四葉の特殊体質 作:search
「はあ...」
「蓮。朝からどうしたの?」
姉さんと兄さんと共に学校に向けて歩いている俺は現在疲労に疲労が重なり疲れきっていた。その理由は母様から縛りを外した水波にあった。ご飯を食べる際は隣に座って食べさせようとしてくるし、猫のように常にすり寄ってくる。お風呂にも一緒に入ろうとしてくるし、布団に潜り込んでくる変わりようだ。このままでは俺が悶え死んでしまう。手を出さなかった俺を本気で誉めてもらいたい。HSSになった時に一緒に寝ることを約束してしまいこれからは水波と一緒に寝ることが決まっている。
「はあ...いや少し疲れてて」
「叔母上と何かあったのか?」
姉さんは気付いていないみたいだが目がある兄さんは気付いていたみたいだ。母様の『夜』が発動すれば気付きもするよね。....まてよ。
「兄さん」
「なんだ?」
「見てた?」
「ああ。ここで言ってもいいなら構わないが?随分と楽しそうだったな」
は...はは。終わった。隣に兄さんが住んでるのすっかり忘れていた。というより兄さんが目を持ってることを忘れていた。つまり俺のプライバシーは初めからなかったと。そして、兄さんに弱味を握られたと?ワラエナイ。
あんなにも晴々としてた空を見る。雲一つ無いこの青空を魂が抜けたように見ることしか出来ないでいた。
「蓮大丈夫?体調が良くないのなら帰って休んだ方が」
「姉さん。それは大丈夫だよ...」
学校よりも家の方が疲れるとは流石に言えない。そして兄さんが笑いを堪えているのを不思議そうに見る姉さん。俺の心労は深まっていくばかりだ。
学校に到着した俺達。というより俺と兄さんは、不満そうな姉さんと別れて教室に向かった。
「蓮、おはよ。達也君もおはよ」
「ああ。おはよ」
「おはよう」
教室に入るとエリカが挨拶してきた。後ろから柴田さんも来て挨拶をすまし自分の席に座る。どうせ二期生の俺達には教師は来ないので寝ることにする。
「蓮。起きろ」
「ん?ああ兄さんか」
寝ぼけている頭を起こすために周りを見る。時間的に昼御飯の時間になっていた。兄さんの後ろにはエリカと柴田さんと...ん?見覚えのない人がいた。
「はあ..蓮。寝ぼけていないで起きろ、ずっと寝ていたと深雪に言っておくからな」
「起きた!起きました!お兄様!」
寝ぼけていた頭は一瞬にしてクリーンになった。姉さんに知られるのだけは嫌だ。絶対に嫌だ。
「なあ達也。そろそろ紹介してくれないか?」
兄さんの知り合いか?見覚えのない人が兄さんに聞いている。なんかTHE体育会系って感じだ。失礼だが頭悪そう。
「ああそうだな。俺の弟の司波蓮だ」
「司波蓮です。初めまして」
「俺は西城 レオンハルト!レオで良いぜ!よろしくな蓮!」
随分とフレンドリーな人だな...。寝起きにこのテンションはキツいが兄さんの手前しょうがない。
「よろしくねレオ」
それより...デカイな。180㎝はあるか?俺の身長は165㎝程で一般的な身長だ。
「自己紹介のとこ悪いけど、そろそろ食堂に行かない?」
「ああ、そうだな。蓮」
兄さんに頷き食堂に向かう。兄さんと柴田さんとエリカ。それにレオと一緒に食堂に着くと姉さんも丁度食堂に来たのか笑顔で此方に...もとい兄さんのもとに駆け寄る。
「お兄様!蓮!」
「深雪も今からご飯かい?」
「はい!エリカと美月も一緒に食べても良いかしら?」
「勿論です!」
「勿論良いわよ。隣空いてるから座って!」
「ありがとう、エリカ」
エリカの隣に座る姉さん。姉さんの後ろから一科生の生徒が数人此方に向かってくる。嫌な予感しかしない。兄さんなら引くのだろう。でもそれは姉さんの望むところではない。姉さんは”兄さん“とご飯が食べたいのだ。とばっちりで凍るのは嫌なので俺は立ち上がる。勿論皆俺に視線を向けるが俺達に声をかける声に視線は全て声に集められた。
「司波さん。ウィードと食事なんてやめた方がいいよ」
その言葉を言ったのは一科生の集団の一番前にいる男子生徒。強さで言うと大したことない。兄さんなら魔法を使わなくても勝てるレベル。兄さんと比べるのは間違っているが。このままでは兄さんが席を移動しようと言い出すのでその前に俺が動く。
「えーと。誰か知りませんが一科生(笑)の皆さん。何か用ですか?」
俺の言い方が気にくわなかったのか一科生の顔が歪む。エリカは爆笑している。それを宥める柴田さんは苦労が絶えないだろう。レオも乗っかってきそうだったから手で制した。俺に集中させようとしているのにレオに取られたら意味がない。兄さんは諦めたのかため息を吐き、姉さんはオロオロしている。
