁夜はもう一つ、ある疑問を思い出した。

 

「そういえばお前、アーチャーなのか?」

「そうですが、何か? ……もしや、アーチャーではご不満でしたか?」

 

 アーチャーが困ったように眉を寄せる。申し訳ないと言わんばかりに、僅かに顔も俯いている。

 

「あ、いや、そんなことはない」

 

 雁夜は慌てて否定した。

 

「というかむしろ、“単独行動”のスキルを持つアーチャーを召喚できたのは、俺にとっては好都合だったかもしれない」

 

“単独行動”のスキルを有するサーヴァントには、マスターからの魔力供給がなくても長時間現界していられる特性が備わっている。

 雁夜は体内の刻印虫のせいで、魔術回路を励起させ、魔力を精製するだけで尋常ではない苦痛を受けるのだ。

 だからこそアーチャーならば、他のクラスのサーヴァントよりも遥かに雁夜の負担は軽くなる。

 もっともいざ戦闘となれば、まったく魔力供給をしないわけにもいかないが。

 宝具を使用するとなれば尚更である。だがそれでもやはり、他のクラスのサーヴァントと較べれば天と地ほどの差があろう。

 

「お前がアーチャーだったことに不満なんてない」

 

 改めて断言し、けれど雁夜は苦笑する。

 

「ただ、俺は本来なら、バーサーカーを召喚しているはずだったんだ。その為の詠唱を、召喚の時に追加したりもした。だから召喚されたサーヴァントがアーチャーだったことが、ちょっとばかり意外だっただけだ」

 

 そんな雁夜の言葉に、アーチャーが露骨に眉をひそめた。

 

「差し出がましいかもしれませんが、それはあまりに愚かかと。その体でバーサーカーを召喚するのは、自殺行為以外の何物でもなかったでしょう」

「……だろうな」

 

 遠慮なく吐き出された苦言に対し、雁夜は思わず乾いた笑みを零してしまう。

 

「俺だって元々バーサーカーを召喚するつもりはなかった。だけど爺が俺にそう指示したからな」

「なぜ、そのような指示を?」

「マスターとしての適性が他のマスターよりも劣る。だからこそ“狂化”のスキルでステータスを底上げできるバーサーカーを召喚し、その差を埋める。それが爺の言い分だったな」

「それは、確かにもっともらしい言葉ではありますが」

「ああ、多分ただの建前だ」

 

 雁夜とて聖杯戦争に参加すると決意した以上、間桐に残っていた過去の聖杯戦争の記録には眼を通している。

 だから当然、ある事実についても知っていた。

 バーサーカーは、過去全ての聖杯戦争でマスターを自滅に追いやっていると。

“狂化”のスキルはサーヴァントのステータスをアップする。けれどその不穏な名称が示すとおり、このスキルにはデメリットも当然存在する。

 一つは、そのサーヴァントの理性を奪い去るというもの。そしてもう一つは、魔力消費の大幅な増加である。

 サーヴァントにただ魔力を供給するだけで痛みを伴う雁夜にとって、それは生き地獄にも等しい拷問となっただろう。

 

「結局のところ、間桐臓硯は俺にバーサーカーを召喚させて、ただ俺を苦しませたかっただけなんだろうさ」

 

 雁夜は、そのことに気づいていた。

 ただ、動かしようのない事実として、間桐雁夜は他のマスターよりも遥かに劣る。魔術師としての花道をいまなお歩み続ける遠坂時臣とは、較べることさえ烏滸がましいだろう。

 中途半端なサーヴァントを召喚しても、雁夜が勝ち残るのは非常に厳しい。臓硯の言葉は、建前ではあるが一理あった。

 無論負担という面を考えれば、最善なのはアーチャーを引き当てることだった。だがアーチャーを確実に召喚できる保証がないならば、いっそバーサーカーを狙って引くというのも一つの選択肢ではあったのだ。

