恐ろしい事に、私と練習試合をした後なのに、李搏御爺さんは違う人と試合をそのまましていた。もうこっちは息切れが半端無いって言うのにだ。あの御爺さんはどんだけ体力が化け物で、バドミントンって言う競技が好きなのか今一計り切れない人物だ。
「イヤイヤァ、織乃チャン、強クナレタゼ」
「あの、ランドールさん。それだと私じゃなくて自分が強くなったっていう文法なんですけど?」
「オット、ソイツハ失礼シテクレタナ」
「うん。もう一度言いますけど、それだと私が貴方に失礼をした事になるのですが?」
「ハハハ。 気二シナサイヨ、気二シナサイヨ」
「気にして下さいね、マジ」
「分カラセタゼ。後、綾乃チャン存在スル気ガナイデスカ?」
「あー……まぁ、そんな雰囲気です」
「ソンナカバナ。我、驚イテ吃驚」
「ランドールさん。もう色々と可笑しくなってますからね」
物凄くチャライ雰囲気の黒人さん。黄色人種の私と違い、黒い肌がバドクラブでは目立つ人で、更に某歌手集団みたいに丸坊主にした頭に何本かのラインで剃り込みを入れてるド派手な髪型。しかも、髪色は李博御爺さんと同じで白一色だ。
すごい偏見だけど、何だかデトロイトに住んでそうな男だった。黒と黄色のユニフォームが異様なほど似合っている。そして見た目の威圧感は半端ないのに、陽気で親しみやすい妙な雰囲気がある。姉さんとか本気で怖がっていたけど、バドをしたら仲良くなっていた。
『……ふむ。でしたら、今は日本語ではなく英語で』
『私としてはどちらでも構いませんけど』
『いやいや、有り難いことだ。しかし、日本語に慣れるため、今日はなるべく英語は使わないでいたい。どうしても通じない場合だけ、英語を使わせて欲しい』
『大丈夫ですよ。別に英語でも気にしませんから』
『ありがとう、織乃』
『どういたしまして』
日本語だと片言喋りが実に愉快な面白キャラだけど、母国語だと凄まじく普通に話すと言うギャップもまた面白い人だった。私も英会話ラジオや英語の映画やアニメで勉強したなんちゃってイングリッシュだけど、アメリカ人のランドールさんに通じているのなら中々な英会話なんだろう。文字や文章なら覚え易いんだけど、実際に喋るとなるとあっさり簡単にはいかない。思考回路はもう日本語で定着しているので、日本語で考えた文章を英語に訳し、その言語を言葉にするのは苦じゃないけど、聞くのも話すのもワンテンポ遅れるので日本語よりも疲れてしまうのでやはり好きにはなれないな。
何せ、効率的じゃない。
しかしながら、それでも日本語が慣れないランドールさんには英語の方が手っ取り早い。
確かフルネームはハーマン・ロードリック・ランドール。向こうだと名前で呼ぶのが親しい仲なんだろうが、ここは日本なので私は普通にランドールさんとだけ呼んでいる。
「あらーあらあら、織乃じゃないの! あれ、そう言えば綾乃はいないのね?」
「イヤー、メーデル。何デ此処ニナンデ?」
「……本当、ランドールは日本語だと面白キャラ過ぎて駄目ね」
「ナニガヤネン。ワシ、シバイテ?」
「ドMか!」
赤毛の素っぴん美女。何でも三十路過ぎらしいけど、まだまだ二十歳前後の見た目だ。童顔にも程があり、ノーメイクでこれなのだから恐ろしい。白い肌でクッキリとした顔立ちで、日本民族ではない欧州系だと分かるが、そう断言出来ない怪しさがある。強いて言えば、白人の面影のある無国籍風の童顔美人か。フルネームがヘルトラウダ・メーデルと言って、確かオランダ出身の古美術商で、尚且つ日本での仕事は貿易商人だったかな。
