「では最後に、突然ですが告知ですっ」
「私、島村卯月がパーソナリティを務める”島村卯月のS(mile)ING!♡レディオ”は○月×日をもって10周年を迎えまして、それを記念して特別放送をお送りすることになりましたっ」
「世界がこんなふうになってしまってからも、みなさんから変わらず素敵なお便りを頂けて、それを励みになんとかやっていけている卯月です」
「何度もお便りをくれた方のお名前を、ある時からはたと見なくなることもあって……とても悲しい気分になるときがあります」
「それでも、おそらく消えてしまった人がこの世で生きていた証であるお便りを読み返すことで、ちょっぴり救われる気がします」
「なのでお便りをお送り頂く際は、必ず差出人の欄にご自身の本名を記入しないようにしてください。間違って本名を書いてしまうと、いざという時にお便りそのものがなくなってしまいますから。これは何度も番組でお伝えしていることですが、大事なことなので何回でも言いますね」
「宛先は、東京都××区○○……△△ラジオ、島村卯月のS(mile)ING!♡レディオ係まで。お間違えないようにお願いしますっ」
「さて、特別放送なんですが、こんな世の中になってからというもの、みなさんのお話を私が聞かせてもらってばかりいましたが、今度は私の方から、いろんなお話をさせてもらえばなって思います」
「私を憧れだったアイドルにさせてくれたプロデューサー、同じアイドルの仲間たち、スタッフ、そしてかけがえのない応援してくれるファンのみなさん……」
「その多くの人たちのお名前も顔も、もう思いだすことはできませんが、たとえ記憶がなくなっても、想いだけはずっと残っているんです。その想いを込めて、何かお話しようって思ってます」
「拙い語りかもしれませんが、どうぞお付き合いくださいませっ」
「あっ、もうすぐ時間ですね。今夜も楽しかったですっ」
「それでは今夜はここまで、また来週お会いしましょう」
「島村卯月でしたっ」
「……ねぇ、少年」
「何?少女」
「まだラジオなんてやってるんだね」
「そうだね、ラジオ局なんてとっくに閉鎖したって思ってた」
「でも他の番組はやってないみたい」
「……本当だ」
「島村卯月って、知ってる?」
「そりゃーもちろん、有名なアイドルだし」
「可愛いよね、少年も好き?」
「うーん。好きかどうかはともかく、いい声してるよね、彼女」
「……ふーん」
「妬いた?」
「死ね」
「うわ、手厳しい」
「出してみようか?」
「何を?」
「お便りだよ、少年」
「出すったって郵便局はもう……あれ?じゃあ彼女はどうやってお便りを受け取ってるんだ?」
「さあ……だから行ってみようよ、ここのラジオ局」
「次の目的地は能登じゃなかったっけ?」
「焦る必要はないよ、少年と一緒だから」
「……そっか」
「旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで」
「お供するよ、少女」
「よろしくね、カブ君。ついでに少年」