 ゆえに敢えて臓硯の指図を受け入れ、雁夜は狂戦士の召喚に踏み切った。聖杯戦争に勝つには、多少以上の無理を重ねなくてはならないと覚悟して。

 それに、である。

 そもそもの話、臓硯がバーサーカー以外のクラスでの召喚を果たして雁夜に許したかどうか。

 初めに臓硯はこう言った。第四次聖杯戦争は本命ではない、と。元々参加は見送り、様子を見るだけのつもりだった、と。

 つまり臓硯からすれば、雁夜が聖杯戦争に勝とうが負けようがどっちでもいいのだ。もっと言えば、別に参加してもらう必要すらありはしない。

 ゆえに土壇場で自らの意に従わなかった雁夜を癪に思い、殺そうとしてもなんら不思議はないのである。

 そう言った意味では、臓硯に逆らうという選択肢はなかったかもしれない。

 もっともその結果アーチャーを召喚できたのは、雁夜にとって幸運以外の何物でもなかったが。

 

「……アーチャー?」

 

 言葉を返すこともなく沈黙していた赤髪の騎士を、雁夜は訝しんだ。

 

「これほどまでに傷ついた体の者に対し……そのようなことを強いるとは……」

 

 怒りが籠められた呟きだった。険しかったアーチャーの眉間にはさらに皺が寄っている。

 

「あの老人、やはり悪鬼の類いでしたか。マスターの父親を名乗っていたので、ひとまずは見逃しましたが……失態です、斬っておくべきでした。申し訳ありません」

「アーチャー……」

 

 自分の為に怒ってくれている。雁夜はそれが不思議な気分だった。

 一年ばかり臓硯と顔を突き合わせてきたせいなのだろうか。こうも真っ直ぐで清澄な性質の人間と出逢えたことが、奇跡なのではないかとさえ思ってしまった。

 

「いや、頭を上げてくれ。お前のせいなことなんて、一つだってないだろ」

「ですが」

「それに臓硯は慎重で狡猾だ。俺がサーヴァントを召喚するに当たって、万が一サーヴァントに襲われてもいいように、保身はきっと万全だった」

 

 英霊ともなれば、間桐臓硯を一目で邪悪であると判別できよう。実際、アーチャーがそうだ。

 召喚されたサーヴァントが邪悪を許せぬ性質の英霊であれば、そんな臓硯を即刻殺すというのも可能性としてはあり得るだろう。そして臓硯とて、そんな事態は当然想定していたはずだ。

 にも拘らず、臓硯は英霊の召喚に立ち会っていた。それは、死なない確信があったということに他ならない。おそらくその場で臓硯を殺そうとしたところで死ぬことはない。その生き汚さと執念は、他者の想像を絶するがゆえに。

 

「だからお前が気に病むことはないさ。……むしろ、ありがとな。俺の為に怒ってくれて」

 

 礼を言った雁夜だったが、アーチャーの表情は依然として曇ったままだ。

 

「……なぜマスターは、そんな体で聖杯戦争に参加したのですか? その体を治す為ですか?」

「いや、そんな理由じゃない。むしろ俺は聖杯戦争に参加する為に、こんな体になっている」

 

 アーチャーの表情に困惑が浮かぶ。意味が解らない、と言いたげだ。

 

「素養自体はあったが、俺は一年前まで魔術師なんかじゃなかったんだ。けれど、俺はどうしても聖杯戦争に参加しなくちゃいけなくなった。だから俺は刻印虫というおぞましいモノを、この体にぶち込んだんだ。それを以って、なんとか聖杯にマスターとして選ばれる程度の魔術師に仕上がりはした。……まぁ、だけど」

 

 そこで言葉を切り、雁夜は自分の手のひらを見つめながら自嘲した。

 

「その代償がこの体なんだ。刻印虫を植えつけたせいで、俺の体はぼろぼろになった。……悪いなアーチャー。こんな見てくれが不気味なマスター、嫌だろ?」

 

 頭髪は一本残らず色素を失い、肌も死体めいた血色のないモノへと変貌している。体中は至るところが瘢痕だらけだ。とどめに魔力の循環によって傷ついた静脈は、青黒い罅のように全身に気色悪く浮かび上がっている。

 

「……そうまでして、聖杯が欲しいのですか?」

 

 咎めるような口調でアーチャーが問うた。それもまた、雁夜の身を案じてくれてのことだろう。

 