…………うーん。しかし、この人は美人過ぎる。
一体李搏御爺さんの何なんだろうか。ランドールさんとも仲が良いし、この三人は謎が多過ぎて面白い。色々と遠回しに聞き穿ってもみたけど、一定ラインを超えた事情は絶対に外側に漏れ出さない。軍人よりも血生臭そうだから気になってはいるも、十中八九パンドラの箱なので今は放って置いている。
「メーデルさん、こんばんは。後、姉さんはバドミントン、辞めてしまいましたよ」
「「エ”?」」
二人揃って口を大きく開け、唸る様に驚愕の声を上げる。
「オッタ
「違いますから。少年院じゃないですよ」
その誤解だけは解かないといけない。姉さんに臭い飯とか、意地でも食わせないからな。
「またまたー……有り得ないでしょ。そんな嘘をお姉さんについちゃ駄目だから。だって綾乃ちゃんは織乃ちゃんと同類で、バドでメンタルをキめちゃってるシャトルジャンキーじゃない。私の生まれ故郷のオランダは色んな薬物が合法で楽しめる良い国だけど、二人がバドしてる時の目付きって、街中のジャンキーよりもギラギラしてるじゃないの。
それを辞めるって言うなら、相当な事がないと無理じゃん」
「あー……―――はぁ。うん、まぁ、そう言うことです」
バドミントン中は脳内麻薬ドバドバ出してるけど、そんなにイッテる顔をしてるんだろうか。でもテンション上がるのは仕方ないので、自覚はしていても楽しむだげだ。いやけど、私はそんなにヤバい笑顔をしているんだろうか?
本番の試合じゃ無表情を徹底してるけど、練習中は何も抑えずに弾けているからな。シャトルを打ち返すのは、最高に楽しくて堪らない。
「駄目女ダゾ、メーデル。全ク以ッテ情緒ガ分カラナイデズカ、ピンボケ。空気読ンデ、空気二ナリヤガレヨ。人ノ心ナキ者、ハートレス系女子ダ」
この美女を塵屑を見る目で見下せるのは、多分このランドールさんくらいだと思う。女の私が思わず恐怖する程の美貌の持ち主なので、意見を言うだけでメンタルが削れるから、正直遠目から関わらないのが無難である。
「何よ何よ。だって気になるじゃない!?」
だから、そんな目を剥き開いて近付かないで欲しい。貴女程のモンスター級美人が変顔をすると面白いっていうよりか、ぶっちゃけホラー要素が強くなって怖いんだから。
「あのー……メーデルさん?」
「おっと、ごめんね。ちょっと驚き過ぎちゃったかもね。でもね、それでもね、だってあの綾乃ちゃんがミントン辞めるなんてどうなってんの!?
シャトルが恋人で、ラケットがボーイフレンドだった青春ガールだったのに、それを捨てるなんて!」
何故か無意味なシャドーボクシングをするメーデルさんに気圧されそうだ。しかも無駄に素早くて、無駄に華麗なフォームで繰り出されるジャブは一発一発が鋭く、どうみても本職ボクサーと戦える拳の持ち主だった。いや、本当に何でこんなに逞しいのか分からないけど。
「は……は、はははは。まぁ、私の方も色々とショッキングなことが起きまして……」
「……―――あ。もしかして、有千夏関連だったり。出て行ったって言うあの人が、外国で男と不倫して、外人の兄弟姉妹が出来てたとか?
単身赴任だと結構ある離婚原因なんだけど……ま、有り得ないか。あの人、旦那さんにベタ惚れみたいだったし!」
「―――……」
はー、あー、もう。この人、マジで本当にもう!