「....ウィードの分際で何様だ?ウィードは俺達のスペアって分かってるのか?」
「スペア?お前スペアの意味知ってるのか?あー知らないから人の迷惑も考えないでこんなことしてるのか。悪い悪い。一科生(笑)の頭じゃ分からなかったよな。いやーそれにしても一科生なんてこの程度なんだな。良かった、二科生で」
俺の言葉に拳を握る男子生徒。殴ってくれないかなー。そんなことを考えていると横から邪魔が入る。
「何をしている!」
「貴方たち確か1-Aの生徒と1-Eの生徒ね。話を聞きます。全員着いてきなさい」
どうするんだ?そんな言葉を込められた目を兄さんから向けられる。このままではご飯も食べられないし姉さんにも怒られる。最悪である。
「別に何もしてませんよ。魔法を使おうとしたわけじゃありませんし。それにご飯を食べようとしていたらそこにいる一科生の“男子生徒”に邪魔されただけです。ウィードと蔑まれてね」
「なっ!」
俺の言葉には、目の前の男子生徒以外は言外に関係ないと言っていた。目の前にいるのは生徒会長である七草先輩と風紀委員長である渡辺先輩だ。恐らく憧れの対象である二人の先輩に怒られるのは誰でも嫌だろう。そして取り巻きなんてものは簡単に裏切る。そして自分が中心にいると考えている奴ほど一度裏切られれば裏切った奴を簡単には許せない。そうなれば自然とこういった事も減るだろう。
「それは本当か?」
「あ、い、いえ!」
「本当よ。深雪がアタシ達と食べようとしたら。ウィードと一緒に食べるのはやめた方が良いって言ってきたのよ」
「ほー....。お前は確か、教職役推薦枠で風紀委員に推薦されていた森崎だな?話がある、このまま着いてきなさい」
「なっ!...」
森崎という男子生徒は俺を睨み渡辺先輩に着いていく。中心がいなくなれば集まっていた一科生は散々になっていく。そんな散々になっていくなか二人の女子生徒が残っていた。森崎がウィードだからと非難していた時に森崎にあまり良い表情をしていた二人だった。残った二人を見て皆、まだ何か言うつもりか?そう思っているが森崎とは違うだろうと俺は椅子に座った。
「あ、あの...先程はすいませんでした!森崎君が言っていた事...一科生だからとか二科生だからとか関係なく言い過ぎだと思います。..その、一科生が皆そういう考えじゃ無いですから!」
それだけ言って食堂を出ていく二人。俺はため息を吐いて二人を追いかける。涙を流すほど後悔して不器用な女の子を俺は見捨てられるほど器用ではなかった。
「あの」
「...あなたは」
「何?ほのかは、ちゃんと謝った。他に何かあるの?」
「ちょ、ちょっと雫!言い過ぎだよ!」
雫と言うらしい無口そうな女の子は少し怒気を含ませて言ってくる。
「一緒にご飯食べないか?」
「「....え?」」
二人の声が重なった瞬間だった。
そして放課後。
ため息も出てこなくなりそうだ。なんなんだ?森崎。またお前か?取り巻きが変わってるから昼の時に一緒にいた奴等は森崎に切り捨てられたのか?正直めんどくさいな。先程からエリカとほのかがヒートアップしている。レオも入ろうとしたがほのかの剣幕に圧倒されて現在は俺の隣で女って怖えなと苦笑いだ。森崎に対して二人の怒声が校門前に響く。隠れているつもりなのか遠くから会長と風紀委員長が此方をうかがっている。なにしてんの?あの二人。
「どうしてお兄さんとの仲を裂こうとするんですか!」
その言葉に頬を染める姉さん。完全に黒だろ。
「ウィードとか...一科生とか関係ない!森崎君の言ってることおかしいよ!」
「くっ!同じ一科生なのにウィードを庇うなんて!」
「同じ一年生じゃ無いですか...どれだけの差があると言うのですか!!」
「...どれだけ差があるか知りたいか?」
現在は帰るためにCADは返却されている。勿論自衛目的以外の使用は禁止されている。だが森崎は頭にないのかCADを発動させようとしている。フラッシュキャストを発動させれば森崎より早く魔法を発動させられる。だがフラッシュキャストは出来る限り使えない。つまり俺に止める手段は無い。だがここには兄さんがいる。正直なんとでもなる。それに。
「止めなさい!自衛目的以外の魔法の行使は犯罪行為ですよ!」
「またお前か?森崎」
「俺は別に...」
「はあ...これじゃ教職員推薦枠で風紀委員に入るのはやめた方が良いだろうな」
「そんな!」
落ち込む森崎。だがこんなやつが教職員推薦枠にならずに良かったのかもな。
「そうだ。君の名前を教えてくれるか?」
何故か俺を見ながら聞いてくる渡辺先輩。教えたくありませんと言えれば問題ないがそういう訳にもいかないだろう。
「司波蓮です」