「聖杯なんか、俺は別にいらないさ。心の底では聖杯なんてモノは信じちゃいない。だがそれを欲する畜生がいる。そしてそんな奴に弄ばれている、一人の女の子がいる」

「女の子」

「桜って女の子が、臓硯の手で……っ、見るも、おぞましいほどの責苦を受けている。……だから俺は、その子を救いたいんだ。聖杯と引き換えにすれば、その子を助け出せる」

「では貴方は、その女の子を助ける為に、聖杯戦争に参加したのですか……?」

「そうだ」

「その為に、体をそんなにまでして」

「ああ」

「…………」

 

 それきり、アーチャーの言葉は途切れた。

 暗い静寂が部屋の中を支配する。

 話すべきではなかったかもしれない。全てを説明してから、雁夜はいまになって悔いた。

 サーヴァントとて、聖杯を欲するからこそマスターの召喚に応じるのだ。だというのに、こんな急造かつ、壊れかけの人間がマスターと知っては失意を懐こう。戦う理由にしても、聖杯戦争こそ発端であれ、聖杯戦争そのものには関係がない。

 早々に見切りをつけられても、何もおかしくはないだろう。

 

「畜生とはあの翁、間桐臓硯のことで相違ありませんか?」

 

 長い沈黙の末の質問だった。雁夜は頷いた。同時にアーチャーが立ち上がる。

 ずっと伏せられていた彼の眼は開いていた。瞳に宿すは、明確なる怒りの炎だ。

 

「マスター、彼の老獪を即刻斬る許可を頂きたい。その方が手っ取り早いでしょう。あとのことはお任せを。桜なる少女は私が助け出します」

「アーチャー、お前──」

「貴方の話はよく判りました。貴方の想いもよく伝わりました。ならば動かずして、何が騎士か」

 

 決然と、そして当然のようにアーチャーが告げたその言葉に、雁夜は胸を打たれた。

 一年間、苦痛に耐え続けた末の言葉だったのだ。何度も何度も発狂しそうになった末に差し伸べられた手だったのだ。

 およそメリットなど何もない。他のマスターを見繕った方が、アーチャーにとっては都合がいいだろう。

 ──それでも、そんな損得を抜きにして、アーチャーは桜を助けると言ってくれたのだ。

 英雄だった。雁夜が呼び出したサーヴァントは、間違いなく英雄であったのだ。

 知らず涙腺が緩みかけた。だが雁夜はそれを堪え、アーチャーに言わなければならないことがある。

 

「願ってもない話だが、それは……もしかしたら無理かもしれない」

「なぜですか!」

「……さっきも言った。臓硯は慎重で狡猾だ」

 

 アーチャーが憮然として押し黙る。雁夜の次の言葉を待っていた。

 

「爺が俺に理性のないバーサーカーを召喚させようとしたのは、きっとこういう事態を防ぐ為でもある。だから爺は、俺のサーヴァントがアーチャーだった以上は……もう手を打っているだろう」

「……一理あります。ですが、行動に移してもいないのに諦念を懐くのは早計でしょう」

「──いやいや、雁夜の言葉は正しくそのとおりよ」

 

 不意に、アーチャーの反論を(しわが)れた声が切って捨てた。雁夜とアーチャーは、二人揃って弾かれたように声の方へと振り向いた。

 視線の先の廊下には、禿頭の老躯が幽鬼のように佇んでいた。

 声の主たる間桐臓硯は床を杖で突きながら、その老体をおもむろに部屋の中へと進ませてきた。

 

「爺ッ!」

 

 ベッドから身を乗り出しながら、雁夜は声を張り上げる。

 同時に、薄暗い部屋の中を白銀が鋭く閃いた。

 見敵速攻である。アーチャーはただの一瞬で臓硯に近づき、()いていた剣を鞘から抜き撃ったのだ。

 果たして臓硯の首はいとも簡単に刎ね飛ばされ──しかしその頭部は羽虫の群れとなって部屋の中を飛び交った。

 羽虫が臓硯の首の先に再結集する。刎ね飛ばされた頭部は、綺麗さっぱり復元された。

 

「毒虫が」

 