「コノ、駄目助女。見給エメーデル、織乃ガマルデゾンビミタイナ顔ノ肉ニ腐ッテルサ。オ前ノ罪ヲ数エロイ!」
ランドールさん、変な日本語を使うけど根はまともで助かるな。だから、もっともっとこの女に釘を刺して欲しい。私じゃ無理なので。
……あ、何か凄い顔でメーデルさんがこっち見てる。
そんなあからさまにやっちまったぜ、みたいな表情をされると責めるに責め難いんだけど。
「………あー……うん。あのさ、えーと―――マジで?」
「はい……まぁ、その、半分だけ」
「「エ”!?」」
その驚き顔、二人揃って二度目だね。私段々と目から光が失っていくのが、自分で自分の事が分かってしまうよ。
「そんな……じゃあ、織乃に新しいパパが出来たんだ!? そっちの家族が増えたんだ!?」
そっちの半分じゃない。姉妹の方だから。私の両親が不倫で離婚とかしたら、多分私は完全にメンタルが砕け散って、数日間引き籠って精神崩壊する自信がある。流石にそこまでのことをされると一カ月くらいはバドミントンを止めて、デーモン閣下を洗脳して一緒に暴れて、色々と拗らせてグレまくる。
でも、その内耐え切れなくなって、またミントン始めるんだろうけど。
「オニューノパパ上トカ、斬新ナリ。ダガヨ、日本人ハ新年ノ始マリニ家族ガ増エマシタッテ、御手紙送クル文化ノ持チ主。多分、新シイパパ上トママ上ノツーショットガ……新シイ家族ノ写真ヲ見テ、キット綾乃チャン、ヒャッハーシテ消毒サレチマッタサ。残念ダッタ。
不憫デスネ。私、分カリマスカ?」
「駄目だよ、それ。子供じゃ耐え切れない親の趣味だよ。アブノーマル過ぎるじゃんかよ」
「母さんをド変態にするのは止めて欲しいんですけど……ん?」
と言うか、何で私が母さんの世間体を守らないといけないのか。一番心労溜め込んでるのは、多分この私なんだけど。もうあれだ、本当に母さんと姉さんは厄介事をこの場にいないのに生み出してくれる。
……あれ。でも、少し待て。
そんなエゲツない写真とか母さんに限って有り得ないし、そもそも母親以前の問題で、あれ……あれ……あ”、有ったし!?
「……そう思えば確かに。あの写真を見ていた姉さん、そんな雰囲気だったかも。まぁあれです、家族が増えたって言う写真で心が折れたのは事実なんですけど―――母さんはそんな人じゃないですから!」
「「エ”ェ!!」」
ヤバい。思わず誤解から更なる誤解を生み出す発言をしてしまった。おのれコニー・クリステンセン、貴女は私に一体何の恨みがあるってんだ!?
「モウ駄目ダ、オ終イダ。ソンナノ見タラ、青イ顔デニートニナッチマウゼ。正ニ青ニートダゾ、綾乃チャン」
何か行き成りランドールさんに姉さんが青ニートにされてしまった。確かに心折れた選手だけど、地味に的確に私の心も折りに来てる。そして、ダクソもニート生活していた時にさせていたから、凄い親近感を感じている目で青ニートに○ボタンを押して会話をしている姉さんを思い出してしまう。やる気を出しても結局は小ロンドで亡者化した青ニートを姉さんは崖からバクスタで蹴り落として、小さく自嘲の笑みを浮かべていたのも思い出してしまった。
糞、死にそうになる。あれもこれも姉さんが青ニートになったのも、家族が増えたのも、正月みたいな家族が増えたよ写真を見てしまったのも、全部コニー・クリステンセンの所為に違いない。おのれぇクリステンセン、もはや何もかもが許せない!
