いつかこれを読む君の為に   作:北間 ユウリ

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 この作品の評判がかなり良くて驚き半分嬉しさ多分のゆーりです。416可愛いからかな。めっちゃ可愛いですよね、416。



僕の副官とバイオリン

 

 5月16日 曇りのち雨

 

 バイオリン良いよね、と言ったのが原因だったのだろう。416がバイオリンになっていた。正確にはバイオリンの着ぐるみを着ていた。彼女はとても優秀な人形だったはずなのに、何が彼女を残念にしてしまったのだろう。クールだった頃の彼女を返してほしい。

 ちなみに416バイオリンだが、G11が弾きこなしていた。中に空洞はないはずなのに、どうやって音を響かせているのだろうか。あと、持ち方がコントラバスだった。身長の関係から仕方ない事だろうが、指摘したらバイオリンサイズになるのだろうか。彼女ならやりそうで恐ろしい。

 

 今日の教訓は、いくら人形が高度なAIを持っているからといって言葉を省略しては駄目だということだ。駄目なのはうちの416かもしれないが。

 

 無味無臭料理とはいえ作ってくれるのはありがたいのだが、せめてバイオリンは脱いでほしい。気になってしまって食事に集中できなかった。

 

 

 

 5月18日 雨

 

 流石に着ぐるみは違うと気付いてくれたのか、416が本物のバイオリンを演奏してくれた。最近アレな事続きで残念さが目立つが、本来の彼女はクールで完璧主義な向上心の塊なのだ。初めてバイオリンの生演奏を聞いたが、とても素晴らしい演奏だった。G11も真剣に聞き入るほどだ。おそらく、昨日一日中練習したのだろう。

 

 そう、昨日一日中、だ。彼女は僕の副官で、普段は仕事の補佐を頼んでいる。彼女が基地を出ていて居ない時はカリンや他の人形に予め代理をお願いしているのだが、昨日は彼女が来るものだと思っていたので誰にも頼んでおらず、結局僕だけで仕事をすることになった。執務室にG11は居たが、手伝ってはくれなかった。

 僕のためにバイオリンを練習してくれたのは嬉しいが、それとこれとは別である。久しぶりの制裁チョップが416を襲った。

 

 今夜はまたカレーだった。416曰く反応が良かったからだそうだが、その反応は「誰が作っても不味くならない」カレーを無味無臭にした事に呆れを通り越して感心していただけで、食べている間は無心だった。多分シチューをご飯にかけましたと言われても気付かないだろう。

 

 

 

 5月20日 珍しく雪

 

 仕事に手がつかない。G11にも心配されてしまった。

 何だかんだ言って、彼女は僕の中で大きな存在になっていたらしい。

 早く良くなる事を祈る。

 

 食堂のタダ同然の定食を前に「美味しくも不味くもない」と言ったが、久々に食べたら全然美味しくなかった。

 416の料理の方が美味しい、かもしれない。

 





 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


 416「私がバイオリンになることだ」

 これ後任に残す引き継ぎ文書の側面もあるって最初に書いてるのにほとんど416残念日記ですよね、詐欺かな?
 
 バイオリンを弾くおんなのこがすきなのです。

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