 アーチャーの侮蔑と嫌悪の言葉に対し、だが臓硯は涼しげに笑みを返す。

 

「おお、怖い怖い。が、無駄であったなアーチャー。この躰は単なる傀儡よ。所詮蟲共の集まりに過ぎぬわ。儂の本体は別におってのう。傀儡を殺そうとしたところで、儂そのものは死に至らぬ」

「臓硯……」

 

 自身を睨みつける雁夜へと、臓硯が笑みを湛えたまま視線を向けた。

 

「呵々、それにしても雁夜よ。いつになく察しが良いではないか。まるで刻印虫を植えつける前の貴様よのう。何ゆえ往年のキレが戻ったかは存ぜぬが……うむ、実に──そう、小憎らしいわ」

 

 浮かべていた笑みを掻き消して、臓硯が不快そうに吐き捨てる。

 

「間桐臓硯。話はマスターから聞きました。いますぐ桜なる娘を解放しなさい」

 

 アーチャーが己が剣を臓硯の鼻先へと突きつけた。赤髪の騎士の険しい眼は、義憤と敵意に満ちている。

 それを受けてなお、臓硯に怖じる様子は欠片もない。むしろ失笑すら零し、皺だらけの顔を嘲りによってさらに醜く歪めていた。

 

「何ゆえ儂が、サーヴァント風情に命令される筋合いがあるのやら」

「さもなくば殺す、という話です」

「死なぬ、と言った。聞き分けの悪いサーヴァントよ。それに残念だがのう。桜は既にこの屋敷にはおらぬわ」

「待て爺、桜が屋敷にいないとはどういうことだ!?」

 

 食ってかかる雁夜に対し、臓硯がやはり嘲笑を浮かべながら答える。

 

「雁夜、お主がアーチャーと結託し、桜を助け出そうなどと血迷ったことを考える可能性があったからのう。ゆえに桜は、安全かつ安心できる場所に避難させておる」

「安心できる場所、だと? ……どの口で言う。ふざけるな臓硯ッ!」

「随分な言い草よ。が、これは儂の本意であるのだぞ? 愛しい孫娘が、聖杯戦争に巻き込まれる可能性を憂えればこそよ。桜が人質にされるような事態は、儂としても容認できず、お主としても許容しがたいことじゃろうて。貴様なら判っていよう? 魔術師とは目的の為なら手段を選ばぬ。マスター連中は、貴様の弱点を容赦なく狙ってくるぞ?」

「くっ……」

「ともあれ、これでお主は後顧の憂いなく聖杯戦争に没頭できるというわけじゃ。良かったのう、雁夜え?」

「爺……ッ」

 

 他のマスターに利用されるのも、臓硯によって弄ばれるのも、なんの違いがあるという。雁夜は怒りと悔しさに、知らず拳を震わせた。

 

「儂の話はそれだけよ。貴様がバーサーカーではなくアーチャーを召喚した不手際には、まぁ眼を瞑ってやろう。が、アーチャーに唆されて、くれぐれも良からぬ下心を出さぬように気をつけよ」

 

 言うだけ言って背を翻そうとした臓硯に、だがアーチャーはなおも剣を突きつけていた。 

 無言のまま視線が交差する。赤髪の騎士の、身を貫くような殺気に対し、臓硯は笑みを崩さず柳のように受け流す。

 そんな構図が数秒と続き、不意にアーチャーが剣を下ろした。

 剣を鞘へと静かに納め、されどどこまでも冷然とアーチャーは告げる。

 

「間桐臓硯。邪悪はいずれ滅びるものです。貴方も例外ではない」

「──ふん」

 

 不愉快そうに鼻を鳴らし、臓硯が雁夜の部屋を後にした。

 

「……マスター」

 

 アーチャーが雁夜へと向き直る。深く、重々しく頭を下げられた。

 

「……申し訳ありません。やはりこれは、私の落ち度です。召喚された直後、あの老獪を殺すべきでした」

「……お前のせいじゃない」

 

 事情を何一つとして知らなかったアーチャーが、間桐臓硯を殺す理由などありはしない。だから彼が責任を感じるのは、あまりに筋が違うだろう。

 そう。責があるのは、それは──

 