「良、良か‥…良かったじゃない。その、うん……家族が増えたんだから、やったね織乃ちゃん!」
「そんな痛ましい目で言われても嬉しくないですから。ついでに、全然良くないですから」
目が泳ぎ巻くって倒れそうなメーデルさんだが、何一つ可哀想ではない。もう少し人の心とか勉強して、言葉と感情をオブラードに包む話術を学んで欲しかった。
「シカシ、羽咲ノファミリーハ修羅ニ生キルテルネ。吃驚シテマスカ、我輩」
「私の家もさ、両親がそう言う人だったから……うん、気持ち分かるよ。
だから……その、あのさ、何だかんだで子供って大人になれると思うんだよね。良いじゃない、新しいお父さんなんだから。実際、良くある事だもの。気が付いたらお父さんがお母さんを何人も作ってたり、お母さんが沢山のお父さんで遊んでたりとか……まぁ、最初はかなりショッキングだったけどね。異母兄弟とか、異父姉妹とか、慣れると可愛いものだもの。何であんな浮気体質ハーレム馬鹿同士で結婚なんてして、私生んだのか理解出来ないけど、生まれたからにはもう自分の人生なんだからエンジョイしないと。
だから、織乃ちゃん―――私が何時でも相談に乗って上がるから!」
「―――違いますから!」
「「エー……?」」
「止めて下さい。そんな強がりを言う子供を見る目で私を見ないで。本当に、マジで誤解ですからね!?」
このままだと母さんが浮気女にされてしまう。駄目だ、早く何とかしないと。
と言うよりもメーデルさん、私よりも遥かにヘビーな家族関係じゃないか。そんな話を聞かされると、貴女に対して愚痴一つ漏らせないんだけどな。
「だけど、母親か。私は正直、あんまり良い思い出はないよ。父親もそうだったけど、子供に興味がない人らだったから。放任主義の個人主義者で、夫婦なのに友達感覚だったようだしね。家族との思い出とか、ぶっちゃけ訓練程度だもん。
あ……そう言えば、ランドールの家はどうだったの?」
「我輩家族、強盗殺人デ皆殺シ。生キ残リ、ワシダケダヨ」
「ごめんなさい。生まれてきてごめんなさい!」
あーもーあーもー! だから何でメーデルさんは地雷原でコサックダンスを始めるかな!?
「大丈夫ダ、問題ナイ。復讐シタカラ、憎悪モ消エタヨウダ。
……ア、織乃チャン、コノ話ハ極秘デスカラ。モシ漏ラシタラ織乃チャンノ身体カラ、体液色々ト洩ラサセル事二ナルヤモシレンゾイ」
糞ったれめ。メーデルさんのせいで放火並の飛び火が私に降り注いだじゃないか。復讐とか言ってるけど、それって犯罪者が死刑判決受けたって事だよね?
もう司法の手によって縄で縊り殺されたか、毒物で心肺停止されたか、ガス室で中毒死させられたか、電気で内臓を焼かれて感電死したかは知らないけど、そのどれかで殺されたとしたなら、復讐にもなるかもしれない。憎悪も僅かに晴れることだと思う。いや、身内を悪党に殺された事はないので、被害者遺族の気持ちは分からないし、社会の塵屑に欠片も興味はなく、そんな悪人の生き死に興味なし。私達の人間社会に不必要な悪とされた奴なんて、ちゃんと大人がお金を払って運営してる公共が責任を以って処分して欲しいもの。
だがもしも、もしも私が誰かの手で家族が殺されたとしたら……―――まぁ、良いか。想像しただけで、罪人だけじゃなくて、そいつの恋人や家族もどうにかしたくなるから。
「え……あの、うん。何でもないです」
とのことで、此処は確実に藪蛇だ。しっかりクールにならないと選択ミスでバッドエンドに落ちて死ぬ。
「ナンテ、マイケル冗談サ。ソレガシ、ソモソモ孤児ナノデ家族トカ知ラヌ。院長センコーガ、ソンナ感ジデ殺サレテ一人二ナッタト言ッテタカモネ」
あ、これ、多分嘘じゃないパターンだ。前者も後者も本当で、まだ何か隠し事をして全部を喋ってないだけだな。私も嘘を吐くときは本当のことも言って真実味を増すけど、ランドールさんは嘘っぽく本当のことを茶化して喋る正直者だ。
あー、気になるな。掘り返したいけど、これ以上聞くと恐ろしいぞと第六感覚が警告している。良し、忘れてしまおう。私は結構な人間の屑なので人の隠し事を暴きたくなるけど、やるなら自分が恨まれないようにする。
「あ、はい。で、そもそも母さんが浮気してるの、誤解なので。その部分、訂正させて貰います」
「そうなの……?」
生まれて来た事を後悔していたメーデルさんだが、私の話に乗ることで精神的復活を何とか成そうとしている。まぁ、あれだけの特大級N2地雷を踏み抜いてしまったからか、チラチラとランドールさんの方を見ながら助けを縋るように私を見ている。
あの、それ、可笑しいと思う。そもそも姉さんがバドを辞めた理由を喋る破目になってる私の方が、普通だったらメンタルが辛い筈なのに。メーデルさんは直ぐに自爆して、この場でのコミュ的立場が最底辺にあっさり転落していった。