「悪いとすれば俺だろう。俺がお前を召喚したあとに意識を失わなければ、まだ臓硯を出し抜けるチャンスはあったのかもしれない……」

 

 アーチャーが事情を知らなくとも、令呪で命じて桜を連れ出す。あるいはそうすることだってできていた。

 

「だってのに、俺はっ……く、そ……ッ」

 

 怒りと悔しさと憎しみは、とめどなく雁夜の胸の奥から込み上げていた。それは元凶である間桐臓硯へのものであり、同時にどうしようもなく無力な己自身へのものだった。

 いやに冷静だった雁夜の思考は、黒々と淀みそうになっていた。底なしの沼に身が沈みそうな、そんな錯覚すら覚えてしまう。

 それは苦しさと吐き気を伴いながらも、なぜか異様に甘美に思えた。この負の想念に身を委ねてしまえば、いったいどんなに楽なのか。

 ──けれど、そうすることは許されまい。雁夜は自分がいったい何をしなくてはならないのかを思い出し、ぎりぎりのところで踏み止まった。

 

「……アーチャー」

「はい」

 

 返事をしたアーチャーを、雁夜はじっと見つめた。アーチャーもまた、無言のまま雁夜の視線を受け止めている。

 

「俺がマスターじゃ、お前は……聖杯戦争に勝てないかもしれない」

 

 雁夜は正直に、そのどうしようもない事実を口にした。それが無力な自分にできる、召喚に応じてくれた彼への唯一の誠意だと思ったからだ。

 

「お前からすれば、間桐の事情はいっさい関係のない話だろう。お前には多分、俺との契約を切る権利がある。お前が聖杯戦争に勝ち残るのなら、きっと他のマスターを新しく見つけた方がずっといい。──それでも、どうか頼む。桜を救うために、俺にお前の力を貸してくれ……」

 

 頭を深く下げて、雁夜はなおも続ける。

 

「こんな無能なマスターに引き当てられて、最悪だと思ってるかもしれん。……すまない。でも、それでもどうか──」

「──いいえ。いいえ、断じて。誓ってそのようなことはありません」

 

 雁夜の言葉を遮って、アーチャーが力強く否定した。己がマスターの両肩を掴み、そっとその頭を上げさせる。

 

「貴方の祈りは正しいものだ。ならば騎士として、それに応えることに異存はありません。いえ、それに応えることこそ騎士としての務めです」

「アーチャー、いいのか……? 勝てないかもしれないんだぞ……?」

「貴方に勝算がないのなら、私が勝機を作ります。円卓の騎士トリスタンの名に懸け、間桐雁夜、私が貴方の祈りを叶えます。必ずや、桜殿をお救いしましょう」

「──っ」

 

 微笑とともに差し伸べられたその手を、雁夜は泣きながら両の手で握り返した。

 堪えきれずに涙が零れたのだ。自分が引き当てたパートナーが彼で良かったと、雁夜は心底から思ったのだ。

 彼のその強さではなく、彼のその優しさに触れたからこそ。

 

「ありがとう……っ、アーチャー……っ」

 

 震えた声でそう告げる。

 きっとこの時、本当の意味で間桐雁夜とトリスタンは契約を交わしたのだ。

 必ず勝つと。

 必ず桜を助けると。

 茜色の空は、いつの間にか青みを帯びようとした。

 夜が来る。即ち、聖杯戦争が幕を開ける頃合いだ。

 雁夜はおもむろにベッドから這い降りた。馴染みのパーカーをその身に着こむ。

 

「体調は大丈夫なのですか?」

「良くはない。でも今日はなんか、いつもよりずっと調子がいいからな」

「そうですか。それはよかった…………安らぎの曲を、ずっと奏でていた甲斐がありました」

 

 トリスタンは微笑みながら、携えている竪琴をまた少しだけ奏でた。

 澄んだ音色に心が落ち着く。淀んでいた心が、気持ち洗われたような気が雁夜はした。

 

「行くぞ、アーチャー。六組全ての敵を倒す。必ず聖杯を掴む。桜を助ける為に」

「はい、参りましょう」

 

 そうして二人は決意を秘めて、冬木の街へと赴いていった。

 

 


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