「どうも私の母さん、外国で子育てをしていたようでしてね。私達姉妹を捨てて、その子をバドミントンのプロ選手にまでしていて、それを知った所為で姉さんはバドに嫌気が差してしまったようです」
「オットット、ソイツハ中々クレイジー。綾乃チャント織乃チャンノママ上、本当ニ織乃チャンソックリナ人間ダモノ。ココデ織乃チャンガヤッテル事ト変ワラナイヨウデスカ。
マルデ親子ジャナイカナト、我輩ソウ思ウデス」
「……ふふ。そうかもしれませんね」
この人、李搏御爺さんと同じで良く人を見ている。油断出来ないけど、愉快な人なので別に良いか。善悪に拘りがないみたいだし、双方が望んでいるなら最後まで傍観する結構な薄情者だ。困っているなら助けるんだろうけど、かなり困っていないと一人で頑張れる場所までは頑張れと、応援さえしないで第三者で在ろうとする男だった。
まぁ、肉体が練習の余り壊れそうになったりすると、良く助けてくれたり、こうした方が効率的だと教えてくれる恩人でもある。優しいと言えば優しいが、性根の部分に一欠片も甘さがない厳しい人間なのだろう。でも、話をすると愉快ななんちゃって日本語を喋るオジサマだ。
「うーん……なるほど。つまり、あれね、子作りだけして男はもう捨てたって事か!」
「違います。全然違いますから」
同じく、メーデルさんも相変わらず空気が読めない人だった。良い人である事は……いや、善人でいようと努力しているのは事実なんだろうけど、根が邪悪な悪党なので根本的に常識人と相容れないのだろう。建前はきっしり守れるので何の問題も起きていないけど、私が屑女なら、彼女はヘドロ魔女と呼べる邪悪具合。そう意味ではランドールさんと変わらないけど、彼の方は根が聖職者体質だ。恐らくは、神父とか、教師とか、そう言う人助けの職に付いていたか、ボランティアをしていたのかもと考えている。
しかしながら、ここはバドミントンを楽しむ倶楽部に過ぎない。他人の心の闇を垣間見えてしまう事があって、自分のそう言う観察力が他人の精神を暴いてしまおうとも、見て見ぬふりしてバドを大いに楽しむだけだ。何よりも、バドミントンが巧い人なら別に事情なんて如何でも良いし。
「メーデル、君ハ一片インフェルノデ修行シテクルト宜シカロ」
「なによぉー……もうランドール。そこまで言わなくてもいいじゃんか。じゃ織乃ちゃん、そもそも写真ってなんなの?」
「ええ。浮気自慢なんて馬鹿な事をする母さんではありませんから。つい口を滑らせて言ってしまった写真は……まぁその、ちょっとした偶然の悲劇とでも言いましょうか。
とある少女がバドミントンの記事になっていましてね……」
全く、そのとある少女であるコニー・クリステンセンさん。ここまで私を苦しませる怨敵は貴女が人生で初めてだ。ここまで虚仮にされた気分になるのも、この私の人生で初めてだよ。もち、許せんよなぁハハハ。不幸な目に遭って欲しいとまでは思わないけど、何時か必ず八つ当たりをしてやる。いや、第三者視点で冷静な目で見ればマジで私、人間の屑になってるんだろうけど。しかし、当事者からすればそんな視点、野菜や肉を煮込んだ時に出て来る灰汁よりも価値がない。とっととメンタルから掬い取って捨てるのみ。
でもさ、この感情をちゃんと認めて、原因となる相手と向き合わないいけないものだ。そんな事くらいは、十五年程度しか生きてない私にだって分かっている。それは私達を捨てた母さんにも同じで、バドと一緒に私をコートへ捨てた姉さんにも同じ事だから。
「ナルホド理解ダゾ。ソレガ言ッテタ半分、新シイ姉妹ッテ訳デス。分カッテマセンカ?」
「ほっほう、成る程。パパじゃなくて、外で子供を育てていたってだけね。しかも、バドミントンで有名になるほど、子供を捨てた母親なのに違う子供を我が子のように育て上げたってことか。
―――うわぁ……キッツい話。ちょいと胸糞気分。
それで心が折れない子供ってかなりの捻くれ者じゃないとさ、多分現実に耐えられるのそうそういないよ。捨てられた挙げ句、死体蹴りともうそれ確実に子供のメンタル葬りに来てるじゃん」
「そんな捻くれ者でも、実はキツくてヤバいんですけどね?」
「あー、やっぱり」
「分カッテイマシタトモ、我輩」
そんなしんみりとした雰囲気で、うんうんと頷かないで欲しい。だから本当は言いたくなかったのに、メーデルさんが勝手に自爆するから白状することになってしまった。
「デハ、モウ綾乃チャンハ来マセンカ。可愛イフレンドダッタノニ、勿体無イカモ。我輩、残念デアル」
「おいこら、このロリコンエグザエル。綾乃ちゃんにそんな目で見てたん?」
「ナンデ、ナンデロリコンナンデ?
女ノ子ハ可愛イト言ウノハ正シイ日本語ノ筈ヤン。デスノデ、女子中学生ハ最高ダゼ」
「……………――」
言いたい事は分かる。ランドールさんがそう言う意味で言っているのはでないと、しっかりと理解はしている。だけどさ、本当にそう言う意味で言っていたのだとしたら、私は彼を倒さないとならない。ロリコンなんて外道に姉さんは渡せないのだから。
「ソモソモワシ、子供ハ子供ヨ。30ヨリ上ジャナイト話ニナラヌ。ダケド、貴様ハ本物ペドフィリアネ」
「えー……だってさ、若い方が成長してるのより可愛いじゃん。嗜みとして同性もオーケーだけど、元々は異性愛者だもんね。
あ、だけど三次元だと愛が全てだから。
二次元の娯楽として、私は小さい男の子が好きなだけのお姉さんだから、誤解しないように!」
日本文化を手っ取り早く学習する為、アニメや漫画に手を出したのが悪かった。この国の人間が何を楽しみにして生きているのか知る為だったけど、この二人は日本の腐海に呑み込まれてしまっていた。見た目が無国籍赤毛美女と丸刈り黒肌美男子だったけど、私が日本の勉強をしたいと言ってた二人にオタク文化を教えたのが悪かった。
反省はしてないけど!
やっぱり同じバドミントンをする仲間なんだから、話のネタは年下の私の方から提供すべきだろうさ。
「あ、貴方達……なんて言う会話をコートの横でしているのかしら?」
「こんばんわ、芹ヶ谷さん。今日は早かったですね」
李搏御爺さんと試合をし、休むついでに無駄話をしていたので結構時間が経っていたらしい。どうやら、もう芹ヶ谷さんがクラブに来る時間になっていた。話に集中していたので彼女が来たことに気が付かず、近付かれるまで分からなかった。
「部活が終わって直ぐに向かいましたので。寄り道もしませんでしたし」
「あら、薫子ちゃん。今日もツインテールが決まってるじゃん」
「オウ、薫子チャン。今日モダブルポニーデ美シイオ馬サンデハナイ」
あ、さっそく絡まれている。芹ヶ谷さん、ぶっちゃけこのクラブでマスコットみたいな扱い受けているからな。バドミントンに対しては子供っぽく生意気なのに、基本的に大人と変わらず礼儀正しいから、クラブの人から面白いキャラの中学生として人気者だった。
多分、芸人寄りのアイドル体質なんだと思う。
性格が悪くても根が悪くはないので、キャラとして受け入れられていた。
「私、もう絶対にツッコミはいれないと決めていましてよ。後、私は髪型を変える気はないですから」
「もう~……ふへへへ。実は私って、ツインテ萌えだって事に最近気が付いて、ねぇ……?」
「―――ヒ!」
フレンドリーな外人っぽく芹ヶ谷さんの背後から寄り掛かり、耳に吐息を当てながらメーデルさんは喋っていた。しかし、まるでイリュージョンみたいに突然移動する人なので、芹ヶ谷さんは相当驚いているように見える。あれをされると、まるで背後から命を握られている気分になってゾワリと怖気がするんだよな。しかも、それなりに話をする男性にも同じことをするので、凄まじく男性陣を勘違いさせるので見ている分には面白い人だった。無意識で異性に同性にも媚を売るのだが、相手がそれを買おうとすると代金の受け取りを拒否するから。あのボディタッチは天然によるものだ。
けれども、まぁ正直なところ、バドミントンが巧くて練習相手になってくれるので気にすることじゃない。バドクラブにおいて重要なのはその一点。こう言った人間関係も楽しいし、大切なことだけど、やはり私はバドミントンを楽しむ為に此処に来ているのだから。
「ほらほーら、あららうふふ。やっぱり薫子ちゃんって薫子ちゃんだ」
「ちょこら、メーデルさん。や、やめ……やめて下さ……やめろぉー!」
うん。だから、見て見ぬふりをするのが一番だ。こう言うのは見ない方が人生の為である。ランドールさんは相変わらず胡乱気な目で美女と美少女の絡みを観察しているけど、ちょっと表情がなくてロボットみたいで奇妙だ。こう言うのが好きって訳でもなさそうだけど、全く無視するって訳でもないので、行動原理や思考回路が分かり難い人だな。今一理解出来ないし、メンタル探ろうとすると怖気がするので、余り深く関わらない方が良いかもしれない。
取り敢えず、放置で良いか。もう充分に休息は取ったので練習を再開するとしよう。
「芹ヶ谷さん。後、メーデルさん。そんな事は如何でも良いでの、バドミントンしませんか?」
練習は楽しくないといけない。何故なら、折角のバドミントンなんだから。真剣に愉しもうとすれば、自然と何もかもが強くなるものだ。だから別にこうやってジャレていてもコートで真剣になってくれると有り難いし、私もコートの外側だとふざけている。後、私もコート内だと色々と試してふざける事もあるので、練習態度は何でも良いと考えている。
巧くて、強いなら、何でも良いのだ。何でも。私がバドミントンを楽しめれば、何でも良い。
だから今日も私は楽しいバドミントンをしないと。芹ヶ谷さんも来てくれたんだし、友達と一緒に遊ぶバドは楽しいに決まっているんだからさ。
名前はハーマン・ロードリック・ランドール。見た目はエミヤオルタ風エグザエル、キャラは映画の面白黒人枠と言うただのオリモブキャラ。職業は霊媒師。悪魔払いとか色々やっている人で、神話技能保持者。生まれた時からこの世のモノじゃない存在を見れるらしく、幼少期は苦労していたとか。簡単に言えば、ヘルシングの婦警みたいな過去の持ち主。その後は臨死体験など経験し、コンスタンティンみたいな何でも屋の霊媒師に。自分の才能で人助けがしたく、神父みたいな事もしていたらしい。色々あって外側から来る神話生物やらと戦い、サイレントヒルやらサイレンみたいな異界で活躍。李搏とメーデルと知り合ったのは、聖遺物で儀式しようとしている邪教を追っていた際、古代遺跡でトレジャーハントをしていた二人と鉢合わせしたため。
名前はヘルトラウダ・メーデル。童顔の無国籍風赤毛美人。オランダ人と言っているが、詳細不明。名前も本名か分からない。簡単に言うと、カナンのアルファルドみたいな経歴。色々あって因縁のある相手にボコボコにされて傭兵稼業を辞め、人殺しに嫌気が差してトレジャーハンターに転職。古美術商兼貿易商人。李搏は同業者のライバルだったけど、色々あって好きになったので李の中華料理店の隣で骨董品屋を経営している。ランドールとは友達で、自分が狙っているお宝と、それと持つ邪教徒を狙って来た彼と協力して敵を倒していた。
とのことで、ただのモブキャラ紹介でした。
簡単に言うと、中華料理店店主と、霊媒師と、トレジャーハンターがいるバドミントンクラブだと思って頂けると有り難いです。モブキャラですので多分もう出て来る事はないかと。
orioneさん、GN-XXさん、誤字報告ありがとうございます!